最弱無敗の神装機竜〜『白き英雄』〜   作:瑠夏

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第6話 闖入者

 

 

「それでは新王国第一王女リーズシャルテ対、旧帝国元第七皇子ルクス・アーカディアの、機竜対抗試合を、これより執り行う」

 

シルクたちが演習場へ入る少し前、模擬戦は開始された。

 

周囲を円状に石壁で囲い、中には土を敷いた広いリングがある。その中央でリーズシャルテとルクスは対峙していた。このリングは旧時代のコロシアムを彷彿とさせる形になっている。

 

そして、観客席には強靭な格子が張られ、生徒の機竜使い数名が、常に障壁を展開して守っており、巻き添えの心配はない。

 

周りを見渡すと、相当な数の女子生徒と、教官までもが、この私闘を見に来ているようだった。

 

「何で、こんなに人が集まってるんだろう……」

 

大勢の学園関係者に見られ、ルクスは緊張する。

 

「理由を知りたいか?ルクス・アーカディア。私が何故お前に戦いを挑んだのか」

 

「………それは僕が旧帝国の王子だから?」

(それとも裸を見たから?)

 

旧帝国は百年以上も圧政を敷いてきた。その生き残りの王子を新王国の姫が叩きのめす。

 

確かに傍から見れば、目を引く見せ物になるだろう。

 

だがーーーー

「わたしに勝ったら教えてやる」

 

「えっと。戦いの前に、確認してもいいかな?」

「何だよ?怖じ気づいいたか?今更命乞いは見苦しいぞ」

「命乞いって……、僕を殺す気だったの!?……じゃなくて、その、引き分けだったら、ここ勝負はなかったことにしてくれませんか?」

 

その一言を聞くと、リーズシャルテの雰囲気が変わった。

 

「ふっ、私の気のせいか?……この期に及んで、寝言が聞こえた気がしたのだが」

「寝言じゃなくて、僕は本気でーー」

「そうか。なら、いいぞ?」

 

審判役の教官が、ルクスを促した。

「ルクス選手、接続の準備を!」

 

ルクスはこしから機攻殻剣を抜く。

二本の色違いの鞘からひとつ、その白い鞘から、

 

「来たれ、力の象徴たる紋章の翼竜。我が剣に従い飛翔せよ、《ワイバーン》」

 

詠唱符を唱え、《ワイバーン》を呼び出す。

 

「接続・開始」

 

機竜は、装甲を開きルクスの体を覆う。

頭、両腕、肩、腰、両脚、そして、翼、武装。

 

機竜と同じく遺跡より発掘された装衣は、幻創機核から、エネルギーを効率的に伝導させ、通常の障壁とは別に、表面からも強力な障壁を発生させる。

 

竜を模した機竜は、ルクスと一体化するよう装着され、本人の二倍以上大きい。

 

「何だ?そのもうひとつの剣はただの飾りか?」

「ッ……!?」

ルクスは眼を見張る。

リーズシャルテの体が見たことない、赤い機竜に覆われていた。

 

汎用機竜と呼ばれる三種、飛翔機竜、陸戦機竜、特装機竜とは、全く外見が異なる。

 

汎用機竜の《ワイバーン》より巨大な赤い機竜。

 

「新王国の王族専用機。神装機竜ーー《ティアマト》。この機竜は、そこいらのものとはわけが違うぞ?」

 

両者が機竜を展開したことを確認し、審判役の教官が頷く。

 

 

ぴりぴりとした緊張の空気、それを破るように、甲高いベルの音がリングに響く。

 

 

 

「模擬戦、開始!」

 

 

 

 

 

 

演習場に入ると、既に激しい攻防が始まっていた。よく見ると、ルクスの機竜が所々壊れていた。

 

「へぇ、あれがリーズシャルテ様の神装機竜《ティアマト》か」

 

ルクスが汎用機竜に対し、リーズシャルテは神装機竜だ。

 

汎用機竜より巨大で真っ赤。そして、《ティアマト》の周りに十六機の宙に浮いている兵器。これは《ティアマト》の付属装備の何かだろう。

 

