最弱無敗の神装機竜〜『白き英雄』〜   作:瑠夏

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第4話 決闘騒ぎ

 

「なあ、イリア。もう学園長室前だ、だから腕を離してくれ」

「いや、絶対にいや!離さない。このままでいる」

「いや、このままで行ったらみんな戸惑うよ。いくら兄妹って言ったからって流石にこれじゃ恋人同士みたいに見られぞ」

「私は別にいいもん。お兄ちゃんと恋人同士に見られたって。………それともお兄ちゃんは嫌?私と恋人にみられるのは、迷惑?」

「うっ…!」

 

さっきからこれの繰り返しだ。シルクが腕を離すように言っても、今みたいに涙目、上目遣いで「迷惑?」なんて聞いてくる。迷惑なんてことはない。むしろ今でも自分を、お兄ちゃん、と慕ってくれてスゴく嬉しいくらいだ。

 

でも、時と場所を考えて欲しい。今から学園長に会うのにこのままではいけないだろう。

だが、何を言っても離れない!と頑固として譲らない。

 

「はぁ〜、仕方ない。このまま行くか……」

これでは押し問答なので、もう諦めて学園長室の扉をノックした。

 

「は〜い。開いてるから入ってきて」

 

扉の向こうから若い女性の声が聞こえ、シルクたちは扉を開け中へ入った。

 

「「失礼します」」

 

そこにはなんとルクスがいた。そして、その隣にいる金髪のサイドポニーの少女に詰め寄られていた。

 

「ええ、待ってたわ、シルク・グランフェルト君。それと………イリア・グランフェルトさん、あなたはどうしたの?」

やっぱり今の自分の状況は傍目から見たらおかしく映るのだろう、学園長が不思議そうにしていた。

 

「いえ、ただ私はお兄ちゃんと一緒にいたいだけですので、気にしないでください」

イリアはそれだけ言うと、もう喋ることはなかった。

 

「すみません、学園長。久々に会えて甘えているだけなので、妹のことは気にしないでください」

「え、ええ、そうね。……ん、昨日もう挨拶はしたけどもう一度、私はこの学園の学園長、レリィ・アイングラムよ。よろしくね」

 

「はい。おれ……いえ、私はシルク・グランフェルトです。妹がお世話になっています。それと、こちらこそよろしくお願いします」

そう言って頭を下げる。

 

「へぇ、礼儀正しいのね。感心感心」

などと、シルクは学園長ーーーレリィと話していると、今し方、ルクスに詰め寄っていた金髪の少女がシルクに話しかけた。

 

「おい、お前。お前が学園に編入とはどういうことだ?」

「どういうことって、そのまんまの意味だが?」

「そうじゃない!なんで男であるお前がこの学園に編入するのかと聞いているんだ!」

 

この少女は昨日ルクスがおい被さった子であり、そのため昨日のことで相当怒っているようだ。

 

(俺は関係ないんだがな………悪いのは全部ルクスだろ)

 

シルクはそっとルクスへ視線を送る。ルクスはそれに気づき、シルクの目を見るとブンブンと、頭を横に振った。大方、言いたかったことが伝わったようだ。

 

シルクはため息をつきたい気分だ。こっちを睨んでいる金髪少女をみてそう思った。

 

「リーズシャルテさん。彼の編入はこちらから頼んだの」

「なに?」

「彼は機竜使いとしてはすば抜けてスゴイの、だからこの学園の生徒のためにこちらからお願いしたのよ。つまり士官候補生ってこと」

 

「ほう。……だが、こいつも昨日の覗き魔の一人と聞いたのだが?」

「そのことに関しては誤解が解けているのよ。彼は落ちたルクス君の確認をしようと穴を覗いたらそこがお風呂場で、そこをたまたまクルルシファーさんに見られたらしいのよ」

 

「ふん!それが本当かどうかわからない以上、お前も認めるわけにはいかん!」

 

どうやらシルク自身も覗き魔と認識されているようだった。そのためシルクも目の敵にされているのだ。

 

これ以上話していても拉致があかないので、まず、この学園の説明をすることになった。

 

 

 

