東方風天録   作:九郎

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ヤバイなぁ、もっと盛り上げたいのになぁ

クライマックスっぽくないかな?
なんかすいませんね……

では、本編です。


最後の一撃は切ない……

妖怪の山の滝付近にて……

 

「炎だ……ごうごうと燃え盛る炎が見える」

 

白い耳をピコピコさせて、白狼は言った。

 

「あ?火事か?」

ボケ〜ッとパイプで煙草を吸う黒狼は、白狼を見る。

 

「いや、人げ……同族なのかな?」

 

「ああ……あの0点のカスの事か?ハッ、オレ、あいつと闘ったぜ?それでさ〜」

 

 

「綺麗……」

 

犬走 椛は、うっとりとして命を燃やす青年を見た。

 

場面変わって、妖怪の山頂上にて……

 

 

「天狗の遠眼鏡か、結構遠くまで見えるもんだな、ほぅ……一の太刀か、良いセンスだ……」

 

無二斎は、遠眼鏡を覗き込んでニヤリと笑う。

 

そして、片手上段、通称火の構えを取った青年は、何故か穏やかに笑っていた。

 

「なんでそんな顔するんだよ!!殺すぞ!!!犯すぞ!!!あの子の事を!!!なぁ!?」

 

取り乱す綺羅の声など聞こえなかった。

 

 

ああ……これが、走馬灯ってやつか……

 

オレの人生が、映像のように頭に流れてゆく

 

ハハッ、やっぱクソだな……

 

 

おい、おいおいおいおい!!

 

なんでお前ばっかり出てくるんだよ……

短い間だったのに……

 

君の事ばかりが、脳裏に過るんだ……

 

ふふっ、おかしいね?

 

オレはきっと、この瞬間の為に生きてきたんだと思う。

 

初めて会った時、オレは死んでしまってもいいやって思ってて、君はとても蔑んだ目でオレを見たよね?

 

あれからしつこくオレに付きまとってさ……

 

ウザかったけれど、ちょっと嬉しかった。

 

だから、生きようと思えた。

 

ありがとう……

 

空虚だったオレの心が少しずつ、君で満たされていった……

 

だから、最後まで生きようと思った。

 

 

でも、結局のところオレは死んでも良いのかも知れない……

 

もう、充分に満たされた。

 

幸せだった……

 

神様は、きっと君にオレを会わせたかったのかな?

 

そして、これは最後まで生きようとしたのに死んでも良いと思ってしまったオレへの罰なんだろう。

 

ねぇ、文……

 

また君は、オレを蔑んだ目で見るのかな?

 

あの殺人鬼から君を守る。

 

それだけでいい……

 

君が笑っていられるのなら……

 

たった、それだけの為の命で良い……

 

グッと青年は、大剣を握った左手に力を込める。

 

こんな大きな物を片手でなんて振れっこない

 

でも、神様お願いです。

 

一振り……一振りだけオレに力を下さい……

 

ほんの少しだけ……オレに力を……

 

「なん……だよ……死ねよ!!さっさと死ねよ!!面白くないな!!どいつもこいつも!!!!ウアアアアアア!!!!!」

 

ガリガリと頭を掻き毟り取り乱した綺羅は青年を睨んだ。

 

みんな思い通りにならないからちっとも楽しくない

 

最後に最高の遊びをしようと思ったのに、それが、全部台無しだ。

 

 

「この一撃で……全てを……断つ!!」

 

みんな……オレに力を貸してくれ!!!

 

 

言葉にならない咆哮をしながら、青年は火の構えから、一つの太刀を繰り出した。

 

 

ザンッ!!!!!!

 

 

音が後から届いた。

 

「天が……割れた……」

 

ポカンと口を開けて、椛と黒狼は空を見上げていた。

 

 

「クロ……君?」

 

身動きが取れず、次第に視力を失いつつある少女は、何かを感じ取ったのか、青年の名前を呟いた。

 

途切れる青年の意識……

 

カァと一声、鴉が鳴いた。

 


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