八重に連なる想い(旧:多分かんこれ) 作:キッド@水雷戦隊司令
オーライオーライ・・・もう少し右!右!!
キュイーン・・・ガガガガガ・・・
えーと、何でこんな事になってるんでしょうか。
私は今、初春さんと一緒に食堂と厨房だった部屋を見てます。
昨晩、提督に厨房へ案内して欲しいといわれてみんなと一緒にご案内したのですが、一通りあちこち見て回っていたかと思ったら、そのままどこかへ連絡を取って・・・
そして、その日の夕飯を自分が作ると言って私達にご馳走してくれたのだけど。
「あのお野菜のスープ美味しかったなぁ」
「お主もやはりそう思うか?」
あ、思わず声に出ちゃった。
「はい!赤い色だったので辛いかと思ったのですが全然そんな事無くて、お野菜が柔らかくてすごく美味しかったです」
「提督に聞いたのじゃが、あれは「みねすとろーね」と言うものらしいの」
「そんな名前だったのですね、初めて聞きました」
途端に、初春さんがジト目になり私をじっと見る。
「昨晩提督が振舞ってくれた際に聞いたのじゃが、やはりおぬしは聞いておらんかったようじゃの」
「あう~」
実は、一口食べた後余りの美味しさに夢中になってしまって、食べながらで良いと言われていたのでついつい夢中になっちゃってたなんて言えません。
「そういえばものすごい勢いで食べておったし、珍しくお代わりまでしておったのう」
初春さんが苦笑するのと同時に顔が熱くなるのが分かる。
「だって、生まれてから昨日まであんなに美味しい物食べた事無かったですし、それに、あんなに優しくしてもらったのも初めてです」
そう、私は元々ここの鎮守府へと配備される初期艦として大本営で建造されました。
そして、秘書艦として司令官と一緒に着任したのですが。
その後私は・・・
「五月雨、五月雨!」
「また思い出しておるのか?」
初春さんが心配そうにこっちを覗き込みながら声をかけてくれていました。
「忘れなきゃダメだと思うんですけど、どうしても忘れられなくて」
ふと手を見ると、震えていた。
「そうじゃな、わらわも思い出したくない事を思い出してしまうことがある」
前を向いたまま話す初春さん。
「案ずるな、ここに居る艦娘は皆消すに消せぬ傷を抱えておるのじゃからな」
そういって微笑んでくれる顔は僅かに引きつっているように見えてちゃいました。
きっと、初春さん、龍田さん、夕立ちゃんに時雨ちゃん、叢雲ちゃんも私と同じ。
もうきっと、人間の為に砲を取る事は出来ない。
龍田さんの話だと、処分すると他の艦娘に知られる事になりそれだと色々と不都合があるから、こうして使われなくなった鎮守府で隔離してあるのだとか。
「おーい、五月雨、初春」
あ、この声は提督だ。
昨日、夕飯も終わり一緒に片づけを手伝った後、提督さんが私達全員を見ながら「君たちの事を私は何も知らない」と言って、その後色々聞きたいと言われました。
「提督経験はあるので、君たちの名前と艦種は理解したよ。だけど君たち自身の事はまだ何も知らないからね」
「だから、まずは、これだけはして欲しくないと言う物があったら是非教えて欲しい」
「何度も言うようだけど、君たちは私にとって大切な仲間だからね」
「私はそこまでの事はないかなぁ」
最初に答えたのは龍田さんだ。
「あれ、そうなの?」
龍田さんはそれを聞くとすっと目を細める。
「だって、その時は落としますから~」
「はい、全力で気をつけます!」
だらだらと冷や汗をかく提督とそれを見る龍田さん。
あれ?上下関係が逆、ですよね?
「ホント、貴方は変な人ね~」
「変じゃないよ!?」
「絶対!変です!!」
あ、思わず声が出ちゃったけど、みんなも同じ事を思っていたみたい。
「綺麗にハモったね、仲が良いようで嬉しいよ」
提督、涙流しながら喜んでる。そんなに嬉しかったのかな?
