ソードアート・オンライン -シスコン投剣使い-(仮称)   作:石っこ

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英語とか作者はダメダメなので、もし間違っていたら教えてください。

2話目からもうサブタイトルに悩んでしまったというのは内緒話。


EP-01 Welcome to the game

 

「ん……」

 

 接続のための言葉を口にしてからいつものような、現実とは離れる感覚をおぼえた遥は何気なく目を閉じていた。脳内への視覚処理の影響か光がチラついて見えるという点もあるが。

それはさておき遥が目を開くと――

 

「うっわ……人多いな……」

 

 視界に広がる人々。遥の視界はほぼ人で埋め尽くされており、ここは始まりの町のはずではあるのだが実際には建物が視認できないので、今のところ判断のしようがない。

 

「おお……」

 

 とか時折聞こえてくる感嘆の声とか、確認できない遥にとってはうっとうしくてしょうがない。どいてくれ、などと控えめにではあるが怒気をはらませた声音と共に腕を使って人波をかき分ける。30人ほどの人を追い越しただろうか。遥はやっと人の群れの最前列へと出たようで、町の建物の外観を見ることができた。

 

「おぉ……」

 

 それを見た瞬間、遥も周囲に立って呆然とする有象無象と全く同じになった。感嘆の声を上げて、背の小さい人の目視と通行の邪魔をする存在。

 

 だがそれも仕方のないことであろう。目の前に広がった町並みは現実と遜色ない風景だったのだから。今まで再現しきれずにいた質感、その巨大ささえも現実とほとんど変わらない。唯一違和感をもつとすれば建物の材質だろうか。

 

あくまでファンタジー風ゲームであるこの《ソードアート・オンライン》ではゴツゴツとした岩が多く使われており、コンクリートなどといった建築物が見当たらない。もっとも遥自身そういったことに造詣深い方ではないため、認識を間違えているだけという可能性もあったが。

 

――不意にドン! と肩を押されて前につんのめった。突然の出来事にびっくりはするが遥は持ち前の冷静さで焦りもせず淡々と対応する。転びそうになるのは要は上半身が前に進もうとするのに対し下半身がついてきていない、そういうことだ。ならばと右足を大きく前に踏み込み左足を揃えて体勢を整える。

 

「邪魔だな、どけよ」

「あ、すいません」

 

 チッ という軽い舌打ちと共にこちらを見て悪態をつく男性プレイヤー。どうやらもう攻略……いや、そこまで高いレベルではないか。探索に乗り出すらしい。レべリングを行うにあたって必要なものでも買え揃えにいくのだろう。そうなると彼はMMORPGジャンルの経験者だろうか。MMORPGというものを実によく分かっている。もっともすでにゲーム内の時計を見れば1時20分ほどで出遅れた感はするが。

 

「女がこれをやるなんざ、世も末だね。ま、ネカマなのかもしれんが」

 

やれやれと言いながら先ほどの悪態をついた男は去って行った。それを引きとめて自分は現実でもこれとほぼ同一の容姿であることと、男性であることを長々と説明してもよかったが、そんなことに時間を掛けるのはバカらしく思えて、数瞬前までのばしていた手を下ろした。

 

「それにしても……」

 

 ――そんなに女っぽいか?

 彼は自分自身のアバターの身体を見下ろした。若干細めの体格に肩甲骨まで届こうかというほどの長い髪。あとは切れ長の瞳くらいだろうか。いや、瞳を思い出すのはやめよう。珪子との違いに悶絶するのはもう疲れた。

 

 遥本人は全く自分自身を女らしいなどと思ったことはない。中性的だと自己評価してはいるが、それは周りに言われ続けた結果だ。確かに精神は女々しいかもしれないけど と、一人で軽く自嘲。彼の思う女性像というのは珪子基準で考えられているので、可愛い系以外はあまり女性というカテゴリーにあてはめていないのだ。これからも解るように度々女性と間違われる遥は美しい系の女性と似ている……というわけである。

 

 そういった女性の守備範囲のせいで女性を同性だと思って接した末、相手に好かれて告白された結果、『女性だと思ってなかった』などという厳しい返しを真顔でしてしまったこともある。その後彼は、泣かせてしまった彼女の家に手土産をもって謝りにいくことになった。『おれ、妹が好きなんだ』という爆弾発言を添えて。

 

「おっと」

 

 後ろを見ればどうやら人が出現する時に起こる発光現象も治まったようだ(つまりログインする者がいない) それを皮切りにしたように人の大群が波のようになって押し流していく。