ここは、アティスマータ新王国の管理する、機竜使い士官候補生の学園。

士官ーー武官と文官を含めた、役人の中でも序列の高い人間を育成する場所であり、更に詳しく言えばーーー

 

「装甲機竜に携わる人間を育成する学園、ですか……?」

「そういうことになるわね」

ルクスの問いに、笑顔で頷くレリィ学園長。

学園長といってもまだ若い。見たところ二十代後半ぐらいだろう。教師といっても差し支えない風貌の女性だ。

 

 

 

 

 

装甲機竜は普段、各地の『格納庫』と呼ばれる場所に安全に置かれており、機攻殻剣を鞘から抜き、グリップにあるボタンを押し、対応する機竜を転送ーー召喚する。

転送自体の構造は未だに解明されていない。

装甲機竜は、遺跡から発掘された古代兵器であることと、ある事情によって遺跡の調査自体がなかなか進んでいないのが、主な原因だ。だがそれでも、装甲機竜の持つ力は『技術が解明しきれていない』という理由で使用を控えるには、あまりに途方もない威力を秘めていた。

故に、機竜の構造、原理解明の調査も、各国てま激しく競争が行われている。

 

「装甲機竜が、遺跡から発見されて十余年。私たち女性は、旧帝国に敷いてきた男尊女卑の風潮と制度により、その使用は、ほとんど禁じられてきたわ。でもーー」

 

ここでレリィが言葉を区切ると、ルクスの隣に立っていたリーズシャルテが、ふっと口を開く。

 

「五年前のクーデターで新王国な設立されたのを境に、その認識は一変した。操縦に使う運動適性はともかく、機体制御自体の相性は、女の方が遥かに高いというデータが出た。それ以降、専門の育成機関を設立し、他国に負けない機竜使いの士官を揃えるべく、その育成に力を入れているーーーというわけだな」

「その通りです」

レリィは頷く。

 

 

「で、でも、何で僕なんかが呼ばれたんですか?」

「そうです。俺が呼ばれた理由はわかりましたが、だからと言ってここの生徒に教えてあげられるほど偉い人間じゃないですよ」

 

シルクとルクスは困惑した表情で聞くとーー

 

「あらあら。かの『無敗の最弱』と『無敗の剣聖』ともあろうものが、随分と謙遜をするのね」

 

『無敗の最弱』

王都のコロシアムで月に一度行われる、装甲機竜を用いた公式模擬戦。 成績次第では賞金も出るその場で、最多の出場回数を誇り、その戦闘スタイルからつけられた異名で、ルクスは呼ばれていた。

 

そして、

 

『無敗の剣聖』

これも同じで、装甲機竜を用いた公式模擬戦で、誰も知らない卓越した剣技で、圧倒的勝利を収め続け、あまりに強すぎるため、誰かが呼び、ついた異名が『無敗の剣聖』。

 

「この学園でも屈指であるリーズシャルテさんにも劣らない実力でしょう?けして場違いな仕事ではないと思うけれど?」

 

「…………ほう」

レリィの言葉が不服だったのか、リーズシャルテがぴくっと肩を震わせた。

 

(うわ、この学園長、面倒なことしてくれたな………ま、面倒ごとは全部ルクスに任せるからいっか)

 

「そ、そういうことじゃなくて、ここって女学園だそうですし、僕が仕事なんてーー」

ルクスも何かリーズシャルテの異変に気付いたのか慌てて反論しようとする。

 

だがしかし、

 

「残念だけど、人手不足なのよ」

ルクスが反論する前に、レリィに遮られた。

 

「機竜使いの歴史は浅いでしょう?長年、装甲機竜を独占していた旧帝国の人たちは、大半がクーデターで死んでしまったし。だから不本意といえど、定期的に男の協力者を招くしかないのよ。機竜整備士も機竜使いもね」

 

もう詰んだな。と、ルクスとレリィ学園長の話を聞いていて思った。

 

 

 

「学園長。少しいいか?」

「ええ、どうぞ」

 

「話はわかった。だが、わたしはまだ、この男たちを認めたわけではないのだが?」

鋭い眼差しでルクスとシルクを見据え、言う。

 

