最弱無敗の神装機竜〜『白き英雄』〜   作:瑠夏

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第12話 入団テスト

 

 

今日も今日とて、雑用の依頼をこなしている。こなしているのだが依頼の内容が危ない。着替えの手伝い、マッサージ、下着の洗濯など、男である自分がやっていい仕事ではない。しかし困ったことに、冗談ではなく、本人たちは真面目に書いているので、頭が痛い。

 

とはいえ、優先してやるべき仕事があれば断れるので、今のところはほっとしている。

今日は学園の依頼で、他の子たちの依頼より優先になる。

 

「……それよりも何で俺は真面目に雑用の依頼をしてるんだろうな」

本当なら雑用の仕事はルクスだけで、シルクには全く関係のないものだった。

 

「……けど、変に反抗してみんなとギクシャクするのは嫌だしーー知らない子と交流が持てるってことで我慢するか」

 

今日の依頼場所は工房で、学園敷地内の端にある、大きな一戸建てのようだ。シルクは王都で装甲機竜を整備したこともある。多少のことなら手伝いになるだろう。

 

「すみません。シルク・グランフェルトです。仕事の依頼を受けて来ました」

軽めにドアをノックする。

 

「お、来たか」

ドア越しに、聞いたことのある声が聞こえてきた。誰だ?と、考えるより先に工房のドアが開く。その中から姿を現したのはリーシャだった。

 

「中に入ってくれ」

「あ、ああ……」

 

リーシャに言われ始めたが中に入る。

 

「あれ? シルクも今日はここなの?」

「へ? ルクスもここなのか?」

どうやら、今日の依頼は二人一緒らしい。

 

「よし、シルクが来たことだしそろそろ行くぞ」

「え? どこに?」

「決まってるだろ。お前たちの新たな仕事場だよ」

キラリと目を光らせるリーシャを見て、シルク、ルクスは嫌な予感がした。

 

 

その悪い予感は的中した。向かった場所には十数名の装衣を身につけた生徒たちが二人を待っていた。顔見知りの生徒はクルルシファーと、フィルフィ。そして、三和音の三人だ。他の半分以上は初めて見る顔だった。

 

そして、どうやらリーシャはシルクとルクスを『騎士団』に入れたいそうだ。

 

『騎士団』とは機竜使いが、常に不足しているため、士官候補生から特別に戦闘許可を持つ『騎士団』ーー遊撃部隊が設立された。

 

そして、『騎士団』に入るには条件があるらしい。この学園には校内戦があり、そこでの成績で、総合して高い評価を得ていること。機竜使いの階層が、中級階層以上であること。そして、『騎士団』のメンバー過半数からその実力を認め、入団の賛成に投票すること。この三つが、入団条件らしい。

 

だがーー

 

「俺たちって、まだ編入したばかりで実技演習もろくにーー」

「残念ながら、そうなんですよね。あなたたちの『無敗の剣聖』『無敗の最弱』という噂は聞いておりますが」

穏やかそうな女生徒が苦笑すると、

「平気だ」

と、リーシャが自信たっぷりに、流れを断ち切った。

「先の二つの条件など、ただの前提に過ぎない。ここにいるほどの生徒たちならもう知っているはずだぞ?ルクスは一騎打ちでわたしと引き分け、単騎で幻神獣二体の攻撃を防ぎ、シルクも同じ単騎で幻神獣を圧倒した。この二人の実力をな」

 

「まあ、そうですが……」

 

リーシャと『騎士団』のメンバーが話し合っているとき、隣にいたルクスがフィルフィに何かを尋ねていた。シルクは何もせず、ただ話し合いが終わるまでぼうっとしていた。

 

「おい、二人とも話がまとまったぞー」

すると、話がまとまったようでリーシャがシルクとルクスを呼ぶ。

 

「お前たち二人が組んで相手チームと戦うことになった。さっさとそこの仕切りに行って装衣に着替えてこい」

 

「…………」

ルクスはただ呆然と立ち尽くしていた。それを見たシルクは、

「どうした、ルクス。早く行って着替えようぜ。ーーそれとも、ここにいるみんなに着替えるとこを見せるか?」

シルクのからかいに、ルクスが慌てて顔を赤くする。そして、それに乗るように、

「覗きはするけど、自分から見せたい派ではなかったのね」

隅にいたクルルシファーまでが、ぼそっと呟き、ルクスは頭を抱えた。

 

「それよりーー俺とルクスの相手は誰なんだ?」

「Yes.この場にいるシルクさんたちと初対面のメンバーたちのようです」

「えええっ!?」

先程まで頭を抱えていたルクスは相手の数にさらに頭を抱えてしまう。

 

