八重に連なる想い(旧:多分かんこれ) 作:キッド@水雷戦隊司令
倍近くなってしまいました・・・
「・・・と、これで大体全部だよ」
私は思い出しながら、3人に向けて1つずつ順を追って説明していった。
そして私の説明では言葉が足りなかった所を、時雨と夕立が補っていく。
全て話し終えた時に、部屋にある時計がボーンボーンボーンと鳴った。
何も言わずに聞いていた3人だったが、よく見ると龍田は唇を固く結んでおり叢雲は顔色が悪い。
五月雨に至っては自分の身体を抱え込んで震えている。
只事ではないと感じた私は五月雨に声を掛けた。
「どうした五月雨、どこか具合が悪いのか?」
しかし私の問いに対して五月雨の返事は無く、横から別の声が上がる。
「ちょっといいかしら~」
それは龍田だった。
「ん?あ、ああ」
「提督は、初春ちゃんの事はもう知ってるわよね~」
「初春本人から聞いたし、自分の目でも見た、そして何より私達は彼女に助けられたんだからな」
「結果的にはそうね~、じゃあ五月雨ちゃんと初春ちゃんは二人ともここに所属していたって事は知ってるかしら~」
「二人ともここに?・・・まさか!?」
ここは実験場だと初春は言っていた。
自分たちは実験の材料にされていたのだと・・・。
という事は・・・
「そのまさかよ、そして貴方にもう1つ質問」
とても真剣な表情で私に問いかける龍田。
「の前に、みんなに聞いておきたいわ」
「皆まで言わずとも分かる、わらわは賛成じゃ」
「私も大丈夫っぽい」
「僕も平気だよ」
「そうね、少なくとも屑ではなさそうだし」
好意的あるいは懐疑的ながらも龍田に賛同する4人に対し、五月雨だけは言いよどむ。
「わ、私・・・は・・・」
「五月雨ちゃんが少しでも嫌なら無理に言わないわ、大丈夫よ~」
「違うんです・・・本当は違わないのかもしれない・・・でも・・・」
「なぁに~」
「初春ちゃん・・・」
「何じゃ?」
「その・・・言う時、怖く・・・無かったの?」
「確かに、拒絶されたらどうしようという思いはあったのう・・・じゃがな」
「うん・・・」
「こやつなら大丈夫じゃろうという予感もあったんじゃ・・・」
「予感・・・?」
「こやつの目がな・・・わらわ達と同じような、悲しみと絶望を背負った・・・そんな目をしておる」
その一言を聞いたとき、私はドキッとした。
初春の私を見る目が、まるで心の中まで見えているぞ言っているような・・・そんな錯覚にさえ陥った。
「じゃから、わらわはもう一度だけ信じてみようと思ったんじゃ」
「そっか・・・」
「五月雨、これで足りたかや?」
「うん・・・」
そして再び静寂が訪れ、部屋にはただ時計の時を刻む音だけが響き渡る。
「龍田さん・・・お願いします・・・」
「そう、本当に・・・いいのね?」
「はい」
それは耳を澄ませてないと聞こえないくらい小さな声だったが・・・。
そのやり取りを、私はただ黙って見ているしかできなかった。
「それじゃ、これから凄く大事なことを聞くわ」
龍田の声は悲壮感さえ受け取れるくらい真剣そのものだった。
「初春ちゃんや五月雨ちゃんがその特別な力を使いすぎちゃった場合、提督はどうなると思う?」
「力が暴走して、身体が耐え切れなくなり命を落としてしまう・・・じゃないのか?」
「残念ながら違うわ~」
龍田が目を閉じて首を左右に軽く振る。
そして、龍田の口から告げられた内容に私は目を見開き固まる。
「二人は、いずれ深海棲艦になってしまうのよ・・・」
「なん・・・だって・・・」
そして龍田から続けて発せられた言葉は、文字通り私を絶句させた。
「だから、私と叢雲はここに居るのよ・・・二人が変わり始めた時に殺す為に・・・」
「あの・・・」
二の句が継げない私に声を掛けたのは、なんと五月雨だった。
「初春ちゃんと私が、二人にお願いしたんです・・・」
「なっ・・・」
仲間に自分を殺すように頼む。
そんなの、どちらにとっても地獄・・・絶望しか残らないじゃないか・・・。
「この鎮守府が放棄された時には、もっとたくさん艦娘が居ました・・・」
ぽつり、と話し始める五月雨。
昔の事を話してくれているんだなと感じた私は、黙って聞くことにした。
「みんな、凄く仲が良かったんですよ・・・?」