 

 それに巻き込まれてはたまらない遥は横道――路地に入った。一息つくとちょうどウインドウを操作しかけている少女――あくまで体格的にであるのとアバターをいじっている可能性はあるが――と出会った。

 

 早くもその少女はゲーム内でのアイテムでアバターを装飾しているようで頬に猫さながらの三本ヒゲのようなペイントが施されていた。彼女はこちらにチラリと視線を向け、一瞬びっくりした素振りを見せるとウインドウを操作していたであろう人差し指を前へと倒した。

 

 光とともに装備が切り替わり、彼女はローブを装備しいかにもな地味っぽい格好になった。それを眺めつつ遥は『装備変更の時はそんな風になるんだな』などと感心を覚えつつ、ひとつの懸念事項について気付いた。

 

 もし珪子がさっきの人の波に流されてしまっていたとしたら? しっかり者を装うと努力はするが結局しっかり者になりきれないということを知っている遥は、背筋に冷や汗が流れた。

 

「……おれとしたことが!」

 

 言うやいなや路地から飛び出て本道へと戻って行った。それを呆然とした表情で見送り、結局何がなんだかわからない内に置いてかれた感の残る彼女――情報屋のアルゴは小さく呟いた。

 

「何なんだヨ、イッタイ」

 

 さきほどのプレイヤーの容姿の情報は売れるかな と考えつつ。

 

 

 

 

 

 本道に戻った遥はまず自分達が現れた初めの地点らしきところを見回した。巻き込まれた可能性も大いにあるが、それを追いかけた挙句結局ここに留まってましたというのは洒落にならない。

 

 果たして珪子は見つかった。きょろきょろと辺りを見回す様が実に珪子らしい。おそらく自分を探してくれているのだろうと思うと、ちょっと嬉しくなった。そして近付いて声をかけようとし――

 

(――な、なんだ?)

 

 突然遥は顔が紅潮したような感覚を受けた。脳に伝えられる熱量はきっと間違いでなく、本当に自分の顔が赤くなっているのだと感じさせた。

 

(どうして、なぜ――?)

 

 遥は自問する。珪子をこれ以上待たせるのも嫌であるため思考を加速させる。2秒後には3パターンほど思いつきその中にしっくりくるものがあった。

 そう、ナーヴギアの感情の過剰表現である。どこかで聞いたような覚えがあった。VR系のゲームで似たような事例があったと。確か少し悲しみを覚えただけなのに涙を流してしまったとか。それと同様に自分はこの程度の嬉しさで顔を赤らめてしまったというのか――。

 

(これは迂闊に喜んでばかりいられないぞ)

 

 遥は自分を引き締めるように心で呟いた。妹に不甲斐ない姿など見せたくない。であるからして、泣いてるところなど見せないように感情の抑制くらいできるようにしておかねば。遥は堅く決意をしたのだった。

 

「あ、お兄ちゃん」

 

 思考の海に沈んでいた遥に天の一声がかかる。遥の思考は一気に頂点まで引きずり上げられ、さきほどまで考えていたことなどすっかり忘れてしまった。

 

「よう珪子……ここでは『シリカ』かな」

「そうだねお兄ちゃん」

「よく考えたらシリカのおれへの呼び方は変わらないんだな」

「『ハルカ』くんって呼ばれたいの?」

 

 首を傾げるシリカにもうちょっとその表情をさせたくて遥は少しだけ迷っているフリをした。心では言われてから一瞬で受け答えは完了している。

 当然遥の心の内のことなどわかるはずもないので、シリカは返事をしない兄にちょっとだけ不機嫌そうになると、それを見計らったように(実際計ったのだが)遥は返事をした。

 

「いや、できればお兄ちゃんのままでいてくれ」

「そう?」

 

 ハルカくんと呼ばれるのもアリにはアリなのだが、妹という印象が薄れてしまう気がする。シスコンである彼にはやはりお兄ちゃんという呼ばれ方が一番だった。

 珪子はそれに対し一瞬疑問符を浮かべたものの、すぐに頷くと遥と手を繋いだ。

 そのあまりの破壊力に、

 

「じゃあお兄ちゃん、私にご指導(レクチャー)お願いします!」

「任せろ、我が最愛の妹よ!」

 

 VRMMOなんてジャンルは初めてのくせに遥が見栄を張って任せろといったのも致し方ないことであろう。

 

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