東方漫遊記 作:MCS
アドバイスもお待ちしております。
今は夏、ジリジリと肌を刺すような日光に悶えつつ、
俺は自転車のペダルを踏みしめ、帰路に着いていた。
「は、早く帰らねぇと...。」
俺、戸田 隆之介には急いでいる理由がある、それは......
「せっかく買った100名限定のアイスが溶けちまう!」
このクソ暑い中で大学の講義をふけて、わざわざ買ったってのに台無しにするわけにはいかんのだ。
「うおおおお!」
アイスのことを考えるとより一層ペダルに力が入る。そうなると、スピードが上がるのは必然。この時の俺は周りが見えてなかったらしい、突然現れた人影に対応できなかった。
「ヤベッ...!」
咄嗟にブレーキをかけるがもう遅い、衝撃に備えて目を瞑る
「......?」
だが、その突然現れた人影にぶつかることはなく、俺は変わらず爆走していた。
「あれ?おっかしいな...」
ブレーキをかけて後ろを振り向く。
そこには傘を指し、妙な服装に身を包み、佇んでいる女性らしき人がいた。
「あのーすいませーん、大丈夫ですかー?」
俺はその人の身を案じ、声をかけた。
するとその人は首だけをこちらに向け、振り返った。
その人の顔はそれはそれは綺麗だった。人形の様に整った顔に、眩しい金色の髪、絶世の美女というに相応しいと言える。
だが俺は、
「.........」
何も言わなかった、いや言えなかった。
その綺麗さから、俺にはこの人が人間ではない様にも思えてしまった。
俺が何も言えず、沈黙が続くと女性は曲がり角へ消えてしまった。
「なんだったんだ、あの人...」
このゴタゴタでアイスが溶けたのは言うまでもない。
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「っていうことがあった訳だか、お前はどう思う?」
ここは俺の通っている大学の食堂、ここで俺は日替わり定食をムシャムシャと食べつつ、ゴツい体に、似合わない眼鏡を掛けた一人の大男に昨日の話をしていた。
「いや、どうって聞かれても...、ってかお前昨日そんなことしてたのか...。」
こいつは幼馴染みの高橋 彰、俺のいい玩具だ
「は?」
「な、なんだよ...。」
「いや、なんか失礼なこと言われた気がして。」
「ナニイッテルノカワカリマセーン。」
とまぁ、かなり勘が鋭い。
「...で?それからなんかあったのかよ。」
彰が頬杖をつきながら、心底面倒くさそうに言った。まったく、なんだその態度は。
「いや別になんも無いんだけどさ。」
彰は頬杖をついていた手から顔を滑らせ、そのまま机に頭をぶつけた。ズコッという擬音が一番似合うであろう。
「なんも無いのかよ!...ストーカーとかではないのか?」
「...俺に限ってそんなことあると思うか。」
俺と彰の間に変な空気が流れる。
「ないな...。」
「さっすが!勉強も出来て運動もできちゃう二枚目彰君は言うことが違うなー!!」
くっそ!やけ食いじゃやけ食い!
「...でも、知ってるか隆之介。」
俺が飯を掻きこんでいると不意に彰が口を開いた
「は?何が?」
「神隠しだよ、神隠し。」
「あー、聞いたことはあるな、ここら辺で結構あるんだっけ?」
確かにこの辺りでは神隠しの噂が絶えない、ある者は祟りと騒ぎ、ある者は誘拐犯による犯行だと豪語し、結局どの説でも証明することができてない。
「それが、新しい噂がたったらしい。」
「へー、どんなんだよ。」
「なんでも傘をさした女が変な空間にひきずりこむんだと。」
変な空間ねぇ、にわかには信じがたいが、その説が俺の中では一番有力だなぁ、実際それっぽいのと会ったし。
俺は残った肉団子の最後の一個を頬張り、
「よっしゃ、今日講義終わったら一緒にその女探そう、轢きそうになったこと謝りたいしな、拒否権は無い。」
「知ってた。」
「それじゃ早速準備じゃ!」
「うぃー。」
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とりあえず、その噂が多発する神社の鳥居の前に来ていた。
俺はライトやら、護身用の果物ナイフとか準備してきた訳だが......
「なんで彰君は虫取り網を持ってるのかな?」
「捕まえるって言ったらこれだろ。」
ドヤァと決める彰に顔面グーパンを叩き込みたかったが、これグッとこらえ
「お前が突っ込み役じゃん!なんで君がボケてんの!?なんだよ虫取り網って!お前はあれか!?あれなのか!?西表島に行きたいのか!?ムシキングにでもなりたいのかぁぁ!?」
ぜぇぜぇと急に慣れないことをした反動で肩で息をする俺とドン引きする彰
「まぁ、喧嘩は駄目よ?」
その間に一人の傘をさし、妙な服を着た女が割り込んできた。
「うわぁっ!」
俺は情けない声をあげて、咄嗟にその女から距離をとった。
「...誰だよあんた。」
彰は怯むことなく聞くが、返答は無い。ただニヤニヤと笑っているだけだった。
「この女...。」
俺は気付いた、この女昨日の...
彰も都市伝説の云われと同じ格好をしていることに気付いたのか、持っている虫取り網をグッと掴み、身構えた。
が、身構えただけだった。それ以上は体を動かせない、その女の目は全てを見通すようだった、蛇に睨まれた蛙とはまさにこのことだろう。
その圧倒的存在を前に俺は口を開いた。
「あんた......一体、」
最後までは言えなかった、突然下の地面にハサミで切れ込みをいれたのかのように亀裂が走ったからだ。
そのようなこと想像出来るわけもなく、俺たちは突如開いた別の空間に重力に従い、落ちていった。無数の目が存在する薄気味悪い空間に。
その時俺は確かに聞いた、脳の随まで染み渡る
「ようこそ。」
という囁きを。
読んでいただき、ありがとうごさいます。