「大丈夫だろう。勝てない数じゃない」

シルクの一言を挑発と受け取ったようで『騎士団』のメンバーは鋭い視線をシルクに向けていた。逆に、クルルシファーや、リーシャなどは興味深そうに見つめる。

 

「ほう。お前はこの数相手に勝てると思っているのか?学生といっても幻神獣となら何回か戦ったことのある連中だぞ?」

リーシャが試すような視線を向ける。

「ああ、それでも勝てるよ。ーーそれに、幻神獣となら多分この『騎士団』より多く戦ってるからな」

 

『……!?』

この場のルクスを除いた全員がシルクの発言に驚きで目を見張った。

 

「どういうことだ? わたしたちより交戦回数が多いだと? 我々『騎士団』は軍から依頼され、幻神獣と何度も戦ったことがある。それなのにーー」

リーシャはそこで言葉を区切り、シルクを見つめる。

「……リーシャ様」

「……なんだ?」

いつもからは考えられない、真剣味を帯びた声にリーシャは思わず構えてしまう。しかし、シルクが言ったことは、リーシャの斜め上をいくものだった。

 

「そんなに見つめられたら恥ずかしいじゃないか」

 

顔を赤らめながら言ったシルクに対し、リーシャは顔を伏せる。

「…………ふ」

「ふ?」

「ふざけるなぁぁああ!!」

「おっと」

リーシャは急に顔を上げると同時に、右ストレートをシルクの顔目掛けて放つ。だが、それを済んでのところで片手で受け止める。

 

「危ないなぁ」

「こいつ……!」

シルクの余裕の態度を見て、リーシャはもう片方の手で殴るが、それも受け止められる。

「くっ、くそ! 離せ!」

「えー。だってこの手離したらまた殴りかかってくるかもしれないし」

リーシャは手を離そうともがくが、一向に離すことができないでいる。そのことにリーシャは苛立ち、シルクを睨む。だが、睨まれた本人は、

 

「だから、そんなに見つめられたら照れるって」

「くそぉぉぉおおお! こいつ!」

「し、シルク! その辺にしときなよ! ……それとリーシャ様も落ち着いてください!」

ルクスはいい加減、リーシャをからかうシルクを止めに入る。そして、怒りで我を忘れているリーシャは、ルクスの声を聞き、冷静さを取り戻した。

 

「る、ルクス! 違うんだ! わたしはこいつを見つめてなんていない!!」

そして、すぐにルクスへ弁解をした。ルクスはシルクの冗談ということをわかっているため、リーシャの必死の弁解に苦笑しながら頷くだけだ。

 

そんなリーシャを見て、周りの『騎士団』はくすくすと皆が笑っていた。

 

「……ごほん! もういい。お前のことは後日聞こう。それより、早く始めたいから二人はさっさと着替えてこい」

それを見たリーシャは照れ隠しにひとつ咳払いをし、二人を早く着替えるよう促す。

 

二人は準備を済ませ、演習場に出る。

 

「来たれ、力の象徴たる紋章の翼竜。我が剣に従い飛翔せよ、《ワイバーン》」

 

「接続・開始」

即座に機竜を召喚し、身に纏う。

「ねえ、シルク。作戦だけどどうする?」

同じく《ワイバーン》を纏ったルクスが隣へ並び、聞く。

 

「作戦? そんなの、ルクスが攻撃を全部防いで、その間に俺が全員を倒す。これでいいんじゃね?」

「それだけなの!?」

雑すぎる作戦にルクスはつっこまずにはいられなかった。相手は実践経験のある機竜使い。それを十人以上も同時に相手するのに何の作戦もなしに挑むのは無謀だろう。

 

「ちょっと、しっかり考えよーー」

「今から入団テストを行う。両者、準備はできたな?ーーそれでは、入団テストーーー開始!」

ルクスが話している途中で、入団テストが始まってしまう。そして、合図とともに『騎士団』のメンバーは全員、浮上する。

 

「ルクス、どうやら俺の言った作戦でいくしかないみたいだな」

シルクはそだけルクスに言うと、浮上する。

「あんなの作戦とは言わないよ……はぁ」

最後にため息をつき、『騎士団』からの攻撃に備えて構える。

 

相手の人数は十四人。七人が《ワイバーン》、四人が《ワイアーム》、三人が《ドレイク》といった感じだ。

 

 

「よし。なら早速、こっちからいかしてもらうぞ!」

 

まずは一番近くにいた『騎士団』のメンバーに一瞬で詰め寄る。

 

「え!……う、うそ!」

突然目の前に現れたことに気を取られ、反応に遅れる。そして、その遅れはシルク相手には大き過ぎるほどの隙となる。

 

「きゃあああああ!」

まずひとり脱落。

 

