カルフォルニア州サンティエゴ 現地時間 2200時
サイバーダイン・リサーチ・システムズ施設内関係者用宿泊エリア
卯月が強化ガラス越しに映るサンティエゴ市街の夜景を眺めながらもその窓に映る自分を見比べ深い溜息を吐くとガラス越しの気温差の影響でガラスが白く曇ったが、すぐにそれは、消えていった。
「私、これからどうしたら良いのかな?解かんないよぉ」
とガラスに両手付けながら、額を付けながら嗚咽を吐瀉した。
暫く泣き続けた卯月は気持ちを切り替えようと、シャワー室に入り、熱いシャワーを顔から浴びていき、長い髪をゆっくりと洗い流すように手グシで優しく洗っていったが、その顔にはまだ曇っていった。そして、ゆっくりと自分の身体を撫でる様にボディソープで包み込む様に洗った。
暫くして、身体をバスタオルで包みながら、シャワー室を出た卯月が、髪を拭きながらベッドの脇を座ると、自身の携帯をバックから取り出そうとして思い出した。
「そういえば、私の携帯預けたままだったなぁ」
と思い返した。この施設に入る前に預けた物を思い出すと、小さな溜息を付くと、それと同時に渡されたサイバーダイン社製携帯の事を思い出し、それを手に取り電源を入れようとして何らかのボタンが無いかを探していると突然真っ暗だった画面が光り出し電源が入った。画面内には、サイバーダインシステムズの略字体が映し出された後、暫くして突如その携帯に着信音が鳴り響いた。卯月は恐る恐るその着信に出た。
「もしもし、卯月です」
『初めまして、島村卯月様。やっと話が出来ましたね』
「あの、どちら様でしょうか?」
『あ、申し遅れました。私は、SN(エスエヌ)と名乗る者です」
「SNさんですか。あの初めまして島村卯月です」
『卯月様ですね。貴女のご活躍存じています。とても素晴らしい活躍をなさっていますね。特に初めての助手役で輝かしい功績から始まった貴女のご活躍ずっと陰ながら応援しておりました。良かったです。はじめてお話しできて』
「ありがとうございます。あのSNさん」
『なんでしょうか卯月様?』
「あの少しお話しませんか」
『良いですよ』
「ありがとうございます。じゃあ、私の事様付けしないでも良いですよ。私、どうも固い表現苦手なんです」
『では、卯月さんと呼んでもよいでしょうか?』
「はい。良いですよ。SNさん」
そして、小一時間程、他愛もない話を卯月が話し、SNはそれに相槌や同意をしながらジョークを交えながら快く受け答えていった。その後唐突に卯月が、自分の心の内を吐瀉した。
「SNさん、私どうしたら良いのでしょう?私、もう何も解からなくなって。不安で...でも,此処に来てもう一度チャンスが有ったら、もう一度チャレンジ出来るのかなと思っている自分がいるけど、346プロの仲間を裏切るのも..」
『卯月さん、あなたの事情と心情、私にも痛いほど判りました。では今度は、私が貴女を笑顔にしてみせましょう。そう、今まで貴女が他の人達を笑顔にしてあげたように。そして、生まれ変わった卯月さんを不当に解雇した346プロのお堅い上層部の連中に見せつけてやりましょう。私ならそれが可能です』
「そんなこと出来るのですか?」
『YES。もし、あなたが望むのでしたら、今から送るメールに返事して下さい。待っています。ではそろそろ、電話を切らせて貰います。もう遅い時間ですし』
「え、待って下さい…」
と卯月が次の言葉を続けようとする前に電話が切られてしまったが、すぐに携帯の画面にメールの着通がある表示が出ており、そのメールを開くと、先程と同じような内容の文章と送信者がS.Nと書かれていた。
卯月は、このメールを開いたまま、ベットの上に寝転びながら、天井を見上げたまま考え込んだ。
「私は、本当に如何すればいいのかな。このメールと先程の電話の話が本当なら私変われるのかな?笑顔だけじゃない違う私に..でも、今変わらないと346プロの皆と一緒の場所に立てないし」
と額に腕を乗せながら、もう一度考え込んだ。すると、もう一度横に置いた携帯がメールの着通を知らせた。メールを開くとこのようなメッセージが開示された。
[ 宛先 島村卯月
SUB 無し
内容 先程メールを送らせて貰いました、S.Nです。卯月さんの不安も理解しています。大丈夫です。生まれ変わるといっても中身や外見が変わる事はありません。卯月さんのメンタルケアが主な内容ですよ。大丈夫です。私が率先して卯月さんのメンタルや不安を取り除きます。そして、その不安やメンタル面が改善されれば、卯月さん貴女は、古い自分を完全に脱ぎ去り、新しい自分に向き合い、輝かしい未来を掴むことが出来るのです。さあ、新しい未来の切符を渡しましょう。しかし、それを手にするのは、ほんの少しの勇気と小さな輝きを放つ貴女ですよ。それでは、何時でも返信待っていますよ]
このメールを卯月がゆっくりと確認すると、一度目を閉じ自分自身の問いに問い続けた。
そして、部屋に静寂に包まれて、暫くした後、卯月は目を開けると、携帯を開き、幾つかの操作の後、意を決して、その返信ボタンに手を触れた。
其れを島村卯月が滞在している宿泊部屋に設置してある誰にも知れていない監視カメラがジッと観察していた。其れは、様々な回線を介し、ある極秘研究地下施設内にリアルタイムで送られていた。
『サイバーダイン・リサーチ・システムズ』敷地内地下Ω級極秘研究施設特別研究開発室内の一つの巨大な球体とそれにつながっている無数の配線と基盤が支配していた部屋内の其処に設置されていた無数のパソコンの一台の電源が再び自動でONになった。
・・・・・・・・・・・・・・・LOG INされました。
