もしもし、ヒトモシと私の世界【完結】   作:ノノギギ騎士団

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最終章:ヒイロの研究
先達へ願う


 シンオウ地方。アオイの夜は早い。

 

 夕食後、日課となった小説を30分から45分ほど執筆し、その後は夢に関連する専門書を繙く。知的好奇心が眠気に負ける頃、アオイはベッドに入る。

 もっとも、最近のベッドはパンジャに貸しっぱなしであったのでリビングのソファーに寝ていたのだが、記念すべき今日、パンジャが使うベッドが搬送され2階に設置されたのでアオイはようやく自分のベッドを使えるようになった。そして、今日の快眠は約束された勝利――となるはずだったのだが。

 

(ね、眠れない……!)

 

 その理由は3つほどある。

 ひとつ。小説の山場を執筆している途中でパソコンを閉じてしまった。ふたつ。繙いた本が予想以上に面白く、仮定の思考に歯止めがかからなかった。そして、みっつ。洗濯されたシーツからそこはかとなくパンジャの香りがする、気がする。――いいや、よそう。これ以上考えるのはふたりの友情に悖る行為なので彼は飛び起きた。

 

 水を飲んで頭を冷やそう。ここにいるとバカげた妄想に取り憑かれてしまう。

 

(だいたい香りがなんだというのか。本物なら2階にいるではないか……いやいや、そういう問題じゃない。何を考えているんだ、私は)

 

 消灯しぷうぷう寝ているヒトモシのミアカシがバケットのなかでごろりと寝返りをうつ。その小さな衣擦れの音にドキリと体を震わせた。悪いことをしているわけではないのだ。そう自分に言いきかせ、そろりそろり、歩く。

 

 杖と壁を頼りに廊下を行く。洗面所を目指していたアオイは杖を止めた。

 リビングから明かりがもれている。

 消し忘れた記憶は無い。

 するとパンジャが起きているのだろうか。

 

「パンジャ、いるのか?」

 

「ああ。ちょっとね」

 

 扉を開けると、空間に満ち広がる芳醇な酒の匂いでアオイは立ち止まった。

 

「なんだ晩酌か? 先ほど寝ると言ったのに」

 

「気分が変わってね。君もどうだい?」

 

「……。いいだろう」

 

 嬉しそうに微笑んだパンジャがグラスを取りに立ち上がった。

 真夜中の晩酌には心惹かれるものがある。

 しかし、酒に混じり鼻につく香りがあった。

 

「コーヒーも飲んでいたのか。眠れなくなるぞ」

 

「口寂しくなってしまってね、つい」

 

 アオイは対峙するソファーに座ると注がれていくワインを見ていた。

 

「はい、どうぞ。アオイ」

 

「ありがとう。久しぶりだよ。私も独りだと飲まないし、前に飲んだのは1年前だ。そうコウタが来たときにね。――それで、君は誰だ?」

 

 アオイの知るパンジャとすこし異なる。

 表情の作り方、声質、仕草が彼の記憶にあるそれらと微妙に違う。

 他の誰かなら騙せただろう。けれどアオイはパンジャのことをよく知るがゆえに、その細かな違いは、本当に鼻につく。

 

「……。君ならそうだよなぁ、気付くよなぁ、当然だ」

 

 左の頬が上がる――誰かにそっくりな笑みを浮かべた彼女は苦笑した。アオイは鏡を見ている気分になりながら、ひとくちワインを含んだ。

 

「パンジャはコーヒーを飲まない。それに独りでは酒を飲まないんだ。だから飲むときは私の家に来ていた。……今日は新月で静かな夜だ。悪夢が見れそうな佳い夜なのに、それでも眠れないのか?」

 

「ああ、眠れないね。頭の中がうるさくて仕方ない。君がいて確かに心が安らぐと感じているのに……。もうすこし暮らせば慣れてくるかもしれないが……あの子は不安で不安で仕方が無いのだ」

 

「あの子?」

 

「パンジャのことだ。母のことを本当に愛していたから心配なのだ。滑稽だろう? 最後の最後まで呪うことしかできないあの災いのことを、よく大事に思えるものだ。誰のせいでこんな状態になっているのか。あの女が絡むと都合良く忘れてしまうらしい」

 

 自分の母親のことをそう悪くいうものではない。――などと、軽々しく窘めることはできない。その人の苦しみは、真の意味においてその人にしか分からないものだ。その辛苦を推し量ることはできない。アオイは沈黙を守った。

 

「――とまあ、こんなことをつらつら考えていると私まで眠れなくなるわけだ」

 

 ケロリと表情が切り替わる。

 

「君はパンジャの何なんだ? ……君は整然としている。自分の中の感情について考察を済ませたような口ぶりだ。パンジャの他の人格に会ったことはあるが、別の『彼女』は、その、あまり話にならなかったから」

