八重に連なる想い(旧:多分かんこれ)   作:キッド@水雷戦隊司令

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第3話

「いいからお前たちだけでも早く逃げろ!このままじゃここで全滅だぞ!」

通信機のマイクに向かって必死に怒鳴る。

「ここは譲れません」

通信機から聞こえてくるこの声は、加賀か。

「貴方の育てた艦隊は、そこまでやわではありません」

「そういう問題じゃない、あまりに数が違いすぎる。勇気と蛮勇を取り違えるな!」

「いいえ、これが考えうる中での最善です」

背後でドアが開く音がするが、今はそれどころではない。

「島風、用意はできていますね?」

「もちろん、まっかせて~」

「待て、いったい何…っ!?」

後ろから聞こえてきた声に振り返ろうとする。その瞬間身体に衝撃が走った。

「提督、ごめんね。でも、みんなで一生懸命考えて決めたんだ」

 

「うわあっ!?」

がばっと起き上がると、そこはベッドの上だった。

動機が酷い上、それに額やこめかみから大量に流れる冷たいもの。

忘れる事など決して許されない、俺が犯した最大級の罪。

 

「あらぁ~、お目覚めですかぁ~?」

「うわぁっ!?」

突然声を掛けられ、思わず声を上げてしまった。

「そんなにびっくりしなくてもいいと思うんだけど、傷つくなぁ~」

恐る恐る声がした方を振り向くとその先には一人の女性が居た。

いや、艤装をつけているのだから艦娘だね。

「はじめまして~、龍田だよ~」

「う。うん。は、初めまして」

やっとやっとでそれだけ言う。

「ずいぶんうなされていたみたいですけど、どうされましたか~?」

「そ、そうだったのか?確かに酷い汗だけど、覚えてないなぁ」

龍田と名乗った艦娘の見透かすような視線に、あわてて誤魔化す。

上手く誤魔化されてくれるといいんだけどなぁ・・・

 

「それならそれでいいのですけど~、それよりも・・・」

龍田がすっと目を細める。とたんに膨れ上がる敵意。

いや、これは敵意というより殺気といった方がいいのかな?

「あなたはここへ何をしに来たのかなぁ?」

ますます強く膨れ上がる殺気。やばいこれ、ちびってもいいですか?

いやいや、いい年した大人が流石にそれは無い無い。

「あら~、ずいぶんと余裕があるんですね~」

お前はエスパーか!と突っ込みたくなるのを抑えて、ここへは少将の命により赴任してきた事を告げる。

「あらぁ、それは失礼しました~」

ふっと殺気が消え、龍田が軽く微笑む。

「私がここの指揮官代行を承っております龍田です。提督の着任を歓迎いたしますね~」

 

龍田の言葉に、ふと疑問を覚える。

指揮官代理?艦娘が?そんな話聞いた事もないぞ?

「ここは普通の鎮守府とちょ~っと違うの、それについては後でご説明致しますね~」

おっと、疑問がそのまま顔に出ていたっぽいね。

「うん、じゃあそこはお願いするね。それよりも・・・」

そう言いながらベッドから起き上がり、龍田のほうを向く。

何を言われるのだろう、と身構えた様子が見て取れたが気にしない。

汗が冷えてきてこのままじゃ風邪引きそうなんだよね。

「着替えたいし荷物は執務室に放り込んだままだから、移動したいんだけどいい?」

ずるっ・・・ほんの僅かだが龍田がずっこける。

ジト目をこっちに向けつつも「じゃあ行きましょ~」と案内してくれた。

よく見ると少し顔が赤くなっているような気がする。

確か龍田って怖いって話だったけど、こうやって見ると結構可愛いなぁ。

「うふふ、落としますよ~?」

・・・前言撤回、噂どおりみたいです。

 

「それじゃ、秘書艦は龍田って事でいいのかな?」

「ええ、それで構わないと思いますよ~」

「それと、ここが普通と違うという事なのですが~」

「ああ、そういえば説明してくれるって言ってたね」

「はい、一言で申し上げますとここは棄てられた艦娘の集まりなのですよ~」

「えっ?」

「懲罰対象にはならないけど、司令官が不要品だと判断した。そんな艦娘が配属されるのがここなの~」

「え?」

「だって私たちは駒だし~、司令官は艦娘に一言命令すればいいだけですから~」

「命令、ねえ・・・」

私は顔をしかめた。

そして、少将の言っていた言葉の意味をここで初めて理解した。

なるほど・・・今までどおり、私は私のやり方でやろう。

今はそれが彼女達にできる唯一の贖罪となると信じて。

 

「では、最上級命令を発令する」

「は、はい。なんでしょうか?」

龍田が何を命令されるのかと身構える。

「今後は自分たちの事を駒なんて言わない様に。ここにいるのは優秀な部下であり、仲間だ」

「決して、使い捨ての、駒なんてもの、ではない。いいね?」

あえて言い含めるように、一言ずつ区切って念押しをする。

あ、なんかぽかーんとしてる。言い方が分かりにくかったのかな。

「あの、でも私たちは」

「別に龍田たちが何であれ、これから一緒に苦楽を共にする事になるんだろう?それに・・・」

「堅っっっ苦しい上下関係なんて、百害あって一利なし!」

あ、思わず力が入っちゃった。

「まぁ、そんな感じでこれからやっていくので龍田も早く慣れてね」

「あ~それと、他の娘達にも同じ事を伝えてくれると助かるかな?他の子達がどこにいるのか分からないし」

はぁ、とため息をついた龍田は部屋の入り口の方へと近づき

「あなたたち、聞いていたわね~」

と言うと、すっと扉を開く。

 

「わあぁ」

「ぽい~?」

「あーもう、バカ・・・」

「やれやれ、しょうがないのう」

「だからボクは言ったのに・・・」

ドドッと二人倒れ、ドアの奥には3人立っていた。

龍田はジト目になると言った。

 

「死にたい船はどこかしら~?」




いろんな人が龍田を怖いキャラとして書いてます。
独特の台詞から私もその通りだとは思うんですが、こう何て言うか可愛い所もあると思うんですよ。
こういうドジっぽい所とかあってもいいんじゃないかな~と

「死にたい作者はどこかしら~?」
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