八重に連なる想い(旧:多分かんこれ) 作:キッド@水雷戦隊司令
だけど戦闘描写は無いという不具合。
※9/26 作者の能力に不具合が合った為、一部変更と修正を入れました。
「時雨に夕立、一体」
「言いたいことは分かるけど、後にして欲しいな」
「そろそろパーティーの時間っぽい」
「お、おぬし達・・・」
「痴話喧嘩は何も無い時にして欲しいっぽい」
「ち、痴話喧嘩じゃないぞっ」
「第三者から見れば似たようなものだね」
言われて顔が熱くなるのを感じた。
チラッと初春を見ると、やはり同じように顔を真っ赤にして俯いている。
「提督さんと初春ちゃんはここで待ってて欲しいっぽい」
「ボク達で迎撃してくるよ」
迎撃する、と静かに時雨が言う。
夕立はぴょんぴょん飛び跳ねているが、今にも海に飛び出しそうな勢いだ。
私は頭のスイッチを切り替える。
冷静になれ、敵の規模はまだ完全に分からない上にこちらは駆逐艦が2人のみ。
このままだとどちらか、下手をすると二人とも戻ってこない可能性もある。
あの島で私は何を学んだ、どうすれば誰も沈ませずに済む・・・考えろ。
「二人とも、少しだけ待ってもらえないか」
「なんだい?余り時間が無いんだけど」
水を差された、もしくは邪魔されたと感じたか・・・少しトゲのある言葉が返ってきた。
が、今は気にせず進めよう、確かに時間は余り無い。
私の予想が合っていれば───
「なあ・・・」
「皆まで言わずとも良い、見えておる」
目を閉じたままで、そう答えるのを聞くと頷く。
よし、それなら手は打てるだろう。
「じゃあ、ちょっと移動しよう」
「どこにいくっぽい?」
「あそこの砂浜までちょっとね、ここじゃ絵が描けないから」
「そういえば、初春は歩きながらでも大丈夫かい?」
そう尋ねると、少し困ったような顔をして私を見る。
「実を言うと視てる最中は自分の足元が見えんのじゃ」
「そうなのか、なら私が誘導しよう」
そういうと、初春の手を引いて歩き始める。
「ちょっ」
「じゃ、砂浜に着いたら敵の数と陣形、後はこの近辺の地形を教えてくれ」
歩きながら初春に欲しい情報の種類を伝えていく。
「それと、もし分かるなら敵の艦種も分かれば教えてもらえるかな」
ふと気付くと耳まで真っ赤になっているのに気付く。
そんなに力を入れないと視れないのだとしたら、多用はさせたくないな。
私は、初春が鎮守府付近の地形を説明しながら図を描いていくのをじっと見ていた。
敵は駆逐級2隻軽巡1隻、恐らく偵察隊だろう。
まだかなり距離があるらしく、最初に記された敵艦の印は図の中心から大きく外れている。
そしてこの辺は、2つの半島が平行に近い状態で生えているのだが、上から見ると丁度U字状になるらしい。
鎮守府はその一番奥だが、私達が今いるのは左側のUの先だ。
半島の沖合い数kmの所には島がいくつか点在しており、見通しは悪い。
これならば・・・。
「みんな、ちょっと聞いてくれ」
案はまとまった。
ぶっつけ本番だけど何もせずただ見ているだけよりは遥かにマシだ。
「何か作戦があるんだよね」
いつも通りといった様子の時雨。
「んふっ、何するの何するの?」
目をきらきらさせてこっちを見ている夕立。
「わ、わらわは海に立てぬぞ?」
一通り砂に絵を描き終えた初春は、不安そうにこちらを見ている。
私は何も言わずニッコリ笑って頭に手を置くと軽く撫でる。
「大丈夫、初春がいるから出来る事なんだ」
「わ、わらわが役に立つと申すのか」
「うん、頼りにしてるよ」
「な、何をすれば良いのじゃ?」
「あー、いいなー、あたしも撫でて欲しいっぽい」
ほっぺを膨らませてた夕立がこっちを見ている。
「無事に終わったら、後で一杯なでてあげるよ」
「やった!最っ高に素敵なパーティーするっぽい」
「夕立ちょっとうるさいよ」
「いたっ、ぽい~・・・」
「あはは」
時雨にチョップされた夕立がおとなしくなるのを見て、続きを話す。
今のでみんなの緊張が少しほぐれたように見える、夕立のあれは狙ってやってるのかな?それにしてもいいコンビだ。
「それで、ここの正面に島があるだろう?」
がりがりと、落ちてた枝で図の一部に丸をつける。
「そうだね、あれのおかげで沖まで見通せないんだけどね」
「だから、今回はそれを逆手に使う」
「えっ?」
「つまり・・・こう動いて」
今居る砂浜の位置から海岸沿いの内側に線を引き、半島の先端に近い森の辺りに丸を描く。
「まずは全員でここの辺りの森の中に待機する」
「全員で?僕らは海に出ないのかい?」
「歩くっぽい?」
「そうだ、陸地を移動して、そのまま陸上に身を隠すんだ。なるべく木や草が繁っている所がいいね」
