審判の日   作:東海

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皆さん大変お待たせしました。やっと投稿できます。
現在自分の置かれている状況を簡単に説明しますと、現在も『若年性鬱症』の症状が時々再発し、心身とも結構つらくなる時がありますが、何とか薬とカウンセリング等を受けています。また、少し筒ですが、社会復帰の一環としてアルバイトを始めました。これからも何とか頑張っていきたいと思います。
では、またしばらく期間が空くと思いますが、よろしくお願いします。

 


思い出 其の三

 

 バタバタというMi-8MTVが奏でるクリーモフ TV3-117VM ターボシャフトエンジン2基とイーフチェンコ=プログレース AI-9V ターボジェットエンジン1基による独特の飛翔音を出しながら、Mi-8MTVが荒れ果てた地形に沿う様に低く這う様な飛行していた。

其れは、もし仮に比較的飛行安全高度を飛ぶと、即座に周辺に秘匿配備されているスカイネットレーダー網に捕捉され、周辺に滞空している性能向上型中型航空機型戦闘マシーン ハンターキラー エリアルⅡが急行しこれを捕捉撃墜、またスカイネットレーダー網よりも余りに低空で飛ぶと今度は独立型対空レーダー搭載地上配備戦車型ハンターキラー タンクⅡ及びT-100改等による対空射撃及び短距離対空ミサイル攻撃が待っている可能性が高くその為、人類側の航空機関連の運用はここ数年で劇的に減ったが、それでも戦術的戦略的にも有効な手段の一つであり、地上運用よりも潜水艦と同じように三次元的な行動が可能なうえ、艦船等以外では兵装搭載量も地上運用する兵器よりも上であり、輸送量も海上輸送等も潜水艦等による隠密行動以外が殆ど不可能になった為に地上輸送とは比較に出来ないほど大量空輸が可能な為、未だに運用回数は少なくなったが、未だに多くが現役で運用される。しかしながら、運用されている機体の殆どが1970年代前半から1990年代後半の機体が多く。主な理由としては、一つ目は冷戦下で採用された東西双方の機体が比較的現時点でも多くが残存しており、また、補修補給等も比較的容易であるという点。また、審判の日に起きた多数の核攻撃によるEMPとスカイネットによるハッキングにより、殆どの最新機器搭載物及び無人兵器が無力化もしくはスカイネットの制御下に置かれたという点。が主な理由であった。 

 また、ここ数年は固定翼機よりも回転翼機の運用が比較的重要視されてきていた。これには、回転翼機の特徴である空中で留まる状態のホバリングや、ホバリング状態から垂直、水平方向にも飛行が可能であり、比較的狭い場所でも離着陸できるため、様々な戦術的戦略的用途で使用されている。

 

 「それにしても中尉。何故このような危険地域を飛行するのです?」

 「少尉。何度も言わせるな。私は元少佐だ。それに飛行前のブリーフィングで説明にあっただろ。まさか貴様、話を聞いてなかったのか?」

 「はい。余り内容を聞いていませんでしたが、なんでも帰還予定のヘリから連絡が途絶えたとか何とか」

 「はあ。貴様それでも元フランス空軍か」

 「はい。元フランス空軍トゥール空軍基地戦闘飛行団所属の不死身のコーラサワーこと。パトリック・コーラサワー元少尉であります」

 「パトリック少尉。もう一度任務の確認だ。我々は、約5時間前に基地から離陸したMi-24一機が定時連絡を絶ち、捜索の為に我々が不明機捜索の為に飛んでいる。そして、そろそろ不明機が最後の定時連絡があった場所だ。何か変わった所はないか自分の眼と対地レーダー双方で確認しろ。良いな。私は操縦に専念する」

 「了解であります。中尉殿」

 「だから私は元少佐だ。何度も言わせるな。馬鹿者」

と盛大に溜息を吐きつつも、隣に居る人物がどこか昔飼っていた犬のようだなと胸のなかでつぶやいた元フィンランド陸軍作戦本部所属のカティ・マネキンだが、次の瞬間からすぐにそれを頭の隅からも消し去り、眼前の操縦に集中した。此処だけでなく地球全体がほぼ安全地域というモノが跡形もなく消え去った世界なのだから。

 

 暫く飛行すると廃墟と化した街が前方にうっすらと見えてきた。

 低空で蛇行飛行を繰り返しながら慎重に旧市街跡の方を目指しMi-8MTVを操縦しつつ、もしもの場合に備え増設したスタブウイングに搭載している火器類と両側ドア及び後部ドアに増設した火器類を思い出すカティがぼそぼそと小声で思い出す様にしていた。隣りのコーラサワーは、持ち歩いている軍用双眼鏡で周囲を確認しつつも時折、対地レーダーや各種搭載している観測機器を時折確認していたが、今の所目立った成果は確認できていなかった。

