空想は運命を弄ぶのか   作:山崎

10 / 11
第10話

私には所謂苗字というものが無い。

というよりも私達一家に苗字が存在しない。強いて言うならばニックネームがそれだ。

自称しても良いし、他称された名を使うこともある。

私も様々な名で呼ばれてきたが最近では悪魔を意味する『Dracul』と呼ばれたりする。私の力を示す為に様々な戦場に単身、身を投じて勝利を上げてきたのが主な原因だろう。

しかし吸血鬼に悪魔というのはいただけない。そもそも吸血鬼は悪魔の一種である。

何だか鴉に鳥と呼ぶような滑稽さを感じる。しかしこの名前で広く私という存在が知らしめられたので今更文句も言えない。当分はこの名で通さなければなるまい。

いつかはもっとまともな名で呼ばれたいものだ。

 

今や我が家の大黒柱と言っても過言ではない長女には串刺しを意味する『Tepes』という名で呼ばれるそうだ。私に比べ彼女は名まで優秀だ。

それを来た当初は特に戦いの場に出していないのにえらく物騒な名だと思ったがよくよく話を聞くとどうやら人間から血を採取する過程に秘密があるらしい。長女は更に詳しい話をしようとしたが私はそれ以上聞くことを止めた。きっと聞けば後悔する。

人間だってわざわざ好き好んで家畜の処理の過程を聞くまい。当の串刺し公本人もその名を気に入っているようだし私がとやかく言うことではないだろう。私は食事を静かに気持ちよく摂りたいのだ。そこに余計な情報はいらない。

 

父が亡くなってから家にこもりがちになった次女だが当然彼女にもニックネームがある。

『Frantic』 主に狂乱、狂気を表すこの名は確実に父が亡くなってからの騒動が原因だろう。

彼女は壊す事に長けている。

神が世界を六日間で創造したのなら彼女は神が休む七日目で全てを台無しにしてみせるだろう。彼女が当時いなかったおかげで今の日曜があるのだ。

しかし彼女自身はあまり気に入っていないようだ。自身の名との通りが嫌なのだそうだ。

名の経緯が経緯であるし名自体も恐れというよりも蔑称としての意味合いが強いからだろう。最近では私を意識してか『Sora lui Dracul』 悪魔の妹を自称するようになった。いっそ『Draculea』後の『Dracula(ドラキュラ)』を意する悪魔の子が良いかとも思ったがそれでは私が親になってしまうので口には出さなかった。

Dracul、Tepes、そしてDraculea、どれも私がいた世界で吸血鬼ドラキュラ伯爵のモデルとなったヴラド三世に深く関わりのある名である。長女ではないが運命の存在を感じてしまう。

 

いつかは私達を表す苗字を考えるのも良いかもしれない。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。