八重に連なる想い(旧:多分かんこれ) 作:キッド@水雷戦隊司令
「いいからお前たちだけでも早く逃げろ!このままじゃここで全滅だぞ!」
通信機のマイクに向かって必死に怒鳴る。
「ここは譲れません」
通信機から聞こえてくるこの声は、加賀か。
「貴方の育てた艦隊は、そこまでやわではありません」
「そういう問題じゃない、あまりに数が違いすぎる。勇気と蛮勇を取り違えるな!」
「いいえ、これが考えうる中での最善です」
背後でドアが開く音がするが、今はそれどころではない。
「島風、用意はできていますね?」
「もちろん、まっかせて~」
「待て、いったい何…っ!?」
後ろから聞こえてきた声に振り返ろうとする。その瞬間身体に衝撃が走った。
「提督、ごめんね。でも、みんなで一生懸命考えて決めたんだ」
「うわあっ!?」
がばっと起き上がると、そこはベッドの上だった。
動機が酷い上、それに額やこめかみから大量に流れる冷たいもの。
忘れる事など決して許されない、俺が犯した最大級の罪。
「あらぁ~、お目覚めですかぁ~?」
「うわぁっ!?」
突然声を掛けられ、思わず声を上げてしまった。
「そんなにびっくりしなくてもいいと思うんだけど、傷つくなぁ~」
恐る恐る声がした方を振り向くとその先には一人の女性が居た。
いや、艤装をつけているのだから艦娘だね。
「はじめまして~、龍田だよ~」
「う。うん。は、初めまして」
やっとやっとでそれだけ言う。
「ずいぶんうなされていたみたいですけど、どうされましたか~?」
「そ、そうだったのか?確かに酷い汗だけど、覚えてないなぁ」
龍田と名乗った艦娘の見透かすような視線に、あわてて誤魔化す。
上手く誤魔化されてくれるといいんだけどなぁ・・・
「それならそれでいいのですけど~、それよりも・・・」
龍田がすっと目を細める。とたんに膨れ上がる敵意。
いや、これは敵意というより殺気といった方がいいのかな?
「あなたはここへ何をしに来たのかなぁ?」
ますます強く膨れ上がる殺気。やばいこれ、ちびってもいいですか?
いやいや、いい年した大人が流石にそれは無い無い。
「あら~、ずいぶんと余裕があるんですね~」
お前はエスパーか!と突っ込みたくなるのを抑えて、ここへは少将の命により赴任してきた事を告げる。
「あらぁ、それは失礼しました~」
ふっと殺気が消え、龍田が軽く微笑む。
「私がここの指揮官代行を承っております龍田です。提督の着任を歓迎いたしますね~」
龍田の言葉に、ふと疑問を覚える。
指揮官代理?艦娘が?そんな話聞いた事もないぞ?
「ここは普通の鎮守府とちょ~っと違うの、それについては後でご説明致しますね~」
おっと、疑問がそのまま顔に出ていたっぽいね。
「うん、じゃあそこはお願いするね。それよりも・・・」
そう言いながらベッドから起き上がり、龍田のほうを向く。
何を言われるのだろう、と身構えた様子が見て取れたが気にしない。
汗が冷えてきてこのままじゃ風邪引きそうなんだよね。
「着替えたいし荷物は執務室に放り込んだままだから、移動したいんだけどいい?」
ずるっ・・・ほんの僅かだが龍田がずっこける。
ジト目をこっちに向けつつも「じゃあ行きましょ~」と案内してくれた。
よく見ると少し顔が赤くなっているような気がする。
確か龍田って怖いって話だったけど、こうやって見ると結構可愛いなぁ。
「うふふ、落としますよ~?」
・・・前言撤回、噂どおりみたいです。
「それじゃ、秘書艦は龍田って事でいいのかな?」
「ええ、それで構わないと思いますよ~」
「それと、ここが普通と違うという事なのですが~」
「ああ、そういえば説明してくれるって言ってたね」
「はい、一言で申し上げますとここは棄てられた艦娘の集まりなのですよ~」
「えっ?」
「懲罰対象にはならないけど、司令官が不要品だと判断した。そんな艦娘が配属されるのがここなの~」
「え?」
「だって私たちは駒だし~、司令官は艦娘に一言命令すればいいだけですから~」
「命令、ねえ・・・」
私は顔をしかめた。
そして、少将の言っていた言葉の意味をここで初めて理解した。
なるほど・・・今までどおり、私は私のやり方でやろう。
今はそれが彼女達にできる唯一の贖罪となると信じて。
「では、最上級命令を発令する」
「は、はい。なんでしょうか?」
龍田が何を命令されるのかと身構える。
「今後は自分たちの事を駒なんて言わない様に。ここにいるのは優秀な部下であり、仲間だ」
「決して、使い捨ての、駒なんてもの、ではない。いいね?」
あえて言い含めるように、一言ずつ区切って念押しをする。
あ、なんかぽかーんとしてる。言い方が分かりにくかったのかな。
「あの、でも私たちは」
「別に龍田たちが何であれ、これから一緒に苦楽を共にする事になるんだろう?それに・・・」
「堅っっっ苦しい上下関係なんて、百害あって一利なし!」
あ、思わず力が入っちゃった。
「まぁ、そんな感じでこれからやっていくので龍田も早く慣れてね」
「あ~それと、他の娘達にも同じ事を伝えてくれると助かるかな?他の子達がどこにいるのか分からないし」
はぁ、とため息をついた龍田は部屋の入り口の方へと近づき
「あなたたち、聞いていたわね~」
と言うと、すっと扉を開く。
「わあぁ」
「ぽい~?」
「あーもう、バカ・・・」
「やれやれ、しょうがないのう」
「だからボクは言ったのに・・・」
ドドッと二人倒れ、ドアの奥には3人立っていた。
龍田はジト目になると言った。
「死にたい船はどこかしら~?」
いろんな人が龍田を怖いキャラとして書いてます。
独特の台詞から私もその通りだとは思うんですが、こう何て言うか可愛い所もあると思うんですよ。
こういうドジっぽい所とかあってもいいんじゃないかな~と
「死にたい作者はどこかしら~?」