 旧市街地跡となった上空を地上及び周辺空域警戒しながら侵入したMi-8MTVは、その搭載機器等の機能をフル稼働しながら、ゆっくりと蛇行しながら飛んでいた。

暫く、廃墟と化した街中の間を縫う様に慎重かつ冷静な飛行を続けていると、機体に搭載されていたIFF(敵味方識別装置。英語名:identification friend or foe)が微弱な反応を感知した。

「中尉。IFFに感有り。我々から東北東約10キロです。しかし、反応が微弱な為。撃墜されている可能性大です」

「少尉。貴様は馬鹿か。何度も同じような事を云わせるな!私は少佐だ。全く。しかし、良く見つけた。直ちに反応した場所に向かう。少尉。もしもの為だ。無線の準備と搭載武装をいつでも発射可能にしておけ。これから荒っぽい操縦するぞ。いいな」

「了解です。中尉!」

と言うと、コーラサワーは素早く搭載されている火器類の最終安全装置を解除しながら、機体に搭載されているECM及びECCMも同時に作動させ、また各種通信装置等も作動を確認しながら、すぐに何らかの反応が通信装置や機体に搭載されている各種捜索走査レーダー等に有無があるかを機内の各種捜索警戒盤や送受信通信用イヤホンの二つに意識を集中させていった。そして、カティがまた注意をしていたことなど完全に意識外にとばしていった。

 暫く荒っぽい操縦が続くと、大通りの交差点の様な所の上空に差し掛かると、機内から見て東側の半倒壊した高層ビルの根元の辺りに機体側面から突き刺さる様な格好でMi-24が墜落炎上していた。それを目視確認したコーラサワーは思わず臍を噛み、悔しさの余り声を出した。其れを冷静に戒めるカティだった。

 「くそったれのガラクタ野郎共め。俺たちがもう少し早く来ていれば...」

 「落ち着け。まずは周辺の安全を確認しろ。後決して気を抜くなよ。やられるぞ」

 「了解です。中尉」

 「何度も言わせるな。私は少佐だ」

と言いながらもカティもコーラサワーと同じように悔しさがあったが其れを決して表に出さなかった。

 

 すると、機体機首部に増設した各種対地観測用遠隔カメラが墜落大破したMi-24の方向に動く物を捉えた。

 「少佐!機首カメラが何かを捉えましたー!」

 「やっと直したか。それで何を捉えたんだ。まさか!」

 「今赤外線モードに切り替えてもう一度確認しましたが、この熱源パターン機械ではありません。仲間もしくは此処の生存者の可能性大です!」

 「何だと!まだ、此処に生存している人が居たのか!パトリック、司令部に伝言を打電しろ。我々はこのまま生存者の救出を実行する。それと何時でも撃てる用意しろ。多分だが、此れに引き寄せられる敵が居るかも知れないからな」

 「了解です」

 「では、ゆっくりと降下するぞ」

とカティが言うのと同時に機体をゆっくりと垂直降下させていった。

 

 Mi-8MTVが生み出すダウンウォッシュによって着陸地点に強烈な風が引き起こした埃やチリが舞いながらゆっくりと着陸すると直ぐに横の扉が開き、男性が手招きしている事に気が付いた美波が保護したイーニァ・シェスチナの口と鼻を覆いながら、素早くヘリの機内に入れると周囲を警戒していたアナスタシアにも手信号を送り、機内に誘導した。

 

 ホバリング音が響く中、アナスタシアが機内に入るのとほぼ同時に機体が浮き上がるのを感じ、すぐさま機内に少数設置した兵員用座席の一つに座りシートベルトを締め、少しだけ息を整える様に深呼吸をすると、隣に未だに緊張の色が色濃くあり、手にはしっかりと抱え込むように煤けたクマのぬいぐるみを持つイーニァ・シェスチナが座っていた。それを少し緊張がほどいていた美波が笑みを浮かべながら、ゆっくりとイーニァの髪を撫でて、優しく語り掛ける様に、

 「もう大丈夫よ。心配しなくても、もう少しで私達の仲間が来るからね。大丈夫。後、は私達に任せなさい。だから貴女はゆっくりと眠っていいのよ」

と言いながら、優しく髪を撫でているとイーニャはゆっくりと瞳を閉じ、寝息を立て始め、それを暫く撫でていたが、すぐに逼迫した表情で機内に取付けていた機内会話用イヤホン付きマイクで操縦席に居る二人に連絡した。