 

「私はいわば保護者だ。感情の統括を行い、錯乱し乖離した感情たちを俯瞰している。――今回の件について、主体的に研究を行ったひとりでもある」

 

「蘇生論の? パンジャは研究に対して真摯で優秀ではあるが、それにしても周囲への手回しやらの手際が良すぎると思っていたが……実行は君か?」

 

「いかにも。まあ、あんな結果になるとは思ってもみなかった。データといい、ベルガといい、とても残念だと思う」

 

 そのわりに悲しそうな顔をしない。

 

(多重人格という言葉のイメージが先行してしまっている……落ち着け、私)

 

 アオイはふつふつと湧き上がる感情をおさえた。

 多重人格とは外から観測する者の主観に過ぎない。あたかも別の人格に変わったように見える――というだけで、実際は分離した感情が人格をまといそれらしく見えているのだ。

 だから彼女が知覚できる感慨も希薄なのだろう。

 

「私は、ベルガのことが気がかりだ」

 

「君は彼女のことを苦手に思っていたのではないかと思っていたが、そうでもないらしい。彼女は君にとって良い後輩だったのか?」

 

「私『達』は人を育てることができないと思っていた。なんせ母がアレだから。それにポケモンと暮らすこととも違う。人は植物ではない。ポケモンではない。人は人として、きちんと育てなければならない。だから私は気をつかって彼女と接していたつもりだ。最初は面倒だったが、最近はそう悪くないと感じていたんだ」

 

 薄い感情が、わずかに高ぶりを見せた。

 グラスを見つめ揺れていた目が、不意に止まる。

 

「君といる時とは違う。コウタとも違う。けれど、そこには……たしかに……友情と呼べるものが……あった、ように思うんだ。今となっては真偽の無い話だが」

 

「勝手に無かったことにするなよ、パンジャ。君がそう思ったんだろう。それならそれでいいじゃないか。確かめようがない真実なら信じたいほうを信じればいい。ベルガさんの行いは許しがたいものだ。しかし、彼女にも悪意があったわけではないことは、私にだって分かる。……彼女は『君が報われないから』と泣いていた」

 

 ゆっくり瞬きしたパンジャは右手で顔を覆った。

 

「やはり私の後輩だ。バカなことを。……人が人を哀れむことは、ただの傲慢なのに」

 

「それでも君に心を寄せようとしたのだろう。その気持ちだけは間違いではなかった。……まあ、それはそれとしてどんな善意であれ私は許さないが」

 

 アオイがグラスを空にすると、彼女がすぐに注ぎ足した。

 

「根に持つのだね。君がそんなに怒っているのを見るのは、とても久しぶりだ」

 

「……正直なところ久しぶりに怒りすぎて納め時を無くしている。君はベルガのことを怒っていないのか?」

 

「ああ、いつもの『わたし』は『役に立たなかったな』と思っているようだが。私は、まあ、彼女の気持ちも分かる。彼女には思いやりも良識もあっただろう。それ以上に、もどかしい思いがしたのだろう。何にせよ、私は応えることができない思いではあるのだが……」

 

「次に会ったとき、君はどうする?」

 

「話すことはない。私が教えたことはきっと彼女の血肉となったのだろう。すでに道は分かれた。もう彼女の人生だ。彼女の思うままにすればいい。私も勝手にしよう。……君は?」

 

「私は、私が作ったものがどのように活用されるのか。それを見定めなければならない。悪事に使われるようならば、どうにかしなければ」

 

「どうにかってどうする? やめさせてやめる連中ではないだろう、プラズマ団とやらは。一昨年はポケモンの捕獲だ何だと大騒ぎしたのを忘れたのか?」

 

 アオイは事故後に病院で見たニュースのことを思い出そうとした。かつてのアオイは放心中だったが、その頃の世間では慈善団体と知られているプラズマ団がポケモンの保護に強硬手段を行使したことで話題になったのだ。

 アオイはそのことをおぼろげに記憶するばかりで、辛うじて覚えていたのはその事件の最中に幻と思われていたポケモンの目撃情報が多発したことだった。

 

「やめないなら、プラズマ団をぶっ壊す。一度壊れたんだ。二度目もいけるだろう」

 

 いささか乱暴な主張だったと反省せずアオイはグラスを呷った。反射的に答えた言葉の内容を深く考えることはしなかった。一昨年の騒動の結果は、実のところ世間は知らない。アオイもまた知る由はなかった。けれど現在までプラズマ団が活動をし続けていることが全てを語るのだろう。

 アオイは実のところプラズマ団をまともな組織だと信じたい感情が、ほんのすこしある。

 

 とはいえ――である。

 

「話し合いで解決できないのなら、譲歩を引き出すまで闘争だ。手段は問うまい」

 

 畢竟。

 

