東方風天録   作:九郎

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ここも書き直し入れるだろうなぁ

まぁ、楽しんで読めてるのなら良いんですけど

では、本編です。


ghost in the storm

マヨヒガにて……

 

「クロ……」

 

1人紫は呟きスキマに消えた。

 

 

 

博麗神社にて……

 

 

「何……この異様な空気は?」

霊夢は、どんよりと曇った空を見上げて呟いた。

 

ヒュー、ヒュル〜

と少し風が強くなった。

 

「雨戸を閉めて今日は早く寝る事ね」

 

スキマから紫が顔を出して言った。

 

「ッ!?」

 

唐突に現れた紫に霊夢は驚いた。

 

「どういう事?これは一体……」

 

「今日は、嵐が来るわよ……」

 

遠くを見つめて紫は言う。

 

「はぁ?そんな天気じゃ」

 

「とっても強い嵐が来るわ」

 

「?」

 

霊夢は紫の言う事が理解できず怪訝な顔をする。

 

「もし、マズいことになったとしても、貴方は出なくて良い……私が片付けるから、前に話したわよね?」

 

「ッ!?」

霊夢はハッとした表情をしたが、もうそこには紫は居なかった。

 

そして……

 

 

耳鳴りが止まない……

 

君の声がまだ聞こえるんだ……

 

行かなくちゃ……

 

 

行 か な く ちゃ

 

 

イカナクチャ

 

 

黒い空間真っ暗だ。

カァと鴉が鳴いた。

 

青年はそこへ立っていた。

 

身体が動かない。

 

チョン……チョンチョンと鴉は青年を突く。

 

何度も何度も青年を啄む。

 

いつしか、鴉が2羽、3羽、4羽と増えてゆく。

 

沢山青年に群がる。

 

不思議と痛みを感じない。

 

どんどん喰われていった。

 

変な感覚だ。

 

いつしかオレも鴉になっていた。

夢中で自分を啄ばんだ。

 

ああ、なるほど……オレはお前を死神だと思っていた。

 

違う……全然違う。

 

お前もオレだったんだ。

 

正しくはオレの一部。

 

ほんのちっぽけな、妖怪の部分なんだね……

 

耳鳴りが止まない……

 

ずっと君の声が聞こえる。

 

だから行かなくちゃ。

 

 

サァァァアア

 

と細かい音を立てて雨が降る。

 

割れた天も雲で塞がった。

 

スッと首の無い男が立ち上がる。

 

斬られた右手を拾い上げ、断面と断面とをグチグチとくっ付けた。

 

すると、グチュグチュと生々しい音を立て、斬り落とされた右手はくっついた。

 

首の無い男は暫く、その手を閉じたり開いたりして、歩き出す。

 

 

ズルズルと腸を引きずって歩き出す。

 

ピタッと首の無い男は動きを止める。

 

ブチ ブチ ブチィ!!!

 

と邪魔だと言わんばかりに男は、自分の腸を引きちぎる。

 

腹から邪魔な腸を取り出して、お腹に横一文字の大きな傷だけが残っている。

 

 

そして、それも生々しい音と共に塞がった。

 

ヒュルーと吹いていた風は、いつしか勢いを増して、ゴウゴウと吹き荒び、辺りの草木が靡かれて、斜めに倒れかけている。

 

 

そして……フッと男は姿を消す。

 

 

雨が降り続く。

 

 

「うふふふふ、文ちゃんのとこまであと少し……これを見たらなんて言うかなぁ?どんな顔をするのかなぁあ〜」

 

不気味な笑みを浮かべて綺羅は歩いていた。

 

暗い雨の降る道で

 

人影がポツンと見えた。

 

こうべを垂れて、うなだれている男の様に見えた。

 

しかし、それが首の無い男と綺羅はもう少し歩いて気付く事ができた。

 

 

「ッ!?」

 

綺羅は、目の前の異形に目を見開く。

 

「アヒャヒャヒャヒャヒャ!!ダメじゃないかクロ!!ちゃんと死んでなきゃ!!」

 

綺羅は、狂った様に笑う。

自分が無残に殺した相手が、死んでも自分の前に立ちはだかるのが面白くて仕方がない。

 

彼の悔しそうな顔が目に浮かんで、最高だった。

 

そして、死んでも自分に立ち塞がる彼を殺す事の愉悦

 

それを考えると身震いがするほど愉快だと感じた。

 

「そんなに文ちゃんが好きなの?壊しがいがあるね〜君には、引導を渡してあげなくっちやね?」

 

ニコッと綺羅は笑い。刀を抜く。

 

スゥーと首の無い男は綺羅を通り過ぎる。

 

綺羅はそれに気付く事ができず、気付いた時には手に抱えた青年の首は、首の無い男の手に渡っていた。

 

「えっ」

 

驚き、そして綺羅は、首の無い男を見る。

 

 

すると、首の無い男はグチュグチュと自分の首を元ある場所へと捩じ込んだ。

 

するとまた傷口がなくなり、首の無い男の首はくっついた。

 

 

「…………」

 

 

暫く青年は、無表情で黙り込む。

 

 

「バケモノめ……良いの? 僕を殺すのは結構だけど、僕はその前にあの子を殺す事ができると思うけど?」

 

ニヤニヤと綺羅は笑って、怯えた表情を必死に隠そうとした。

 

「文……」

 

ポツリと青年は呟いた。

 

そして、次の瞬間、ブシュウ!!

 

と青年の背中から黒い翼が吹き出した。

 

黒い、黒い、漆黒である。

 

そして、ヒュンヒュンと青年の周りを旋風が吹き始めた。

 

青年の流した血が凝固して、黒い塵となって青年の周りに舞っている。

 

「わぁお、真っ黒い羽に黒い旋風、禍々しいよ〜」

 

少し戯けた様子で綺羅は青年を笑う。

 

しかし、一瞬にしてその顔に冷や汗が伝った。

 

綺羅の右腕が無い。

 

「本当にバケモ」

 

言葉を言い切る前に綺羅の首から血が吹き出る。

 

綺羅には何をされたのか理解する暇すら与えられない。

 

「ギャアアアアアア!!!」

 

悲鳴をあげる綺羅を、青年は無表情で見つめていた。

 

「あはっ、あははははは、こっちには人質が居るってのにめちゃくちゃするね〜もう良いや文ちゃんも道づれに……」

 

それが綺羅の最期の言葉になった。

 

パァンと音を立て、数メートル先に綺羅の首がゴロゴロと転がった。

 

 

青年は無表情で、口角だけがニィッとつり上がった。

 

そして、風は更に勢いを増し続ける。

 

 

 


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