私はソロンが完成させた炎の中にいたのだが、ふと視線を感じて頭上の空を見上げる。
確かめるまでもない、妹が天空城から此方を伺っていた。
丁度いい。手間が省けた。
私は吹き上がる炎に乗じ、渡すつもりであった愛用の髑髏の杖をJ.D.に託す。
私の手を離れた時点であの杖の所有者はJ.D.になり、髑髏をどう扱うかは妹次第だ。
視線を空から私の先に戻すとソロンとマイカがいたのが見えた。
マイカが・・・あの子がこの世の終わりの様な声で叫ぶ。
そうだな、マイカなら連れて行く事が出来る。
最愛の者ではないが、とても大切な存在だから。
私はマイかに手を差し伸べながら「来るか」、と問うた。
それは同時にお前は私にとって最愛の者ではないという残酷な事実をマイカに突きつけたことになる。
だからこそ強制ではなく、選択させる。
こちらに来るも来ないもマイカの自由なのだから。
道連れを望むか望まないか。同じ道を連れて行くのであれば、私を望んだものと逝きたい。それは不死者であろうと人間であろうと変わらない。
マイカはすぐさま変化して、元のヤモリの姿で私に駆け寄った。
残酷な事実を突きつけたにも関わらず、真っ直ぐにひたむきに此方へとやって来る。
可愛いな、マイカは。
賢いな、マイカは。
炎だけではない熱を感じながらマイカの姿をずっと目で姿を追い、肩まで登って来たのを確認して、私は改めてソロンと向き合った。
ソロンは今にも泣き出しそうな顔をして、肩で息をしている。
表情を見ていると、出会ったころの、幼い姿を思い出した。
大人になっても、一人前になっても、いつまでたっても可愛い子供で。
だが同時に愛おしい男性で、何より大切な存在なのだと今更ながらに思い知る。
人畜無害な顔をしながら、平気で私に棘を突きさす男でもある。
最後にソロンの大好きな笑顔が見たかった。
明るく笑う姿を目にする度にと小さなぬくもりがぽつぽつとおちた。
だがしかし、この状況では笑顔を望むのは無理か。
ならば、私が微笑おう。
愛する存在に見守られ、大切な者が側に居る。
私が存在した証の杖を妹に託す事が出来た。
これ以上の最後は、ない。
だから、微笑おう
誰より何よりソロン、お前の為に。
お前に残してやれるものは、ほんの僅かだ。
だが、我が子であり、我が弟子であり、私の最愛の男、ソロン。
賢者の資質こそがお前の道標となる。だがら歩め、賢者の道を。
私は微笑った。
「賢者の術に、祝福を。」
炎の中で細い祝福の文字がきらきらと踊り、文字の向こうに見えるソロンの姿。
あぁ――――
私の心と身体が崩れる。
支える者は誰も居ない。