てな訳で、すっかり更新忘れてました。
申し訳ない。
最近勢いで、もう一作品とか書いているせいで気を取られてしまった。
というのもありますが、単純に作者の実力不足です。
主に。
そもそも、不器用な自分に両立などできないんですよ。
でも、結構好きだったキャラが死んだのに黙っていることなどできなかった。
俺は勢いに任せ、キーボードを打ち続けた。
はい、馬鹿です。
これだから、だんだん読者も離れてくんですよね。
と言うことで、毎度申し訳ありません。
「ん、あれは?」
アルゴと別れ、レストランに向かう途中に通った噴水広場のベンチに見知った少女がいた。
さっきまで俺たちと一緒に行動していたレイピア使いの少女。
彼女は一番片隅の方で黒パンを食べている。
レイピア使いの食べているあの黒パンは、この町では最も安い食べ物で、ある工夫をしなければお世辞にも美味しいとは言えない。
それを食べているってことは、金が無いかもしくは倹約家のどっちかだ。
前者は無いな。
数日間もダンジョンに潜ってた奴が、金に困るなんておかしい。
後者は……。
ありえそうだが、多分違う。
と、すると残りは心情的な問題か。
どれにしても、彼女がこんな所で一人で黒パン食ってるのを見て、俺達だけでレストラン。
ってのもな~。
と、思いながらキリトの方を見ると、意外にもキリトもこちらを向いていた。
その顔つきから、どうやら考えていることは同じらしい。
俺はわざとらしく、咳払いをして
「あーあー。 なんだか急に黒パンが食べたくなったな。 キリトはどう思う?」
「奇遇だな。 俺も丁度食べたいと思ってたんだ」
わざとらしく会話した。
それから俺たちは近くのベーカリーでパンを買い、彼女の元へと向かった。
彼女の元へ行くと、俺たちに気づいたのか鋭い眼差しをこちらに向けた。
毎度、毎度突き刺さりそうなぐらいの眼力だが、流石に少しは慣れた。
「隣、大丈夫か?」
意を決して、声をかけてみる。
すると、意外は彼女にも頷いてくれた。
予想ではバッサリ切られるか、(「精神的に)もしくは黙ってそこから立ち去ってしまうかもしれないと思っていたため、少し安心した。
ベンチには、レイピア使いの隣にキリト、その隣に俺と言った順番になった。
なんだか、少々俺的に席順は残念だが、まあいいか。
俺とキリトは同時に黒パンポケットから出す。
と、_______
「それ、美味しいと思ってるの?」
俺の隣からレイピア使いの声がした。
「え? ああ、パンのことか。 もちろん美味しいぜ。 なあ、キリト!」
「まあな。 ちょい工夫をするけど」
「工夫……?」
意味がよく分からないのか、レイピア使いは首をかしげる。
そんな彼女にキリトはポケットから素焼きのツボのようなものを取り出し、レイピア使いの横に置いた。
「そのパンに使ってみろよ」
キリトの言葉にレイピア使いは一瞬はかりかねている様子だったが、意味に気づいたのか、ぎこちない手つきで操作をして、ツボを《パンに使った》。
すると、先程までのなんの変哲もないパンの上にゴッテリと白いクリームが塗られた。
「これは…… クリーム?」
「その通り! 一個前の村で受けられる《逆襲の雌牛》っつうクエの報酬で、クリアに時間かかるは、牛型モンスターに吹っ飛ばされるはで、あんましやる奴はいねーからある意味中々レアなんだぜ」
「……へぇ~」
レイピア使いがクリームの塗られたパンをまじまじと見ている間に、俺とキリトもパンにクリーム使った。
そして、それで内容量が切れ、ツボは二つとも光となって消えた。
「いただきます!!」
手を合わせ、ご飯前の挨拶をし、一気にパンを貪る。
口の中に程よく、それと言ってしつこくない甘さと、さっぱりとした酸味が広がる。
気づくと黒パンは一分も経たない内に、その形をなくしていた。
ふと横を見ると、キリトも同時に食べ終わったらしく、レイピア使いに至っては俺たちよりも早くに食べ終わっていたようだ。
「……ごちそうさま」
レイピア使いは小さい声でつぶやき、お礼を言った。
それに対し、キリトも「どういたしまして」と答えた。
どうやら食事を一緒に取ったことで、俺とキリトの認識を少し変えたみたいだ。
「ごちそうさま!!」
俺もレイピア使いの後に続き食事終わりの挨拶をし、立ち上がって中央広場の方を見る。
そこには既に多くのプレイヤーが集まっており、《会議》の時間も、あと五分後という所だ。
「そんじゃあ、行きましょうぜ」
俺の言葉と共に、レイピア使いとキリトも立ち上がり、中央広場へと向かった。
□ □ □ □
ざっと四十五人。
これがいまこの場にいるプレイヤーの総数だ。
人数、的には十分とは言えないが、これだけいればまあなんとかなるか。
それからしばらくすると、広場の中央に長身の青髪の男が現れた。
パット見で装備など見るに、かなりの実力者か。
「はーい! それじゃあ、そろそろ始めさせてもらいます!!」
青髪の青年は大きく広場中に届く声で、叫んでいる。
それに対し、集まった一部のプレイヤーはざわめいている。
うん、気持ちは分かる。
恐らくなんでこんなイケメンが、ここにいるかという事で騒いでいるんだろう。
茅場のせいで、全プレイヤーは現実の姿に戻され、ファンタジーのような美男美女の奴はほとんどいなくなった。
それが、現実の姿に戻されて尚、イケメンだと?
