仕事の都合上、一週間以上の間を開けて、久しぶりに帰宅した少女。帰宅といっても彼女の家があるわけでのなく、寮室が艦内にあるだけなのだが。
さて、まず初めに、この少女がいる場所について説明しよう。
まず、ここは地球ではない。
ここは、彼女の所属する私設武装組織「ソレスタルビーイング」の活動拠点。
十八年前の「ELS」襲来…ヴェーダの言葉を借りれば、「来たるべき対話」…の日、ELSによる浸食により大破したプトレマイオス2改を修復・改修した、プトレマイオス3である。
改修とはいえ、残った二つのGNドライブでは組織が成り立たない。その上英雄、刹那・F・セイエイは行方不明。再編された地球連邦政府に平和維持を任せ、組織の再編を図っているわけだ。十八年たって、ようやくCBも軌道に乗ってきたのである。
そして、彼女の名はトレミラ・グレイス。その名の通り、フェルト・グレイスの娘である。そして、刹那の忘れ形見でもある。
姿はフェルトによく似ているが、髪や肌は刹那寄りだ。
血の性ともいうべきか、母親同様組織のために尽力している。
とまあ、彼女の紹介はこのようなものでいいだろう。
彼女は部屋に戻ったわけだが、そのままふらふらとPCの前に座り、起ち上げる。
相当眠いようで、大きなあくびが漏れた。
そのまま艦これのサイトを開き、流れるように”建造完了”をクリック。
いつもの前ふりムービーが……
「…あれ?」
…流れない。
おかしいな、とページを更新してみるが、画面は固まったままだ。
明らかにおかしい。
通信に異常はない。
「…一体どうしたっていうの?」
あらゆる手段で再起動を試みたものの、効果はなかった。
そんな時、ふと、画面の端を見てしまった。
見てしまったのだ。
「…ぇ」
こちらをじっと見つめる、妖精を。
そして訳も分からないまま、彼女の意識はぶつり、と落ちていった。
「提督、建造の進行具合はどうですか?」
「概ね順調だ」
その答えに、わずかに引っかかりを覚えた榛名。あの艦が関わっているのであろうから、聞き返してしまう。
「…何か問題でも?」
「艤装自体は完成した。しかし、肝心の艦娘が建造されないのだ。装備品はともかく、艦娘のいない艤装など鉄屑同然だからな」
「それはまあ……」
「それにあの艤装、燃料が供給できないんだよ」
「え、それはそれで問題なのでは?」
通常、艤装には弾薬と燃料が供給されなければ、機能しない。たとえそれが非戦闘艦であってもだ。艦によって違いはあれど、燃料補給を受け付けないとなると、航行できないのだ、通常は。
しかし、艤装になってもプトレマイオスはGN粒子を燃料にする。つまり、夫婦の妖精が持ち込んだ超小型GNドライブが動力源となる。
この事を、提督や榛名は知らないため、予想外の異常事態に困惑しているのだ。
さらに、プトレマイオスの艦載機とも言えるガンダム達が、プトレマイオスのコンテナ内で現在開発中だ。これらが完成した暁には、ガンダムが一機でも艦に残っていれば、プトレマイオスは無限にエネルギーを貯蓄できる。
CBの秘匿主義はこの世界でも共通らしく、最低限のデータのみしか提出していないのも、提督が詳しいスペックについて知らないのも無理はない。
諸事情を抱えたプトレマイオス。作業を眺める提督は、それに気付かない。淡く光る、青白い光の玉を。
「…来たか」
「ええ、そうね」
「世界の希望、ソレスタルビーイング。その母艦、プトレマイオス。俺たちはこの世界を救うさ。トレミーが呼んだ女の子だ。どんな結果になろうと、俺たちは未来を見続ける」
いあんはりんだとともに、完成したプトレマイオス…通称トレミーの艤装を眺めていた。
完成間際のガンダムたちも、マイスターの妖精たちも、いあんたち非戦闘妖精たちも、彼女が辿り憑くのを待ち望んでいる。既に艦娘としての身体の器は用意できている。
あとは、時間だけ。
暗い世界に光が射すのも、近い。
続きの投稿。
リメイクは難航中。