「私も特には無いわ、強いて言えば一つ」
叢雲ちゃんが立ち上がると提督に詰め寄る。
「私達全員に対して、声をかけるときは離れた所からちゃんと声をかけなさいよね」
「叢雲ちゃん・・・」
「いい?あんた絶対守りなさいよ!」
「うん?」
「なんでかは、今は言えないわ」
「だけどもし破ったら、酸素魚雷食らわせるわよ」
「はは、わかった。覚悟しておくよ」
あの時提督はどんな顔をしたんだろう、思わず顔を伏せてしまったからわかんないや。
ただ───
叢雲ちゃんありがとう───
そういえば提督、何も聞かずに分かったって言ってくれた、あれは嬉しかったな。
「五月雨と初春、こんな所で何してるの?」
「それはこっちの台詞じゃ。提督、これは一体どういうことじゃ?」
「ああ、だって厨房も食堂も結構ぼろかったからね。だから知り合いの伝手を頼って改装してもらってんだ。みんな腕は良いから今日中には終わると思うよ」
「ご飯は大事だからね。綺麗な厨房と食堂で、美味しく食べたほうが元気出るでしょ?」
そこまで聞いたところで初春さんが眉をひそめる。
「それはそうじゃが、費用はどうしたんじゃ?タダではあるまい」
「だから知り合いの伝手って言ったでしょ。大本営にも知り合いは居るんだよ」
そう言ってにやっと笑う提督。
「じゃ、私はちょっと工廠へ言ってくるよ。龍田に呼ばれてるしね」
そういい残すと、足早に立ち去っていった。
分かります、龍田さん怒らすと怖いですもんね。
「あいつ、相変わらずああいうところ嘘つきやがるな」
「うひゃあっ!?」
「ああ、すまんすまん。驚かせちまったな」
後ろから不意にかけられた声に飛び上がりそうなくらい驚いた。
心臓がばくばくするのを手で押さえつつ振り返ると、そこには頭にタオルを巻いた業者の人がいた。
「全く、全部自分で手配したってちゃんと言えば周りの評価も上がるだろうに」
「ええっ!?」
「元々あいつとは仕事仲間なんだけどな」
提督が業者さんの仕事仲間?ええっ?
「こいつは多分あいつの設計だろうな。こんな細かくて現場を知り尽くしたような図面は、俺が知る限りあいつしか書けん筈だ」
そう言って、私が両手を広げたより大きな紙をばさっと広げる
「そうなんですか?」
恐る恐る聞いてみると、業者はニカッと笑う。
「お嬢ちゃん達愛されてるぜ。あいつがここまで気合入れて書いた図面寄越したのはいつ振りだ」
そういって、広げた紙を床に置いて見せてくれる。
愛されてると言われて顔が熱くなるのが分かったので、あわてて広げられた紙を見る事でごまかす。
何が書いてあるのか全く分からなかったけど、そこら中にびっしりと手書きで何か書いてあった。
あまりに細かくて目がちかちかする。
「これが照明、これがコンセント、で、什器に机、椅子、こんなに細かく指定してあるのは久しぶりだ」
そう言って紙に書いてある線をひとつづつ指差してくれるけど、書いてある線が多すぎてどれを指してるのかさえ分からなかった。
「ただ、ここまで細かく書いてあるって事は、あいつがここを相当大事にしているって事だな」
「まぁ、おかげで俺たちはとんでもなくめんどくさいんだけどな~」
そういうとがはははっと笑う。
「まぁ、俺らもあいつから金もらうからにはそれ以上のものを仕上げてやる。それが俺らからのあいつへの恩返しだ」
「おーい親方~、ちょっといいっすか!!」
「おうわりい、今行く!んじゃ、完成を楽しみにしてな」
そう言って業者の人はまた仕事へと戻っていった。
あれぇ?そういえば・・・
「ねえ、初春さん・・・」
「ん?何じゃ?」
「あの人、今、提督からお金もらうって言いました、よね?」
「嘘付いた、とも言っておったな」
二人で顔を見合わせると、うなずく。
後で龍田さんに聞いてみようっと。
自分のイメージを綺麗な文章に起こすって、難しいですね。
2500文字平均のつもりが3000文字超えてしまいました。
そんな事より、ミネストローネって美味しく作るの意外と難しいです。
野菜を煮崩さずに柔らかく仕上げるのってどうすればいいんでしょうかね。
あ、書いてたらお腹が空いてきました。
「おぬしが食べたい物を、作中に出すのはどうかと思うぞ?」