最弱無敗の神装機竜〜『白き英雄』〜   作:瑠夏

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第3話 イリアの心

 

「すぅ……すぅ……」

シルクはすぐ隣で寝ている少女の寝顔を微笑ましそうに眺めていた。

 

少女ーーーーイリア・グランフェルトはシルクの最愛の妹だ。アーカディア帝国からアティスマータ新王国になり、シルクが女王陛下に忠誠を誓ったとき、裏切れないようにと四大貴族のお偉いさんたちに人質として、連れて行かれたのだ。その時は妹を人質にしたことに憤りを覚えたが、女王陛下にイリアの安全は保障する。と、言われたのでシルクは下がるしかなかった。女王がそう言うなら大丈夫だろうが、シルクは心配せずにはいられなかった。

 

 

 

新王国に仕えるようになってからシルクは女王の依頼を数多くこなしてきた。女王もシルクが、旧帝国であるアーカディアを滅ぼした一人と知っており、その実力を認め、女王直々に任務を与えていた。

 

ただ一つ、女王はイリアの居場所を教えてくれなかったのだ。何度か聞いたが、安全なところにいるの一点張りで、いつか絶対に会えるとしか言わなかった。

 

もしかしたら女王は学園長から呼ばれなくともシルクをこの学園に入れる予定だったのだろう。なんとも、ふざけた事をしてくれる女王だ。

 

そんな事を思いながら、シルクは未だ、幸せそうに寝ているイリアの頬っぺたをツンツンと突いた。

 

「……んっ………ふぁ……おにいちゃん………?」

「ごめんごめん。今ので起こしちゃったか」

「ううん。別にいいよ。……それより、本当にお兄ちゃんなんだよね?嘘じゃないよね?これ夢とかじゃないよね?」

イリアは確かめるように俺に恐る恐る触れる。だがシルクはしっかり自分がここにいると、教えてあげるためにイリアを抱き寄せた。

 

「それ、昨日も言ってたぞ。俺はちゃんとここにいる。もう、イリアの前からいなくならないから、だから安心してイリア」

 

子供の頃にやってたように優しく頭を撫でた。

 

するとーーーーーーーー

 

「………すん……会いたかった、ずっと……ずっと会いたかったよ、お兄ちゃん!」

堪えていた涙が我慢できなくなり、シルクの胸に顔を押し付け泣き出してしまった。

 

シルクは泣き止むまで、強く抱きしめ、優しく頭を撫でてあげたのだった。

 

 

 

 

少ししたら泣き止んだ。泣き止んだのはいいが、イリアは今まで離れてたぶんを取り戻そうとしているのか、左腕に抱きついたまま離れることがない。

 

「離してくれ」と頼んでも「いや!」の一点張り。

 

(はぁ〜、困ったな。もうすぐ学園長との約束の時間だし……どうすっかな〜)

 

 

 

 

 

 

結局最後まで離れず、一緒に行くことにした。左腕に強く抱きついているため、非常に歩きにくいが、イリアのことを考えてあげると振りほどくこともできない。

 

そんな事を考えていたが、幸せそうに腕に抱きつく妹を見て、別にいいか、と思ってしまうのだった。

 

シルクの腕に抱きついてたイリアは、シルクと会った昨夜のことを思い出していた。

 

 

私は王立士官学園女子寮の部屋の中で一人、静かに泣いていた。

 

理由は、四年前から離れ離れとなった兄、シルクのことを思い出したからだ。

 

私は自分に自覚があるぐらい兄に依存しきっていた。そのため兄と離された当時は、大変だっだと聞く。毎晩寝ることはなく、いつまでも泣き続け、食事も一切とらなかった。そして、精神が崩壊寸前までいったらしい。だが、そこは女王陛下の計らいで何とか精神を保つことができ、今では普通に生活できるほどに回復している。

 

だけど、たまに兄の夢を見てしまうことがあり、その時は泣いてしまうのだ。

 

「お兄ちゃん……会いたいよ……また一緒にお話ししたいよ………昔みたいに抱きしめて欲しいよ………」

 

そんなこと言っても兄と会えるわけではないが、言わずにはいれなかった。

 

 

 

 

 

「………すん、お兄ちゃん………お兄ちゃん……」

 

私は枕に顔を埋めて泣いていた。だが突然どこからか何かが壊れる音がした。そして、直後にお風呂場のほうから悲鳴と、「痴漢」「下着ドロ」「覗き魔」といった言葉が聞こえてきた。

 

何があったのだろう?と思い私は涙を拭き、部屋を出た。するとそこには、銀髪の少年がいて、荒い息を整えているところだった。瞬時に身構えたが、よく見るとその少年の姿は見覚えがあるものだった。

 

確か………そう。確かまだこの国がアーカディア帝国だった頃、反乱軍の主戦力であり、兄と親しかった人物だ。何度か家に来たことがあり、私とも面識があった。

 

「る、ルクスさん!」

「ッ!………あれ?…君って……もしかして、イリアちゃん……?」

ルクスさんは突然話しかけられ驚いていたが、声の主が自分の知っている人だとわかるとホッとした様子を見せた。

 

