八重に連なる想い(旧:多分かんこれ) 作:キッド@水雷戦隊司令
ええ、ツンデレは好物の筈なんですけどね・・・
「何なのよアイツ…」
溜息をつきつつ、寝返りを打つ。
大本営は提督の教導をする際に「艦娘に対して情を持つな、兵器として扱え」と教えている。
事実、私達は艦であり兵器なのだからそれは当然だと思う。
だけどアイツは、いの一番に自分たちは仲間だと言いきった。
艦娘同士なら、同じ戦場に立つのだから仲間だと言われればそうだと言えるけれど、司令官と艦娘が仲間だと言われてはいそうですかと言うには違和感しか感じない。
司令官が命令を出し私達はそれに従う、それが軍というものじゃないの。
艦娘を大事に扱う司令官はそれなりに居るけれど、同格として扱うなんて前代未聞だわ。
それに・・・
「軽巡や駆逐艦に対して遠征行かなくていい、なんてねぇ…」
夕飯の後に龍田の部屋で聞いた内容を聞いて、思わずくつろいでいた椅子からずり落ちてしまった事を思い出す。
背中は擦るわお尻は打つわで、すっごく痛かったんだから。
って、今大事なのはそこじゃないわ。
龍田が言うには、アイツを試す為に投げかけた問いに対して「真顔で返された」とか。
それなら、私たちの身体を狙ってるのかしら。
だけどそういう嫌な感じの視線を向けられた記憶は、今のところ無い。
「どうにもすっきりしないわね・・・」
考えれば考える程に分からなくなっていく事に、苛立ちを覚える。
おかげですっかり目が冴えて寝れなくなってしまった。
「何で私がこんな事で悩まなきゃいけないのよ」
生来の真っ直ぐさが起因しているのだが、知らぬは本人ばかりなりといった所である。
「こうしてごろごろしてても寝れそうにないわね・・・」
布団から抜け出し、着ていた寝巻きを脱ぐといつもの制服に着替える。
いくら夜中で自分以外誰も居ないとはいえ、流石に寝巻きのままで外に出るのは恥ずかしいし寝巻きが汚れるのも嫌だ。
自分の中でかなりお気に入りの一着なのだ。
わざわざ靴を履くほどでもないか、とサンダルを引っ掛けて部屋を出る。
「あら、悪くないわね・・・」
ふと廊下の窓から外を見ると、ちょうど雲間から月明かりが差し込んでいた。
淡く光る月を見ていると、幾分か気持ちも落ち着いてくる。
「ふう~・・・」
一つ大きく息を吐くと、再び廊下を歩き始める。
「ん?」
ほんの一瞬、視界の端を影が横切る。
昼間なら鳥だろうし鎮守府の山側なら獣の類だろう。
だけど、そっち側は港だ。
「変ね・・・」
影が映った方を見ても、そこには何も見えなかった。
勿論獣が迷い込んだという可能性も無い訳では無い。
だけど・・・
「見に行って気のせいだったらそれでいいわ」
そう呟くと港に向けて歩きながら考えを巡らす。
もし迷い込んだ獣なら鎮守府の外に出してあげないと飢えてしまう。
ここに人間はただ一人を除いて居ない。
居るのは私を含めた6人の艦娘と、先日新しくやって来た提督だけ。
他所みたいに鎮守府で働く人は居ないし、深海棲艦が陸に上がるなんて話はそれこそ一度も聞いた事が無い。
つまり、さっきのは迷子の獣かそうでなければ私の気のせいって事ね。
「うん、のんびり散歩でもしながらでいいわね」
そう結論付け満足したように頷くと、歩く速度を少し落とす。
「ふう・・・」
あれから港までずっと歩いてきたけれど、何も居なかった。
港湾部に着いてからは月明かりを頼りに隙間を時々覗いてみたりもしたけれど、ねずみ一匹見かけなかった事に安堵と不満半々といった感じのため息をつく。
「ねずみ、居なかったわね・・・」
愛くるしい程にまん丸な黒くて小さな目。
細くてちょろちょろ動く尻尾。
驚くほどの俊敏性を発揮する小さな脚。
においを嗅ぐ時にぴくぴく動く小さな鼻と髭。
滅多に見る事はないのだけど、偶然見かけた時は驚かせないようにじっと眺めるのが密かな楽しみだった。
「あれからだいぶ時間も経ってるし、そろそろ戻った方がいいかしら」
足元に映る自分の影が、最初は長く伸びていたのが今はもう自分の周りだけにしか映っていない。
空を見上げると、月が自分の真上に近い所まで昇ってきていた。
後少し、クレーンの陰だけ見たら戻ろう。
そう自分に言い聞かせ再び脚を動かし始めた時、今までの静寂を引き裂いて辺りに轟音が響き渡った。
この音を私は知ってる。
「魚雷の爆発!?」
戦闘!?敵襲!?今までこんな事無かったのに!
ここが鎮守府として機能していたのはもうかなり昔の話だ。
比較的大戦初期であり、鎮守府近海での戦闘も頻繁にあったと聞いている。
だけど!!
こんな廃墟と言っていいような所で何で戦闘なんか!
何が起きているのか確認しないと。
真っ直ぐ海に行こうとして、艤装を纏っていない事を思い出す。
「ちっ・・・ありえないわね」
音のした方へ走り出しながら毒づく。
艤装を纏っていない状態だと、海に出ても速度は出ない。
疲れるけど、陸を走った方がマシだわ。
岸壁沿いに音が聞こえてきた半島へ向けて走っていると、はるか遠くから人の声が聞こえたような気がして、足を止めて耳を済ませる。
「───!!」
間違いない、人の声・・・それも男の人の声だ。
一帯どこから・・・?
少し伏せていた顔を上げ、声のする方向を探す為に辺りを見回すが、周囲の山や島に反響してるのか非常に分かりにくい。
尚も注意深く耳を澄ませると、正面の半島の方から聞こえてきているように思えた。
「あっちね」
再び走り始めると、遠くに人影らしきものが見えた。
「あれは・・・?」
遠目ではあったが、月明かりの手助けもあって辛うじて判別が出来た。
「何でアイツが?」
こんな夜中に半島で、何をしていたというのだろう。
走るのを止め、少し早足で歩きながらアイツを見ると腕に何かを抱えている。
アイツは私にまったく気づいてない様子で、腕の中の何かに向けてしきりに話しかけているようだった。
「・・・っ!!」
───アイツが抱えているのは!!
それに気付いた私は、一瞬で頭に血が上るのを感じる。
そして無意識に走り出していた。
あれは・・・いや彼女は・・・!!
力いっぱい走ってアイツの前に立った私は───
息を整える間もなく右手を振りかぶり───
力いっぱい振りぬいた───
ぱあん!!
辺りに乾いた音が響き渡る。
「アンタ!お初ちゃんに何したのよ!!」
なんていうか、己の文才の無さにちょっと自己嫌悪。
今回書いては消しての繰り返しになった為過去を振り返ってみたら、そっちも相当酷かったというオチです。
ある程度の矛盾や不具合はしょうがないと思っていたんですが、ここまで滅茶苦茶な内容になっているとは思いませんでした。
なので、過去回にちょっと手直しというか大幅に修正を入れました。
ストーリーの大筋そのものは変わっていませんが、細かい話の流れや台詞、表現等結構変わってますので、話の印象も変わってしまった可能性があります。
この場を借りまして、読んで下さっている皆様に深くお詫び申し上げます。