退屈
私は最近、同じ夢を見る。
いや、同じと言うべきではないか。
同じ世界での連続した夢を見る。
幻想郷という世界で、私はその世界を管理する巫女をしていた。
沢山の人や妖怪に囲まれて、
退屈そうに、けれど楽しく過ごしている。
私の名前は八雲霊夢。
女子高生である。
幼い頃に事故に遭い、両親は亡くなり私だけ生き残った。
そのときから、親戚である八雲紫さんのところでお世話になっている。
こういう話での私のような人間は、
往々にして嫌々引き取られてたらい回しにされるものだが、
私は幸運だったらしく、
紫さんは幼かった私を号泣しながら抱き締め、引き取ってくれた。
因みに紫さんは大企業の経営者なのだが、
先程の流れから分かるように、
金持ちにありきたりな傲慢な感じではなく異常なまでに善良である。
私は俗に言うところの天才である。
全国模試では全問正解で一位を取り、運動においてもできないことはない。
育ててくれている人は大金持ち。
おまけに宝くじを買えば、一等を当てる。
私は完璧だった。
皆が皆、私のことを羨み、妬んだ。
どこまでも私は完璧だった。
だけど、完璧過ぎた。
知っているだろうか。
何でもできるということは、どこまでも虚しいものなんだ。
全国の、未来を夢見て努力する高校生が目指す、模試での高成績。
努力の果てに辿り着いたなら飛び上がるほど嬉しいだろう。
感動のあまり涙を流すだろう。
だけど、それが簡単に手に入るとしたら?
まるで小テストで満点を取るかのように容易く手に入ったら?
そこに感動などありはしない。
全ての達成感は努力の果てにある。
逆に言えば、努力がなければ達成感は存在しない。
私がこの世界で努力を必要としたことはなかった。
私がこの世界で達成感を味わったことなどなかった。
この世界は私にとってはどこまでも退屈だった。
そんな人生に変化が訪れた。
夢だ。
幻想郷という世界での夢。
もう何ヶ月も続いてる夢。
向こうでも私は天才だった。
だけど、向こうの世界は思い通りにはならなかった。
私は17年と6ヶ月生きて、初めて努力し、達成感を得た。
快感だった。
ずっと言葉だけで認識していたものが私の中で咲いた。
私はよく眠るようになった。
あの夢を見よう。
そう思いながら、意識を手放す。
ある日、幻想郷でこんな話を聞いた。
『向こうの世界で忘れ去られたものは幻想と化し、この世界へ辿り着く』
私は直ぐに行動に移した。
紫さんや他の人達に申し訳ない気持ちを覚えながらも、
私は自分の願いの為に行動した。
私にはもう、この退屈な世界は耐えられなかった。
私は学校の屋上に立ち竦む。
夕陽を背に受け、風に長い髪を靡かせる。
私は何もない空中に歩み出す。
当然、体はバランスを崩し、大地に引き寄せられる。
下校時間を告げるトロイメライが響き渡る。
「さよなら世界」
私の意識は強い衝撃と共に消え失せる。
––––––––––––––––こんにちは、幻想郷。
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