 これまでの歴史であらゆる紛争の解決とはそのように行われてきた。アオイもまたそれに身を投じることになるだろう。

 実に残念なことに、この世界の人間は技術革新をしても生来の精神構造を変えることはできていない。――今世紀、変革の機会が先般の蘇生論だったのは考える度にアオイを落ち込ませた。

 

「はははっ。イイね、イイ、かなりイイ、良い返事だ。君のそういうところは好ましい。本当に好ましい。どうかその時になったら任せて欲しい。壊すのは大得意な性分なので」

 

 楽しそうに笑う彼女にはようやく明確な感情が発露した。

 どうしてもそれが眩しく見えて、アオイは俯いた。

 

「――パンジャ、私は研究が終わることは悪いことだと思っていた。いずれ誰かが引き継いで発展させていくものだと信じて疑わなかった。それが、今はどうだ。私はあの事業が続くことを恐れている……」

 

「正しい形ではなかったから?」

 

「そう。だが、私には分からない。何をもって正しいとするのか。私達の研究は決して間違いではなかった。今でも胸を張ってそう言える。間違いなく人のためになる研究だった! けれど正しくはない。末路はこんな様だ。まったく。全て正しくなかった。――いずれ人は、ポケモンは、死をも克服するかもしれない。有限を愛おしむこの感情は実は古い価値観になるのかもしれない。もはや取るに足らぬ皮算用だが……そう考えると頭の中がごちゃごちゃする」

 

 アオイは切り揃えられた前髪を掻いた。

 何度も自問自答した。答えは今日も見つからない。

 間違いではない。間違いではない。正しくなかっただけで、人とポケモンの幸せを願ったことは、決して間違いではなかったのに。

 

 慰めるように、彼女はできる限り優しい声をかけてくれた。

 

「世間一般の正しさと我々の正しさが一致しなかっただけのことだ、アオイ。気に病むものではない。……と言っても、君は気にするだろうからここは我々の大先輩にお伺いを立てるというのはどうだろう?」

 

「だ、大先輩だって?」

 

 アオイは、酒が入ると涙もろくなってしまう。

 真っ赤に腫らした目でパンジャを見た。

 

「君のお母様だ。長いこと研究職についているんだろう? 自分の創作物との関係をよく知っていると思うが、どうだろう?」

 

 口の端が意図せず動いた。浅くなる呼吸を意識しながら、アオイはようやく大きく息を吸った。

 

「母か……私に災いしかもたらさない、あの女性|<ひと>……考えるだけで頭痛を覚える。今さら会ったってバカにされるだけだ。夢にやぶれたと。私のことなど何も感じていないだろう」

 

「君のご母堂、ヒイロ・キリフリ。――研究者。生体工学関係の文献で何度か名前を見たことがある。仕事とのよい付き合いを知っているはずだ。どうだろうか?」

 

「まさかとは思うが――君は自分の母との関係の八つ当たりに、私にも母と会えと急かしているんじゃないだろうな?」

 

「興味がある。君は自分の母にどんな反応をするのか知りたい、という。――そう疑うような顔をするなよ、悲しいじゃないか」

 

「よくもまあぬけぬけと。当人が目の前にいるときに、そんなことを言うのは控えたほうがいい。はっきり言うが悪趣味だぞ。私が母のことを苦手だと知っているだろう」

 

 心の繊細な部分を無遠慮に撫でられたような気持ちだ。アオイの怒りは、やはりというか、当然というか、このパンジャは理解していないようだった。

 公式に当てはめた変数が意外な数値を出した時の顔をしている。

 

「すまない、君を怒らせたいわけではなかったんだ。ただ提案のひとつとして、だ」

 

「はぁ……私こそ君に八つ当たりしてもしょうがないよな……。そろそろ会わなければならないと感じてはいる。イッシュ地方にある家のこととか……」

 

「何か気まずいことでも?」

 

「大ありだ。もう十何年も会っていない。あの人は、きっと私のことを忘れている。……何を話せば良いのか分からない。だって私はあの人の研究テーマも知らないんだ」

 

「親子が会うのに理由なんていらないだろう」

 

 簡単に言ってくれるな、とアオイは言いたかったが、ほかでもないパンジャが言う言葉なので大人しく受け入れた。

 

 アオイが母に会わなければならないと感じているのはパンジャがきっかけだった。彼女は母との関係を精算した。関係が切り離されたことは苦しそうだが、手に入れた自由に快活としていた。埃の積もった部屋を換気した気分だと言った彼女を覚えている。

 

 そんな彼女を羨ましいと思ったのだ。

 どんな言葉を投げつけられようと宙ぶらりんになった関係に決着が欲しい。

 

 アオイは、延々と肥大していく母の憧憬に絶えきれなくなる前に会いたいと思った。

 