周囲の『騎士団』たちは呆気にとられていたが、さすが実践経験のある実力者なだけあって復活が早い。即座にシルクを囲むように陣形を作る。左右上下からの息の合った連携でシルクを攻める。

 

「《ワイバーン》の機竜使いの人は全員俺のところに来てるのか……」

シルクはそこで、ちらりと、ルクスを見た。ルクスは《ワイアーム》と《ドレイク》の機竜使いからちょくちょく攻撃され、それを防いでいた。大方、先にシルクを排除し、その後ルクスを倒す魂胆なのだろう。ルクスへの攻撃は万一にも乱入されないためのもの。

 

「余所見しているとは、余裕ですね」

長身の少女が、余所見をする余裕があるシルクに対して不満な声をぶつける。

 

「余裕ってわけではないけど……、まあ、“余所見するぐらいの余裕”程度ならありますよ?」

 

「言ってくれますね!」

余裕があると言われ少し怒気が孕んだ声で、今まで以上にブレードを強く振る。それは他のメンバーも同じだったようで攻撃が激しくなる。シルクは自分から仕掛けず、ただ相手の攻撃をを捌くだけ。

 

ブレードが当たらないことにだんだん焦り始め、攻撃が王振りになり、その瞬間、シルクは腕を振る。

 

大振りでは次のモーションに繋げるのは極端に遅くなる。それに合わせてシルクの切っ先が汎用機竜に吸い込まれるように伸びていき、

 

「うそでしょ……!」

二人目脱落。

 

「攻撃が大振りになってるよ………っと」

シルクはそれだけ言い、次に向かおうとしたところで、《ワイアーム》のエネルギーキャノンがシルクの背中目掛けて発射されていた。

 

だが、シルクは慌てることなく反応し、ブレードの切っ先で受け、軌道をずらす。

 

ズラされた《ワイアーム》のエネルギーキャノンは、ルクスを狙っていたもう一機の《ワイアーム》に直撃する。

 

「えっ? ーーーーきゃぁぁあああっ!!」

激しい衝撃が少女を襲い、悲鳴をあげる声が聞こえてくる。

 

「うそ!? あれの軌道をブレード一本だけでそらしたの!?」

 

あり得ない出来事に動揺を隠せない『騎士団』。だがシルクは相手が動揺していても容赦なくブレードを振る。ブレードを使い完全に防御体制に入り、守りを固めるが、シルクは真正面から突きを放ち、ブレードごと粉砕する。本来なら機動力にエネルギーをほとんど使っているシルクのブレードではエネルギーを平均的に振っている彼女たちのものには押し負けるだろう。だが、シルクはそれを自分の卓越した剣技で補っている。シルクの振るブレードは鋭すぎてエネルギーの差をいとも簡単に越える。そのため、いくらガードしようが全て砕け散る。

 

ーーーーーこれで三人目。

 

 

「ハァ……、ハァ……、どうして当たらないのよ」

「わ、わたしたち十人がかりでもブレードを当てることもできないなんて……」

「これが……『無敗の剣聖』」

「れ、レベルが違いすぎるわ!」

 

あまりのレベルの差に残りのメンバーは戦意をほとんど失っていた。だが、そこは機竜使いとして、そして『騎士団』としての意地があり、諦めることはなく果敢に挑んだ。

 

「せめて一撃だけでも当てるッ!」

まず、長身の少女が正面から堂々と襲い来る。今までの戦いを見てこの戦法は無謀だろう。しかし、彼女らの狙いはシルクに一撃を当てること。正面から来る少女は囮だろう。

シルクはダガーを投げ、長身の少女の動きを止め、即座に後ろへ振り向き、振り下ろされているブレードを受け止めながら少し浮上し、左右から来る攻撃をかわす。交わした際に、左右から来た二人はシルクがいなくなったことでもたついている。そのところに、未だ受け止めている相手に詰めよって腕を掴み下へ投げる。

 

「「「きゃぁぁぁあああ!!」」」

 

ドカン!

 

と、三人は地面に叩きつけられ、それ以降動くことはなかった。

 

それを見届けるとシルクは一人残った長身の少女へと視線を向ける。

 

「ひっ……!」

少女はあまりに広がりのある我彼差に怯えた表情を作っていた。

 

シルクはその表情を見て、もう戦う意思がないと確認すると、残りの『騎士団』を倒しに向かった。

 

 

 

ーーーここからの展開は一方的だった。

 

《ワイアーム》、《ドレイク》の攻撃は全てルクスが防ぎ、その間にシルクが攻撃を仕掛ける。

 

この繰り返しだ。

 

最強の矛であるシルクと最強の盾であるルクスが揃えばこの展開は必然だろう。

 

 

そして数分のうちに、残った『騎士団』全てを倒しきり、無事入団テストは終了した。

 

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