「はい。お久しぶりです、ルクスさん」

「うん。久しぶり、イリアちゃん。……でもまさかイリアちゃんが、ここにいるなんてね、ビックリだよ」

「私も女子の学園に男のルクスさんがいることにビックリです」

「うっ………そ、それにはいろいろ事情があって………」

 

ルクスさんは言葉に反論できなく、言い淀んでしまった。だが、すぐに何かを思い出したような顔つきになり、私にとって信じられないことを言った。

 

「あっ!そうだ、イリアちゃん!この学園の屋根にシルクが……君のお兄さんがいたよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………え?」

「今ならまだ、学園の門あたりにいるんじゃないかな?」

ルクスさんの言葉を聞き私はすぐに走り出した。後ろで、ルクスさんが何か言っている様子だったが、今の私には届かなかった。

 

 

 

 

 

門あたりで、二つの大きな影と二つの人影が見えた。どうやら真ん中にいる人を挟み撃ちにしているようだ。急いでその場へ行き、人影を確認した。そこで、私は体が硬直してしまった。

 

何故ならば、挟み込まれていた者はずっと会いたいと思っていた兄だったからだ。

それに、兄と別れたのは私が11歳で兄が12歳のとき。まだ当時、お互い子供同士であったが、今目の前にいる兄は身長が高く、男のわりにすらっとした体。髪の毛は目元までかかって、そこから覗く目は鋭い。誰がどう見てもカッコいい、もしくはイケメンと言うだろう。それ程兄はカッコよかった。

 

ドキドキする気持ちを抑えながら、兄であろう人に話しかける。

 

「……お、お兄ちゃん!」

「ッ⁉︎」

「………………………もしかして……本当に、お兄ちゃん?」

「………………イリア」

予想通り、真ん中にいた人影は兄のシルクだった。私はフラフラと、兄の方へ歩いていった。

 

「…………………お兄ちゃん?……本当に…お兄ちゃんなんだよね?」

目に溜まった涙を堪えながら確認する。

 

兄も目に涙をためながら、ゆっくり歩み寄り、

 

「………ああ、俺だよ……お兄ちゃんだよ、イリア……」

お互い、自分がずっと会いたかった人物だとわかると、兄を呼んで抱きついた。

 

「お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん!寂しかったよ!ずっと……お兄ちゃんと離れてからずっと寂しかった!」

「ああ!俺もずっと会いたかった!俺も寂しかった!」

 

ギュッ!

 

と、お互い涙を流しながら、強く抱きしめあった。

 

「「「……………」」」

まさに今、兄を捕まえようとしていた三人だが、突然の展開についていけていないようで、口をポカンっと開け、こっちを見ているだけだった。

 

 

 

 

あの後、あの場にいた全員で一旦兄を学園長の元へ連れていった。そこで、兄がなぜこの学園に来たか、そして何故戦闘になっていたのかを聞いた。そして戦闘の元であった覗きは不本意だったことがわかりなんとか誤解を解くことができた。

 

話が終わり兄は「今日はもう帰る」と言って出て行こうとしたが、私はやっと会えたのにまた離れるなんて絶対に嫌だと、学園長に兄を自分の部屋で泊めてほしいとお願いした。幸いなことに私の部屋は一人。それに兄妹なら一緒の部屋でも大丈夫だ。

 

学園長からはすんなり許可をもらい今日は一緒に部屋で寝ることが決まった。私は嬉しくて舞い踊ってしまいそうだったが、何とか抑えた。だが、兄は突然のことに困惑ていた、

だが、私は兄と離れたくなかったので、お願いした。それを見た兄は苦笑いしながら「わかった」と、うなずいてくれた。

 

 

 

寝るときは小さい頃のように兄に抱きついて寝た。兄も私のことをしっかり抱きしめ返してくれた。また兄に抱きしめてもらえて、懐かしく思い、なかなか寝ることができなかった。でも、兄は今日、疲れたのかすぐに眠ってしまった。

 

私は兄の顔をまじまじと見つめ、鼓動が早くなり、顔も赤くなっていることに気づいた。兄は本当にカッコよくなった。

 

そして今日あってわかったことがある。それは、私が兄であるシルクのことを好きだということ。兄妹としてではなく、異性の男として、どうしようもないくらい大好きだということ。兄妹が結婚できないのは知っている。妹が兄を異性として好きになるなんておかしいことぐらいわかっている。

 

でも、もうこの気持ちを抑えることはできない。一度芽生えたこの気持ちを無視することはできない。

 

私は寝ている兄に唇を近づけ、キスをしようとした。あと数ミリ。唇と唇が合わさろうとした。だけど私はそこで唇を止めた。やっぱりいきなり唇はハードルが高かった。顔が火傷しそうなほど熱かったのだ。だから私は頬っぺたにキスをした。今はこれが限界。でもいつかは唇にしたい、あわよくば兄からキスをして欲しい。そう思いながら大好きな兄の胸に顔を埋めて寝むるのだった。

 

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