「連絡を取ってみる。もちろん、嫌だが仕方が無い。いずれ括らねばならない腹なら今、括るとしよう。……君も一緒にどうだろうか」

 

「いいよ。どこにいるかくらいは知っているのか?」

 

「カントー地方とだけ」

 

 ふぅん、と鼻を鳴らしたパンジャが思いつく限りの研究室の名前を挙げた。そのどれも、アオイの記憶にあるものと一致するものはない。そのことにふたりは一抹の不安を覚えた。その不安を払拭するように、ふたりはアルコールを呷る。甘美な陶酔に頭が揺らされた。パンジャも同じなのだろう。ソファーに横になった。

 

「なんだか……ようやく眠れそうだ」

 

「そうか」

 

「……最近、あの子の悩みは主に母絡みで深いが、それでも君と一緒にいるから気分が上向いているんだ。ささくれ立った他の感情もすこしずつ元に戻るだろう」

 

「君はどうなるんだ」

 

 統括すべき感情が統合されてしまったら、彼女の役割はなくなってしまうのではないか。パンジャにとって情緒が安定する良いことだが、それは同時に他の感情面がもつ人格らしきものが失われることを意味する。

 

 アオイは悪夢で出会ったメアリー・スーを思い出していた。彼女は、アオイの空想が生みだした人格だった。彼女は悪夢の終わりに際し、自分が喪失する恐怖を感じなかったのだろうか。

 生命が無いから――現実では生きていないから――ベルガ・ユリインが取り憑かれた『永遠の自己保存』を感じなかったのだろうか。

 

 目の前のひとつの感情は、静かに言った。

 

「感情が記憶と結びつき人格から剥離したものが我々。ただ元通りになるだけだ。私に異存は無い。……君と一緒に暮らしていると心が安らぐのを感じる。一番素晴らしい自分を見せたいと思う以上に自分を飾らなくてもいいという安心感がある」

 

「私は甘え甲斐のある男なのだろうか? いや、私もパンジャの世話になっていることが多いだろう。気付くと家事の大半をやってもらっているし……ああ、そうだ、足が悪いからといって仕事を取り上げないで欲しいんだが……」

 

 彼女はおかしそうに笑った。

 

「ごめんごめん。あの子に悪気があるわけじゃないんだ。君に関してはとんでもない心配性なんだ。……君と話すの、あの子は大好きだから、ふたりでよく話して欲しい。未来の話をいっぱいしてくれよ」

 

「ああ、そうだな。たくさん話すよ。そして私は忘れない。……おやすみ。もしいなくならないのなら君ともまた話したい。もうすこしお互いを知る時間が必要だ」

 

 アオイは杖を握ると「おやすみ」と言う。

 眠たげで抑揚の少ない声で「おやすみなさい」と返ってきた。

 

 その夜。酔った勢いのまま、最低限の体裁を整えたメールをしたため、アオイは人知れず隠し持っていたヒイロ著書の論文に記載されたメールアドレスへ送信した。

 

 返信が来てほしいのか、来てほしくないのか、送信ボタンを押すその瞬間であってもアオイには自分の心が分からなかった。

 

 そして翌朝。

 受信してしまった現在であっても、アオイは自分の心に整理がつけられずにいた。

 

 ミアカシがベッドの上をころころ転がって、落ちた。

 顔面をカーペットに打ち付けた彼女を拾い上げたアオイは慌てていた。

 

「ど、どうしよう。あの人、もしかして暇しているのか? 私に構うほどの時間があるとは思っていなかったのだが……」

 

「モシ……モシモシ?」

 

 メールに添付されていていたファイルを見ると新しいアドレスの記載があった。そしてそのファイルの最後には画像データファイルがある。

 

 同じ赤い髪を見て、ミアカシも気付いたのだろう。

 

「彼女は……私の母だ。ええと……何と言えばいいか……製造者……違うな……保護者……そう、保護者だ。私にとって君のような……そういう保護者、だった……はずなんだ」

 

 徐々に言葉は小さくなる。母という立場に馴染みがないアオイは、正しい説明をできているのか疑問を抱くのだ。

 

「モシ?」

 

 アオイでさえ浅い理解に留まるのだ。ミアカシには母の概念を理解するのは難しいことだろう。アオイは適切な言葉を選べたかどうか分からず口を噤んだ。そしてアオイにも分からない。

 だから。

 

(母に会おう――)

 

 そうすれば、答えを言い淀むことは無いはずだ。

 

 アオイはモバイルの画面を消した。ほんの一瞬だけ、暗い画面に自分が映った。

 

「カントー地方へ行こう、ミアカシ」

 

 返事を待たずにアオイはベッドから立ち上がった。椅子に釣り下げていた肩掛けを羽織ると杖をたぐりゆっくり歩く。母に会うことでつぶらな瞳を真っ直ぐに見ることができない自分を振り切りたかった。

