八重に連なる想い(旧:多分かんこれ) 作:キッド@水雷戦隊司令
こじんまりとしたリビングの一角に置かれたソファーに腰掛けて、二人の少女がお茶を飲んでいた。
洋風の部屋なのに二人が持ってるのは湯呑み。
そして目の前の机に置かれたのは小さめの菓子入れに入ったお煎餅。
微妙にアンバランスさが漂う。
───ぜ
ドアの方から声が聞こえる。
私を呼ぶのは誰?
折角姉さんと一緒にゆっくり過ごしていたのに。
手に持っていた湯呑みをコトリと置くと、めんどくさそうに立ち上がる。
し──ぜ
あーもう、誰?
若干の苛立ちを感じながらも腰を上げ姉の方を振り返ると、頑張れと言わんばかりの笑顔で手を振っている。
それを見て、私は戦に呼ばれたのだと気付く。
そうね、それが私達のお役目だもの。
そう言って姉に手を振り返す。
それじゃ、行ってきます。
部屋のドアを開けると、ドアの隙間から入ってくる光が辺りを埋め尽くす。
まぶし───
「うーん・・・これはどういう事?」
五月雨が二人目の建造を終え、その建造時間を見た技師長がうなる。
「え?私、何か間違えちゃったんでしょうか?」
「いやいや、五月雨ちゃんは間違えてないよ」
そういう技師長の目は建造装置へと向いたままだったので、同じように装置を見る五月雨。
もちろん専門的な知識のない彼女には、何が起きてるのか全く理解できなかった。
「ただねぇ・・・」
「・・・?」
そして次に技師長の口から発せられた言葉は意外なものだった。
「この時間は、見た事無いのよね」
「ええええ!?」
五月雨の驚く声が辺りに響く。
建造妖精である技師長が知らない艦娘なんて居るんですか?と尋ねると、少なくとも今の所は居ない筈だという。
「じゃあなんで・・・」
だからビックリしてるんじゃない、と言われる。
それもそうか。
「でも事実、こんな建造時間は見た事ないわ」
そういわれてタイマーを覗き込むと、そこにあったのは13:21。
「随分短い…ですね」
「建造完了予定は15:00だったわ」
技師長曰く、タイマーに表示される建造予定時刻の最短はまるゆと言う艦の17分だそうだ。
しかし、そもそもまるゆは大型建造という手法でしか生み出されないらしい。
にも関わらず、今回は通常の建造でそれよりも短い15分。
だからしきりに技師長は首をひねっていたのだと教えてくれた。
「そうね、とりあえず提督に報告してもらえる?」
「は、はい。これって一大事・・・ですよね?」
「ちょっと普通じゃないけど、そんなに深刻にならなくても大丈夫だと思うわ」
十分大事だとは思ったけど、技師長が言うんだからそうなんだろう。
「わかりました、それじゃ提督を呼んできますねっ」
そういって駆け出す五月雨に技師長は注意を促す。
「走るのはいいけど、転ばないようにね~」
あ、顔面からこけた・・・だから言ったのに・・・。
大きな怪我はなさそうだけどよっぽど痛かったんだろう、涙目になってる。
あ、よく見るとおでこにタンコブ出来てるわね。
後で治してあげましょうか。
パタパタと廊下を走る音が聞こえてきた。
多分五月雨だろう、建造が終わったのかな?
そんなに急いでどうしたんだろうと思いながら、提督は手元に広げた資料をめくった。
「提督~!!」
ガチャッ!
ゴンッ!
叫び声がするなりドアが勢いよく開けら───
いや、開き切る前に何かがぶつかった。
執務室のドア、妙に重いからなぁ…
「うぅ~…」
ぶつかった反動でゆっくりと開くドア。
ドアの影には、額を抑えてうずくまる五月雨の姿があった。
「おぬし、ドアを壊すつもりか?」
「あうぅ~…」
「まぁまぁ、五月雨も怪我は無いかい?」
眉をひそめる初春を、提督はなだめつつ五月雨に声をかけた。
「それで、そんなに急いでどうしたんだい?」
「えっと、えーっと…」
額を抑えたまま唸る五月雨。
「うん?」
「なんだっけなぁ~…」
ずるっと滑る提督と初春。
「お~ぬ~し~…」
手を腰に当て、ずんずんと五月雨に迫る初春。
あの~初春さん?背後に何か見えちゃいけないものが見えてますよ?
