空想は運命を弄ぶのか   作:山崎

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幼少期に周りの大人には見えないのに自分だけが見えるものがあった。
私以外にも経験した者は多いんじゃないかと思う。
壁のシミがお化けに見えたり何も無い空間に妖精が見えたり、普段どうとも思わない小さな羽虫どうしようもなく怖く見えたり。
母に聞けば悪魔だと答え、父に聞けば死んだ祖母が遊びに来たのだと教えられたものである。いつの間にか見なくなったがきっと彼らも幻想の世界へと旅立ったのだろう。
家のソファーにいつもいた小人たちは今も元気にしているだろうか。


第9話

私は実に忙しい刻を過ごした。

気付けば百年もの月日が経っていた。もはや人間だった頃を振り返る気にもならない。

はたして私はどうしてこの世界にに来たのだったか、普通に眠りについたら来ていたような気もするし本当の意味で世界に別れを告げたら来ていた気もする。

 

 

まさか内部の大半が裏切るとは思わなかった。毒を盛られた数は百を超えてから数えてない。長女が用意する食事以外で毒を口にしなかったことがはたして何回あっただろうか。

これは私が舐められているせいだと、私の力を示す為に一騎打ちによる決闘を提案した。が一向に私を打倒せんとする骨のある輩は現れなかった。私を倒すだけで一国の主になれるというのに。裏切る癖に私のことは恐れるのだから手に負えない。

反面、私の暗殺を企てる者は多くいた。先の毒もそうだが中には私に聖水をぶっかける者もいた。

まさか学校の虐めよろしく扉を開けた瞬間にバケツ一杯の聖水をかけられるとは思わなかった。あの時は思わず笑ってしまった。後日暗殺を企てた組織にワイン片手に訪ねたのだがその時の奴らの驚愕の顔は忘れない。やはりワイン一本じゃ足りなかっただろうか、ちゃんと時間も相手側の都合に合わせて休日の真昼間に訪ねたのだからそれしか考えられない。詫び代わり一芸として銀の十字架を身に着け、ニンニクをつまみに聖水を一樽飲み干してみせたので許してほしいところだ。その日を境に刺客の数は減ったので私の誠意は伝わったのだろう。

だが如何せん私を暗殺せんとする輩は多い。一々制裁を加えるのも面倒だ。当分の間、屋敷には必要最小限の人数だけ揃えてあとは暇を出してしまおう。いい加減ニンニク味の紅茶は飽き飽きだ。

 

 

 

 

 

次女は少し暗くなった。

父が亡くなってからしばらくは酷い情緒不安定に陥っていた。父が倒れ、逝ってしまった原因は自分にあると思ったらしい。あの時は流石に焦った。なんせ周りにあるものすべてを壊していったのだから。私でさえ何度か壊されてしまった。こと『破壊』に関しては私よりも上かもしれない。我が妹ながら恐ろしいと感じてしまうが反面、将来が楽しみとも思ってしまう。そのことを長女にも話したのだが何故か呆れ気味の様子であった。私は純粋に妹の成長に期待しているだけであるというのに。

その時の騒動で従者が多数巻き込まれて逝ったらしいが後に私に反する者達の仲間であることが判明したのでお咎めは無しとした。それ以降私は時間をかけて彼女が立ち直れるよう尽力した。その甲斐もあって月が空に千回昇る頃には大分マシになった。あとは時間が解決してくれるだろう。

 

長女は益々優秀になっていく。

今や彼女が我が家を仕切っていると言っても過言ではない。私が当主になる前から執務は殆ど任せきりであったし食事の時だって未だに彼女に用意してもらっている。いや、流石に私もいい歳なのでいい加減人間から直接血を摂ることも出来なくはないのだが器から飲む方が楽ではあるし、そもそも首に牙を突き立てる行為自体が下品であると感じてしまうし、何よりも吸血するたびに耳障りな命乞いを聞くのも億劫なのだ。なまじ言葉がわかる分質が悪い。食事の時くらいは静かに過ごしたいのだ。

彼女が血を用意してくれなかったら規則正しい食事など夢のまた夢であっただろう。

また彼女は今まで一回も毒の被害に遭ったことがない。

毒の入った紅茶は絶対に口にしなかったし、聖水の被害にも遭ってない。遭う前に制裁を終えている。次女が暴れた時だって止めたのは私だが私が駆けつけるまで時間稼ぎをしていたのは彼女だ。しかも無傷だというのだから驚きだ。

彼女曰くそういう運命が何となく見えていたとのこと。

女の勘とは未来までも見通せるようだ。

それとも私が単純に鈍感なのだろうか。

 

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