 

 

 

 ■ ■ ■

 

 

 

「へえ、カントー地方に。ま、用心することですよ」

 

 仕事の途中。何度か外線電話の応酬を受けながらアオイはマニに事情を話した。最近は近所の子どもが拾ってきた化石のラベル作りに追われていた彼は仕事の片手間に相談に乗ってくれていた。

 

 マニはこのご時世に珍しく、町の外へ出かけたことが少ない青年なのだが、彼はカントー地方の地理と交通事情に詳しかった。曰く、僕は線路が好きなので、とのこと。

 

 そしてアオイがカントー地方へ行きたいとマニに打ち明けたところ、意外なことに、マニの反応は淡泊を通り越し冷淡ですらあった。

 なぜなのか。その理由にアオイはカントー地方、シンオウ地方の地理要因を見た。

 

「なぁにが観光ですよ。カントーなんてロケット団の根城じゃあないですか。僕なら頼まれたって行きません」

 

「ロケット団はもう何年も前に解体しただろう? ボスと呼ばれていたとかいうリーダーが失踪したとか何とかで」

 

 アオイの認識とはこの程度だった。そのためマニがカントー地方の事情を知らない自分に対し質の悪い冗談を言っているのだろうとこの時まで思っていた。

 マニはギラギラした憎悪をもって宙を差した。

 

「それですよ、それ! 失踪! この言葉が良くないんです! 失踪! 失踪! 失踪! その言葉のせいで僕は夜しか眠れない! 『どこにも見つからない』ということは『どこでも見つかる』可能性が在ると言うことです! きっとあの街角から出てくるんだ……! どうしてカントー地方とシンオウ地方は、イッシュ地方ほどの距離が無いのだろう。ジョウト地方よりはそりゃあマシですが……」

 

 窓から電柱を差して顔色を悪くするマニは相変わらずぼんやりしているヤドンの背中に顔を埋めた。……柔らかそうだ。

 

「ほとんど被害妄想じゃないか。……それで、ロケット団は解体したのは間違いが無いんだろう?」

 

「そうですけど。あれだけ大きな力を持った団体がバラけたところで、だいぶ大きい団体からすこし大きい団体に変わった程度でしかないんです」

 

「問題の根幹であるロケット団と企業の癒着はそのままだと?」

 

「そうです! 失踪したボスはサカキだったかマサキだったかマキリだったか――まあ、そんな感じの名前なんですけど。すごく人望っていうかカリスマがあった人で影響力は今なお絶大ですよ。具体的には、信者が暴走機関車しているって方が正しいかもしれませんけど。僕はロケット団を許していませんからね、ヤドンのしっぽを売りさばこうなんてとんでもない! うらやまけやしからんことですから!」

 

 なるほど。それは厄介そうである。

 権力一極集中体勢を作り、運営していた辣腕が失踪したのだ。団体を無力に解体していくには手順がいる。失踪に至ったことで、その正統な手順を踏むことはできなかったのだろう。

 表向きトップがいなくなったことで――マニは組織の『顔』ごと無くなってしまったように感じられているのだ。団体の脅威規模は、恐らく縮小しているはずだがサカキという巨悪の存在認識が不確定になったことで、一般人はより不気味で大きな不安に襲われているのだ。

 

 それはそれとして。

 

「私のような善良かつ平凡な一般人が旅行するのに何か不都合があるのだろうか?」

 

「えっアオイさん、パチンコしに行くんでしょ?」

 

「誰がイッシュのカモネギだ!」

 

 アオイはマニにつかみかかったが、悲しいかな、ひょろりと高いマニの首は遠かった。

 

「僕、まだ本当のこと言ってないじゃないですかーっ! わーっ! 暴力反対!」

 

「ハァ……ハァ……取り消せ、と言えないのがこれほど悔しいとは……。まあいい。私はパチンコに行くのではない」

 

 噛みつくようにアオイは言った。

 

「分かった! スロットですね?」

 

「ああ、スロットはいいよな。7が揃った時なんてすごく気持ちいい。そういえば私は実は目押しができないのだが今年こそは――違う! やめろ! この半年すっかり忘れていたのにギャンブルのことを思い出させるのはやめろ!」

 

「そういやアオイさんってギャンブル依存症でしたっけ。悪いことしましたね。すみません」

 

「誤解しないでほしい。私はギャンブル依存症じゃない。勝つのが好きなんだ!」

 

「……こんなこと言ってるけど、あなた、僕にも負けるくらいのカモネギさんなんだよなぁ」

 

 呆れたマニは、けれど、アオイの広げた地図を俯瞰した。

 

「カントーの交通を考えるなら鉄道でしょう。どこまで行くんです?」

 

「シオンシティだ」

 