 「直ぐにポイント243-354に向かって下さい。私達を逃がす為に仲間が一人いるんです!」

 「なんだと!了解した。すぐに指定ポイントに向かう。パトリック!すぐに応急救護措置の準備をしろ!操縦は私が引き受ける!すまないが貴女には対地掃討の準備をして欲しい。ドアガンを頼む。ああ、貴女の名前は?」

 「助けて下さりありがとうございます。私は、新田美波と申します。そして銀髪の彼女がアナスタシアと先程保護したイーニァ・シェスチナです」

 「そうか、私の名はカティ・マネキンそして、彼はパトリック・コーラサワーだ。何かあれば、彼に言ってくれ。後、何か彼が粗相を起こしたら遠慮なく言ってくれ。後、少し聞きたいのだが、救助して欲しい人員は何人で性別は?」

 「はい、人員は一人。性別は男性です」

 「そうか。では、すぐに準備の方を頼む。此処からなら後5分位で到着できるだろう。直ぐにドアガンの準備と保護した子供を後部座席に移動してくれ。中央部座席は簡易治療用に使用するからな」

 「解かりました。直ぐに取り掛かります」

と美波が言うや否やすぐに兵員輸送区画に戻り、ドアガンの取り付け作業をパトリックに教わり、その傍らアナスタシアにイーニャの移動を頼むと同時に操縦席から機内に居る全員に装着していたヘッドフォン越しに連絡があった。

 「そろそろ、指定ポイントだぞ!美波、射撃準備しろ。パトリック、応急措置の確認をしろ。いいな!素早く速く正確に行動しろ!」

と言うのと同時に南は右側ドアを強引に開くと、気流の影響で機内気圧が若干低くなるのを感じ、機内の一部の物が飛ばされそうになるが、それらの物はすべて何らかの固定が施されていた。また機内に居る全員にも姿勢安定用フックとロープが機内の各所のフック固定場所に取付けていた為、全員軽く揺れただけで済んだ。

 

 美波はが開け放たれた機外を見ると、砂塵と埃が空中に舞い上がっていた。そして視線を地上の方に向けると、比較的に開けた場所があるのを確認したが、人影らしきモノはそこには見当たら無かった為、少しだけ表情が険しくなるのを自覚したが、ふと、視線を旧市街地に向けると一際砂塵や埃が舞っている場所を見つけた美波は、ヘッドフォン越しに大声で叫んだ。

 「カティさん。右側旧市街地の煙の立ち昇っている場所の根元辺りの熱源を確認してください。何か光るものが見えました」

 「何だと、解った今から確認する」

と言うと機首に搭載されていた遠隔操作型多目的高感度カメラを素早く操作し、美波に指示された所に指向された。すると、崩壊寸前の建物の一つの根元辺りに人影を見つけ、ッカメラ内に内蔵された熱源パターンを機体に搭載されている機器による照合を即座に終えると、そのパターンは人間であった。其れを確認したカティは、ほっとしたが、次の瞬間息をのんだ。そう、すぐ近くにT-600の改良型と思われる熱源が確認されたからだ。それを確認した瞬間、美波に速やかな射撃命令を下した。其れを聞いた美波は即座にドアガンの撃鉄を引き薬室内に初弾を装填し、射撃体勢を即座に地上に向けて掃射出来る様にトリガーに手を掛けたが、その時美波は地上の様子を直に確認できた。其れを確認すると直ぐにカティにヘッドフォン付きマイク越しに叫んだ。 

 「駄目です。このドアガンだと救助者に被弾する可能性があります!何か他にありませんか!」

 「ちっ、なら美波すぐ後ろに金属ケース内にSV-99version3と光学式スコープが入っている筈だ。それを使え!だが、ライフルとスコープ未調整のはずだから注意しろ!敵を惹き付ければ後はドアガンを使え!」

 「わかりました!」

 「美波これを!」

と通話を切ると同時に機体後部に居たアナスタシアが金属ケースを抱えて現れたが、その表情は悲痛に満ちており、何処か不安定な視線であり、いつもよりも何処か暗くなったような銀髪が風に靡いていた。

 「ミナミ、此れです。使って下さい」

 「ありがとう。アーニャちゃん」

と言うと、すぐさま空席となっていた座席にケースを置き開錠すると、体の一部を固定ベルトを装着したまま組み立てを始めていった。そして僅か数分でSV-99が完成し、後はスコープを取り付けるだけだったが、肝心のスコープが光学式レンズの一部に罅が入っていたのが判明した為、変わりとなるスコープを探そうとしたが、時間がそれを許しはしなかった為に美波は目視での射撃をするしかなくなった。するとカティが操縦席からヘッドフォン越しに

