八重に連なる想い(旧:多分かんこれ)   作:キッド@水雷戦隊司令

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第16話

「全く無いって、どういうことよ!」

お、最初に立ち直ったのは叢雲だね。

「まぁ、何の手立ても無いってのは嘘だけどね」

「アンタねぇ・・・」

「私が無いって言ったのは、情報を探す為の手段が今すぐは無い、って意味だよ」

「どういう事?」

「いや、一刻も早く探したいのは私だってそうなんだけど・・・そうするには色々と問題がね・・・」

「問題?」

あ~、その表情からすると龍田は気付いたかな?後は初春もか・・・。

他のみんなは、まだ気付いてないみたいだな。

「うん、結構大事な事だと思うんだけど」

「もったいぶってないで教えなさいよ!」

「わらわ達の艤装と、海へ出るための燃料及び弾薬・・・じゃな?」

「うん、まずはそれがあるね」

「あっ・・・」

「逸る気持ちは分からないでもないけど、まずは地に足をつけてじっくり行こう」

「でも、お初ちゃんや五月雨がいつまで大丈夫なのかわかんないんでしょ?」

「そうだね、そんなにいつまでも時間を掛けるわけにはいかないと思うよ」

「だったら・・・」

「だからこそ、だよ」

「私は、まずここを1つの鎮守府として機能できる所まで復活させたいと思う」

「理由はいくつかあるんだけど、もうかなり時間も遅いからざっと説明する」

「一つ目は、さっき初春が言ったように、二人の艤装だ」

「これは、ええと技師長・・・でいいのかな?」

「ええ、そう呼んでくれればいいわ」

「じゃあ改めて技師長、作れそうかい?」

「五月雨ちゃんと初春ちゃんの艤装でしょ?資材さえあれば大丈夫よ」

「ただ、二人がちゃんと今のままでちゃんと着けられるかは分からないから、艤装が出来た後も調整する時間が欲しいわね」

「なるほど、じゃあそれはお任せするとして、最優先でお願いするよ」

「最優先はいいけど、資材あるの?」

「それが2番目なんだけど、龍田、叢雲」

「なあに~?」

「何よ?」

「二人の艤装は今封印してるんだったよね?」

「ええ、そうよ~」

「封印って外して、すぐ使えるの?」

「ええ、整備は終わってるし預け先は技師長の所だから~」

「当然、完璧にして保管してあるわ」

「じゃあ明日改めて説明するけど、龍田、叢雲、時雨、夕立の四人には遠征任務をお願いしたい」

「資材の確保という事ね~」

「そういう事」

「そういう事なら任せておいてよ」

「夕立も頑張るっぽい!」

「しょうがないわね、私達で山ほど持って帰ってあげるわ!」

「どういう遠征任務にするかは、また明日考えようと思う」

「そして、最後になるけど、私はここの戦力を強化しておきたい」

「どういう事?深海棲艦の討伐でも始めるの?」

「いや、どうしても色々回る必要がある以上、外海にも行くだろう?そこには何が居る?」

そこまで言うと、皆一様に眉をひそめる。

「確かに、言われてみればそうね・・・」

「二人を無事に戻す為に他の誰かが犠牲になったんじゃ、それこそ本末転倒だ」

「・・・」

「だから、普通の鎮守府運営と同じように戦力の強化と錬度の向上を行おうと思う」

「そして、これが恐らく一番時間がかかるメインの任務になると思うけど、通常の出撃任務と平行して情報収集を同時に行ってもらいたい」

「それじゃすっかり話が長くなってしまったけど、また明日詳しい話を詰めていこうか」

「それじゃ、みんな今日はゆっくり休んでくれ」

「はーいっ」

 

その日、五月雨は生まれて初めて悪夢ではない夢を見た。

初春と、叢雲と、龍田と、夕立と、時雨と・・・そして提督。

全員揃って、ピクニックを楽しんでいる夢だった。

いつか本当に、みんなでピクニックしたいな・・・。

 

そして次の日の午後───

「それじゃあ、行ってくるわね~」

「ああ、大丈夫だとは思うが油断はしないように、くれぐれも気をつけてな」

「提督は心配性ね~、でもありがと~」

私は、港から遠征に出て行く龍田たちを手を振って見送った。

遠征メンバーは昨晩決めたとおり、旗艦に龍田、僚艦に叢雲、時雨、夕立の4人だ。

全員の錬度を測定してもらった結果時雨と夕立は第一改装可能であったが、龍田と叢雲はほぼ初期状態と変わらずであり、装備は全員が最初から持参している物しかない。

おまけに龍田と叢雲は、建造されてから一度も海にも出ていない。

なので、大事を取って直ぐ沖合いでの練習航海から始めて貰う事にした。

補給船から受け取れる量では、この四人でさえ2日に1回程度しか出撃できない。

改めて定期補給の少なさを実感したが、何事も最初の一歩が肝心だ。

そこでしくじれば後々まで尾を引く事も少なくない。

それにある程度錬度が上がれば、近場の遠征でボーキサイト以外を得られるようになる。

そうすれば五月雨と初春の艤装開発にも着手できる。

6人で出撃させられるようになれば、遠征ももう少し遠出させる事ができるかもしれない。

そうだ、艤装を作るのにどれ位かかりそうなのか技師長にも話を聞いておかないと。

工廠までやってきた私は技師長を探して声を張り上げる。

「技師長~、いる!?」

「提督じゃない、どうかした?」

技師長を訪ねたところ、ちょうど何かの図面を広げて作業していた。

「作業中ごめんね、ちょっと聞きたいことがあったんだけど」

そう言って図面を覗き込む・・・何の図面だこれ?

