ソードアートオンライン 刀使いの少年   作:リスボーン

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頑張りましたよ俺。
いつもならば二ヶ月でいいとこ、三ヶ月ぐらい更新までかかるのに二週間でやれましたよ。
ええ分かってます。ほかの作者に比べれば遅い。
けど、自称《逃亡王》の俺にとってはここまでやれたんだからいいじゃないですか!!

と、前書きに書くネタがないので言ってみました。(書いて)
まあ、今回はこのまま続けて書いても良かったんですが、面倒なんで分割で!
てな訳でどぞ


獣人の王

《ボスの間》に足を踏み入れるとそこは辺り一面暗闇に染まっており、前方をまともに視認することさえ叶わない。まったくもってベータテストの時と一緒だ。

 部屋の構造も左右の壁の幅も、恐らくは扉から奥の壁までのとてつもなく長い距離も寸分違わず同じことだろう。

 

____願わくばボスの攻撃パターンもテスター時代と同じであってほしい 

 

 

心からそう祈りたい。と言うかそうでなくては困る。

 不測の事態というものは何事にも付き物だ。例え九十九パーセント成功する手術だとしても何らかの思いもよらないトラブルが発生して、失敗するってのはよくある話だ。なにせ、この世に絶対など存在しないのだから。

 だが、今回に限っては絶対にソレはあってはならない。もしもそんなことが起こってでも見れば確実に隊は崩れ、場は混乱に満ちるだろう。

 最悪撤退、もっと最悪な場合何人か死ぬかもしれない。

 そうなれば____。

 思考の途中でぼっ、と言うような音が聞こえた。見れば両側の壁に飾られている松明が燃え始めている。どうやらそろそろ王様のご登場らしい。

 丁度いい。気づけば普段の俺らしくもなく、妙にマイナス思考になっていた。

 こんな状態では勝てる勝負も勝てる訳がない。

 敗けた時の事なんか考えるな。俺はできることだけやればいい。全てが終わり、全てが始まったあの日に俺は確かにそう考えていたはずだ。

 これから始まる戦いが例えどのような結末になろうとも俺がやれることはたったの一つ。

 

____奥の玉座にふんぞり返っている王様をブチのめす、ためにサポートをすること

 

 

 あれ? なんかしまらないな。

 疑問に思う俺を他所にディアベルが長剣を振り落とした。突撃の合図。

 今までいまかいまかと待ちわびていた血気盛んな総勢四十数名の戦士たちは雄叫びを上げながら一斉に駆ける。立ち塞がるはコボルド王とその配下三匹のセンチネル。

 

 

「ウグルゥオオオオオオオオオ______!!」

 

 

 咆哮が轟く。二つの勢力が今、衝突する____。

 

 

□            □              □               □

 

 戦いは今のところこちら側(攻略隊)が優勢を保っている。

 騎士ディアベルの的確かつ、迅速な指揮能力が上手く働き戦況を有利に立ち回っていた。正直な所ここまで順調に進むとは思っても見なかったが、何も起こらないのであらばそれに越したことはない。

 後はこの調子で死亡者無しで事が済むのを願うしかない。

 

 

「シンジ、スイッチだ!」

 

「OK任せろ」

 

 

 今までセンチネルのタゲを取っていたキリトが後ろに下がり、入れ替わりに俺が前に出る。

 迫る槍斧ハルバートを右手の剣でいなし、ありったけの力を込めて、唯一の弱点である首元を切り裂いた。

 途端、悲鳴がなる。センチネルのHPバーが二割か三割ほど減った。

 それに対し、怒ったのか奴はハルバートを高い位置まで持っていき俺目掛けて振り下ろす____。

 

 

「待ってたぜ!」

 

 

 既に相手が大振りの攻撃をすることを感覚的に分かっていた俺は、一足先にソードスキルの準備を終えている。

 

 

____薄赤く光る剣が向かってきた刃を払う

 

 

 《スラッシュ》の威力に力負けしたセンチネルは仰け反りながら、三メートル近く吹き飛ばされることとなる。

 

 

「後は頼む。スイッチ」

 

「了解!」

 

 

 後方から弾丸さらがなの勢いで飛び出した。手には光り輝く細剣レイピアが握られており、彼女はそのままスピードを落とすことなくしてセンチネルの喉元に正確に《リニアー》を突き放った。

