東方風天録   作:九郎

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もう少しエグいことしたかったなぁ

やっと、殺したかったクロを殺せたというのに残念です。

みんなオレに力を貸してくれ〜ってか?現実はそんなに甘くないってねぇ〜

では、本編です。


嵐の前に

フンフン〜

 

鼻歌を歌いながら幽香は、鉢植えの花達の手入れをしていた。

 

「あっ……」

 

と幽香は声を出す。

 

ふと鉢植えを見ると植えられていた花の、白い花びらが散った。

 

「貝細工が……散った……」

 

残念そうに幽香は、貝細工の花の茎を手で撫でていた。

 

 

香霖堂にて……

 

「ッ!?」

 

虫の知らせというやつだろう。

 

霖之助は読んでいた本をパタンと閉じて呟いた。

 

「クロ……君?」

 

 

湖畔のチルノの家にて……

 

「クロ?」

 

チルノは、ピタッと動きを止めた。

 

「どうしたのチルノちゃん?」

首を傾げて大妖精は、チルノの顔を覗き込んだ。

 

「ううん、なんでもない」

 

ニコッとチルノは微笑んだ。

 

そして、身動きの取れない少女……

 

ああ……

 

アイツが来る。

 

私は何をされるんだろう?

 

大体、予想はつく

 

人里で起きた事件の事は分かっていた。

 

犯人だって分かっていた。

 

でも、クロ君に言うことは絶対にしたくないと思った。

 

 

あいつは、優しい。

 

優しすぎるんだ……

 

きっと闘いに行くに決まっている。

 

例え死ぬことになっても、だって、彼はヒーローだから……

 

誰かの為に簡単に命を賭けてしまう

 

それに貴方はなんでも1人で抱え込んでしまう……

 

だから、ずっとあの大剣を背負ってるんでしょう?

 

『業』ですね……

 

それを背負っているつもりなのでしょう?

 

潰れちゃいますよ?

 

すごく重いでしょう?

 

だから、私がほんの少しだけ、支えてあげたいと思ったんです。

 

そして、貴方も……ワガママですけど、私を支えて欲しかった。

 

そういえば、川に落っこちた時も、貴方は来てくれた。

 

今回も、来てくれるのかな?

 

ねぇ、クロ君?

 

 

そして、天を割った男の立つ場所にて……

 

ドサッと青年は、倒れた。

 

フフッと笑って、少女への想いと共に息絶えた。

 

とても穏やかな死に顔だった。

 

「………………」

 

ペタンと綺羅は尻餅をついた。

 

前髪がハラハラと中を舞う。

 

紙一重だ。

 

紙一重の距離、青年の天を割る一撃は、彼には届かなかった。

 

 

「あはっ、あはっ、あはははは!!!!」

 

綺羅は狂ったように笑い出す。

 

 

「残念だったねぇ〜クロ君の命を賭けた一撃は、オレには届きませんでした〜!!このあと、オレは文ちゃんで遊ぶよ〜!!ねぇ、クロ君、どんな気持ち?どんな気持ちかなぁ?」

 

歪んだ笑みを浮かべ、綺羅は青年の骸を見下ろした。

 

 

「あっけないもんだねぇ……あっ、そうだ!!文ちゃんへのプレゼントを作ろうか!!」

 

アハッと綺羅は、青年から奪った脇差を見つめた。

 

 

ギコ……ブチブチ、グチュッ、グチャ……

 

 

生々しい音が響いた。

 

 

綺羅は、青年を玩具にした。

 

 

「文ちゃ〜ん、クロだよ〜一緒に遊ぼ〜クロはね〜文ちゃんの事が大好きだよ〜」

 

パクパクと青年の口を開けたり閉じたりする殺人鬼……

 

「ああ……舌が邪魔だなぁ、引っこ抜こうかなぁ〜、やめたぁ〜」

 

楽しそうに綺羅は、クロを持って少女の元へと歩き出した。

 

 

そこには、首のなくなった青年の亡骸だけがポツンと残されていた。


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