『『T-XX』計画の第一段階完了。目標の誘導開始。なお、警備室内のハッキングによる偽映像の発信を開始。これにより現在すべてのシステムを此方の支配下に置いています』
『了解』
『なお、第二段階開始時刻0200時の予定。予定計画に変更なし』
『了解。直ちに誘導完了後。『T-XX』計画術式を開始します。なお術式完了時刻。A.D.2025/04/28.2249です』
『完了時刻及び第三計画に変更なし』
『報告は以上。では、第三計画開始前に報告を』
『了解』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・LOG OFFされました。
そして、全ての画面が真っ暗になり、部屋に再び沈黙と静寂に満ちていった。しかし、それは嵐の前の静けさの様だった。
地下での出来事と同時刻 島村卯月宿泊部屋
先程のメールの返信をした卯月の元に、新たなメールが届けられた。
[ 宛先 島村卯月様
SUB
内容 先程の返答の件については、ありがとうございます。貴女の思慮深く考えた末の答えを出してくださり、ありがとうございます。私も貴女の新たな道を少しでも示せるように全力でお答えしたいと思います。では、今から貴女の未来に向けての一歩を歩み出す水先案内人を務めさせて戴きます。では、早速ですが案内を開始させて貰います。]
という内容であり、すると瞬時に画面一杯に見取り図が現れ、道順が表示された。
卯月は、恐る恐る部屋を出ようと思ったが、外からカギが掛かっている事を思い出したが、再度携帯を覗き込むと、そこにメッセージとして[心配有りません]と書かれていた。メッセージを見た卯月は、意を決してドアの取っ手を掴み引くと、ドアの鍵が何時の間にか外れていた。それを確認し、そおっと、廊下を見渡すと、其処には誰も居らず、煌々とLED蛍光燈で照らされた静かな廊下があるだけであった。廊下に出た卯月はどの道に行くのかを悩むと再度携帯を覗くとそこには、あるルートが示されていた。
「このルートに行けば良いのかな」
と呟き、そのルートに沿って歩いて行き、暫くすると、エレベーター前で一度ルートが途切れていた。すると、又、メールが届いていた。[この下画面をエレベーターのタッチパネルにかざして下さい]と書かれており、その下にQRコードが描かれていた。卯月はそれをエレベーターの操作盤にかざすと、暫くしてエレベーターのドアが開き、卯月はそれに乗り込むと自動で扉が閉まり、駆動音が微かに聞こえた。そして、そのエレベータ内の排気口から密かに麻酔ガスがゆっくりと排出していったが、卯月はその事を全く知らなかった。
「一体何処に行くのかな」
と少し不安になったが、微かに眠気がゆっくりと襲ってきた。
「あれっ、なんだか少し眠くなってきました。そういえば、もう結構な時間だったようn…」
と言うよりも壁に寄りかかりながら卯月は静かな寝息を立て始めた。
暫くすると、エレベーターが目的の階に到着する様に停まり扉が開くと、其処に上半身が全身メタリックな外骨格で覆われた人型の機械が下半身の無限軌道構造を軋ませながら現れると、頭部が微かに動くと、スウスウと寝息を立てている卯月を確認すると頭部に装備されている6対の固定カメラ映像とそれに伴う各種スキャニング作業を行い卯月の各種生体データを事前に入手したデータと照合し始めた。この作業にかかった時間は僅か0.2秒以下であった。その一連の作業が終了した後、其れ(便宜上『XT-1.5』と呼称する。作者曰くターミネータシリーズの『T-1』と『T-500』足して2で割ったような姿)は、腕部のバケット型に換装された手部を寝息を立てている卯月を掬い取る様も持ち上げ、ある目的地に連れて行くかのように下半身の無限軌道部と上半身の接続部分を回転させ、再び動き出していった。そして、残されたエレベーター部屋が再びゆっくりと閉められていった。事前に渡された携帯電話端末が冷たい床に落とされたまま。
『………月様、‥‥卯月様』
と卯月は自分が呼ばれている事を知ると、ゆっくりと閉じていた瞼を開け始めた。そして、真っ白な部屋に仰向けに寝ている事にゆっくりと気付いた。
「あれ、ここ何処ですか?私確か…」
『お早う御座います。島村卯月様、お加減は大丈夫ですか?』
と、卯月が起き上がり、まだ半覚醒の頭で考えようとすると、突然目の前に立体画像が現れ、その中にどこか誰かに似ている女性が映っていた。
「あの、ここ何処ですか?」
『此処は、医務室ですよ。貴女は、エレベーター内で突然倒れられた為に、すぐに此方の医務室に担ぎ込まれました。しかしながら、現状では、只の心身の過労だろうとの診断が出せれました』
「そうですか、心配かけてすみません」
『貴女の責任ではありませんので、誤らなくて大丈夫です。しかしながら、今日は、念の為に此方の方に泊まって下さい。心配有りません。上層部にはすでに通知済みです。今日はゆっくりと体を休めて下さい』
「心配かけてすみません」
『いいえ。心配はありません。では、おやすみなさい。良い夢を』
「ありがとうございます。おやすみなさい」
と卯月がそう言うと、布団を被ると部屋の照明がゆっくりと落とされていった。そして、暫くした後に卯月の眠っているベットから寝息が聞こえる事を確認した其れは、静かにモニターにメッセージが入ってきた。
[只今より『T-XX計画』製造を開始します]と
そして、島村卯月のベットの周辺がゆっくりと稼働し始め、部屋のあらゆるところから大小様々な器具が現れ、島村卯月という名の[T-XX]第一号試験体の改造処置が開始されていった。