「そんな事したら、撃たれた時に回避が出来ないよ」
「陸の上だと思うように動けないっぽい」
もっともな反論だと思う、けれど・・・
「だけど、陸上からでも砲撃は出来るだろう?」
「それはそうだけど、訓練時以外では撃った事ないよ」
「それって逆に言えば、訓練と同じように狙って撃つ事は出来る、よね?」
少しだけ間を開けて言葉を続ける。
「だから二人はこの位置で射程ぎりぎりから砲撃、撃ったら最初に言った島の影になるように海に出て、そのまま島へ向かってくれ」
「そんな距離じゃいくら撃っても当たらないっぽい」
口を尖らせる夕立。
「普通ならな、だけど今は初春が居る」
何の補助も無しに射程ぎりぎりを撃てと言われれば、確かに狙いを付ける事すら難しいだろう。
だが・・・。
「そこで初春の出番だ」
「な、なんじゃ」
今度は半島を中心とした円を描きつつ言う。
「初春は敵の動きをよく見て、この円・・・つまり二人の主砲である12.7cm砲の最大射程18,445mで狙う前提で火器管制支援を頼みたいんだ」
「そうか」
時雨が私の意図に気付いたらしく頷く。
「初春の目を使ったレーダー観測射撃、だね」
「難しい事を言いおるのう」
眉根を寄せながら初春が呟く。
「無理はしなくて良い、夾叉できれば万々歳、近弾が出れば十分だ」
図をじっと凝視したまま目を逸らさずになにやら呟いていたが、自分の中で結論が出たのだろう。
「何事もなさねばならぬ、やってみるぞ」
数、艦種共に不利な状況だけどこちらには初春という最高の「目」が居てくれる。
「島の裏側から駆逐艦に撃たれるなんて、普通予想しないよ」
それを聞いた私はにやりと笑う。
「正面からぶつかり合っても被害が増えるだけだ、なら意表をついてしまえばいい」
「海戦の常識なんてものは、丸めてゴミ箱にぽいだ」
3人ともが揃って目を丸くする。
「ぷっ、あはははは」
「夕立の言ったとおりだ、変な提督だよ」
「んふっ♪でしょでしょ~?」
「そうじゃの、この提督は根本的なところが他所の提督と違うようじゃ」
「それで、その後はどうするんだい?」
時雨が軽く続きを促すが、その目は真剣そのものだ。
他の二人も引き締まった表情をしている。
それを見て軽く頷くと続ける。
「二人が島に着いたら今度は雷撃だ」
そう、最初の砲撃はこの為の囮。
駆逐艦二人による死角からの同時飽和雷撃が本命だ。
「魚雷の予測位置を割り出してもらう、そして初春の合図を待って二人は雷撃だ」
「雷撃は面で狙うもんね、大体の位置と時間さえ教えてもらえれば大丈夫だと思う」
「それでそれで?その後はどうすればいいっぽい?」
「雷撃後はすぐ島に上がり、今度は島の反対側から海へ出て欲しい」
「島を横断するのかい?」
「その通りだ」
「まるで、話に聞いた事のある陸軍さんっぽい」
「そうだね、数の上でも戦力的にも劣る方が優位に戦うにはゲリラ戦が有効だからね」
「上手くいけば雷撃の時点で全滅、最悪残っていても中大破した軽巡1隻のみだろう」
改めて二人の顔を見る。
「なので、海に出た後は沖に出ないよう待機、合図があれば背後と側面の二方向から突撃してもらう」
「十字砲火の形に持っていくって事だね?」
「うん、そういうこと」
「提督、そろそろ行かねば間に合わなくなるぞ」
「お、もうそんなに近づいてきたのか」
「少し速度を上げたようじゃ、二人とも通信はいつも使ってるインカムで良いのか?」
「そうだね、寝てる3人を起こすと悪いから専用チャンネル作ろう」
「了解っぽい」
「用意はいいかい?」
3人の顔を順番に見る。
連装砲を背中に戻し、インカムの具合を確かめつつ海を見る時雨。
同じく連装砲を背中に戻し、背伸びをしている夕立。
もう既にシミュレーションでもしているのだろうか、口の中で何かを呟く初春。
現時点で、もっとも被害が少なくなるだろう策は考えたが、不安はどうしても付き纏う。
信じろ、彼女達の力を私が信じなくてどうする。
「さあ、みんなの力があれば絶対勝てる、絶対に全員生きて戻るぞ」
賽は投げられた、もう後には引けない。
「では、作戦開始だ」
「時雨、いくよっ」
「駆逐艦夕立、出撃よ」
「初春、推して参るぞ」
UAがいっぱい付いてて、こんな拙い文章なのにたくさんの人が読んでくれてる事に感謝感謝。
ただ感想が見事なまでに全く無いのは、つまらんから書くに値しないからなのかそれとも続きをはよ書けという催促なのか・・・
そして、改めて一話から読み返してみて風呂敷広げすぎてる感・・・。
なんか微妙なフラグがそこら中に埋まってる気がします。
ヤバい、回収しきれるかな・・・。