ちょっと勉強していたもので。
今回はいつもよりはちょっとだけ長めです。
と言っても他より短いんですけどね。
ある日のこと。
朝は雲ひとつない綺麗な青い空だったのに、午後になると雲行きが怪しくなっていた。
フレミーはせっかく晴れた日なのだからと街へ買い物に出かけていた。
フレミーが出かけて少ししてから雲行きが悪くなったため、雨が降らないか心配だ。
フレミーは傘を持って行っていない。大丈夫だろうか。
フレミーが雨に濡れて風邪でも引いたら大変だ。
本当は俺もフレミーと一緒に買い物に行きたがったのだが嫌がられた。
俺はすぐ帰りたがるから嫌なんだと。
でも服を見ている時のフレミーは可愛い。
頬が微妙に上がったり、ほんの少し口を尖らせて考えている時のフレミーは、ただの女の子だ。
とても六花の勇者だったなんて思えない。
他の人からしてみたら、彼女はただの無愛想な人に見えるのだろう。
だけど、今までフレミーと過ごしてきて、そういった細かい表情を少しずつだが知っている。
フレミーのことを考えていると、雨は静かに降り始めた。
フレミーはまだ帰って来ない。
ココもフレミーの帰りを待っているのか、玄関を見つめ座っている。
「お前もやっぱり、心配だよな」
俺はココに近づき頭を撫でた。
地上最強の男も愛犬も、愛する女の帰りは心配になるのだ。
それからしばらくしてフレミーは帰って来た。
額には水が滴り、水を吸った服はフレミーの体にピッタリと張り付いてる。
買い物バッグを守ったためか、バッグはそこまで濡れていない。
「…ごめんなさい。今夕飯の支度をするわ」
「フレミー、先に体を拭かないと。ほらタオル」
帰って早々夕飯の支度をするできた妻だと感心するが、今はフレミーの体が心配だ。
「フレミーは体を暖めていろ、風邪を引く。今日は俺が支度をするから」
「いいわ、私がやるわよ」
フレミーは私がやるとなぜか引かない。
「大丈夫だってフレミー」
「…いいって言ってるでしょ」
フレミーが怒りの眼差しを俺に向けた。
どうしてそうなる?
「本当に、大丈夫なのか?寒気とかないか?」
「大丈夫って言ってるでしょ。アドレットはあっちへ行って」
フレミーが俺のことをアドレットと呼ぶときは本当に怒っている時だ。
これ以上は逆に体に障るかもしれない。
「わかった。だが無理はしないでくれ」
「…着替えてくるわ」
フレミーはバッグを持って寝室へと向かった。
濡れたフレミーの肩は、少しだけ震えていた。
その後もフレミーは怒ったままで、食器を片付けたフレミーはすぐに寝てしまった。
俺もフレミーに声をかけることができず、お互い背を向けて眠った。
翌朝。フレミーは酷く熱を出した。
悪夢にもうなされているようで、もがき苦しむフレミーを見ていて辛かった。
フレミーの手を握り、額に当てたおしぼりを変え、汗を拭き、しばらくしてフレミーは落ち着いた。
不意にモーラから教わった山の薬草のことを思い出して山へと向かった。
フレミーをひとりにするのはためらわれたが、もしものために、薬草は必要だと思った。
フレミーに風邪を引かせた冷たい雨は、すっかり止んでいた。
薬草を摘んでフレミーの待つ家へと帰ると、フレミーは辛そうな声で俺を呼んでいた。
靴を脱ぎ損ねてコケたが、今はそんな事はどうでもいい。
「フレミー!」
見ると先ほどよりも状態が酷くなっている。
「アド…」
今にも消えそうな声で、聞いていて辛い。
「フレミー大丈夫か⁉︎今薬草を採ってきたから、待ってろ!」
薬を作ろうと立ち上がると、小さく熱いフレミーの手は俺の手を握っていた。
「…ここに居て」
俺の手を握るフレミーの手には力がない。
「…わかった」
顔の赤いフレミーは力なく笑った。
「…昨日はごめんね、アド。強がっちゃって」
「謝る事じゃない」
俺も笑ってみせる。
「…アド、引き出しの中を開けて」
指を指す方向とは若干ずれたところに引き出しはあった。
引き出しを開けると、雨で少し濡れたリボンの付いた包みがあった。
「フレミー、これは?」
「…あなたへのプレゼントよ。…あなたに似合うと思って」
なかを開けると、六花の紋章に似た模様の入った額当てが入っていた。
「フレミー…ありがとう」
フレミーからのプレゼントを身に付け、フレミーの元へ座る。
「似合ってるか?」
「…似合ってるわ」
優しく微笑むフレミー。
そのままフレミーに吸い寄せられ、俺はフレミーにキスをした。
「…風邪、移るわよ」
「地上最強は風邪を引かないんだよ」
笑ってみせる。どんなときでも。
「…もう少し、そばにいて」
そしてフレミーはまた眠りに付いた。
「地上最強は風邪を引かないんじゃなかったのかしら?」
後日俺は風邪を引き、フレミーに笑われた。
フレミーの風邪なら移ってもいい気がします。
あはっ。僕もバカですね。