ふざけるなああああ。
俺には分かるぞ。
この青髪に対する、みんなの怒りと嫉妬が。
「いや、多分違うと思うぞ」
「えっ、マジで!? というか、なんで俺の心の声聞こえてんの?」
「顔の表情で分かった」
おい、キリト。
顔の表情で分かったっておい。
俺はどんだけ分かり易い奴なんだよ、とツッコミを入れようと思ったと同時に青髪の青年が再び上げた叫び声により打ち消された。
「今日は、オレの呼びかけに応じてくれてありがとう! 知っている人もいると思うけど、改めて自己紹介しとくな! オレは《ディアベル》、職業は気持ち的に《ナイト》やってます!」
ディアベル。
それが俺たち最前線プレイヤーを集めた男の名前だった。
俺の記憶では昔のアインクラッドでは少なくとも聞いたことのない名前。
とりあえず今の時点では、ディアベルが元βテスターの可能性は薄いか。
つか、今頃だけどナイトってなんだよ。
「みんなに集まってもらったのは他でもない。 今日、オレ達のパーティーがあの塔の最上階へと続く道を発見した!!」
ディアベルの発言に、プレイヤーの殆どへと衝撃が走った。
もちろん俺やキリトにもだ。
俺達が今日潜っていたのが(あと、レイピア使い)、十八から十九階だったので、まさかもうそこまでマッピングされてたとはな。
「ここまで来るのに一ヶ月かかった。 それでも、オレたちは示さなきゃならない。 このデスゲームをクリアできるってことを。 第一層の《始まりの町》にいるみんなに!! ここにいるオレ達が!!」
湧き上がるのはここに居るプレイヤーの喝采。
今度はディアベルの仲間以外も拍手を送っている。
そして俺もその一人だ。
「よく言ったぜ、ディアベル!! それでこそ騎士ナイトだぜ!!」
気づいたら先程までの怒りはなく、代わりにディアベルを褒め称える声を連発していた。
この人ならこれからの攻略も指揮を任せられる。
そう思っていた時だった。
「ちょお待ってんか、ナイトはん」
低い声がした。
見ると、空隙の中央にたっていたのは小柄ながらがっしりとしたサボテン……。
失敬、サボテンみたいな髪型の男性だった。
「そん前に、こいつだけは言わへんと、仲間ごっこはできへんな」
唐突な乱入にだったが、ディアベルはほとんど表情を変えずに、まずは名前を名乗るよう言った。
すると、サボテンのような髪型をした男性は広場中央へと行き、口を開いた。
「わいは《キバオウ》ってもんや」
キバオウと名乗るプレイヤーは周り一体を見渡しながら、こちらの方を見て一瞬目を止めた。
ってのは、気のせいか。
こんな奴、俺は会ったことねぇし、名前も聞いたことがない。
キバオウは、十分にプレイヤー達を見渡すと、衝撃的な事を言い放った。
「こん中に、五人か十人、ワビぃいれなあかん奴らがいるはずやで」
キバオウの言葉に、この場のプレイヤー全員に動揺が走る。
嫌な予感がする。
そして、その予感は、ディアベルがキバオウに対して「誰にだい?」と質問したことにより、見事的中してしまった。
「決まっとるやろ。 今までに死んでいった二千人にや!! 奴らがなんもかんも独り占めしたせいで、一ヶ月で何千にも死んだんや! せやろが!!」
キバオウの発言に、四十人のざわめきが一斉に止まった。
恐らくみんなが、キバオウが一体何を言いたいのかを理解したからだろう。
そう、彼が言う《奴ら》とは誰なのかを。
「ベータ上がり共は、このクソゲームが始まったと同時に九千のビギナー達を見捨てて、始まりの町から消えおった。 こん中にもおるはずやで、そんな奴らが。 そいつらに土下座させて、溜め込んだ金やアイテムを軒並み吐き出してもらわな、パーティーメンバーとして命は預けられんし、預かれんとそう言うとるんや」
キバオウの演説が終わっても、誰も口を開くものは居なかった。
多分だが、この中にβテスターはいるだろう。
俺やキリトみたいに。
だが、それでも誰もキバオウに対し無言を決めているのは、自分がβテスターだと知られたくないからだ。
キバオウの行った通りβテスターのほとんどは、デスゲームが始まると同時に行動に移した。
その為、ビギナーの多くは始まりの町に取り残され、僅かに外に出たもののほとんどがソードスキルの使い方さえも知らぬまま死んでいったと聞いた。
その事を恨んでいるプレイヤーは少なからずキバオウの他にもいるはずだ。
下手したら、βテスターだというだけで吊るし上げに合う可能性だってある。
それを恐れてみんな心の叫びを必死に抑えているのだろう。
俺としても、あの時に真っ先に町を出て、ビギナー達を結果として見捨てた事に言い訳をするつもりはない。
むしろ、
だが、________
「ちょっと待てよ」
俺は、立ち上がってキバオウに対し意義を唱えた。
それまで沈黙だった会場が、一気にざわめく。
「なんや、あんた。 なんか文句でもあるって顔やな」
「ああ、大ありだぜ。 キバオウさん」
この日、初めての攻略会議はこうして波乱を呼んだ。
あれ、考えてたのと違うぞ?