シルクが、妹のイリアにお願いされ、一緒の布団で寝静まった頃、それは起こった。
ドオオオオン!ドオオオオン!
と、凄まじい爆音が何度も古都国中に響き渡った。
シルクとイリアは、突然の爆発音に跳ね起き、カーテンを開け、窓から外の様子を伺った。
シルクが見た景色は想像を絶する程のものだった。昼間までは、活気付いていた自分たちの街が、今では見る影もなく、ほとんどが崩壊していた。
目を見開き、口をポカンと開けて固まっている兄を不審に思い、イリアも窓の外の光景を目にしようとした。
唖然としていたシルクだが、妹が窓の外の光景を見ようとしているのが目に入り、慌てて妹の目を手で隠し、すぐにカーテンを閉めた。
「……ど、どうしたの!?お兄ちゃん!」
不意に目を隠されたことで、少し慌てた様子で聞いてくる。
「…い、いや、何でもないよ。ただ、少し寝呆けてただけで………あ、あんな事あるわけない!」
最後の方は、自分に言い聞かせるように言った。そして、もう一度外を確認し、見間違いじゃないと悟ると、イリアの手を取りベットから起き上がった。
「イリア。俺の服でいいから今すぐ着替えるぞ」
シルクはそう言い自分の服をタンスの中から取り出し、イリアに着替えるよう促した。
「俺の服でいい」と言ったあたりからイリアは顔を赤くし、モジモジしていたが、再度、シルクが、着替えるように言う。
そんな兄の雰囲気から、モジモジしてる暇がないことを悟り、すぐに兄の服へ着替え、手を引かれるように走り出した。
向かった先はリビング。そこには、シルクと、イリアの母と父がいた。
フェリシア・グランフェルト。これが母親の名前。見た目は完全に二十代なのだが、実際は四十代。キレイに伸びた白髪はウェーブがかかっている。
バルト・グランフェルト。二人の父親。細くも太くもない、筋肉質。黒色の髪の毛で前髪から見える目はとても鋭い。
「お母さま、何が起こってるの?」
慌てて何かしているバルトをチラっと見て、シルクは不安そうにフェリシアに尋ねる。
フェリシアは、言おうか言うまいか悩んでいる様子だ。だが、何かを決心したような顔になり、フェリシアは話した。
「…………は?」
「…………え?」
何を言われたのかすぐには理解できなかった。フェリシアが言ったことは、自分が考えていた状況よりも遥かに悪かった。
「………し、侵略……?」
「………アーカディア王国が………?」
そう、アーカディア王国がここ、古都国を侵略してきてのだ。今は、国の者が応援に行っているが、戦力差は歴然で、古都国が滅ぼされるのも時間の問題らしい。頭の中が真っ白になる。それは、イリアも同じで、さっきから無意識の内か、体が全体が震えていた。
シルクは、隣で震えている妹を安心させるために、体を抱きしめる。
「大丈夫……。大丈夫だから、僕がイリアを守ってやる!イリアは絶対に大丈夫だから!これでも僕はイリアのお兄ちゃんなんだから!」
自分を鼓舞するかのように力強く、そして、イリアを安心させてあげるために明るく笑った。
これからどうするか?と、話し合おうとしたその時ーーーーー
「邪魔するぜ!」
という声とともに、窓ガラスが割れ、一人の男が侵入して来た。男は、真っ黒な機械に包まれた姿だった。
侵入した男はニヤリと口元を歪めながらこちらへゆっくりと歩いてくる。それは、シルク含め、家族全員が死神のように見えただろう。
「いや〜、良い家に住んでんな〜お宅ら。羨ましい限りだぜ。ま、そんな裕福な暮らしも今日で終わるんだがな」
言うだけ言うと、男は恐怖で動けないシルクに向かって大きな瓦礫を投げる。
恐怖で咄嗟に動くことが出来ず、死を覚悟した。
だが、父、バルトがシルクを抱え、何とか瓦礫から逃れられた。
そしてバルトは、息子であるシルクに、一本の剣を渡す。その剣は汚れひとつない真っ白だった。
「いいか、シルク!この剣はお前のだ!」
そう言ってバルトはその剣をシルクの手に握らせる。
「これはお前の一部だ。だから絶対に手放すなよ!」
バルトは最低限の説明しかしないで、シルクにイリアを連れて逃げるよう促す。
「と、父様と母様も一緒に逃げよう!」
「俺たちが一緒に逃げたらあいつにまとめて殺される。だからここは俺たちがくい止める!だから早く逃げろ!」
「私たちも長くは持たないわ。だから、早くお行き!」
シルクは助けに行きたかったが役に立たないことをわかっている。だから、妹のイリアだけは絶対に逃す。涙が出そうなのを我慢して、イリアの手を握り、走りだした。
(一歩でも遠くへ行く、絶対に振り返ってはダメ、泣くのは後ででいいから今は遠くへ!)
