卯月を乗せた米国行きの先進技術開発局が用意した専用機で成田国際空港から飛び立って数時間後、アメリカ合衆国カリフォルニア州サンディエゴ国際空港にスムーズに降り立った。
「何か随分と遠い所に来ちゃいました。たしかターミナル2で待っている人がいると連絡が飛行機に乗っている時に言われたけど。大丈夫かな。私英語余り上手く喋れないから少し心配だなぁ。一応付け焼刃程度に奏(かなで)さんにおしえてもらったけど」
と卯月は内心ビクビクしながら入国ゲートに向かった。するとゲートを抜けた所で大きくプラカードを掲げた5人組が待っていた。プラカードには『welcome to Uzuki Simamura inUSA』 と大きく書かれていた。卯月は少し顔を赤くしながら、5人組に合流した。
※ここから会話文は英語だと思って下さい。by作者
「えっと、初めまして。日本から手紙を貰って来てしまいました。島村卯月です。今回お招きいただき、有り難う御座います」
「お待ちしておりました。島村様。ようこそ我が合衆国に、貴方様の来米心から喜んでいます。私が親書を書かせてもらいました。マイルズ・ダイソンと言います。今回我が社の見学の為にお越し下さって有り難う御座います。此方は、順に、アンディ・グード、ブレア・ウィリアムズ、ハロルド・パーマー、ウォルター・スコットと申します。彼らにはこれから別々の所に向かって行くので、ここでお別れですが、少しでもと言う些細な気持ちでついでに来てもらいました」
「そうなんですか。わざわざ私の為だけこんな歓迎に何か申し訳ありません」
「いえいえ、此れも仕事の内ですから心配しなくても大丈夫ですよ。おっと、そろそろ移動しましょうか?それとも何か食べに行きましょうか?美味しいコーヒー店知ってますが」
「いえ私は、大丈夫です。飛行機の中で色々とサービスして貰ったので」
「そうですか。それなら今からこれから行く所の説明を車の中でしますので付いて来てください。ああ荷物を持ちましょう。疲れたでしょう。車の中にドリンクを用意していますのでどうぞ此方へ」
「ありがとうございます。あっそうだ、みんなに写真を送らないと、すいません居間から写真撮って貰っても構いませんか?」
「はい、良いですよ。では撮りますね。3,2,1はい撮りますね。良い笑顔ですね」
といった後、卯月が渡したカメラが卯月を撮影したが、未だに卯月の顔には、少し陰りがある笑みを浮かべていた。
「ありがとうございます。すみません急なお願いをしてしまって」
「いえいえ、此れ位は歓迎しなければいけませんので、では、お車まで案内しましょう。そこで今回の件に関して詳しく説明しますので」
とダイソンが言うと卯月を車が駐車してある空港の正面ゲートに話しながら2人で並んで進んでいった。
空港の外に出ると眩しいほどの太陽が一面を照らし出していたが、その日差しも思ったほど熱く感じる事の無い心地良さがあった。そして、空港の入り口のすぐそばにDTS・リムジンカスタム(対弾・対衝撃・対爆・対地雷・対化学兵器等用の複合装甲及び各種防護関連装備付使用)が停まっていた。卯月は、
「誰か有名人が来ているのですか?」
と聞くと、ダイソンが笑みを浮かべると、車のドアを開き、
「此方にお乗りください。卯月様」
と卯月を招き入れる様にドアを片手で持ち、もう一つの手を差し出す仕草をした。卯月はほんの少しの間呆然としたが、周りの他の人の視線に恥かしくなりながら、ダイソンの手に自分の手をゆっくりと差し出した。そして、そのまま卯月は社内の中に入り、荷物は後部トランクに仕舞われた。
「どうでしたか?少しサプライズしてみましたが?」
「びっくりしちゃいました。それと、少し恥ずかしかったですよ。…でも少しだけうれしかったです」
「最後の方はよく聞こえませんでしたが、喜んでもらって私もうれしいですよ。あ、そうそう此れを持っていて下さい。このPASSは今回の見学に必要な様々事を統括する身分証の様な物なので失くさないで下さいね。後これを耳に装着してください」
とダイソンは、トレーを卯月に差し出した。トレーの上には、VIPと書かれたクレジットカード程の大きさのカードと補聴器と小型マイクが一体化した様な物が置かれていた。ダイソンは、
「このカードに後で写真を撮らせて貰います。それで、今回の滞在及び食費等は私共の用意したホテルのルームキー等の役割がありますので何かあったらこれをスタッフに見せて遠慮なく言って下さい。またこのスピーカー内蔵型小型マイクは我が社が開発した新型の自動音声翻訳装置兼自動音声発生装置です。我が社には未だに微妙な英語発声で苦労人が多々いますから、それを解消するために開発しました。そのおかげで我が社のコミュニケーション能力はほかの企業よりもスムーズな意見交換がなされています。」
「そんなにすごい物を使っても良いんですか?」
「ええ、まあ試しに使って見て下さい」
とダイソンに促され、卯月はそれを受け取り自分の聞き耳の方に装着し、ダイソンはためしに何時ものペース(普段は少しネイティブ発音の為慣れないと聞き取れない場合がある)で英会話を始めた。するとその音声が瞬時に卯月が慣れている日本語に変換され、イヤホンから聞こえてきた。卯月は素直に
「すごいですね」
と日本語で呟くと、それを聞いたマイルズが、笑みを浮かべ人差し指と親指で○を作り、ほほ笑んだ。そしてしばらく他愛もない会話を車中で暫く交わしていると、2人の間にある備え付けのテ-ブルに2つのグラスを置くと、マイルズが、