 マニがカントー地方を忌避する理由は分かった。そのアオイもどうして町の名前を聞いた彼の顔が引き攣るのか、その町に何かあるのか、知る由が無かった。

 

 

■ □ □

 

 

 

「シオンシティ? 君の次回作はホラーなのか?」

 

 ポンッとフライパンをひっくり返したパンジャがヒトモシのミアカシの喝采を浴びた。

 

「よし、できた。パンケーキだ。さあ、ミアカシさん、味見だよ。アオイには内緒だからね」

 

「毎度のことだが、私の前でそう言い張る君の神経に驚くよ。ミアカシもポカンとしているじゃないか……」

 

 パンジャが堂々と隠し事をするので、アオイは実のところ自分が夢を見ているのではないかと錯覚しそうだった。

 

「――というか、なぜ君が知っているんだ?」

 

「何がだい? ……おっと蜜を切らしてしまったな」

 

「逃げるなよ。どうして私が小説を書いているのを君が知っているんだ?」

 

「まあまあ、これでも食べたまえ」

 

 アオイは、供されたパンケーキを隣の席に置いた。ミアカシはすっかり懐柔されてアオイのパンケーキにかぶりついていた。可愛い。

 

「やめろ、可愛さでごまかさないでくれ。――どこで知った?」

 

 続いて出てきた紅茶も隣の席に置いた

 

「はぁ……バレてしまった。いけない。いけない。君といるとどこからどこまで共有している知識なのか、その境界が曖昧になってしまうんだ。……観念しよう。別に口止めされているわけではないからね。アクロマ氏だよ。彼から教えてもらったんだ」

 

「げっアクロマさんか……あー……」

 

 アオイは半年前に短編を売ったことがある。数万字の短い小説だ。貯金の切り崩しが続いた頃、アクロマの伝を使いプラズマ団の広報課に売ったのだ。

 

 アクロマとパンジャの共通点はアオイの友人という点だ。会話の弾みでアオイの話になったとしても違和感は無い。

 

「み、み、み、見たのか……私の……小説を……見た、のか……」

 

 カッと顔色が赤くなり、そして青くなる。もう羞恥で心が死にそうだった。そのアオイの内心を知ってか知らずか、パンジャはモバイルを取り出した。

 

「君の作品は最高に面白かったよ。そこでわたしも小説を書いてみたんだ。わたしだけ見るのは公平ではないだろう?」

 

「お、お……ぉ、うん」

 

 ばっちり見られていた。どうしてパンジャはアオイが必死に書いた研究論文は見ないのに、生活のために書いた小説を読んでしまったのだろう。

 どうして逆じゃないんだ、と嘆くべきか、喜ぶべきか。アオイが判断に困っている間にミアカシはパンケーキを一枚ぺろりと食べ終えてしまった。

 

「はい、どうぞ。ぜひ見てくれ。感想もくれると嬉しい」

 

 パンジャはニコニコしてモバイルを差し出した。

 

「私には一日の長があることを忘れないでほしいものだ。あらかじめ言っておくが私は小説の好みにはうるさいからな」

 

 どうしてもと言うので仕方なくアオイはモバイルを手に取った。ちょっぴりワクワクしてしまったのは、内緒だ。

 それにしても。

 パンジャの小説なので身構えてしまったが、文章は普通だ。むしろ淡々と綴られていく、血の通っていない、生活感の無い小説だ。もしも、この作者が研究者だと知ったら読者は納得するだろう。

 

 作中、ふたりの男女が生活している。

 

 次第に地の文が減っていき、最後のページになるとほとんど会話文だけになる。作者であるパンジャの語彙が尽きたのかと思えばそうではない。生活描写が減っていくのは男性の分だけなのだ。最初は本を読んだり、料理を作ったりしていた男性が最終的には何もしなくなる。単純にサボっているだけならどんなに救われただろう。アオイは何度も消えていく男性の生活描写を探した。生活の全てを女性へ依存するように仕向けられた彼は自分でも無自覚なままに、何もできなくなった。ふたりはずっと暮らしましたとさ。おしまい。

 

 パンジャの小説を見たアオイの精神は一時崩壊した。

 

「なんだこれ猟奇小説か」

 

 思っていることが口を吐いてしまい、しまった、と思ったときは遅かった。

 

「恋愛小説なのに……!」

 

 ショックを受けた顔をしたパンジャの顔に影が落ちた。

 

「恋愛小説? 恋愛小説なのか! 業――じゃない、奥が深いなぁ……。ほ、ほ、ほらぁ、私って人を好きになったことがないだろう? だから、これが恋愛小説だと気付かなかったんだ。安直なジャンル分けをしたのは本当に悪いと思っている。ホント、ホント、ホントントントン……」

 

 だらだらと嫌な汗をかきながらアオイはミアカシが食べ残したパンケーキを食べた。

 