 弱点を突かれ、ただでさえ俺の攻撃で体力が消耗していたのだろう。抵抗することも叶わず、光と化して散った。

 

 

「ナイス!」

 

「GJ」

 

 

 俺が声を発したと同時にキリトもレイピア使いに賞賛の声を贈った。

 それに対してレイピア使いは

 

 

「……あなた達もね」

 

 

 と、短い言葉で返した。

 呼吸を数拍置いたあたりから見ると、なんの略か分からなかったぽいな。

 オンラインゲームを一度でもやっている人ならば一発で意味が分かる程簡単な略語なんだが、真面目にSAOが初めてらしい。このご時世に珍しいことだが意味は返って来きた言葉から、大方理解できているだろうと思うし解説とかしなくても大丈夫だろう。まあ、どっちにしろそんな暇ないけどな。

 

 

「来たぞ!」

 

 

 声と共に二匹目のセンチネルが目の前に現れた。

 

 

「忙しいな全く」

 

 

 皮肉を漏らしながら敵の攻撃を迎え撃つ。二擊、三擊と刃を撃ち合いながら火花が散るなか、不意に視界に二人のプレイヤーが入った。

 一人はキリトで、もう一人は……キバオウ?

 何か話しているようだが、ここからでは少々遠すぎて声はどころか顔の表情さえも確認するのは難しい。

 相手が相手だけに話の内容が気になるところだが、わざわざこの場を投げ出してまで行くほどの意味はないし、キリトが帰ってきた時にでも聞くか。ついでに攻略戦開始前の《考えごと》についても。

 

 

「グルアアアアア!!」

 

「うるせえな!」

 

 

 考え中に突然耳元で雄叫びを上げた《センチネル》にほとんど反射的に剣が動いた。剣を弾き、有無を言わさず弱点にオレンジ色に輝いている刃を叩き込む。そこから更に動作モーションをつなげ、連続してソードスキル撃った。実に鮮やかに放たれた連続技(コンボ)を受けた相手は先ほど同様に派手に爆散した。

 

 

「今のは少しオーバーキル、だったんじゃないかしら」

 

 

 数日前、キリトが発した台詞に似た台詞が耳に届き、横を向く。

 気づけば不満そうな顔をしているレイピア使いがいつの間にか隣に立っていた。

 

 

「えっ、そうか?」

 

「ええ、思いっきりね。それに事前の打ち合わせでは確かあなたがダウンさせて、それから私とスイッチ……だったはずよね?」

 

 

 ローブの下からジト目でこちらを見つめてくる。

 どうやら俺がセンチネルをダウンさせたのにも関わらず、スイッチをせずにそのまま止めを差してしまったことを不服に思っているらしい。

 

 

「あ~何と言うかすまん。次は気をつける」

 

「別にいいわよ。そこまで気にしてないし」

 

 

 そうは言ってはいるが、これは明らかに気にしているだろうといった口調に聞こえるのはなぜだろう。

 ハァ~、とため息を吐きながらもこちらに向かってくる足音を察知した。一瞬、敵かと思ったが残りのセンチネルは今頃別の隊と戦闘しているだろうからこの考えは除外。

 となるとこっちに来ているのはキリトか。

 

 

「悪い、勝手に離れて」

 

「気にすんな。どうってことはないぜ」

 

 

 ガッツポーズを取りながら答えるとキリトは「そうか」と吐き出しながら呼吸を整えていた。

 その様子から見るにキバオウとの話が同様を誘うよう何かであった、と見るべきか。

 推測がまとまったところで丁度キリトの息も通常に戻り、質問を投げかけようとした瞬間____。

 

 

「ウグルゥオオオオオオオオオ____!!」

 

 

 獣人の王が吠えた。

 そのあまりに威圧的な叫びに俺はハッ、と思わず振り返った。

 見るとコボルド王のHPバーは残り一本を切っており、攻略本及びベータテスター時代の記憶通りに奴は今まで使っていた斧と盾を投げ捨てた。

 今まで被されていた布を強引に剥ぎ取り、そして右の腰に差されている湾刀に手を____

 

 

____アレ?

 

 

 イルファングが獲物に手を掛けるまでの数秒がとても長く感じている。音も聞こえない。

 時間に置いてかれた、と言うよりは俺の思考が、感覚がこの短い時間にのみ通常の状態を凌駕するほどに働いていた。

 偶然目に入ったといってもいい、些細な勘違いかもしれないと言う不確定なナニカ。

 奴が現在進行形で掴もうとしているあの湾刀、ベータ時代と比べると少々形がおかしくはないだろうか? 

