八重に連なる想い(旧:多分かんこれ) 作:キッド@水雷戦隊司令
※9/26 表現を変えたり等、若干修正と変更を行いました。
「うーん・・・」
結局龍田との話しは何の進展も無く、あまり遅くなってもいけないということで解散し、いつも通り皆で夕飯を食べた後に外をぶらぶらと歩いていたのだが・・・
今は夜半過ぎ位だろうか、鎮守府から海へと歩いてくる影が見えた。
鎮守府内で私が姿を見るのは、今のところあの6人しか居ない。
「まさか、敵じゃないだろうな・・・」
深海棲艦が上陸するなんて話は聞いた事が無いが、聞いた事が無ければ絶対に無いという保障は無い。
丁度目の前に立っていた樹の陰に身を隠し様子を伺うと同時に懐の銃へと手を伸ばした。
S&W M945───
私が以前指揮を執っていた鎮守府へ着任する時の祝いに、と大将殿が直々に下さった物だ。
コンパクトながら非常に高い命中精度を誇っており非常に扱いやすい。
なので、以前薦められた事もあって常に身に着けている。
「女・・・?」
いや、女と呼ぶには背が低すぎる気がする。
駆逐艦の子かとも思ったが、あんな髪の長い子居たかなあ。
幸い港までは石畳だったので、距離を取って後を尾ける。
こうやって夜中にこっそり行動するのなんて、いつぶりだろう。
島に居た頃は良く加賀の目を盗んで釣りに行っていたっけ。
っと、今はそんな事考えてる時じゃないな。
ついつい思い出に浸りかけるが、軽く頭を振って意識を現実に引き戻す。
月が雲に隠れた為辺りが一層暗くなる。
かろうじて見える影を目で追うと、女の影は港を抜け敷地の片隅へと向かっているようだ。
「あそこは、前見た時には岩が一つあるだけだったんだけど・・・あっ」
影が岩に腰掛けたように見えた、そのとき雲が切れ月明かりが差し込む。
薄い紫の足首まで伸びた長い髪。髪型が違うから分からなかったが、多分間違いないだろう。
銃をホルスターにしまうと真っ直ぐ人影の方へと歩いていく。
もう隠れる必要も無い。
ざりっざりっと歩く時に靴が石畳を擦る音が響く。
「なんじゃ提督、こんな時間にどうしたんじゃ?」
影の正体はやはり初春だった。
私が近づく音に気づいたのだろう、こちらを振り向く事も無く声を掛けてくる。
「もし私が敵だったらどうするんだい?」
私が冗談交じりに発した問いに対し、予想外の返事が返ってくる。
「案ずるな、提督だという事は足音が聞こえた時から視ておったからの」
「視ていた?」
あっと小さく声を上げると初春がこっちを見る。
その顔には、月明かりでも分かるほどにくっきりと濡れた跡が付いている。
「お前、泣いていたのか?」
「ふふ、わらわが涙するのはおかしいかや?」
「すまん、そういうつもりじゃ無かったんだが、ちょっと予想外だったもんでな」
「ふふふ、失礼な奴じゃのう」
「すまん・・・」
そう言いながらも怒った素振りは微塵も感じられず、むしろ茶化す為に言った様にも聞こえた。
初春は、岸壁まで歩いていくと座り込み隣へ座るように促す。
「おぬしもここへ座らんか?」
わざわざそう言うという事は、何か話でもあるんだろう。
私が促されるままに隣へ行くと、こちらを見上げてくる。
「もしおぬしさえ良ければ、少し昔話に付き合ってくれんかの」
「もちろん、いいに決まってる」
初春の隣に並んで腰を下ろすと、頭を預けるように寄りかかってきた。
「ありがとう」
昼間とはまるで別人のような弱弱しい声で、礼を言うのが聞こえた。
「この鎮守府はの・・・」
初春が次に告げた言葉は、私の予想の斜め上をいく内容だった。
「艦娘の強化と隷属化の為の、実験場じゃったのよ」
艦娘の強化───
深海棲艦は一般的には成長はしないが、一部にelite、flagship、鬼、姫等の上位個体が存在する事が知られている。
上位個体は同じ艦種であっても、文字道理桁違いの戦闘力を持ち、flagship級ともなれば戦艦であっても一撃で中大破させられる事もあるという。
一方で、艦娘は錬度という基準があり成長する。
ただし成長するという事は、最初から強力な力を持っているわけでは無いという事だ。
時間を掛け、個々に研鑽を重ね、高性能な装備を持つ事で初めてeliteやflagshipといった深海棲艦と互角に戦えるようになる。
その錬度や性能の向上を、深海棲艦の身体と融合させる事により無理やり行ってしまう。
そう、それは正に───人体実験。
殆どの者は身体が耐え切れず深海棲艦と化しあるいは正気を失い、結果として標的艦もしくは雷撃処分とされたが。
だけど極稀に上手く適合する者も居たらしい。
そして艦娘の隷属化───
強化をする事により通常より強力な力を得た艦娘を、人間が思いのままに扱う為の技術。