 「美波、私が機体をダウンウォッシュ効果範囲外ぎりぎりまで降下させ、その後、10秒間メインローターの回転数を停め、右斜め下方向にそらしながら降下させるぞ。その間に彼奴の気を逸らせ、良いな!無理して当てようとするな。では5秒後に仕掛けるぞ」

 「はいお願いします!所で風向きと風力はどれくらいでしょうか?」

 「ああ、風向は東寄り。風力は2~3の間位だ」

 「解かりました。ではお願いします」

 「では5,4,3,2、今」

 とスコープなしで射撃をしようとした美波に冷静な指示しつつもカティは、気持ちの中では焦っていたが、今は機体の安定させながらの降下に集中した。

 

 ゆっくりと降下しながら、美波は少しでも銃を安定させようと予備の固定用ロープを銃身を固定する様に絡め、手を掛けて内側へ回すようにして持ちマガジンが左腕に当て固定されると、左手は外側へ回すようにグリップしていたので、銃が確実に固定し銃が安定した。その後下半身を機体内の床面に御座をかく様に90度の角度で膝を立て、太腿と脹脛を密着させ膝を立て、左腕の上腕三頭筋を膝に当てて固定した後、ゆっくりと息を整え、射撃に集中した。その時上の方から騒音と振動が唐突に消えるのを肌で感じると同時に機体が右斜めに傾いている事もわかった美波は、すぐにT-600改に向けて照準を目視で合わせていったが、初めて使用する銃の特徴を上手く掴めず、更にある程度まで高度を下げていたにも拘らず、比較的距離もあるという事に躊躇したが、少しずつ傾きながら機体が自由落下し始めるのを感じた。その瞬間美波の体感時間が急速に遅滞していく感覚と共に集中力が高まり、比較的距離がある目標がすぐ近くに居る様な視覚を覚え、その感覚のまま銃口をT-600改に向け、右人差し指の中程にトリガーを抑えながらゆっくりと深呼吸し少しだけ吐息を出しながら一気に引き金を引き絞った。

 撃ち出された7.62x54mmR弾が初速805 m/sの速度で打ち出され、狙い違わずT-600改の後頭部上部から弾丸が侵入し、T-600改の頭部に内蔵する機能を破壊しながら頸椎を容易く貫き、全てのT-600改の機能を強制停止させた。

 

 自由落下する機体をカティは素早くメインロータを再回転させ、機体の立て直しを図りつつ、すぐさま着陸態勢に移行した。

 

 着陸しようとしたMi-8MTVのメインローターを回転させたまま、ゆっくりと降下する中アナスタシアは美波から預かったSV-98 を構え警戒する中、ラべリング降下し周囲を土煙と砂塵と僅かながら粉雪が舞うダウンウォッシュの中飛び出すように降りた美波は、機能停止したT-600改が佇む事を無視し、真っ直ぐに崩れかけた壁にもたれ掛かる様に崩れていた武内を見つけたが、その瞬間美波は言葉を失ってしまった。其れは誰の目に見ても瀕死の重傷だと判断できたからだ。しかし、すぐに美波が武内Pのそばに近寄ると、

 「プロデューサー、しっかりして下さい。すぐに救助が来ます」

と言うと、肩に掛けていた鞄から応急医療キッドを取り出すと、止血等の応急措置を始めた。また、ヘリが着陸後に担架と工作用器具を抱えたとアナスタシアとパトリックが駆け寄り、電動カッターで左肘から下の腕のほぼ中間の辺り何本もの壁から伸びていた鉄骨を拳3個分程度残した後、切断した。無理に抜き取ると大量出血の可能性が有る為だと判断した為このような処置を採った。また、近くに放置され錆びついていた鉄柵も解体され,棒状の鉄骨の一部を添え木に活用されプロデューサーのほぼ全身各所を支える様に組まれていき、迅速に担架に移されていった。

 

 担架に運ばれMi-8MTVに収納されたプロデューサーは、すぐさま機内に装備されていた応急措置用として酸素マスクや心音検査機、血圧測定器等をプロデューサ―の様々な所に装着され使用されたが、輸血パックは更なる大量出血の恐れの為に使用できなかった。

 ヘリは最高時速を維持しながら、速やかに人類抵抗軍秘密基地に向かい進路を執り飛行を続けた。基地に戻る最中にも基地との連絡を取り、向こうでも直ぐに緊急手術の準備が進められていった。

 