「いやあ、本当に美味しいよ、うんうん」

 

「ちょっと理想に依りすぎたかな。次回はもうすこし考えよう。――ところで人生経験が作品に及ぼす影響を考えたことがあると思う?」

 

「パンジャ! 旅行に行くぞ! カントー地方だ! さあ、計画を練るぞ! 予定はどうだ、いいな!? いいんだな!?」

 

 アオイは精神の復旧を終え、強引に話を進めることに成功した。

 

「ええ、ええ、それでもいいだろう。焦ることは無い。時間はたっぷりあるのだ……。それでシオンシティのパチンコ店に行くんだな」

 

「だからギャンブルの話はやめろ! 手が震える……!」

 

 そのうちパンジャから依存するのならギャンブルより楽しいことをしようなんて提案されるのではないかと恐怖し、アオイは地図を広げた。

 

「シオンシティ。ここだ。セキチクシティから北上する。ここに母がいるらしい」

 

「ふむふむ。港から陸路だな? わたしは大丈夫だろうが、君の足はどうなんだ」

 

「良いリハビリになるだろうさ。これが旅のしおりだ。熟読しておくように」

 

「はいはい。ところで君のご母堂様へ何を手土産にするんだ?」

 

「土産か……考えておく。たしかに、そういう物が必要だな……」

 

 アオイは会話を打ち切るとパンケーキを食べて眠くなっているミアカシを抱えて部屋へ急いだ。

 パンジャへはそう言ったが、アオイの心は決まっていた。母、ヒイロ・キリフリへの贈り物は形の有る物だ。アオイの手元に唯一遺る――彼女が持っているべきものを贈るつもりだった。

 

 

 

■ □ □

 

 マニとパンジャの会話から1週間後。

 アオイとパンジャはカントーの地を踏んだ。

 旅はおおむね順調だった。

 

 ひとつ不満があるとしたら、再会を約束した日であっても太陽はいつものように昇ることだった。

 

 セキチクシティから北上する途上、シオンシティの看板を見つけてアオイは足を止めた。日は中天に近い。熱せられたアスファルトのせいで夏じみた湿度が体中にまとわりついていた。カントー地方はイッシュ地方に比べて湿度が高いらしい。

 

 考え事のせいで、周囲の景色に心奪われる隙が無い。普段ならカントー地方の興味深い植生に興奮することだろう。

 

「足は大丈夫か、アオイ」

 

 日傘を翳したパンジャに訊ねられ、アオイは止めてしまった足を動かした

 くさむらに突撃していくミアカシを傍目に頷いた。

 

「問題ない。まだ疲れないよ。――ミアカシ、あまり遠くへ行っちゃいけないよ。あと、道端のポッポにはじけるほのおを浴びせるのはやめなさい」

 

「モシモシ!」

 

 イッシュ地方には生息しないポケモンが多い。そのことに夢中になっているミアカシはアオイとは正反対に今日ホテルを出てから立ち止まることがなかった。

 

 小さな氷をアオイの額に押し当てるのはバニプッチだった。

 カチコチと心配するように音を立てた。

 

「ありがとう……。パンジャ、シオンシティまで君のお母さんの話をしてくれないか?」

 

「構わないが、楽しくないだろう」

 

「すこし心の準備をしたいんだ」

 

「まだしていなかったのか」

 

「……自分で言い出したことなのに、おかしいだろう? あの人が何を言うのか、分からなくて気持ちが乱れてしまう……」

 

 アオイが感じる疲労感は予測の及ばない未来を憂うものだった。人はそれを杞憂と呼ぶが、アオイの心は辛かった。

 取り出したハンカチで鼻先を伝う汗を拭った。

 熱くなった髪に影が落ちる。傘によって光が遮られたのだ。

 逆光を浴びるパンジャがアオイの隣に立っていた。

 

「君がどうしても耐えきれないのならわたしも同席しよう」

 

「……ありがとう。でも、すまない。気持ちだけ受け取っておくよ」

 

「そう。それなら今だけは隣にいよう。もうすこし近くに。陽が強いからね……」

 

 多くの巡礼者がそうであるように、ふたりもまた心の安寧を求めて歩いた。

 付き添う影は丸く、太陽は中天を迎えていた。

 

 

 

□ ■ ■

 

 

 

 シオンシティには闇がある。

 

 町の雰囲気が暗く、空気が悪いのは決して気のせいではない。

 人の人相が、積み上げた生活が、ひいては人とポケモンの歴史が闇を抱えて手放さない。これは街が抱える病であり、死者にとってはいっそ愛すべきゆりかごかもしれない。

 

 たとえ他の街が悲しみと共にポケモンの存在を忘れたとしても、この町だけはそれを忘れない。そびえ立つ霊園が忘れ去ることを許さない。

 

