新side
転生者の「処理」を終えた俺は、月に照らされながら家に向かっていた。夜が生み出す闇のせいで分かりにくいが、俺の拳と制服は返り血で真っ赤に染まっている。
「きったねえな・・・。血って乾いたらぜんぜん取れねえんだぞ・・・」
両親は仕事が忙しいため、家に帰ってくることはほとんどない。だから、この血まみれの制服も自分で洗わないといけなくなるわけだ。・・・ちなみに言っておくが、俺の親は別に悪の秘密結社に所属しているわけでもないし、マッドサイエンティストでもない。強い正義感とそれを貫き通す意思を持った、俺が心から尊敬する数少ない人間だ。
俺は両親が次に帰ってくる日を確認しつつ、帰り道を進む。すると、急に誰かの視線を感じた。・・・いや、このねっとりとした視線はの正体はおそらく奴だ。俺はそう結論付けると視線を無視して家を目指す。奴に関わるとろくなことにならないので、シカトするに限る。
「ちょっと~、待ってくださいよセンパ~イ」
刹那、街灯の光によって生み出されていた影が大きく揺らいだ。ズズズッッ・・・、と周りにあった影が一か所に集まり、あっという間に少女の姿が現れる。黒いゴスロリ衣装を身にまとった少女はその真っ赤な目を新に向ける。
「私のことを無視するなんて~、ひどくありませ~ん?」
「ひどくない。これから俺はこの頑固な汚れと格闘しなければいけないんだ、ストーカーと遊んでやる暇なんて無い。・・・後、いちいち語尾を伸ばすな。イライラするんだよ、吸血鬼」
「やだ~、先輩ったら~。あんなネクラ共といっしょにしないでくださいよ~。私ショックで先輩の血、吸っちゃいますよ~」
いや何でそうなる。物騒極まりない言葉を吐いた後輩に俺は仕方なく顔を向ける。すると、彼女はとてもうれしそうな顔で俺に飛びついてきた。勿論かわしたが・・・。
「で、いったい何の用だ、アメリア・ローンブライド?」
硬いアスファルトと情熱的なキスを交わしていた少女が顔を上げる。相変わらずな笑みを顔に浮かべながら、こう言ってきた。
「いえ、先輩に別のオスの匂いが付いていたものですから、まさかソッチに目覚めてしまったのかと心配になりまして・・・」「死ね」
奴が言葉を言い終わる前に、俺は投影した短刀を奴の喉笛に突き立てる。ブチブチッと首の筋肉がちぎれる感触が手に伝わる。だがそれだけだ。その傷口から鮮血が溢れることはなく、彼女の血液は何事もなかったかのように体を巡回し続ける。アメリアはニタニタと気持ちの悪い笑みを浮かべたままだ。・・・一回本気で殺したほうがいいかもしれないな。
「まあ冗談はさておき・・・」
自分の喉から刀を引き抜いたアメリアはこれまでとは一転、真剣な顔立ちになりこう聞いてきた。
「先輩、あなたは一体何をしようとしているのですか?」
「あぁ、勘違いしないでくださいよ先輩。別に殺しをするなというつもりはありません。私だって聖人君子ではありませんしね。しかし・・・」
彼女は手の中で短刀を弄びながらこう続ける。
「あまり私の
「・・・・・・」
「先輩とはこれからも良好な関係を築いていきたいと思ってるんですけどね~。ですが私にも領主としての責任などがありますから~・・・・・」
・・・・・・成程。つまりこれは警告という事か。確かに最近はこいつの領土で2,3人転生者を排除したからな。あまり派手に動かれると困るという訳か。
「お前の言いたいことは理解した。これからは余り迷惑を掛けないことを約束しよう」
「まだ質問に答えてもらってないんですけど~?」
彼女はじれったそうに体を揺する。その表情には若干のイラつきも見て取れる。おそらく、次あいまいな回答をすれば俺の首は吹き飛ぶだろう。
「・・・そうだな。おいアメリア」
俺は目の前の少女に向かってこう問いかけた。
「お前は、『正義の味方』の存在を信じるか?」
アメリアside
目の前の人間は何を言っている?
それが彼女が最初に抱いた感想だ。
「・・・バカにしているんですか、先輩?セイギノミカタ?そんなものいる訳ないでしょう。そもそもそんな生物がこの世界に存在しているのなら、先輩も私も、こうなってはいないはずですが?」
現実はおとぎばなしとはちがう。
どれだけ祈っても奇跡は起きないし、都合のいい展開なんて訪れない。強者が弱者を力でねじ伏せるのが当たり前で、負け犬は地を這いずり回るしかない。欲望と裏切りで満ちている世界。それがこの世界の現状だ。
私も彼も、そんなことは痛いほど分かっているはずだ。だからこそ、彼が何を言っているのか理解できなかった。
そんな後輩を見つめながら、少年は口を開く。
「お前には教えといてやるか。俺の計画を」
新side
「ふうっ・・・」
数時間後、
俺は月光に照らされながら、ワイングラスを傾けていた。もともとは父親が趣味で買ってきたもので、その中から一本を失敬した。最近はこれを飲みながら部屋でくつろぐ事がマイブームになりつつある。赤色の液体から漂ってくる香りを楽しみながら、彼はおもむろに微笑んだ。
アメリアには俺の計画を全て話した。あれは傑作だったなァ・・・。金魚みてぇに口、パクパクさせてやんの。相当衝撃だったみたいだ。
「さて・・・、これからどう動くか・・・」
アメリアに計画を話した目的は「勧誘」。彼女は広い人脈の持ち主だ。これから計画を始動させるには、俺は余りにも無知だ。しばらくは情報収集などに力を入れることになるだろう。それには彼女の持つ何千、何万もの人脈が役に立つ。幸いアメリアも前向きに検討すると答えていた。
先は長い、だが俺は進み続けるしかない。たとえそこが茨の道でも、死体が散らばる戦場でも。誰が敵になろうと、俺はそいつを殺してでも突き進む。
「正義の味方」を作り上げるまでは。
こんにちは、月海豚です。
更新がものすごく遅くなってしまいました。本当にすみません. m(__)m
前回報告した通り、タイトルを変更しました。主人公の性格を考えると、こっちのほうが合っている気がします。
さて、ここからは少しネタバレ。
今回は主人公の「計画」について少し触れてみました。新はfateの士郎君と同じく「正義の味方」に対して強い思いがありますが、彼とは違う道を歩むことになります。自らがなるのでは無く、特定人物を「正義の味方」になるように導く。彼はそのためなら世界に仇名すことも躊躇いません。ちなみに、前回転生者を襲ったのは、彼の特典である「未来予知」が計画の障害になると考えたためです。
ワインを飲める大人って結構憧れますよね。自分、未成年ですけど。