 夜の帳が落ちた頃、バイカル湖付近の旧水力発電所を改築と増設を繰り返し、未だに未完成の人類抵抗軍秘密基地の駐機場は慌しくなっており、普段は余り使用が許可されていない大型照明器具も多数全力稼働されていた。そんな喧騒の中、東側の上空に僅かながら光が見え、それが段々と近付いて来るのが見えると、地上の喧騒も一段と高まる空気を帯びていき、そして監視塔に常駐していた監視員の一人が暗視双眼鏡でMi-8MTVを確認した。其れを地上に居る作業員や待機している救護隊員等にスピーカーによる連絡をする為にマイクを握り落ち着いて連絡した。

 『此方タワー。現在レーダーに反応ありの航空機はIFFに反応あり。また、ヘリからの連絡によると、搭乗員の一名が意識不明重傷。大量出血有。救護隊員は直ちに準備せよ』

と言うと、上空にクリーモフ TV3-117VM ターボシャフトエンジン2基とイーフチェンコ=プログレース AI-9V ターボジェットエンジン1基による独特の飛翔音を響かせ、ゆっくりと着陸態勢による空中停止からゆっくりと高度を下げていき、地面に接地したのと未だにサブローターとメインローターが甲高い回転音を響かせる中、同時に待機していた救護隊員が右側のスライドドアが開き、プロデューサーが横たわる担架を運んでいった。運ばれる最中にも美波とアナスタシアは、救護班の隊員に

 「血圧心拍数共に低下。意識レベルも重度の混濁あり。更に全身に重度の貫通痕と複雑骨折の恐れありです」

 「分かった!後は此方が何とかするだから待ってろ。そうだ彼の血液型は?」

 「すみません。わかりません」

 「そうか。何か手掛かりが有ればいいのだが」

とプロデューサーの首元に認識票が掛かっている事に気付いた救護隊員の一人がその認識票を外し確認すると、

 「彼の血液型が判りました。血液型はA型です」

 「何だと!クソ。輸血量のストックだと全然足りんぞ!」

 と現在の輸血パックの在庫量を思い出し、救護隊員の別の一人がそれに毒づいたが、美波とアナスタシアの二人が再び真剣な眼差しで救護隊員に、

 「私の血液型もA型です!私の血液を使って下さい!」

 「Да, моя кровь тоже типа А. Пожалуйста, используйте его всеми способами. Благодарю вас.」

と言う二人の熱意に負けた隊員の一人が、

 「では、一緒に来て下さい。献血をお願いしたい」

 「「はい!(Да)」」

と担架に運ばれ、手術室に入ったプロデューサーとは別の部屋に案内させられ、其処で、凡そ800ml近くの血を二人からそれぞれ採血しプロデューサーの手術に使用された。

 

 しかしながら、凡そ8時間以上の大手術は何とか無事に終わったが、プロデューサーが支払った代償は、大きかった。右目の摘出と左肘から下を切断、更に下半身も同じように右膝から下が再生不可能と判断された為に止む無く切断した。また、脊髄損傷の恐れがある可能性も示唆されていたが、現状は満足な医療環境ではない状態の為詳細は不明であった。しかし、手術成功後、彼は目を覚ますことが無く昏睡状態に陥った。

 

 

 そして、半年という時が流れ現在。

 

 「…プロデューサー。貴方が眠ってからもう半年の月日が経ちました。まだまだ予断が許さない状況ですが、皆懸命に自分の使命を守っていますよ。それに、私の母の行方が少し判りました。私の母はまだ20代前半だそうですよ。ふふ、昔отецがよく私の母親について話してくれました。母と私の父が出会ったのはもう30年以上前の雨が降る日だったそうですよ。私の父が、家の前に突然Громовой светが光ったと思ったら私の母が全裸で倒れていたそうですよ。それから、色々とあったそうですが、そのあたりは今は覚えていませんが、父と最後に会った時。『アナスタシア、良く聞きなさい。もしこれから途轍もない困難が降るとしても気高く生きなさい。そして、目の前の困難を信頼できる仲間と共に立ち向かいなさい』と言いました。私もミナミや他の皆とがんばります。だから、貴方も早く目を覚ましてくださいね。そろそろ私戻りますね。今度来るときはНовые цветы持ってきますね」

と言うと、軽く周りを見渡し誰もいないと確認するとベッドの上で眠り続けているプロデューサーの唇にそっとアナスタシアは自分の唇を重ねた。

 

 そして、アナスタシアが病室を出て行き、暫く静かになった病室のベッドの上でプロデューサーが眠っていたが、その瞼の内側が少しづつ動き、右手の指先も僅かに動き出していった。

 

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