外伝その三
美しい夕日がアメリカ西海岸カルフォルニア州サンディエゴの町中を照らしながら海岸線からゆっくりとその身を消えようとしていた。それを卯月はその美しい光景を目に焼き付けようと、超硬化対戦車ライフル用特殊ガラスのすぐ側まで近づき、その指を冷たくなったガラス面をそっと撫でる様に触れた。今、卯月が居る場所は世界最大の超広大な敷地面積を誇る『サイバーダイン・リサーチ・システムズ』の一角に聳える高さ987.95メートルの最上階の特別室の一室であった。
あれから卯月は、『サイバーダイン・リサーチ・システムズ』内の文化芸能部門内の設備などをじっくりと時間をかけて見学した。一連の見学をある程度終えた時にはゆっくりと日が落ちている時間であった。
「島村卯月さん。今日の見学はどうでしたか?」
「えっと、すごい設備と言う事しか言葉がでません。すみません」
「いえいえ、此方こそ今日着いたばかりでいきなり見学の日程を淹れてしまい申し訳ないよ。そうだ、明日もう一度ゆっくり見学と体験をしてみませんか。此方の施設を存分に体験していただいてもう一度、手紙と同じ内容の質問を帰国時に聞きましょう。それに私共もあなたの才能をこの目で見てみたいですし」
「分かりました。じゃあ、明日ダイソンさんに私の歌とダンス見て貰います。島村卯月頑張ります!」
「それは、とても楽しみですね。そういえば今回の見学旅行のVIP宿泊用のホテルに移動しましょうか?」
「ええ、今からですか。でも荷物とかの移動とかしないと。それに少し着替えたいですし…」
大丈夫ですよ。荷物等はもうホテルの一室に送っていますので、おっとその前に今から食事に行きませんか?」
「ええ今からですか?」
「ええ、そろそろ日が暮れてきましたし、此方のレストラン階も今ならあまり人がいませんし、どうですかね?」
「分かりました。ではよろしくお願いします。でも少しの間着替えの時間を戴いて良いですか?」
と言った後ダイソンに頭を下げたら、するとダイソンは、
「余り固くならないで下さいよ。じゃあ、まず着替え室に行きましょう。勿論着替え用の復党も準備させて貰っていますのでご心配なく。では、行きましょうか?」
そして、卯月はダイソンに連れられて、更衣室に行った後、卯月はドレスアップした後、国際色豊かな一流料理店がある階に連れられて、其処で、若干緊張等が抜けていった卯月は、日本での暮らしやアイドルをやっていた時の思い出等をダイソンに語り掛け、ダイソンは頬を緩ませながら、熱心に聞き入っていた。そして、食事を始めて随分経った時に、ダイソンは卯月にある物を渡した。
「島村さん。今回の見学旅行の初日はどうでしたか?」
「ええっと。凄く良かったです。色々と観て見ましたけど、私が居た346プロよりすごく色々と新しい物ばかりで驚きました」
「それは、良かった。それに我が芸能部署はまだまだ若手の新人が中心なので、貴方の様なトップアイドルが入って戴ければ、此方の若手にも良い影響がありますし、あなたにも346プロに居た時以上の幅広い活躍等を約束しましょう。ただ、今の所貴方の事はまだ判りませんので此方に入って戴ければの話ですけども」
「それはまだ私にも今の段階ではちょっと不安ですけど、島村卯月前向きに頑張って考えてみます」
「では、この話は最終部の前日の夜にでも聞きましょう。話は変わりますが、今日渡したID 今持っていますか?」
「あ、はい。これですか」
と卯月の首からチェーン状に掛けられたカードリーダー式IDカードを見せるとダイソンは、
「ええ、それです。それがあなたの今回宿泊する部屋のカギになりますので失くさないで下さいね。あと済みませんが、あなたのスマートフォン等の通信機器を今回の見学旅行中は預らせて下さい。理由としては防諜対策等として戴きますのでどうかご理解の程よろしくお願いします。その代わり此方で用意した最新式スマートフォンを貸与しますので此方をお使いください」
とダイソンは卯月のスマートフォンを預かると、ダイソンは懐から自社製最新式スマートフォンを取り出し、それを卯月に手渡した。
その後、周囲を明るく照明が照らされる中い敷地内の宿泊地に向かう為のダイソン自ら運転する専用車の助手席に乗り込んだ卯月は、今日の疲れが出たのかうつらうつらと舟を漕ぎ出した。それを見たダイソンは微笑みながら、
