CCG医務室より・・・
チュゥゥ〜
「ーひゃあ・・・」
「相変わらずヘタレだねぇ六月くんは。そんなんで捜査官務まるの?」
「いや・・・まあ・・・」
僕は六月透(むつきとおる)。わかりやすい部位は常に眼帯をつけているところ。いま、柴(しば)先生に注射器で血を摘出してもらっていたのだが、血を見るのが怖い。
「ダメなんですよ・・・うう・・・どうしても血を見ると俺・・・」
もう本当に血は見てられない。体が受け付けない。
「先生に迷惑だけはかけないように頑張っては・・・いるんですけども・・・」
「”お友だち”はどうなの?”班長さん”以外採血いらっしゃっていないようだけど?」
「・・・・・・相変わらずです(みんなマイペースで)僕からみんなに言っておきますよ」
「佐々木くんにもよろぴく。あとあの新入生くんにも」
「・・・?新入生って・・・誰のことですか?」
「あら?六月くんは聞いてないのか。今日からQs班に新メンバーが加わるんだよ」
「そ・・・そうなんですか、わかりました。・・・失礼します」バタンッ
新メンバー、聞いてもいない情報だった。新しい仲間が出来るのかぁ。
「班長も不知くんも単独捜査だろうな・・・才子ちゃんは・・・・・・また寝坊かな・・・先生にみんなで協力してって言われているのに・・・にしても・・・新メンバーの人は一体どこに・・・まぁ、でも僕が言っても聞かないだろうしなぁ・・・あいて!」ドンッ
ズゥゥン
「アッ・・・」
ぶつかった相手は、強面の先輩の捜査官だった。睨まれてる、すごく睨まれてる!
「す、すみません!」ペコッ タタッ
流れるようにこの場から離れた。
(自分って、情けないな。こんなにナヨナヨしてていいのかな)
「あ、スンマセン。そこの眼帯つけた人」
誰かに呼び止められた。容姿は、髪の毛が少し長くて、白シャツの中に黒色の下着を着て、紺色の長ズボンを着ていた。
「え?な・・・なんでしょうか?」
「佐々木一等がどこに行ったか知りません?今日Qs班に配属になったばっかでどこに行ったらいいかわかんなくて」
(え?ていうことは、この人が新メンバー⁉︎)
「・・・ええっと、貴方のお名前は?」
「あ、自己紹介してませんでしたね。俺の名前は剱岳真司、三等捜査官です。貴方はQs班の人?」
「そ・・・そうだけど」
「よし!なら呼び捨てでいい?名前は?」
「俺は・・・六月・・・透」
「そうか、ならトオルって呼ばせてもらうぜ」
「そ・・・そう」
あるカレー屋にて・・・
「”あの連中と真戸の娘は〔CCG〕の恥だ”・・・と言われているそうだ」
「・・・・・・(まじっすか?)」
彼女は真戸暁(まどあきら)上等捜査官。僕の上司にあたる人だ。顔もすごく整っていて、美人さんだ。でも厳しい。
「今期の平子班と比較すれば、実に三分の一以下の成績らしい」
「・・・・・・(まずい、魂抜けちゃう)」スゥー
何の話を切り出そうか。とにかく何かを語りかけなければ。この空気は苦しすぎる。
「いやあ・・・美味しそうなナンですね。『そのナン一体何味ナンですか?』という面白を思いついたのですが、いかがでしょう」
・・・しょうもなっ。本当しょうもなっ。
「スパイシーなジョークだな。貴様には教育の”更新”が必要なようだ」
遠回しに怒られてる。もうお腹痛い。
「佐々木。数ヶ月前・・・お前に”クインクス”達が任されたとき、局長は仰ったな。”有馬貴将を超える捜査官をつくれ”と」
有馬さん・・・。
「有馬貴将」
喰種捜査官最高階級「特等捜査官」であり、あげた功績は数知れず。〔CCG〕内最強と謳われる無敗の捜査官。
「・・・我々〔CCG〕が置かれている現状は分かっているな。例の喰種組織が勢力を増し続けている。通常の捜査に加え、奴らにも立ち向かっていかねばならん。有馬特等に並ぶ捜査官・・・新しい強力な戦力の確保が必要なんだ。お前の率いる”クインクス”たちは〔CCG〕において一筋の光明になり得る。”有馬貴将を超える捜査官”をつくるには、お前自身が彼を超えねばならんぞ」