しきりに首をひねる私を見て、技師長は私が首をひねる理由を思いついたのだろう。

「これは、二人の艤装の図面よ」

「艤装の?」

「そう、あの二人の身体は一般に使われている汎用の艤装じゃダメだという事が分かったわ」

「というと?」

技師長が二人の身体を調べてみた結果、深海棲艦と融合させられた部分が表から見える部分だけではなく体内の器官にまで手が入っていて外科手術程度ではどうにもならないらしい。

その為に、一般的に使われる艦娘の艤装では身体が拒絶反応を起こしてしまい、それが原因になって深海棲艦化するのではないだろうか、というのが技師長の推測だった。

「だから、あの二人が今のまま艤装を背負うなら、フルオーダーメイドで作らなくちゃダメ」

「おおう・・・そんな事出来るんですか?」

「出来る出来ないじゃなくてやらなきゃ駄目なの、そうしないとあの子達海に立てないわよ?」

「分かりました、私には手が出せない部分ですし設計が出来たら連絡ください。それと必要な資材量が分かったらそれも教えてください、最優先で回します」

「そうして貰えると助かるわ、彼女達、遠征に行く子達を見ながら私達も提督の役に立ちたいって言って凄く悔しがってたのよ」

「そうなんですか・・・」

「ええ、しばらくはあの二人を秘書艦にしてあげてはどう?」

そうか・・・。

「それはいい考えかもしれませんね、それで二人は今どこに?」

「少し前に出て行ったけど、鎮守府内には居る筈じゃない?」

「分かりました、探してみます」

技師長に別れを告げ工廠を後にする、ふと後ろを振り向いてみると妖精達と図面を取り囲んであーでもないこーでもないと議論しているようだった。

そういえば、ここに着任してから鎮守府内を前部案内してもらってないことに気付いた。

まぁ広いけどうろうろしてればいずれ見つかるだろう。

 

「ふぅ、こうやって歩いてみると意外と広いな」

二人を探して歩き出したまでは良かったが、どこにいるか見当も付かなかったので思いつく端から順番に歩いて回ったのだが、私が思いつく範囲にはどこにもいなかった。

そういえば、裏手の方は一度も行ったことがなかったな・・・。

自分がまだ回ってない所を頭に思い浮かべると、そっちへ向けて歩みを進める。

特に今は急ぐ事も無いし、のんびりと散歩がてらといった感じである。

中庭を抜けて、今は住人の殆ど居ない艦娘寮の側を通り抜ける。

艦娘寮の裏手に差し掛かると、異様な雰囲気の場所に出る。

地面から何本も小さな柱が生えていた。

そして、その柱に囲まれるように二人の姿が見えた。

歩いて近づきながら、二人に声をかける。

「五月雨に初春、こんな所にいた・・・」

柱の間を通り抜けようとして表に書いてあるモノを見た私は、そこで足が止まってしまった。

よく見ると、一本だけではなく全てに書いてある。

それは───艦娘の墓標だった。

「提督、来てしまったのか」

声も出せずただ立ち尽くす私に気付いた初春が声をかける。

「ここはな、わらわ達が手に掛けた仲間達の・・・墓じゃ」

「えへへ・・・提督には内緒にしてたのに、見つかっちゃいましたね」

そう笑って誤魔化そうとする五月雨の顔は、今にも泣きそうだった。

「お前たち・・・ずっと背負ってたのか」

「当然じゃ・・・忘れられる筈も無かろう・・・」

「みんな、大事なお友達でしたから・・・ね」

「なぁ、二人に頼みがあるんだが・・・」

「何じゃ?」

「何でしょう・・・?」

「私にも、彼女達を弔わせてくれ」

そう言って、一番手前にあった墓標に手を合わせた・・・。

必ず二人を元に戻す、そしてここを何処よりも艦娘が笑顔で居られる場所にしてみせるよ。

その時さあっと風が吹いてきて辺りの木々を揺らす。

それは海が近いにもかかわらず寒くも湿っぽくも無く、むしろ心地よささえ感じられるような気がした。

私は、時間が過ぎる事も忘れ、初春と五月雨と三人でずっと手を合わせていた。

 

そのおかげで龍田たちの帰還に気付かず夕立と叢雲が酷く拗てしまったのだが、それはまた別の話だ。




さて、いよいよ本格的に稼動開始です。
本当はもっと早い段階で稼動する筈だったんですけどね・・・何処で間違えたんだろう。

それにしても、話の本筋がダークな内容じゃないのは書いてて楽しいです。
なら何でこんなストーリーにしたんだよと言われそうですが・・・
ホントそのとおりですね、何でこうしたんだろう?

そして・・・全然見てなかったんですがいつの間にかお気に入りが15件、UAが2800超えてました!
超びっくりの作者です。
自分の作品の情報くらいチェックしとけYO!と言われそうですが・・・(汗

何はともあれ、読んで下さっている皆さんには感謝です!
そして、誤字脱字、誤用などありましたら遠慮なくぶっこんでやってください。


何?お礼はいらんからもっと面白く書け?
え~、その件につきましては最大限善処するよう前向きに検討を重ねてまいりたいと・・・

時雨「頭が残念すぎるね、君には失望したよ」
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