私の方を向いてそういう五月雨の顔は今にも泣きそうな表情のまま薄く微笑んでおり、それでいてどこか昔を懐かしむような口ぶりに、私は胸を締め付けられるような思いがした。
散々身体を弄くられ艦娘とはとても言えない様な状態にされた挙句司令官は居なくなり、補給船は途絶えた。
それでも仲間と一緒ならと出撃も無く残されていた資材を細々と使ったり、敷地内にみんなで小さな畑を作って裏手の山から食べられそうな野菜の種を拾ってきて植えたり。
効率が悪いからと誰も行かなかったような遠征にこっそり行ったり。
「そうやって、みんなのんびりと過ごしていたんです・・・あの日までは・・・」
あの日までは───
そう繰り返す五月雨の肩は震えていた。
「五月雨」
名前を呼ぶと、恐る恐るといった様子でこちらを見る。
「そんな所で立って話すのはとても疲れるよ、ここに座りなさい」
そう言って手を差し伸べると、困惑したのだろう周りに助けを求めるような顔を向ける。
「五月雨、提督は暖かいぞ?」
そう言って五月雨を促したのは初春だった。
「本当に、いい・・・んですか?」
そう、恐る恐る私を見上げながら尋ねる。
「勿論いいに決まってる、さあおいで」
そう言って両手を差し伸べると「ありがとうございます・・・」と言って私の手を取り隣に腰掛ける。
「本当だ・・・凄く暖かいです・・・」
私の手を握ったままそういう彼女はとても愛おしい存在に思えた。
「こんなに暖かいのは初めて・・・」
しばらく私の手を握ったり撫でたりしていた五月雨だったが、気持ちが少し落ち着いたのか再び話し始める。
「あの日、私と一番仲の良かった友達が、変わっちゃったんです・・・」
ふと気が付くと、私の目の前には無かった筈の湯飲みがあり、中からは湯気がうっすらと立ち上っていた。
辺りを見回すとぷいっと横を向く辺り、叢雲の仕業だとバレバレだった。
これは後でちゃんとお礼を言っておかないとな。
「その子とは同じ部屋だったんだけど、その日は朝から少し眠そうだったから、特にすることも無いし寝てていいよって言って部屋を出たんです」
だけど、と続ける五月雨。
「どうしても気になって、もしかしたら具合が悪いのかなって思って・・・」
部屋の前まで戻った時に、うめき声ともうなり声とも言えない様な声が聞こえたんです、と。
「それで凄く嫌な予感がして慌ててドアを開けて中に入ったら、ベッドの上に居たのは・・・身体の半分ぐらいは元の姿のままで、残りが深海棲艦へと変わった、姿の・・・友達でした」
当時の様子を思い出して悲しみを抑えられなくなったのだろう、言葉の最後の方は嗚咽交じりで上手く話せなくなっていたので空いた方の手でそっと背中を撫でてやる。
「五月雨、無理はしなくて良いよ」
「いえ、話、させ、て、くださ、い・・・」
ひっく、ひっくと咽びながらもそういう五月雨。
余程の覚悟で話す事を決めたんだろう・・・ならば全部受け止めてあげるのが私の務めか。
「分かった、でもゆっくりでいいからね?」
そういって再び背中を撫でてあげる。
「ありが、とう、ございます・・・」
そう言って、五月雨が再び話し始めた内容は余りにも悲惨で凄惨で、筆舌に尽くしがたいものだった。
深海棲艦に変わっていく最中も本人の自我があった事。
変化していく最中ずっと、自分を殺してくれ、自分をこんな姿にした人間への恨みと自分だけが一人深海棲艦に変わってしまう事への絶望に心が飲み込まれてしまう。
そして、みんなを自分の手にかけて殺したくは無い・・・と泣き叫ぶ友達を見るに耐えなくなり、ひたすらに謝りながらその友人を自分の手にかけたこと。
音を聞きつけて集まってきたみんなと、一緒になって泣いた事。
その後も同様に、一人・・・また一人と同じ道を辿っていった事・・・。
だんだん人数が減り、いよいよ初春と二人だけが残された時、どちらが変わってしまっても一人だけが残される。
なので、二人で相談し当時まだ工廠に居た妖精さんにお願いして自分たちの艤装と倉庫に残っていた遺品の装備を解体して貰い、そうして出来た僅かな資材を使って無断で建造をした事。
その結果、普通の艦娘である龍田と叢雲が居るのだ、と。
