八重に連なる想い(旧:多分かんこれ) 作:キッド@水雷戦隊司令
読みづらくなってませんかね?
「ねえ夕立」
「ふふーん♪やっと決心ついたっぽい?」
「やれやれ、相変わらず夕立には敵わないね」
いきなり2人だけで話を始めるのを見た一同の頭上に、揃ってはてなマークが浮かぶ。
「じゃあ、いいよね?」
「その方があの子達もきっと喜ぶっぽい」
外野には最早何の事かさっぱりである。
「良かったら、僕らの事も話させてもらえるかな」
「そういえば、時雨と夕立はここの艦娘じゃ無かったわね」
「うん、提督にはまだ言ってなかったからね」
そのやり取りをニコニコしながら見ている夕立の姿はどことなく嬉しそうだった。
時雨から告げられた内容は、初春たち四人ほどではなかったけれど、それでも私を驚かせ、怒りを覚えさせるには十分すぎる内容だった。
駆逐艦を弾除けとして使い、被弾してもろくに入渠もさせず、司令官の気分で艦娘への暴行を行い、そのまま使い潰す。
ブラック鎮守府───
通称ブラ鎮───
時雨は、自分達はそのブラ鎮からの脱走兵だと言った。
遠征部隊の仲間と一緒に逃げたけど、追手の第一艦隊によって全員轟沈寸前までダメージを受けた事。
自身も沈みそうなのに、時雨たちだけでもと他のみんながここまで運んでくれた事。
2人で最後の1人を看取った事。
そのまま気を失って、気がついたら二人揃って入渠どっくにいた事。
そしていつか、その司令官に復讐してやろうと考えてた事…。
「だけどさ、凄く今更なんだけど、あの時金剛さん達は憲兵が…って言ってたんだよね」
「もしかして時雨、忘れてたっぽい?」
「うん、恥ずかしながら…」
そう言いながらはにかむ時雨。
「ふむ・・・?」
その鎮守府は聞いたことがある気がする…。
いつ何処で聞いたんだったかな…。
「そうか、思い出した」
「提督?」
「いやな、その司令官の話を聞いた事があったなと」
その瞬間、目にも止まらぬ速さで私の目の前までやって来ると、両手で肩を掴んで力一杯揺すり始めた。
「ねえ!あいつどうなったのさ、提督知ってるんでしょ?教えてよ!!」
普段の物静かな時雨とのギャップに、私はされるがままになり他のみんなは呆然と見ている。
いや、ただ一人夕立だけが小さく溜息をつく。
そして、無言のままスタスタと時雨の真後ろに立った。
次の瞬間おもむろに右手を上げたかと思うと、振り下───
ゴンッ!!
部屋中に響きわたる鈍い音。
「いっ・・・たぁ・・・」
頭を抱えてうずくまる時雨。
本気で痛かったのだろう、涙目になっている。
「そんな事したら、提督さん喋れないっぽい」
そう言う夕立は澄ました顔のままである。
「だからって、グーは酷いじゃないか・・・」
「これ位しないと、時雨は帰ってこないっぽい?」
「うっ・・・」
「提督さん、続きをお願いするっぽい?」
「あ、ああ・・・」
一連の出来事にあっけに取られていた私だったが、夕立に促され持ち直す。
「あ~、どこからだったっけ」
「私達の元司令官の事、何か言いかけてたっぽい」
「そうそう、それでその司令官なんだけど、もうとっくに憲兵の御用になってるんだよね」
「そ、そうなの・・・?」
ヘナヘナとその場にへたり込む時雨。
「そっか、そっかぁ・・・」
「うん、そしてこれは私の推測だけど、多分もう生きてないと思うよ」
大本営の誰だったか忘れたが、偉い人が腐敗撲滅をスローガンにしていたはず。
見せしめとして対空機銃の的にされてても不思議じゃない。
「あはは・・・何か急に力が抜けちゃった・・・」
「でも良かった、これであの子との約束守れるっぽい」
「約束?」
「うん、最後まで一緒に居てくれた旗艦の子と約束したわ」
「どんな?」
「時雨は、思い込むとトコトンまで突き詰めちゃうから、ブレーキになってあげてねって」
「うっ・・・返す言葉も無いよ・・・」
「けど、私は時雨の思いも理解できたし大事にしたかった」
「夕立・・・」
「だって、時雨は私の姉妹艦で一緒に逃げてきた大事な仲間だもの」
「・・・」
「でも、もう心配いらないっぽい!」
ぴょんと跳ねる夕立。
「時雨がやっとこっちを見てくれたっぽい!」
「そしてあの子との約束も守れるっぽい!」
「私は、いますっごく嬉しいっぽい!!」
ぴょんぴょん跳ねながらはしゃぐ夕立。
「ね、時雨!」
時雨に向けてニッコリと笑う。
「うん、そうだね、夕立」
そして時雨は、夕立に笑顔を返す。
「というわけで、私達は提督のお手伝い頑張るっぽい!」
その時、さらっと流れに龍田が割り込んでくる。
「1つ聞いてもいいかな~」
「なんだい龍田?」
