泣きながらソロンが叫ぶ。
「頼むから来ないでくれ!ウォルス!!」と。
初めて黒森で聞いた音無き声は、慟哭であったのか、咆哮であったのか、両方であったのか。
あの時と同じ叫び声は、秘めたる魔力と内包し真っ直ぐに私へと向かって来る。いとも簡単に身体を突き抜けた。
出会いという名の過去は鮮やかに私を劈く。
私の最後の覆いをソロンの叫びがずたずたに引き裂いた。
最後の砦はあっさりと落ちた。
残るのは、剥き出しの感情だけだ。その感情は声となる。
「私の最後は、私が愛する者から貰う。」
はっとした表情が私を見つめる。
言わずに抱きかかえたまま滅びを迎えるつもりだった。それをさせなかったのはお前だ、ソロン。
だからお前の心に楔を打ち込む。いや、そんなに大袈裟な物でもないか。
「だからソロンから最後を貰う。私はお前を愛しているから。」
小さな棘、その程度のものだ。
「・・・卑怯だ、ウォルス。」
「ソロン、『何故俺なんだ』と問うたのはお前だろう?だから答えたまでだ。」
「ここに来て、それを言うのかよ!!」
「何とでも言え。私は打ち明けるつもりは毛頭無かった。」
抱かれてしまえば、男と女になってしまえば、ただそれだけだ。他に愛しい存在が現われたら私という存在の上に新たな女性が上書きされるだけだ。
だが、親子であり、師弟であり、男と女であれば、全く違ってくる。
街で仲のいい親子を見れば、お前は私に拾われてから過ごした日々を思い出す。
今、王子に魔力の制御を指導してる行為そのものが、ソロンが私から指導を受けた過去を蘇らせる。
愛しい女との睦言が、沈んだ私の存在を浮上させる。
そう、事有るごとに私という棘はお前に痛みをもたらすのだ。
もう滅して存在しない私が、お前を何時までも何処までも傷つけ続ける。
卑怯で、唾棄すべき、だが一番不死者らしいやり口で、お前が生きている限り棘が抜けない限り心に痛みを与えつ続ける。
秘めたままで滅びを迎えるつもりだった。しかし、お前は全身全霊で求めた答えを私から引き出した。お前が求めた答えを口にしたからには、私が愛したと言ったからには、私以上の存在など、認めはしないし、存在自体させぬぞ、ソロンよ。
求めた答えは棘となって心に刺さる。
お前が求め、私は応えた。だから次は私の求めにお前が応えよ。
「滅ぼせ、私を。」
そんな悲しそうな顔をするな。
お前は太陽の様に笑っている顔が一番だ。
笑っている顔が一番好きだぞ、
「ソロン。」
――――バーン・ストーム――――
私の足が闇から日の射す場所へ出て数歩進んだ時、その魔法が発動した。