東方漫遊記 作:MCS
「いつまで落ちてればいいんだ......」
俺はまだ気色の悪い空間を落ち続けていた。
「彰も見当たらねぇし、どうすりゃいいんだ...」
彰も途中までは一緒に落ちていたが、突然声が聞こえなくなり、それ以降姿を見ていない。
「あのクソ女め...次に会ったらたっぷりお礼してやらないとな......」
あの女に復讐を誓うと、その時一筋の光が見えた。
「おお?」
それが俺にとって希望か絶望かは分からない、だがこの空間から抜け出せるのは確かだ。
「死にませんように......」
自分の身に危険が降りかからないように必死に懇願しながら、その光に向けて落ちていった
「..........!?」
気がつくと俺は水の中にいた、それも海や湖ではない池というぐらいに浅い。
「ブハッ!...ここは?...」
パニックになった頭を整理して、その池から這い出る。
「庭......?」
辺りを見回すとよく手入れされた木や、盆栽が置いてあった
「なんだ...?ここは金持ちの家かなんかか?」
番犬でもいてもおかしくはないと思い、警戒するがどうやらその気配はない。
「とりあえず、ここは早くとんずらこいた方が良さそうだな。」
「誰だ貴様は。」
「...へ?」
後ろから女性の声が聞こえ、思わず間抜けな声をあげてしまう。
「誰だと聞いている、答えろ。」
ここで答えなければ、背中に当たっている冷たく、鋭い何かが、俺の体を貫くだろう。まさか番犬より厄介そうなのに会ってしまうとは。
「俺...いや私はですね......」
「...どうした、早く答えろ。」
俺はほとんど筋肉で出来ている頭をフル回転させ、なんとかこの場を切り抜ける手を考えた。
(あ、そうだ。)
「早くしてくれ、私は夕食の準備で忙しいんだ。」
「いや、私はここのご主人に用がありまして....」
「...何だと?幽々子様に...?」
「そうそう!ユユコ様にね!ちょっとした用事なんですが、
も、もうびっくりしちゃいましたよ~」
この屋敷に使用人がいても何らおかしくはない。
だから嘘をつかせてもらったが、信じてくれ!
「.........」
カチャリと背中に当てられていた物をおろした。
俺はタイミングを見計らい、そーっと後ろに体ごと振り向いた。
(うわぁお...)
目に入ってきたのはカチューシャを着けた、銀髪の女の子、その風貌にそぐわぬ日本刀、あとなんか精○みたいなやつが
女の子の後ろをフヨフヨと漂っていた。
「......」
女の子は黙りこくったままだ。
俺もしかして地雷踏んじゃった?
「あ、あのー......」
俺が気まずくなって話しかけると
「申し訳ございませぇん!!!」
鼓膜がいい音をたてて割れそうな位の声で謝罪してきた。
おまけに泣き始めた。
「ひっぐ...、幽々子様の客人とは...えぐっ...知らなかったのですぅ...ごめんなさいぃ...」
(俺、こんな状況に遭ったことない、俺、対処困る)
有能そうだったのに、このポンコツっぷりを見て思わず片言になるぐらい同様したが、俺の頭の中では結論は出ていた。
(誰かに見られたらヤバいよね......)
だってこれ俺が泣かしたみたいじゃーん
というわけで早速機嫌を取ることにする。
「って...!」
「この魂魄妖夢!腹を切って詫びを......!」
「待て待て待て待て!」
妖夢と名乗った少女がジャパニーズハラキリを行おうといていたので全力で止める。こんなところで昔の日本を見たくはない。
「しかし......」
涙ながらに弱々しく声を発する女の子に刀をしまわせ、おだててみる。元気が出るかどうかは謎だがやるしかない。
「落ち着いて下さいって!ほら、傷だって無い!寧ろ主人の為尽力しているんですから素晴らしいですよ!よっ!従者の鑑!」
(と、とりあえず出来る限りおだててみたけど......)
女の子はまだ泣いてはいるが、顔をあげて
「ほんどですが...?」
「ほんとほんと!」
すると、女の子は袖で涙をグシグシと拭いてキリッとした顔で
「すいません、取り乱しました。幽々子様に用があるんですね、私についてきてください!」
どうやら効果抜群のようだ。俺はホッと胸を撫で下ろすが
(この娘が使用人って大丈夫かこの屋敷...)
そうして俺は現金なポンコツ少女の後について、屋敷の中へと入っていった。
ありがとうございました