「そんな・・・無茶苦茶・・・」
「実際に今日から来る新入生がいい戦力らしいな。三等捜査官だが准特等並の戦力があるらしいじゃないか」
「剱岳くんはちょっと僕に対してかしこまりすぎなんですよね」
「それと、有馬特等から言伝だ。”借りていた本を返すから、都合のいい日を教えろ”と」
「・・・・・・お忙しいんだから、直接じゃなくてもいいのに。まったく律儀なのかなんなのか・・・あ、この”なんなのか”は別にナンとはかけていな「わかった黙れ」シュンッ(テンションダウン)」
「久々にお前に会いたいんじゃないのか?”親心”という奴だ」
「あの人にそんな感情ありますかねぇ・・・」
「さあな」
「捜査が落ち着いたら、一度出向いてみますよ」ガタッ
「佐々木」
「?」
「”白単翼章(はくたんよくしょう)”を叙勲された実力は伊達ではないはずだぞ。私自身も我が真戸班のエースに期待している。励め、佐々木一等」
「白翼章」
特定レートの喰種を駆逐した、あるいはその能力があると判断された捜査官に贈られる。CCGの象徴でもある、鳩のつばさのモチーフ。白単翼章は”Sレート”。
「アキラさん、ハグしても?」
「否、だ(とっとと行け)」
僕は店を出て、市街へ出た。
「”有馬さんを超える”・・・か」
「先生!」
「あ、六月くん。と、後ろにいるのは剱岳君だね」
「お疲れ様です!」「ご苦労様です、佐々木一等」
「剱岳、そんなにかしこまった言い方しないで、ね?」
「・・・尊敬すべき方には敬意を払うべきでは?」
「う、うん。そうだね、ははっ。剱岳くんもクインケを所持したね、どんな武器なの?」
「単発式の拳銃です」
「え?拳銃?」
「はい、カグツチver.2.8ていう羽赫の武器です。・・・一瞬ショボいと思いましたね?」
「いやいや!そんなことないよ!クインケはクインケだよ!みんな強さは同じ!(何この子⁉︎いきなり核心ついてきたよ!鋭い!)」
(それはないと思います、佐々木一等)
俺は肩をガクッと落とした。
「あ、そうだ六月くん。柴先生のとこ寄ってきた?」
「はい、また貧血起こしちゃいましたけど・・・」
「例の捜査どうなったかな?」
「あっハイ!近所から”獣のようなうなり声”が聞こえてきて”喰種かもしれない”とご婦人が心配されていた件ですが・・・僕と米林三等が周辺を調査した結果、近所を縄張りとしていた野良犬が婦人宅の裏で唸っていたという事実が判明しました。ご婦人にこの旨を伝えますと”今日からグッスリ眠れるわ”と非常に安心した様子でおられました」
真司は思う、
(犬かよ、面白くねぇ。俺は喰種を殺したいだけだ。ゆえに安心なんてどうでもいい)
「うんうん・・・」
(佐々木一等、うんうんって言ってもそんなに大事な事じゃない気がするんですが・・・・・)
「あれ?他の二人は?」
「それが・・・・・瓜江班長と不知三等は・・・・・単独捜査を行っているようでして・・・どうやら[トルソー]という喰種について調べているとか・・・」
「ええ!?」
([トルソー]は推定レートAの危険な喰種だ・・・経験の浅い二人がヘタに手を出すべきじゃ・・・)
「二人に連絡は?」
「つ、つきませんでした」
「佐々木一等。俺に任せてください」
「いや、ここは今いるチームで動こう。剱岳君」
「真司でいいですよ」
「[トルソー]を調査しているチームに捜査資料を貰いに行こう。六月くんと真司くんも来て!」
「は、はい!」
「了解しました!」
どうやら俺の先輩にあたる瓜江班長と不知三等は自己中心的なことをしているようだ。まあ俺に少し似てるがな。俺、どうなっちまうんだろう。俺はただ、喰種をこの世から一人残さず消したいだけなのに。考えると、左目が疼いた。