「二人の艤装は私達のと同様に封印してたよね~?」
「ほら、さっき提督が話してくれた中の、初春と言い合いしてたってとこ」
「今夜に限って夕立が胸騒ぎがするっていうから、一緒に様子を見に外に出てたんだ」
「そしたら二人の声が聞こえてきてね」
「そうそう、ただ事じゃないっぽかったから、急いで妖精さんにお願いして封印を外したっぽい」
「そうだったのね~、わかったわ」
ちょっと待て。
龍田は、妖精さんはいないって言ってた気がするんだけど・・・。
「あのさ、妖精さん、いるの?」
私がそう言うと、みんな一斉にしまったというような顔をする。
「あらぁ・・・失敗しちゃったわ~」
龍田が額に手を当てる。
「ごめんね~、提督の事試してたの~」
龍田が言うには、普通の司令官なら必ず建造や開発を命令するし出撃もさせる。
けど艦娘の艤装が無ければ出撃も遠征も満足に出来ないから、ドロップ艦を迎える事はできない。
そして各機能の要となる妖精さんが居なければ建造も開発も無理。
そうなれば何も出来ないから、諦めていずれ居なくなるだろう、と。
その為に、妖精さんには姿を見せないようにお願いして隠れて貰ったらしい。
「だから、工廠やドックは無人でも綺麗だったでしょ~?」
言われてみれば確かにそうだ。
誰も無いのにやたらぴかぴかの設備があったのを思い出した。
「でも、提督に協力してくれるかどうかの判断は、妖精さんにお任せしてるのよね~」
なるほど、と私はうなづいた。
確かにここの経緯を考えれば、着任する司令官に最初から好意的であるはずが無い。
艦娘を支える妖精さんの立場を考えれば、艦娘を危険に晒す司令官には協力しよう等と思うはずも無いだろうな。
私が頭を下げるべき相手は、まだ居たようだ。
「妖精さん、どうか私に力を貸して欲しい、お願いします」
そういって、再び床に付すように頭を下げる。
「まったく・・・鎮守府の長が、そう何度も何度も頭を下げるものじゃないわ」
艦娘の誰でもない声が聞こえる。
その声に顔を上げると、部屋の入り口に一人の女性が立っていた。
青いおさげ髪に青緑色の長袖のツナギを着て腕まくりをしている。
「えーっと、どちらさまでしょうか?」
艦娘でないのは確かなんだろうけど、いったい誰だ?
「私は、ここの鎮守府の妖精達の総括をさせてもらってるわ」
「貴方たちの言葉で言うなら、工廠長とか技師長とかそんな感じかしら」
「私の知ってる妖精さんって手のひらサイズだったんだけど・・・」
「本来はね、でもその姿だと人間と上手くコミュニケーション取れないから姿を変えてるの、見てて」
そういうと目の前で光り始める。
余りの眩しさに目を閉じていると、ちょいちょいと何かが膝を触る。
目を開けると、そこには見慣れた建造妖精の姿があった。
いかにもドヤって顔をした後にポーズを取って再び光る。
「というわけ、本来の姿のままだと人の言葉が話せないのよ」
なるほど、そう言われてみれば確かに妖精さん達と直接会話した事は無かったな。
「なるほど、それにしても妖精さんの技術って凄いですね」
「おだてたって何も出ないわよ?それに万能でもないしね」
「そうなんですか?」
「ええ、残念ながら私達は彼女達を治す方法知らないの」
そうなのか・・・と私が肩を落とすと、
「当たり前でしょ、私達だってこんなの許せない。知ってたらとっくに治してあげてるわ」
言われてみれば確かにそうだと思う。
「その代わり、修理なんかは全面的に任せて頂戴!」
そういうと小さくガッツポーズを取る。
「ええ、そういうことならお願いします」
そう言って妖精さんに頭を礼を言う。
「だから、そうやってほいほい頭下げないの、貴方がここの頭でしょ」
「そうは言っても、お願いする立場ですし」
「いいからどっしり構えてなさい、それと私達に敬語も禁止、いいわね?」
「は・・・いや、分かったよ」
うーん、怒られた内容が釈然としない。
これは私が悪いんだろうか?まぁ気にしないでおこう。
「それで、提督はこれからどうするつもりなんじゃ?」
「プランは勿論、あるんですよね~?」
「うん、全く無い」
きっぱり言い切った私の言葉に、ずるっと全員がその場で滑ったのだった。
うーん、ちょっと強引でしょうか?
実を言うと、この話は細かい部分が2転3転してます。
書いては消してを繰り返して、結局丸ごと書き直した感じですね。
私の中での夕立は、常にぽいぽい言ってるわけじゃないんです。
だからこそ、そのギャップが可愛いんですけどね。
夕立「さあ、素敵なパーティ(物理)しましょ?」
作者「ヒエェ~!!」
比叡「ちょっ!出番無いのに台詞だけ持ってかないでぇ~・・・」