「卯月さん、少し喉が渇いたでしょう。何か飲み物を用意しましょう。それから今回の見学についてのご説明と我が社の特徴を話しましょう」
「は、はい。お願いします。」
「余り緊張しないで下さい。気軽に聞いてください」
と少し笑いながら備え付けの小型冷蔵庫からウイスキーとリンゴジュース、と氷ケースを取り出すと2つのグラスに氷を入れ、一方には並々とウイスキーを注ぎ、もう一方には少量のウイスキーを注ぎ、後はリンゴジュースを注ぐと冷蔵庫から冷やした細長いガラス棒をとり出し、軽くかき混ぜた。(作者注、自分の偶にやる呑み方です。リンゴジュースとウイスキーの比率は8対2又は9対1です。余りアルコールの強いお酒はお勧めしません。なおウイスキーの代わりに薄口の各種酒類にしてもいいですが、味は保証しません)それを振動防止つきの机に置き、卯月に進めた。
「まあ一口飲んでから話しましょう」
「は、はい。いただきます」
とウイスキー入りリンゴジュースを一口飲むと、ほのかにウイスキーの芳醇な香りがリンゴジュースに溶け込み美味しく感じられた。暫くそれをゆっくりと楽しむと、ダイソンが
「さてと、ではお話ししましょう。島村卯月様。今回の我が社の見学の概要と我が社の特徴を簡単に説明しましょう。我が先進技術開発局は設立は1944年に小さな機械技術関連会社から始まりました。その後、政府関連の仕事を請け負う様になり、現在は政府の一機関を任せられるようになり、先進科学等を中心に内外的に様々な分野で活動しています。ただ、我が局は、根本的に合衆国内の一企業として活動しています。そして、現在新たな分野としてミュージック関係にも手を伸ばそうと計画中です。そして、島村卯月さん。貴方の事を少々調べさせて貰いました。島村卯月17歳 現在日本国東京都内の高校に在籍中。また346(みしろ=美城)プロダクションの『CINDERELLA PROJECT』(シンデレラプロジェクト)の3人組グループである現在休止中の「new generations」のメンバーの一人ですね。しかしながら現在346グループの再編成事業が強行的に始まり、全てのプロジェクトは凍結後、『プロジェクトクローネ』に再編中ですね。ただ一部の反強行派である『CINDERELLA PROJECT』のメンバー及びその支持者が現在対抗中だという情報が我が社の調べで判明しています。また、島村卯月さん。貴方もここに来る前に一時的に統括常務から直々にクビを宣告されましたね。いえ、そんなに悲しい顔をしないで下さい。此処から今回の本当の我が社の目的です。島村卯月様、我が社のミュージック部門の最初の創始者の一人になって戴きたいのです。勿論その為の各種保障及び各種支援は全て全面的に全力で支援させて貰います。また、勉学等にも我が社が全面的に補佐します。又スグという訳にはいきませんので、此方に滞在中にゆっくりと考えてください。まあ、本音を言いますと、たとえ、世界的大企業であってもまだまだ弱者な美城グループなので、此方から様々な経済的及びその他で攻撃を仕掛ければ簡単に落ちる脆い城と我が社は考えています。なので、少しでも有利な今だからこそ卯月様は此方に来ていただきたいのです」
とマイルズが一息つき、会社関係の詳しい各種資料を卯月に差し出すと、ゆっくりとグラスに注いだウイスキーをゆっくりと一口飲むとは言っていた氷がカランと音を立てた。卯月は暫く提示された各種資料を読むと、
「すみません。マイルズさん。もう少しよく考えさせてくださいませんか?」
と言う事しか今現在の精一杯だった。マイルズは微笑むと、
「判りました。滞在中ゆっくりと考えてください。ああ、そろそろ我が社に着く頃ですよ。ようこそ島村卯月さん、我が先進技術開発局。『サイバーダイン・リサーチ・システムズ』文化芸能部門へ」
車内から見えてきたそれは、まるで日本にある346プロのような古風な駅舎の様な物とは全くの別物であり、幾つも天を目指すようにそそり立つ巨大なバベルの塔な堅牢な建築物が多数あり、其の側には、広大すぎる緑生い茂る森や人工湖等の自然物、更には、幾つ物1000~2000メートル級滑走路が何十本も引かれていた。その滑走路に多数の巨大な航空機が様々な大きさの駐機場から牽引車で引かれている側から滑走路に離着陸する航空機が見えた。
「これが全部芸能事務所なんですか」
と唖然とした表情で眺めていた卯月がマイルズに尋ねると、
「いえ、この建物群中の一つですよ。と言っても、貴方が所属していた346プロダクションの小さな建物とは桁が違いますが、全高795メートル。地下100メートル級の建物の一つです。更に言いますと、この敷地内全てで凡そ、床面積59万9千5百9十m²、容積は4978万m³その中の一つで土地専有面積636,000 m² 795m x 800 m程の建物が在ります。
ただ、此処はまだ本社の本棟の様な物なので他にもアラスカ州。ニュージャージー州等アメリカ全土に支社があり、此処と同程度又は若干のスマート化させた支社です。更に世界各国に子会社孫会社関連会社等が数万程在ります。しかしながら今の所日本には支社や子会社は進出していません。まあそのうち進出予定ですが」
とマイルズは笑いながら簡単に説明し終え、車は遂に『サイバーダイン・リサーチ・システムズ』の私有敷地内に入って行った。
それは、『審判の日』より3日前の事だった。