八重に連なる想い(旧:多分かんこれ)   作:キッド@水雷戦隊司令

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第6話

龍田に呼ばれて工廠の入り口まで来たんだけど、なんだこれ。

普通、建物には扉があるよね?何で扉が無いんだろう。

いや、デザインとして敢えて付けていない建物も勿論あるんだけど、これはどう見ても扉があった跡だと思うんだよな。

もしや、これはバカには見えない的な扉だっていうの?

いやいや、流石にないない。

 

「中にも入らずに、そんな所で何をしてるのかなぁ~?」

「うひぁひゅ!」

「ぷっ」

突然後ろから声をかけられて、思わず変な叫び声を上げてしまった。

「どうせ、しょうもない事を考えてたんでしょ~」

「い、いやいやいや、そんな事はないですよ?」

「バカには見えない扉とか何とか考えてたんじゃないですか~」

「何で分かったんですか!?」

「だって顔に書いてありましたから~」

「んなっ!?」

「うふふ~」

 

まだ殆ど分からないけど、ほんの少しだけ龍田の事が分かった気がする。

この龍田は、本当に恐ろしいほどに周りを良く見て先の展開をよく読んでる。

全ての龍田がこうじゃないんだろうけど、少なくともここに居る龍田の観察眼と洞察力では、並の司令官じゃ到底扱いきれないだろう。

そして、人間は弱い。

自分より能力のある者を妬み、疎み、恐怖する。

なるほど、棄てられたってのはそういう事なのかな。

という事は、他の子たちも多かれ少なかれ何かあるはず。

 

「・・・く、・・・いとく」

「提督~?」

「ん?」

「何度声をかけても返事がないから、立ったまま寝てるのかと思ったわ~」

「ごめんごめん、考え事始めるとどうも没頭してしまうらしいんだ」

「しょうがないわね~、じゃあまた説明するからちゃんと聞いてくださいね~」

龍田が言うには、ここの鎮守府には妖精さんが居ないらしい。

いや、正確には姿が見えなくなってしまった、らしい。

居なくなってしまったわけじゃないと言い切れるのは、装備開発用の機械類、建造用のドック、入渠用のドック、全てが稼動可能な状態にある為だ。

一つずつ龍田と一緒に見て回ったが、確かに全てが動かせる状態だった。

じゃあ何で消えてしまったんだろう。

 

いや、もしかしたら消えたんじゃなくて───

 

───そうね、多分その想像であってると思うよ。

 

「ん?龍田何か言った?」

「いいえ~、私は何も~?」

 

───ふふ、見極めさせてもらうね。

 

工廠の中を吹き抜ける風に乗って、また声が聞こえた気がしたが見回してもやはり誰も居なかった。

 

「龍田、こんな所におったのか。って、提督も一緒なのじゃな」

「おや?初春じゃないか」

「あ、あの。こんにちは・・・」

「こんにちは、五月雨も一緒なんだね。二人揃ってどうしたの?」

「龍田に聞いてみようかと思っておったのじゃが、提督も居るなら話は早いの」

「ん?何かあったの?」

「いや、先ほど食堂と厨房を見ておったじゃろう」

「そういや、二人して珍しそうに見てたね」

「うむ、その後作業してる人から少し聞いた事があっての」

うん?あいつまた変な事吹き込んだんじゃないだろうな。腕はいいんだけど相変わらず口の悪さはどうにかならんもんかな。

「あの改装工事、提督が設計から費用負担まで全部やったというのはほんとかや?」

げ、あいつばらしやがったのか!

「何ゆえおぬしがそこまでする?龍田じゃなくとも何か裏があると勘ぐらずにはおれんぞ」

「あー、別に裏があるってわけじゃないんだよ」

「昨晩使ってみて、だいぶ使いにくかったからね」

「まぁ、確かにわらわ達もかなり不便はしておったのう」

「だろうね」

「じゃが、それだけではあるまい?」

「ん~、言わなきゃダメ?」

「ダメじゃ」

「ちょっと恥ずかしいんだけどな」

「なら、なお更聞かせてもらわなきゃね~」

「あの、私も知りたいです」

「三人ともなのか、まぁたいした理由じゃないんだけどね」

「単に、君たちに毎日を快適に過ごして欲しい、ただそれだけだよ」

「それにしては、投資が多すぎる気がするわよ~?」

「そりゃ自分が納得いく出来じゃなのに、君たちにはさあどうぞとは言えないからね」

三人に背中を向けながら続ける。

「前にも言ったけど君たちは大切な仲間で、ここは私を含めて全員の家なんだ」

「帰ってきたいと思えない家には住まわせたくないし、一緒に暮らしていく以上絶対に衝突はあるだろうけど、基本笑顔で過ごしてもらいたい」

「つまり、私の単なるわがままなんだよね」

 

後ろ手に組んだ袖を誰かが引っ張る。

振り返った先に居たのは五月雨だった。

「あの、提督・・・」

「なんだい?」

「わ、私、一生懸命頑張りますね!」

そういうなり、走り去って言ってしま・・・

「きゃん」

あ、入り口でこけた。

立ち上がると、また走っていく。

「あらあら、これは~」

「そうじゃのう、これは・・・」

「二人とも一体どうしたの?」

「五月雨があんなにハッキリと物を言ったのはいつ振りじゃろうか」

「そうね~、とっても珍しいのよ~」

五月雨って、そんなに引っ込み思案な艦娘だっけ?

 

「実はのう・・・」

初春がぽつりと漏らす。

「五月雨とわらわは、この鎮守府の設立当初からここに居るんじゃ」

「ええっ!?」

「私も聞いた時はびっくりしたわ~」

「そんな事ってありえるの?」

「普通ならありえぬ話じゃ、解体された鎮守府に居た艦娘は例外なく初期化され再配置される、じゃがそもそもここ普通の鎮守府では無かったからの」

「普通じゃない?」

「今はまだ語れぬ、が、いずれ機会があればまた」

気が付くと初春は、工廠のドックから見える海の遥か彼方をぼんやりと見ていた。

 

どうやら私が思っていた以上に深い闇を抱えているみたいだ。

無理に聞き出してもろくな結果にはならない。

彼女たちが心を開いてくれれば、多分話してくれるだろうと今は信じよう。

 

ここがみんなの再出発の場所になれば、こんな嬉しい事はない。

 

 

───そう、それが私と彼女達の願い。




作者です。
最近仕事が忙しかったせいかものすごく筆が遅いです。

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