神装機竜は汎用機竜を遥かにしのぐが、その分、精神力と体力の消費、操作も桁違いだ。神装機竜は国から認められたものしか使うことが出来ない。つまり、《ティアマト》を扱うこと自体が、無二の才能と弛まぬ努力の証明だ。

 

「あっちゃー。もう無理だよ!《ティアマト》の付属装備の空挺要塞《レギオン》なんて出しちゃ、勝負になんてならない!先生に言って止めさせないとーー!」

普段は軽い調子の少女、ティルファーも、さすがに慌てたように言う。

 

他のノクトとシャリスも同じように慌てていた。

 

「まさか、こんな戦いが起こってしまうとはな……………済まない、ルクス君」

 

このままでは、敗北はもとより、命の危険すらある。

 

ノクトが模擬戦を止めるよう言ったが、そこで、アイリが止めた。

 

「その必要はありませんよ」

その言葉にシルク以外の三人が驚いた。

 

「リーズシャルテ様の《ティアマト》……並みの汎用機では数十秒保つかでしょうね。だけど……兄さんは負けませんよ。それこそ……私たちにも背負うものがありますから」

 

指を今戦っているルクスへ向ける。

そしてーーーーー

 

 

「強いですよ。覚悟を決めた兄さんは……」

自信満々に言い切ったアイリに、三人が模擬戦のほうを見た。

 

「アイリちゃんの言う通りだよ。ルクスはこの程度じゃ倒せない」

今まで黙っていたシルクは、食い入るように見ている三人に言う。

 

「というより、このままじゃ、間違いなくリーズシャルテ様はルクスを倒すことはできない。それに、リーズシャルテ様は今感じているはずだよ、『無敗の最弱』の本当の意味を……」

「『無敗の最弱』の本当の意味?ただ勝ちもしないし負けもしないから『無敗の最弱』なんじゃないの?」

言われたことの意味がわからず、ティルファーは首を傾げて問いかける。

 

「うん。確かにどんな戦いでも勝たないし負けないから『無敗の最弱』なんて呼ばれている。けどね、本質はそれだけじゃないんだ」

 

「うん?他にも理由があるのか?」

この質問はシャリスから。

「はい。『無敗の最弱』と呼ばれる所以は………どんなに攻撃して装甲を壊そうが、障壁の出力があと僅かだろうが“倒しきれるイメージが湧かない”んですよ」

 

「?倒しきるイメージが湧かない?」

わからなかったのはティルファーだけでなく他の二人も一緒だったようだ。

 

「こればっかりは実際に戦ってみないとわからないよ」

それだけ言うとシルクは模擬戦へ意識を移しす。

 

リーズシャルテが、少し焦っているのにシルクは気づいていた。

『無敗の最弱』という意味を身をもって知っただろう。

 

模擬戦終了まであと三分。それまでにルクスを倒すことは難しいだろう。この模擬戦は引き分けに終わると結論ずけた。だが、その結論を出すには早すぎた。何故なら、リーズシャルテが《ティアマト》の神装を使ったからだ。ルクスは地面に伏せるような体勢で、倒れていた。

 

どうやら《ティアマト》の神装は重力制御のようだ。

 

七つの竜頭《セブンスヘッズ》を向けられ、終わった。誰もがそう思っただろう。

 

だがーーー

 

突然《ティアマト》が傾いた。それと同時にルクスへかかっていた重力の効果も消える。

 

 

 

 

あれは、『暴走』だ。

 

リーズシャルテも、ここで暴走するとは思っていなかったのか、どこか焦った様子だった。

 

何とか《ティアマト》を制御下に戻し、上昇して斬りかかるルクスへ狙いを定めるリーズシャルテ。

 

二人が激突する瞬間、そいつは現れた。

 

 

キィイイイエエエエエェェエアアアッ!

 

戦っていたルクス、リーズシャルテはもちろんこの模擬戦を見に来ていた者全員が、演習場の高い空から、突如現れた人ならざる闖入者に目を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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