 病巣とも言える不穏の闇――現代にある最大の由縁は、シオンシティの霊園地下奥深くに作られた通称ポケモンラボ二号館にあった。

 

 カツカツと堅い踵の革靴を鳴らしてやって来た彼女は、きちりと切り揃えられた長く紅い髪を背へ払った。エレベーター前で待機していた壮年は、彼女の姿を認めた。同じ頃、彼女もこちらを認識したらしい。片眼鏡の向こうで色の薄い右目が緩く細められた。

 

「出迎えは君か。フジのご老体の説教は聞き飽きたが、権威には大人しく従っておこうと思ってね。そう睨むものじゃあない。君たちの組織を裏切るなんてコトしないとも。ホントだぜ。お互い家族のある身だ。賢く生きようじゃないか」

 

 軽々しく彼の肩を撫でた女性は、カントー地方には珍しいイッシュ訛りだ。発声の抑揚が違う。たったそれだけの違いで彼女の声は気に触った。

 

「外出の時間は3時間だ」

 

「どうせ君もついてくるんだろう。名も知らぬ同僚君よ。時間になったら声をかけてくれ。……あぁ、いいや、計る必要も無いかな。私はアオイに興味が無いし彼も事後処理という体だろう。できる限り早めに面会を切り上げよう」

 

「興味が無いだって? 実の息子だろう」

 

 ふたりは棺桶じみたエレベーターの箱に乗り込む。彼は地上へのボタンを押した。

 

「今の研究に目処が立った今、私が自分の複製作りに興味を持つと思うか?」

 

「……そうだ、そういうヤツだったな、君は。ヒイロ・キリフリ博士」

 

 名前を呼ばれたヒイロは、左の頬が上がる歪な笑みを浮かべ、鼻を鳴らした。

 

「家族を大事にしろとフジ博士が言うから私はこうしているのだ。まったく、フジのご老体はそればかりだ。彼はミュウツーとかいう、あのポケモンの製造失敗から学習していないらしい。むしろあれは執念には磨きがかかったという感じだな」

 

「ミュウツーは失敗ではない。他のポケモンの遺伝子から別のポケモンを作る、改良する――その方法が確立されたのだ」

 

「人間『ごとき』がポケモンに手を加えることを『改良』とは言わん。改造もしくは改悪って言うんだぜ。――言葉に気をつけろよ」

 

 彼女は、決して大きな存在ではない。背は男より低く、しかも右目はほとんど見えていない。監視を兼ねる彼は、彼女にとっての死角にいる。そのはずなのに、狙われている感覚に襲われる。手を伸ばせば届く距離にいる。けれど、きっと何十メートルも離れていても同じ感覚に襲われたことだろう。どこまで攻撃の手を広げてくるか。彼女の掌からは決して逃げられない。バカげた妄想に取り憑かれそうになる。

 彼は首を横に振り、地上までの階層を数えた。

 

「そのポケモンへの情熱をすこしでも人間に向けろ。具体的には息子だが」

 

「ハァ……? アオイに? かつての私は人生経験が作品に及ぼす影響を期待していたが、結局は期待外れだったからなぁ、愛という方法は。今さら愛着を持てと言われても難しいものだ。ポケモンの厳選漏れをいちいち愛するかという話と同じことだ」

 

「間違ってもそれを口に出すなよ。君は内心の暴露をしなければ、研究畑から採取された人間にしてはまともなのだから」

 

「フンっ。研究者としての私に外道を求める癖に、私人の私には聖職者であれと期待する。矛盾しているとは思わないのか? どの口が言うのだろう。興味深い生態だぜ」

 

「…………」

 

「まあいい。手早く済ませるさ。――久しぶりに出会うには、お生憎の晴天だ。お天道様には会いたくないねぇ。後ろ暗い過去を持ちすぎた。君もそうだろう?」

 

 彼女は見えないはずの右目を向けた。

 この動揺は決して、彼女にだけは見えないはずだ。そう自分に言い聞かせ、都合良く地上へ着いた箱の中で男は静かに息を潜めていた。

 

「分かっていると思うが念押しだ。所属のことは他言無用だ」

 

「注文の多い男は嫌われると相場が決まっているんだ。フジのご老体を見習いたまえよ」

 

 命令を飄々とはぐらかしたヒイロは、真白に照らされる外界へ歩いて行った。

 

 その小さな背を見送った彼は、彼女の外套がひらめく様を見ていた。彼と彼女は同じ立場だった。汚濁の水溜まりにいるはずなのに、彼女はいつでもどんな時でも何でも無いことのように佇んでいる。

 

 彼は陽を避けるように歩いた。

 生きているのにまるで影法師のようだと気付いたとき、ヒイロのニヤニヤした顔が思い浮かんだ。彼は過去の自分を蹴飛ばすように日当たりの世界へとびだした。

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