「そう、ね、私達はここで建造されたわ」
五月雨がこれ以上話すのは限界と感じたのだろう、叢雲が話を引き継いだ。
「建造され、さあ司令官に着任の挨拶にと思ったら、ここには司令官が居ないって言われたわ」
そうして、建造ドックで建造完了をずっと待ち続けていた二人から目的を聞いたのよ、と。
「そんな馬鹿な話聞けるわけが無い、そんな話があるわけがないって龍田と二人で猛反対したわ」
目を閉じたままうんうんと小さくうなづく龍田。
「でもね・・・その時に私達は、二人の身体を見せられたのよ」
その時のショック以上のモノは、後にも先にももうないだろうと言う。
「自分の目で見てしまったんだもの、二人の話を信じる以外無かったわ」
そして、最後まで誇りある艦娘でありたい、艦娘のまま逝きたいと願う彼女達の想いを叶えてあげようと思い、二人の願いを聞き届ける事にしたのだ、と。
「だけど、毎日を鬱々と過ごしたってしょうがないでしょ」
そして4人で何時間も話し合い、いつ来るか分からない日をおびえて過ごすんじゃなく、その日が来てしまうまでは全員で艤装を下ろし、毎日を一生懸命に過ごそうと決めたのよ、と締めくくった。
「そしたらある日突然、アンタがきたんだけどね・・・って、アンタ・・・」
私はその話を聞いている間中、何もいえなかった。
いや、言う資格などそもそも無かった。
彼女達の背負っているものの重さ、大切さを何も理解していなかった。
みんなに、私の過ちを謝らないといけない。
私をここに送り込んだ少将の思惑なぞ、今更どうでも良い。
海軍の代名詞のような人物だ、そもそも私とは考え方が合わない。
「提督・・・?」
「ん?どうした五月雨」
「あの・・・どうして、泣いてるんですか?」
言われて手を目元にやると、指が濡れる感触。
止まる事の無い涙に、軽く笑ってしまう。
「泣きながら笑ってる、変な提督」
そう言って五月雨がくすりと笑う。
「はは、変な提督か・・・確かにそうだな」
そう言って苦笑を返す。
「変な提督だぞ~」
そう言って五月雨の背中をくすぐる。
きゃあきゃあ言って身を捩りながらも、私の側を離れる様子の無い五月雨。
初めて私に見せた、五月雨のはしゃぐ姿だった。
この笑顔を守りたいと切に思う。
「みんな、改めて聞いて欲しい」
私はくすぐる手を止め、全員を見回した。
「私は君たちに、みんなは仲間だと伝えた」
「にもかかわらず今までの私は、君たちの事を、想いを、何も知らなかったに等しい」
そう、私が伝えるべき事はもう決まっている。
「それについて、まずは謝りたい」
「本当にすまなかった」
そしてゆっくりと頭を上げる。
「だけど、今日みんなの話を聞く事が出来、全てではないにせよ知る事ができた」
後の二人は、未だに何の話も聞けてないのだが、今は置いておこう。
この二人の場合は少し内容が違う・・・そんな気がする。
「そして、その内容は人として到底赦せるようなモノではない事も重々承知している」
私はソファーからゆっくり立ち上がり、窓辺まで歩きながら話を続ける。
「だけど・・・」
みんなの方を振り向く。
「私は、何が何でも二人を元に戻してやりたい」
「そしてこの鎮守府を、今ここに居るみんながこれからもずっと心から笑って過ごせる、そんな場所にしたい」
「ただ、私の持つ力なんて微々たる物だ、たかが知れている」
「そして、二人を元に戻す方法なんて私の頭ではまるっきり見当も付かない」
「その方法を探すなんてのは、海に落とした砂粒を探すに等しいだろう」
だから・・・そう言って床に座り姿勢を正し。
「みんなの知恵と力を、私に貸して欲しい」
「私と一緒に考えてくれ!」
床にこすりそうな程に頭を下げた私に、その場に居た全員が目を丸くしたのだった。
ども、作者です、一言お願いします。
中途半端にあちこちフラグが立ってるわけですが、個人的にはこのまま収束させてもいいかな、なんて風に考えてます。
需要の無い話をだらだら書き続けてもしょうがない、というのが私個人の考え方です。
なので、具体的に後2話投稿する間のUAの推移や評価等の付き方を全部見て判断したいと思います。
人気が無いと判断すれば収束路線、天地がひっくり返れば広げたフラグの回収に入ります。