無我夢中で走った。途中、イリアは苦しそうだったが、とりあえず安全な場所へ行くまでは止まらなかった。
♢
あれから何日が過ぎただろう。イリアの足が限界を迎え、シルクが負ぶって歩いた。
もうフラフラだ。
そして、やっとの思いで大きな街にたどり着いた。しかしそこは、憎きアーカディア帝国だった。こんな所、すぐに立ち去りたいが自分たちの状況的にもう、ここで休むしかない。幸いにも、お金はあった。それも結構な大金だ。そのおかげで、寝床と食料は確保できた。だが、今はいいが、その内お金は底をつく。これからの生活については改めて考えないといけないな。
無駄遣いをしないため一番安い宿に泊まることにした。もう、クタクタなのでイリアと一緒にすぐに布団へ入り、眠った。
♢
起きたとき、イリアはシルクに強くしがみ付いて眠っていた。両親が、殺されて唯一の肉親であり、拠り所。今イリアは必死にしがみ付くのに必死なのだ。置いて行かれないように、なんとかして生き延びようとしているのだ。そんな妹の姿を見て、シルクは涙を流してしまった。
シルクは、大丈夫と安心させてあげるために寝ているイリアを抱きしめてあげる。すると、しがみ付いていた腕の力が緩まり、顔も少し穏やかになった。そうして、シルクも安心し、そのまま意識を失った。
♢
アーカディア帝国に来てからもう何ヶ月もたった。なんとか、生活できる程度には稼いだりしている。稼ぐといっても9歳のガキを雇ってくれるとこなんて一つもない。だから、いろいろな店を回って、今やれる事をやらしてもらい稼ぐ。そういうやり方で稼いでいた。家事はイリアがやってくれているからリリアは働いてお金を稼ぐ。二人、手を取り合わないと生きていけない状態だった。この国は男女差別が酷く、イリアを外に出すわけにはいかなかった。外へ出してあげられず、ずっと家にいる妹を思うと心苦しくて申し訳がない。
そんなこともあり、日に日にこの国への憎しみが強くなる。いつかこの国を潰すと心に強く刻んだ。
ある日、シルクは父親に渡された剣に触る。すると、いきなり眩い光を発した。
『お前が私を扱う者か』
どこからかそんな声が聞こえた。だが、近くに人一人としていない。今のはなんだ?と首をかしげたとき、違和感に気づく。
視線がいつもより高くなり、体を機械のようなものに覆われていた。
これは古代兵器の装甲機竜だ。その中でも最強の部類の神装機竜。これはとてつもなく、貴重なものだった。シルクは仕事終わりに毎晩それを扱うトレーニングをした。まだ、古都国に住んでいた頃、装甲機竜の訓練は受けていたが、扱えるようになるまで時間がかかった。
訓練を始めてからまた、月日が流れ、もう十分に扱えるようになったとき、反乱軍があることを知り、シルクは入れてくれるよう頼み込んだ。最初は断られたが、力を見せると入れてくれることになり、そこでシルクは一人の少年と出会う。
出会った少年も、神装機竜の持ち主で、一緒に訓練などに励んだ。そして、シルクはその年に、出会った少年と共にアーカディア帝国を滅ぼした。
最後は少し雑になって申し訳ないです。
ですが、いつか過去編で深く書いていこうと思うので悪しからず。