八重に連なる想い(旧:多分かんこれ) 作:キッド@水雷戦隊司令
ただし、戦闘描写があるとは言っていない。
※9/26 作者の能力不足の為、一部修正及び内容の変更をしました。
「後200秒ほどで予定通りの地点じゃ」
「そうか、進路に変更は無いな?」
「うむ、提督の読みどおりこちら側に回り込むルートじゃ」
敵は私が予想したとおり、今居る所に近い方のルートを通って来ているらしい。
まず第一関門は突破だ。
「それじゃ、二人はそろそろ砲撃用意を頼む」
時雨と夕立はお互いに顔を見合わせるとこっちを向いて頷く。
「任せてよ」
「絶対当ててやるっぽい」
二人は茂みから顔を出さないようにしながら数メートル先にある少し大きめの岩陰まで前進すると、連装砲を取り出し構える。
「いつでも準備はいいよ」
「こっちもいいっぽい」
薄暗がりの中、なるべく小声でやり取りをする。
「よし、それじゃ初春頼むぞ」
「いよいよわらわの本領発揮じゃな」
そういうと初春は目を閉じ、何かに集中するかのように口を閉じる。
「仰角最大・・・下げ1、左1.4・・・」
インカム越しに砲を構える二人に向けて細かく修正を出していく初春。
彼女には、敵の動きだけではなく二人が砲を構えている角度まで見えているようだった。
「仰角そのまま、夕立左へ0.3・・・それでよい、そのままじゃ・・・」
「砲撃、数え3、2、1、今!」
「てえっ!!」
「て~っ!!」
ドドンッ!と二人の連装砲が2門ずつ同時に火を噴く、そして第2射・・・。
そこで砲撃を止めた二人は即座に立ち上がり、ゆるく下る地面を駆け出す。
それを見送った後さっきまで二人が居た岩陰まで初春を連れて移動する
ちらっと横を見るとさして暑くも無いのに彼女の顔にはじっとりと汗が滲んでいた。
「大丈夫か?」
「平気じゃ」
閉じていた目を薄く開けこっちを見ると、軽く微笑んだ後再び目を閉じる。
「そろそろじゃ、弾着3、2、1、今!」
「命中弾3、夾叉1、近4」
「駆逐級轟沈1、中破1、軽巡は残念ながら小破未満じゃ」
「凄いな・・・」
淡々と弾着結果を言葉にする初春と対照的に、私は驚いていた。
実際に撃った二人の砲撃精度も確かに凄いのだろうが、ピンポイントに着弾地点を割り出し、二人の射撃管制をやってのけた初春の能力にはただただ驚くばかりだ。
しかし、長時間視続けるのは相当な体力と集中力を消耗するのだろうか、あるいは艦娘の身に深海棲艦の能力を上乗せするという相反する能力を扱うにはリスクがあるのかもしれない。
初春が既に息が荒げているのを見て私は早まったことをしたかも知れないな、と内心臍を噛んだ。
「おい、大丈夫か?あまり無理は・・・」
「まだじゃ・・・、わらわはまだやれるぞ?」
言いかけた言葉を切られる、私を見る目は止めるなと言っているようだった。
「そうか、ならせめて支えさせてくれ」
膝立ちの状態を崩させ、岩にもたれて座る私の脚の上に乗せ、身体を寄りかからせる。
「な、何を!?」
「座っていれば少しはマシだろう?」
「・・・提督に腰掛ける等前代未聞じゃぞ」
「俺は見ている以外何も出来ないからな」
と自嘲気味に呟く。
「全く・・・」
諦めたのかはたまた疲労の限界だったのか、私に身を預ける。
ふと手に触れる感触があるので目をやると、手を握ろうとしているように見えたので握り返してやる。
その瞬間身体が一瞬こわばるが、直ぐに力みは抜けていったようだった。
「夕立、もう少し岩の側におったほうが良いぞ」
彼女は一体、どこまで視えているんだろうな・・・等と思いながら彼女を揺らさないようゆっくりと座り直す。
二人が砲撃し終わってから大分時間が経った気がするが、未だに雷撃圏に入ったとは言わない。
引いてくれたのなら万々歳なのだけど、そうは問屋が卸してくれるとも思えない。
「敵は?」と短く聞くと「足が鈍っている」らしい。
おおよそ初期の半分程度・・・損害による速度低下だけではなく、警戒しつつ航行しているのだろうという事がありありと見て取れた。
「よいか二人とも、そろそろじゃぞ?」
私には見ているだけしか出来ない。
提督になってもう何度も味わったこの感覚だが、未だに歯痒いとしか言いようが無い。
「少し力を緩めてくれんか?」
言われてふと現実に引き戻される。初春がこっちを見ながら眉をしかめていた。
知らず知らず、握る手に力が入ってしまっていたらしい。
「す、すまん」
慌てて力を緩める。
「敵艦隊乙字運動・・・転舵1、2、1・・・速度・・・」
また視る事に戻ったのだろう、引き続き呟くような声が聞こえる。
ふと気付くと息が少し落ち着いているように見えた。
身体を支えてやるというのは案外役に立ったのかもしれないな、と少し嬉しくなる。
「・・・雷撃戦用意!」
初春の口から鋭く発せられる一言。
それを聞いて、いよいよかと私も身構える。
このタイミングでどれだけ被害を与えられるかが全てだ。
もし仮に失敗してみんなが沈む事態になれば・・・。
その考えを頭を振って追い出す。
私が彼女達を信じてやらずにどうする、と己を叱り付ける。
「全魚雷発射管16射線を飽和状に・・・」
なおもやり取りを続けているのを聞きながら、ふと先ほどの砲撃を思い出す。
艦娘っていつも戦闘中これだけの事を考えているのか・・・?
そしてついに、その時が来た。
「魚雷発射用意・・・数え、5、4、3・・・」
ごくり、と息を呑む。
「・・・2、1、今!!」
「命中までおよそ30秒・・・」
運命の矢は放たれた・・・私は祈るような気持ちで目を閉じる。
「25・・・20・・・15・・・」
初春の口からはただ時間だけが呟かれるのみ。
永遠とも思える30秒だったが、その時間にも終わりが訪れる。
「3・・・2・・・1・・・今!」
今という声は突如鳴り響いた轟音によって途中でかき消された。
ズドン、とまるで地の底から響くようなすさまじい轟音が立て続けに5つ。
と、ほぼ同時に爆発による余波なのだろう、地面が揺れる。
と、不意に腕に重みがかかり反射的に力を入れ支える。
腕に抱きかかえるような形になってしまった初春はというと、滝の様に汗をながらこちらを見上げ、薄く笑みを浮かべていた。
「提督、作戦完了、じゃ・・・」
「二人とも、追撃はいらぬ・・・」
そこで初春の身体からは完全に力が抜けてしまう。
「おい!初春!!」
揺さぶっては不味いかもしれないと思い慌てて声を掛ける。
「初春、しっかりしろ!!」
静まり返った夜の帳の中で、ただ私の声だけがあたりに響いていた。
艦これでチートってこういう事かな、というのを入れてみました。
この作中でのチート勢はもう一人居ますが、今回はぐっすりお休み中です。
ここでネタばらしを一つ。
察しのいい読者さんにはもうバレバレかもしれませんが、秋の大規模移動を見てチート→BANとなったサーバーの空き部分に移動する事になったらどうなるんだろう・・・というのが今回筆を取ろうと思った原動力です。
チート、ダメ、絶対!!ですね。
「ちょっと!私の出番が殆ど無いじゃないの!まったくありえないわ!」
やばっ、それではまた次回っ(逃