『ハァ……』
九尾のため息が虚空に消えていく。
九尾襲来事件から早くも半年が過ぎようとしていた。
里は未だに事件の痛々しさが残る有り様であったが、それでも、復興に向けて行動している人々が、瓦礫のなかを往き来していた。
九尾はナルトの中からそれを見て、複雑な思いだった。自分の家族を殺され、我を忘れてこの里を壊滅させかけた自分が何故、もう一度言うが何故!赤仔をあやしているのかと。
『まぁ、自業自得なんだがの』
だって、あのくそ生意気な若僧と、約束…というか契約をしたのだから。
――――――ナルトの側にいてやってほしい――――――
いや、欲しいとか頼みながら、あれはすでに脅迫だった。
少なからず、最強と謡われる己が思わず了承してしまうほど。
九尾は、また深いため息をつき、赤みがかった金をしている己の尻尾にくるまれ眠っているナルトを見やる。
里では九尾は、四代目火影により、孤児のナルトに封印されたことになっている。そのため、里の意見で、ナルトは火影邸の奥深く、厳重な封印がなされた殺風景な部屋で暮らしている。
日に二度与えられる食事には必ず毒が入っていた。毎回、死んでいないナルトのかおを見ては
《さっさと死ねばいいのに。バケギツネ》
《毒が効かねぇなんてな。バケモノが》
《バケギツネ》《バケモノ》………
下らない、愚かだと九尾は思った。里は己とナルトを同一視している。
こんなヤツらに己の家族はなぶり殺されたのかと思うと、今でも腸が煮えくり返る思いがする。
【……あー………あぅー………】
キュッと九尾の尻尾をつかみながらナルトは目を開ける。その澄んだ空色の瞳を見て、九尾は考えていたことを頭の隅に追いやり、幼く、自我を持たないナルトに微笑みかける。
『どうしたのじゃ、ナルト』
そっと頭を撫でてやると、安心してか、ナルトはまた目をつむる。
いま、九尾は人間に変化している。腰まである赤みがかった金髪、つり上がった目のなかで輝く緋色の瞳。簡素な作りの着物を身に纏い、腰まであるその髪をうなじで結っている。(ちなみに、九尾に性別はない。)勿論九本の尻尾は健在している。……必要になれば隠せるが、本人曰く
『めんどくさい。それにナルトも喜んでおるからな。良いのじゃ』
ということらしい。
獣の姿では、敵に見つかりやすくなる上、ナルトにも怖がられてしまうとのことで、変化したらしい。
規則正しい寝息をたてるナルトを、九尾は慈愛の籠った目で見つめる。
『我が仔にそっくりじゃの………』
もし己がこの里を襲わなければ、ナルトは父と母に見守られ、普通の子供として生きることができたのだろうか。
ふとそんな考えが頭をよぎり、整った顔を歪ませる。幾度となく人間の血を浴びた己が、この子を護りきれるのか。
夜か昼かもわからない、真っ白な空間には、微かな寝息だけが響いていた。
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