特殊な装置を艤装に組み込む事により任意のタイミングで強制的に身体のコントロールを奪う。
もちろん、本人の意識はそのままで。
それらの行為に耐え切り、数少ない上手くいった例が初春であり、五月雨なのだ、と。
あまりに衝撃的な内容に私が呆然としていると、初春が突然立ち上がり服を脱ぎ始める。
「何やってるんだ?」
いくら月が翳っているとは言え、急に脱ぐなんて。
「黙って見ておれ」
それだけ言って着ていたワンピース状の寝巻きを脱ぐと、そのまま足元にすとんと落とし立ち上がる。
「これが今のわらわじゃ」
そう言って私に背を向けた。
翳っていた月が再び顔を出すと、月明かりが初春の身体を照らす。
私はそれを見て思わず息を呑んだ。
背中に無数に走る傷跡と、所々に見える本来の美しい肌とは違う黒光し脈動する肉の塊。
「この、醜い姿が、今のわらわ、じゃ」
そう呟くと、後ろ向きのまますとんと座り込んでしまう。
肩がわずかに上下している所を見ると、泣いているのだろう。
私は初春に掛ける言葉が見つからず、かといってそのままにしておくのも居たたまれずにそっと後ろから抱きしめた。
後ろから両肩を抱きかかえるように手を回すと、びくりと身体が動く。
「おぬし、何とも思わぬのか?」
「何が?」
「わらわの身体じゃ、あんなモノを見たら触れる事すら躊躇われるじゃろう」
「そういうことか、びっくりはしたがまぁそれだけだな」
「嫌だったかな」
「そうじゃなくてじゃな・・・まぁよい」
そういうと、そのままもたれかかって来る。
「おぬし、暖かいのう」
「そりゃ、こんな所で脱いだら流石に冷えるって」
「このばかものが・・・」
そこかしこに浮かんでいた雲は全て消え、満天の星空と金色に輝く月が一つ。
凪いだ海に映り込む景色はとても綺麗だ。
不意に海から風が吹く。
「そろそろ服を着なさい、本当に風邪を引いてしまう」
「はぁ・・・それもそうじゃな」
「じゃ、私は後ろを向いてるから着たら教えてな」
「それこそ今更じゃ、裸より恥ずかしいモノを見せたのじゃぞ?」
「それでも、だよ」
「まったく、おぬしはつくづく変わっておるのう」
ぶつぶつ言いながらも服を着始める初春。
「なっ!?」
「ん?どうした?」
短く上がる声に疑問を抱き振り向く。
服を着終えた初春は、海の方を向いて何かを見ているようだった。
「どうした、初春?」
「提督、逃げるんじゃ」
「どういうことだ?」
「何故じゃ、今まで一度もこんな所まで来た事はないというに」
「初春!何が見える!?」
「深海棲艦じゃ、数はそう多うは無いが・・・」
「そうか」
私は覚悟を決めた。
いや、覚悟なんて当の昔に決まっている。
彼女達に救われた命だが、だからこそここに居る初春や、その他の皆を逃がす為に使う。
あの時一緒に逝くことが出来なかったんだ、これなら赦してくれるかい?
懐のM945を取り出すとマガジンを確認する。
スチールジャケットとJSPを2発ワンセットで3セットを1マガジンでマガジンの予備は2つ。
倒せる保障は無いが注意を引く事は出来るし、上手く目等の急所を狙えばそれなりのダメージにはなるだろう。
マガジンをグリップに戻し、岩から飛び降りる。
「待て、提督!おぬし何をする気じゃ!?」
「初春、全員起こして執務棟の地下室へ避難しなさい」
「おぬし何を考えておるのじゃ!!」
「私はここで時間を稼ぐよ」
「ならば、わらわが残るのが筋じゃ」
「お前たちは艤装が無いだろう」
「そ、それはそうじゃが」
「私にはこれがある」
そう言ってM945を見せる。
「そんなモノでどうにかできる筈も無かろう!」
「出来る出来ないじゃない、やるかやらないかだよ」
「こんなモノでも無いよりはマシだし艤装の無いお前たちを出撃させない、そう決めたのは私だ」
「言うことを聞きなさい、初春」
「嫌じゃ!また失うのはわらわは嫌なのじゃ!!」
見ると、両目に一杯の涙を浮かべていた。
まるで駄々っ子のような初春の頭をあやすように撫でる
「頼むから、聞き分けてくれないかな」
「全く、夜中に君達は何やってるのさ」
「ね、私が言ったとおりの人だったっぽい」
後ろを振り向くと、そこには時雨と夕立が立っていた。
それぞれ手には12.7cm連装砲を持ち、両足には61cm4連装魚雷を付け、背中には煙突を模した艤装を背負った姿で・・・
すみません、ちょっと展開が早すぎんよと思われるかもしれません。
この辺の話をじっくり練るのは、作者のメンタル的にちょっと無理なのです。
でも、どうしても避けては通れないので、ちょっと駆け足気味で話を進めてしまいました。
と言うことで、そろそろ話が進んでまいります。
ほのぼの系を早く書きたい!!
クオリティ最初から低いけど、ここしばらくさらに下がってる気が・・・。
そろそろ駄文タグつけたほうがいいですかね?