そんな初春をさほど意に介さぬかの如く、ぽんと1つ手を打つ五月雨。
「あ、そうそう、技師長が急いで工廠に来て欲しいって言ってました」
「技師長が?」
初春と顔を見合わせる提督。
「分かった、すぐに行くよ」
工廠の事務室に着いた二人だが程なくして、
「えええええ!?」
工廠に二人分の叫びが響き渡る。
「ちょっと待って下さい、知らないってどういう事ですか!?」
しょうがないじゃないとばかりに肩をすくめる技師長。
「だってほんとに知らない子なんだもの」
「はぁ…」
そうして改めて三人で顔を見合わせる。
一体誰をお迎えしたんだろう?
チーン───
なんとも気の抜けるような音が聞こえてきた。
何の音か尋ねると、建造が終わった事を知らせる合図らしいが…
「まるで電子レンジかなにかだな」
「何よ、分かりやすくていいでしょ?」
まぁ、確かに分かりやすいのは分かりやすいか。
「それじゃ、開けるわよ」
いよいよ未知の艦娘とのご対面だ。
嫌が応にも緊張が高まる。
さて、鬼が出るか蛇が出るか…
「いや、出てくるのは艦娘だからね」
技師長が即座にジト目でツッコミを入れる。
いいツッコミです、技師長。
そしていよいよ装置の扉が開かれる。
妖精さんに手伝って貰って中から出てきた艦娘は、確かに未だかつて見たことが無かった。
黒いストレートヘアーは背中の真ん中あたりで切りそろえられており、前髪も同様に眉の辺りでまっすぐ揃えられている。
服装は、まるで巫女装束にセーラー服の襟とリボンをつけたような感じだ。
長良型が着てる服に似てるけどちょっと作りが違うな。
履いているのは青のプリーツスカートに編上げのブーツを模した脚部艤装。
全体から受ける雰囲気はどちらかと言えば金剛型か。
そして身長は、お世辞にも高いとは言えない。
睦月型と同じくらいだろうか。
胸部装甲は…何処かの軽空母よりはマシといったところだろう。
ええ、誰とは言いませんよ?
腰に下げた単装砲は手持ち式の様だ…睦月の妹達の持つ物とよく似ている。
背中に背負うのは煙突を模した背面艤装。
背面艤装の両脇にある筒は爆雷かな?
そして全く見たことも無い兵装が1種類…両の腿と左手に着けているのは防盾の無い魚雷発射管のようだが───
2連装…だと?
連装魚雷発射管なんて聞いたこともないぞ?
「あの~…私の顔に何か?」
初めて見る艦娘の姿にみんな呆気に取られていると、彼女の方から声をかけてきた。
「あ、ああ、済まない、良かったら自己紹介を頼めるかな」
凛と鈴が鳴るような涼やかな声で名乗る。
「帝国海軍初の大型駆逐艦、栄えある峯風型の八番艦、汐風ですわ」
こう見えて足には少々自信がありますの、そう名乗る彼女に対して───
「えええええ!?」
本日三度目の絶叫が工廠に響き渡った。
はい、今回は書き味をガラッと変えてみました。
今までと比べてどうでしょうか。
もしこっちの方がいいという声が多ければこのスタイルで終わりまで突っ走ろうと思います。
そして、ついにタグ詐欺解消しました。
冒頭を読んで島風を想像した方、いい意味で予想を裏切れてたら嬉しいです。
まぁ、峯風型にも島風はいますけどね(汗
汐風のキャラ設定は、ちっちゃいくまのんなみたいな感じで設定してます。
いわゆるお嬢様キャラですね。
CVは花澤香菜さんでお楽しみいただければ幸いです。
え?なんでざーさんかって?
作者が好きなんだからいいじゃない!
誰か汐風描いてくれてないかなぁ…
汐風「全く、私欲丸出しですわね…挿絵位、ご自分で描けばよろしいのでは?」
作者に絵心を求めないでっ!!(号泣