 確かに刀身は反っていた。今回も変わらずに。だが、果たしてあんなに細かったであろうか? あそこまでの輝きを有していただろうか、あんなにも洗練された刃であったであろうか。

 違う。俺の記憶している武器は鈍く輝く無骨な剣。決してこれではない。

 それにアレは湾刀と言うよりは、《曲刀》カテゴリーというよりは。

 結論が頭の中で導かれた同時に時間の流れが元に戻った。

 コボルド王が剣を掴み、俺は地を蹴った。

 

 

「____シンジ!!」

 

 

 多分、同じ考えに至ったのだろう。

 様々な感情を込めながらキリトは俺の名前を呼んだ。

 

 

「あれをなんとかできるのは俺かお前だけだ。なんかあったら頼む」

 

 

 振り向かずに声を荒げながらも言い、俺は走るスピードを上げた。

 でなければ間に合わない。いや、ひょっとしたもう手遅れになるかもしれない。

 アレは……はそれほどまでに危険なのだ。この時点で決して存在してはいけない。

 存在を知る者は例え元ベータテスターと言えど恐らく俺かキリトか一部のプレイヤーのみ。

 現れた場所は、こことは違う旧アインクラッドの第十層。

 現時点で恐らく俺が知る中で最も最強最悪の《スキル》であり、俺が最終日にて手に入れた本当の相棒とでも言うべきものでもあるその名を____

 

 

「ボスを囲め!」

 

 

 ディアベルが周囲の隊に指示を飛ばし、数十人のプレイヤーがイルファングを中心に輪を作り逃げ場を完全に無くす。

 この場面に置いてこの判断は非常に正しい。これにより行動を制限出来るだけでなく、全方向からの一斉攻撃で今までより効率良くダメージを与えることが可能になる。

 事実、最後の一本のゲージは既に三割減少している。

 このまま続ければ三分と経たずに大量の光の欠けらが周囲へと拡散するはずだ。

 そう、通常のコボルド王ならば。

 

 

「ボスから離れろ!! 奴の武器は《曲刀》じゃない!!」

 

 

 ようやく声が届く範囲にまで辿りつき、叫んだ。それに反応した何人かのプレイヤーは攻撃を中断し、こちらを振り向いたが、一人のプレイヤーは既にソードスキルの初動モーションに入っており、体を止めることができずにボスの懐へと向かって行っていた。

 

 

「くそ! ヤベぇ!!」

 

 

 思わず舌打ちをし、警告が間に合わなかったプレイヤーを助けるべく、再び駈けようとした時だった。

 

 

____奴の顔が、コボルド王の顔がほんの一瞬笑ったように見えた

 

 

 思ったが瞬間やつの剣が輝きを発し、身体を垂直に宙に浮かした。それにより一人攻撃を仕掛けたプレイヤーの斬撃を見事に空を切る。

 そして空中にて武器にパワー溜めていた真紅の獣王は重力に従い落下____

 

 

___真下にてソードスキルの硬直による一時的な行動阻害に陥っていたプレイヤーに剣が下ろされた

 

 

 同時に蓄積されたエネルギーが解き放たれ、囲んでいたプレイヤーすらも巻き込んだ。

 俺はギリギリ範囲外にいたが、一歩奥に行っていたら確実にやられていた。

 今の攻撃を受けた者たちは皆、体力を少なくともイエローゾーンまで減らされ、少ないが数人は行動不能(スタン)状態になっている。

 全方向攻撃で尚且つ、これほどまでの攻撃力を有しているソードスキルは俺の知る限りひとつだけ。もう、疑う余地などない。

 

 

____これは《エクストラスキル》である《カタナ》専用ソードスキル《旋車》だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




そういえば《プログレッシブ2》出ましたね。
この作品は基本的には原作通り進みますが、新刊のを書くかどうかは決めていません。
読んでから検討はします。

最後に読者様に向けて。こんな作品にお気に入り登録や感想を送ってくれたり、評価してくれたり、と言うか読んでくれてありがとうございます。心から感謝しています。
皆さんのおかげで第一層もあと一話で終わり、念願のヒロイン出せます。

本当にありがとう!!




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