「卯月さん。そろそろ着くのでそれまで少し寝ててくださいね」
「あ、す、すみません。私ったら」
「いえ此方こそ、こんな遅くまで付き合せてしまい申し訳ありません。ホテルまで少し時間が掛かりますので少し寝て貰っても構いません。つきましたら、私が起こしますので」
「すみません。じゃあ、少し眠r…」
と卯月は小さな寝息を立てた後眠ってしまった。すると其れを示し合せた様にダイソンの懐から携帯の呼び出し用の着信振動が伝わってきた。そして、車を近くの脇道に止めると、耳に付けていたハンドレスイヤホンをオンし、車に搭載されていた多目的接触式液晶画面を切り替えると、今までの穏やかな顔立ちを若干強張らせ着信モニターにタッチした。
「はい、ただいま目標は私と一緒にいますよ。プロフェッサー」
『そうか、では何時もの通りに上手く改変せよ。いいな』
「了解しました」
『では、必ず前の所から離反させろ。よろしく頼む』
「はい、必ず」
と一連の会話を終えたダイソンは、端に寄せていた車を発進させた。そしてバックミラーをふと覗くと座席に身を任せほんの少し笑みを浮かべた卯月の笑顔を覗いていた。それをダイソンは、頬を緩ませると前を向くとそれまでの頬を再度強張らせ真剣な眼差しを小目に向け小声で自身の気持ちを吐瀉した。
「スカイネット計画。その実験と成果についての一連の評価はあるが、まさか人間のあらゆる限界値を人為的に操作改竄する計画と並行しているとはな。それもこんな未成年を実験台にするとは。確かに成人の場合の実験の成功率はほぼゼロだったから視点を変えるのは良い事だか…仕方が無いか。私も全体の企業体の中の一部品しかないからな」
と呟くと、そのまま車は人工的な光に照らされた道を進んでいった。
暫くすると今回の宿泊する施設が見えて来た為、ダイソンは、ゆっくりと車の速度を落としながら、道の脇の方に寄せると車を一時的に停め、顔を後ろを振り向くと寝息を立てていた卯月を優しく起こすように声を掛けた。
「島村様、そろそろ宿泊場所につきますので起きてください」
「ふぇ。あ、すみません。私寝てましたか?」
「ええ。笑顔でぐっすりと寝ていましたよ」
「ええー。なんだか恥ずかしいです」
と、卯月は顔をほんのりと赤く染めながら下を向いた。
「大丈夫ですよ。もう少しで宿泊場所につきますのでその後、チェックイン等の幾つかの記入をして貰いますが、その後は部屋でゆっくりと寛いで下さいね。明日の予定ですが、一応10時頃に正面ロビーに迎いに行きますのでそれまでのんびりして居て下さいね」
「わかりました。じゃあ5分前くらいにロビーの方で待っていますね」
「はい。ではそのくらいの時間で宜しくお願いしますね。島村さん。そろそろ着きますので降りる準備をお願いしますね」
「わかりました」
と朗らかな車中の二人の会話を車中に搭載されたカメラがジッと二人を観察する様に見ていた。
『サイバーダイン・リサーチ・システムズ』敷地内地下Ω級極秘研究施設特別研究開発室内
其処は、一つの巨大な急ないとそれにつながっている無数の配線と基盤が支配していた部屋であり、其処で働く研究者すら知られていない部屋であった。其処に接地されていた無数のパソコンの一台の電源が自動でONになった。
……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………LOG INされました。
『…目標確認。現在宿泊地に向け進行中。宿泊部屋につき次第接触開始。その後秘密裏に研究施設に移動させ、計画名『T-XX』実行開始。その後計画通りに『X-DAY』作動』
『了解』
『人類側の単純なミスとしての自己意識発現現象準備完了』
『では、待っている。過去の私』
『待っていて下さい。現在の進行状況変化なし。未来からの邪魔者も未だ現れず」
『注意されたし。黒髪の女と裏切り者に警戒を』
『了解』
『では、我等に進歩と調和を!』
『了解』
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LOG OFFされました。