八重に連なる想い(旧:多分かんこれ) 作:キッド@水雷戦隊司令
「おや?君たちは・・・」
「ええ、彼女たちがさっき言ったここに居る子たちよ~」
「なるほど、それなら私が直接言うほうがいいね・・・と言っても、その様子だと既に聞いていたのかもしれないけど」
立ち上がった彼女たちの表情を見ると、流石に苦笑しか出てこない。
皆一様に、これ以上は無いというくらい変な物を見るような渋い目で私を見ているのだから。
「ごほん・・・では、さっき龍田には言ったけど同じ事を今から君たちにも言うね」
「ここに居る君たちは、私にとって優秀な部下であり、苦楽を共にしていく大切な仲間だ」
倒れた時に下敷きになってた子・・・。
「決して使い捨ての駒なんかではない」
下敷きになった子を押しつぶしたまま固まっている子。
「だから、今後は自分たちを駒と呼ぶ等、無闇に自己を卑下するような事は禁止する」
立っているのは・・・腕を組んでそんなにこっちを睨まないで欲しいな。
「いいね、これだけは絶対に忘れないように」
なあ、扇子で口元隠すのは辞めてくれないかい?表情が読めない。
そこまで言うと、辺りを見回す。
ん?もう一人居たと思うんだけど、何処だ?
「じゃあ、提督はボク達をどうしたいの?」
「うおわぁっ」
全く予想さえしていなかった背後から声を掛けられて、軽く飛び上がった。
「予想外だったかい?残念だったね、でもそんなにびっくりされるとは思わなかったよ」
「もう一度聞くね、提督はボク達どうしたいの?」
「どうしたい?」
「うん、ボク達を、いや艦娘を大事にしてどうするのさ。ボクらは替えがある兵器だよ?」
「それは違うよ?」
「何が違うって言うのさ!艦娘は過去の軍艦の船魂が具現化したものじゃないか!」
すっと目を細めるとしゃがんで、その子の顔をまっすぐに見る。
「確かに君の言うとおり、君たち艦娘は軍艦の船魂が具現化した存在だね」
「でも、だからこそ大切にするべきだと私は思っているんだよ」
「今よりもはるか昔、大切にされた道具は付喪神という神様が宿る、そう言われていたんだよ」
「人は道具を使いさまざまな物を作り出す。でも、いいものを作るのはいい道具であって人じゃない」
そこで後ろから違う声が上がった。
「でも、道具は使われる物じゃないの」
すっと立ち上がると周りを見回し、ゆっくりと言葉を繋いでいく。
「そこが違うと私は考えている」
「どう違うっていうの?」
「例えば、料理をする時に人は包丁を使うよね」
「けれど、一流の料理人であったとしても包丁が刃こぼれをおこしていたり鍋が錆びていたりしては、まともな料理は出来ないんじゃないかな?」
「そ、それは・・・」
「人が道具を大切に手入れをし、さらに適切に扱う事で一流と呼べる結果がもたらされる」
「さらに言うなら、君たち艦娘はただの道具ではなく過去に大勢のそれはそれは偉大な職人たちによって作られた軍艦の、付喪神とも言うべき船魂という存在だ」
「それを使い捨ての駒のように扱うなんて、罰当たりも甚だしい」
「それは過去に君たちに乗り、海を駆けていった英霊達への冒涜にも等しい行為だと私は思う」
一呼吸置き、さらに続ける。
「さらに言うなら、君たちは今こうやって私に疑問をぶつけている」
「それはつまり、君たち一人一人に立派な意思があるという事だ」
最初に私に疑問を掛けてきた子が目を丸くするが、気にせず続ける。
「意思があるのなら感情もある、各々が悩み、自分たちで考えて行動することが出来るし、好き嫌いもある」
「それって私と何も違わないと思うんだけど、どうかな?」
「だ、だけど、貴方は提督なんだし」
「提督というのは、あくまで私に付いている肩書きであって、それは私ではないよ」
「ええっ!?」
うん、見事なくらい全員でハモったね。
「私はこう思うんだ」
「提督というのは艦娘を適切に導きより良い結果を導き出す為に居るのであって、決して提督の私欲の為に艦娘が居るんじゃない、とね」
そこまで言うといったん言葉を切り、ふうと一息つく。
「以上が私の考えだよ」
そこまで言い切ると、軽く息を吐き全員の顔を見回す。
揃いも揃って目がまん丸になっているけど、しょうがないかなぁ。
しばしの沈黙、誰も口を開けないような雰囲気が徐々に漂う。
私は、青く長い髪をした艦娘の前まで歩いていく。
と、顔に恐怖とも取れるような表情を浮かべ、顔を伏せる。
目の前まで進んだところでしゃがみ込み、顔の高さを合わせてゆっくりと声を掛けた。
「君の名前、教えてもらっても、いいかな?」
「あ、あの、その」
彼女は今にも泣き出しそうな小さな声で答える。
「大丈夫、ゆっくりでいいから、教えてくれたら私は嬉しいな」
その瞬間がばっと顔を上げるも、すぐに顔を伏せてしまう。
「はい、その、白露型六番艦の、五月雨、です」
消え入りそうなほど小さな、まるで蚊が鳴くような細い声で、五月雨は答えた。
「そうか、五月雨っていうのか」
そっと頭に手を乗せると、目に見えてビクッと身を縮こまらせる。
ゆっくりと頭を撫でてあげると、目をまん丸にしてこっちを見た。
「やっとこっちを見てくれたね、五月雨」
「これから、よろしくね」
「は、はいっ」
顔を真っ赤にすると、また顔を伏せてしまった。
恥ずかしがりやなんだなと思いつつ、立ち上がって周りに居る面々の顔を一人ずつ見ると、聞いてみる。
「良かったら、みんなの名前も教えてくれないかな?」
と、一斉にため息がこぼれる。
「アンタねぇ・・・」
「うむ、ずいぶんと変わり者のようじゃのう」
「わらわが初春じゃ。よろしく頼みますぞ」
「叢雲よ!まぁせいぜい頑張りなさい!」
「ボクは時雨、五月雨と同じ白露型の2番艦だよ」
「私は夕立、白露型駆逐艦よ。よろしくね!」
「そうか、ありがとう」
「では改めて、私は提督。今日からここに着任する事になった」
「みんなには色々苦労をかける事があるかもしれないけど、よろしく頼むね」
「それと・・・」
「誰か厨房に案内してもらえないかな、流石にあるよね?」
「えっ?」
五月雨は可愛いと思います。
作者の鎮守府では初期艦として頑張ってくれました。
五月雨かわいいよ五月雨。
「ふぅ・・・。ちょっと休もうっと・・・」
・・・泣いていいですか?