「わたしの疑いが晴れていない。特に貴様、お前は覗き魔、痴漢、下着ドロの変態の犯罪者だ。そんな『男』をこの学園でも働かせるなど、あり得ない」

 

(まずいな…………このままでは犯罪者として軍に渡される恐れがあるな)

 

せっかく妹と再会できたのにそれだけはイヤなシルクは何とか誤解を解こうとした。

 

「確かに結果から見れば、俺は女子風呂を覗いたことになるかもしれない。でも、俺は落ちたルクスの無事を確認するために覗いたにすぎない」

 

「そうらしいな。でもそれは誰が証明する?もしかしたらここを覗くためのお前らが考えた計画だったかもしれないだろう?」

 

「ちょっーーー」

流石に、こんな返し方されるとは思わなかった。シルクが何か言おうとしたとき、遮るようにレリィが言った。

 

「私はルクスくんと付き合いあるし、シルクくんのことも聞いた限りではそんなことする人じゃないと思うけどーー」

 

「今回のことを、偶然起こしたと、断言はこれっぽっちもできないものね」

 

「「そこは断言してくださいよ!!」」

シルクとルクスの声が重なり合う。

ルクスもシルクも、てっきり擁護してしてくれると思っていた。

 

「でも、実際、故意かどうかは誰にもわからないし、証明もできないのよね。なら、ここはこの件の被害者である二年主席でもあるリーズシャルテさん。彼らの処分は、あなたの裁量に任せるわ」

 

「「なんでやねんっ!!」」

再度、ルクスと声が重なる。

 

「ふっ」

ルクスとシルクが慌てているのを見て、

 

「そうだな。お前らにはもう一度、名誉挽回のチャンスをやろう」

 

「「………え?」」

……………さっきからハモってばっかだな。

 

「決闘だ。お前らがこの学園にいるだけの価値があるヤツらなのか、それともただの変態なのか、わたしが試してやる」

 

そう言い。リーズシャルテはシルクに指差す。

 

「本当なら士官候補生できたお前の実力を知っときたかったが、今回はこいつに借りがあるのでな。だから旧帝国の王子様。お前がわたしに負ければ、お前ら二人は犯罪者として軍に引き渡す。勝てば、無罪でこの学園の編入と、ここで働くことを認める。勝負は装甲機竜を使った、短時間一騎打ちの模擬戦ーーそれでいいな。野次馬たち!」

リーズシャルテは、そう言って部屋のドアノブをひねった瞬間、

 

「きゃあっ……!?」

 

ばたばたと、ドア越しに集まっていた女子生徒たちが、部屋へなだれ込む。

 

どうやら、噂で聞いたシルクとルクスのことが気になり外で盗み聞きしていたようだ。

「学園の皆に伝えろ!観客は多いほどいいぞ。新王国の姫が、旧帝国の王子をやっつける見せ物はな」

 

きゃああああっ。

それを聞いた女子生徒たちは楽しそうな声をあげて走り去っていく。

 

「大変なことになったわよ!リーズシャルテ様が、今回の痴漢と、装甲機竜で決闘をー」

「相手は『無敗の最弱』だそうよ?詳しいこと、誰か知ってる?」

「そもそも、旧帝国の王子様なのでしょう?その下着ドロの人って」

「てゆうより、もう一人いた方はどなたなのでしょう?」

「そうね。誰なんだろう。でも、すっごいカッコ良くなかった?」

「本当にね!一人はまだちっちゃくて子供みたいな感じでしたけど、もう一人は大人の人みたいな感じで、見た目はすごく好み!」

「それに『無敗の剣聖』って確かめっちゃ強いって有名な人じゃない?」

「でも、あの方も覗いたとかなんとか言ってませんでした?」

去って行く際、そんな声が聞こえて、ため息をつく、シルクとルクス。

 

「……頼むぞ…ルクス。お前に俺の人生がかかっているんだ」

ルクスの肩に手を置いてそう言った。

 

それと、さっきからイリアが大人しいと思っていたら実は学園長に挨拶したあたりからずっとシルクにもたれかかって寝ていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後になってわかったが、どうやらルクスは、昨晩は持ち物全て取られ、地下の独房で寝ていたようだった。

 

(罪悪感が半端ない。すまんルクス)

 

 

 

 

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