空想は運命を弄ぶのか 作:山崎
秋は空が高く感じると言われるがそれは他の季節に比べて雲が高い位置にあるからだそうだ。何もない青空よりも高く感じることもあるのだから面白い。まるで幸福のようだ。
下があるから自分は上でいられる。
また十年もの月日が経った。
もう三十というのに私の身体は十七から変化が無くなったように思える。最初私は前の世界の影響かとも考えたがどうも違うらしい。吸血鬼は長命な種族で未だかつて老衰で亡くなった者がいないといわれる程だ。それくらいに寿命が長い分成長も遅いのだそうだ。むしろ妹達が十歳を超えてから変化がほとんど見られない辺り、大きく育った方だろう。
そして遂に父が逝った。父も死期を悟っていたようで父が逝く何日か前に私たち家族を一人ずつ呼び出し、別れの挨拶のようなものをした。父の葬儀もまた身内だけで慎ましやかに執り行われた。次女は大きく声を上げて泣いたが長女の方は覚悟ができていたようで声を上げこそしなかったがそれでも一筋の涙だけは堪えることが出来なかったようだ。私は今度もまた埋葬が終わるその時まで彼の亡骸を見ることは無かった。
私は泣かなかった。
私は新しくこの家の当主となった。
私は当初総合面で私に勝る長女をこの家の当主にと推したが本人がそれを固く固辞した。私が年長者であることを除いてもやはり力の強い者が治めるべきとのことだ。
かくして私はこの家の当主となった訳だが如何せん問題は山積みだ。
我が家の領地の管理や税収といった執務は長女が引き受けてくれるとのことで心配はいらないがまず私は吸血鬼として若すぎる。三十など人間じゃあるまいし周りからすれば赤子も同然だろう。ここで私の力を見せつけなければ我が家に従う者達にも嘗められてしまう、早急に解決しなくては。
ある日私はメイドからもらった紅茶を飲みながら今後について考えていた。
力を示すにも方法は限られてくる。単身闇雲に戦場に身を投じても良いのだが今はまだその時期ではない。まずはこちらの体制を立て直さなければ。
私は改めて父がいかに偉大な男であったかを知る。親であることも除いても彼が逝ってしまったことが実に惜しく感じる。彼が逝くその時までこのようなことで悩む必要は無かったのだ。もっと父の教えを乞えばよかった。私はまた後悔する。一刻も早く永遠に眠る両親を安心させられる当主にならなくては。その為にもとりあえずは内部の膿出しから始めるべきだろう。
私は紅茶を飲み干しさっきのメイドに二杯目を要求する。
父亡き今、確実に私の命を狙う者が現れるだろう。それが諸外国だけなら簡単で分かりやすくて良いのだが悲しいかな父はその力とカリスマのみでこの地を治めたのであって人望は厚い方では無かった。彼のことを良く思わない者も多く、内部による反逆も考えられる。
私は紅茶を飲み干しまたさっきのメイドに紅茶を求める。
ニンニクのエキスは紅茶に合わないから次はせめて聖水にするよう注文を付け加えて。