東方風天録   作:九郎

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覚醒剤とかモルヒネ、ヘロイン、そんな類いだと思って下さいませ

どっかで聞いた話なので不確かですしね。

そういえば、前の話の意味わかった人います?

分かりずらかった?これからもあんな感じでやりたいと思ってるんですけど大丈夫かな?

では、本編です。


死を思え

「あはははは……」

 

少女と青年の笑い声が病室に響き渡った。

 

とても楽しい時間だった。

 

時間が経つのを忘れるくらいに。

 

時間が止まってしまえば良いのにと何度も思ったけれど、時間というものは誰にだって平等に無情なのだ。

 

「あっ、もうこんな時間ですか、そろそろ帰ります!!早く元気になって下さいね!!待ってますから……」

 

ニコッと少女は笑って飛び立とうとしたが、

 

「ちょっと待って!!」

と青年は少女を呼び止める。

 

 

それを見て少女は

「ん?」

と笑って首を傾げた。

 

「これ、受け取って欲しい」

 

青年は、少女と目を合わせず手紙を手渡す。

 

「何ですかこれ?」

 

と少女は言って、折りたたんだ手紙を広げようとした。

 

「ちょっ、バカ!!今見るなよ!!」

 

青年は慌てて少女を止める。

 

ますます少女は、訝しそうに手紙を見つめたが、青年が、嫌がるので

 

「わっ、分かりましたよ……じゃ、また……」

 

と笑って飛び立った。

 

少女の居なくなった病室にて……

 

「さて、告白というものもできたし、恋文も渡せた、小町さん、これで良いでしょう?」.

 

フッと青年は遠い目をして笑う。

 

また、血を吐いた。

 

本当にもう長くないんだと実感した。

 

同刻…… 妖怪の山付近上空にて

 

 

「あやややや〜、この手紙には何が書いてあるんでしょうか?まさか……まさか……ね?」

 

ジーッと少女は手紙を見つめた。

少し胸がドキドキしていた。

 

その時……

 

 

「ッ!?」

 

少女は、体の自由が利かない事に気付いた。

 

縛られてるとかそんな感覚とは違う。

 

元々無かったかのような嫌な感覚……

 

「アア"……ヴ……」

 

あいつだ……あの時と一緒の感覚……

クソッ、人間如きに……

 

悔しさ以上に恐怖が勝った。

 

彼女は天狗である。

かなり強い種族なのに……それでも、湧き上がる悪寒と彼への嫌悪感には勝てなかったのだ。

ドサッと空から少女は墜落する。

 

 

「へぇ……結構遠くだけど、届くもんだね〜さぁて、この時を待ってたんだ来いよクロ君、遊ぼうよ……文ちゃんだっけ?早く来ないと僕の物にしちゃうよ〜ハハハハハ!!!」

 

数キロ先で綺羅は、不気味に笑った。

 

ずっと欲求不満だった。

だから、彼は青年の絶望した顔がどうしても見たくなったのだ。

 

ずっと、機を伺って、そして今、最高の遊びを始める事にした。

 

 

そして……

 

 

「行か……なくちゃ……」

何かを感じて青年は、紅いシーツのベットから降りてヨロヨロと歩く。

 

全身が悲鳴をあげる。

 

頭がクラクラする。

気分が悪い。

胸がバクバク鼓動を打つ。

 

もう限界だった。

 

でも……行かなくちゃと青年は思った。

 

そして、意外にも青年は、直ぐには永遠亭を出ず、永遠亭の薬剤室へと向かった。

 

 

そして、ヨロヨロと目当ての物を物色する。

 

「何してるんですか!?」

 

 

鈴仙に見つかり青年は、チッと舌打ちをする。

 

 

「行かなくちゃ……いけない んです」

 

息も絶え絶えに青年は答える。

 

 

「ダメです!!本当に死にますよ!!!早く治療を……」

 

慌てて鈴仙は、青年の腕を掴んだ。

 

その瞬間

 

 

ドスッ

 

青年の拳が鈴仙の鳩尾に入る。

 

「ヴッ……」

 

ドサッと鈴仙は、倒れた。

 

「ごめ……ん、 女の人に、手を あげるなんて 最低 だ……」

 

倒れた鈴仙を申し訳なさそうに見つめ、青年は尚も物色する。

 

そして、目当ての物を見つけ出し。

 

それを握って永遠亭の出口へと向かった。

 

「待ちなさい!!!」

 

背後から永琳が青年を呼び止めた。

 

青年は、振り返ってみると

 

永琳は全てを察した様子だった。

 

「そんなに……あの子の事……」

 

 

「あの子の為に死んでゆく男が……1人くらいいたって……いいでしょう?」

 

 

困った顔して青年は微笑み、フッと消える。

 

「待ちなさい!!」

永琳の伸ばした手は届くことは無かった。

 

 

 

ヨロヨロと青年は、歩く。

 

あの子の元まで飛べなかった。

能力さえも弱っているのだろう。

 

ふと、青年の前に紫が現れる。

 

「メメントモリ……」

 

 

「死を思え……って意味ですよね?こいつの別名だ」

 

青年は握っている注射器を見て笑う。

 

 

「残酷な薬よね……元々は、蛮族の儀式に使われてたって言い伝えがあるわよ?炎の中で2人の男が燃えながら殺し合うの……」

 

遠い目をして紫は言った。

 

 

「まぁ、戦士には最高の薬でしょう、今のオレを……無理矢理闘えるようにするには、ヤクでもキメないと……ね?」

 

苦笑いして青年は、首筋に注射器を刺して、薬を打つ。

 

何故だか、幸せだった。

 

好きな人の為に死ぬからだろうか?

 

物凄く……満ち足りた気持ちになった。

 

「死を貴方に……」

 

紫は、悲しそうに青年の背中を見送っていた。

 

 

 

 


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