それは中学1年生の冬、3月のことだった。
ここ北の大地、北海道札幌市はこの時期は雪解けが徐々に始まり、市街地にはほとんど雪は残っていないがそれでも吹き付ける風は非常に寒い。なので、この時期、本州はサクラサクの時期だが、北海道ではサクラどころではなく、厚着をして寒さを堪える生活を送っている。
そんな札幌市ススキノの4番街、信号待ちをしている間、俺たちの視界に入ったのは街頭ビジョンに映し出された秋葉原だった。ラブライブで見事優勝を果たしたμ’sのパフォーマンスが放映されていたのである。
「おっ、見ろよ。μ’sだぜ、カイ。」
μ’sと言えばもはや日本中で知らない人はいないだろう。3月上旬にはアメリカ、ニューヨークに渡り、公演を大成功に収めてきたことでも有名である。この公演をテレビで放映されたことによりμ’sの知名度は全国的になった。スポーツ紙の一面に載るばかりか、テレビのワイドショーでも取り上げられるようになった。もはやμ’sの名前を聞かない日は無いといっても過言ではない。
「知ってますよ、そんなこと。」
俺、後藤田 海(ごとうだ かい)に話しかけてきたのは、一つ上の先輩、波佐間 敦史(はざま あつし)だ。先輩とは昔からのつきあいがあり、いまでもこうして一緒にいることが多い。
「お前は誰が好きなんだ?俺はやっぱり高坂穂乃果ちゃんが好きだなーいつも元気いっぱいで、彼女見ていると、俺たちも元気になれる感じがして。」
「へー先輩ああいう女の子が好きなんですねー。」
そう言ってきたのは、同じく昔からつきあいのある同学年の女の子、久我原 優海(くがはら ゆうみ)だ。
「そういうお前は誰が好きなんだよ。」
「え?私も選ぶの?」
優美はしばらく街頭ビジョンをみつめてぼそっとつぶやく。
「やっぱり絢瀬絵里ちゃんですかね。クォーターといえどあの美貌は反則です。とにかくうらやましい・・・。」
「へーああいうスタイルにあこがれていたんだ。」
「悪い!?っていうか、今のセクハラじゃないの!?セクハラ!」
「ごめんごめん。」
優美に平謝りする俺。
「そういうカイは誰が好みなの?」
「え、俺も言うのか?」
「当然でしょ。あんただけ言わないのは反則よ!」
そう言って詰め寄る優美。うう、優美のこういう仕草はちょっと苦手だ・・・。
「・・・西木野真姫ちゃん。」
「へー以外。」
「お前、変わった趣味しているんだな。」
「わ、悪いですか!?」
「いいや。お、信号が変わった。ほら、行くぞ。寒いからどこかラーメン食べに行こうぜ。」
「あ、賛成!!どこ行きます?」
そう言って、横断歩道を渡る俺たち。
そのとき、街頭ビジョンから聞こえてきたのは、
μ’sが3月いっぱいで活動を終えるという、高坂穂乃果の言葉だった。