辻堂雄介の純愛ロード   作:雪月夏

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番外編1『辻堂愛のバイト探し奮闘記』

「ごちそうさまっと……いやー、卵料理上手くなったなぁ」

 

 

 日曜日のお昼。今日は愛の卵料理の成果を見るためにウチで一緒に食べたわけなんだけど……なんか、愛の様子がおかしい。

 

 

「…………」

 

 

 さっきから……てか、ウチに来たときからなんか口数が少ない、若干顔も険しいし……なんかあったのだろうか。まあ、本人から言うまで様子を見ますか。

 

 

「な……なあ、ユウ」

 

「ん、どうした?愛」

 

「……聞いて欲しい事があるんだ」

 

「なんだ?」

 

「あのさ……バイトを始めようと思うんだ」

 

「………」

 

「な、なんだよ。何か言えよ」

 

「あ、いや、悪い。バイトか……良いんじゃないか」

 

 

 そう言い食器を洗い場に置いて再び席に戻る。

 

 

「………でさ、愛」

 

「なに?」

 

「……何処の店からショバ代をせびる気だ?」

 

「ちげえよ!!!」

 

 

 

 

 

 辻堂雄介の純愛ロード

 番外編2『辻堂愛のバイト探し奮闘記』

 

 

 

 

 

「………悪い、少し驚いてつい口走ってしまった」

 

 

 膝を抱えて蹲り床にのの字を書きながら、いじけてる。可愛いからこのまま見ていたいけど、とりあえず謝っておこう。

 

 

「んで、なんで急にバイトなんだ?」

 

「それはな……普通の女の子ってアイスクリーム屋さんとか花屋さんとかでバイトするだろ?だからアタシも、社会勉強とか花嫁修業もかねてやっておかなきゃいけないと思ったんだ」

 

 

 なんか、愛の想像している事が実際に見える様な気がする。

 

 

「その限定された女の子像はどうかと思うが……まあ、勤労をすることはいいことだ応援するぞ(バイト姿も見たいし)」

 

 

 仕事先の可愛いユニホームを着て働いている愛を想像する……可愛すぎるだろっ!!

 

 

「ほ、ホントか!」

 

「ああ」

 

「じゃあ、今から面接行こう飛び入りで!!」

 

「は!?飛び入り!?」

 

 

 相変わらずもの凄い行動力の愛である。

 

 

 

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

 

 

「よし、ここにしよう」

 

「ここって…………3○アイスクリームだな」

 

 

 去年出来た、まだ新しい店だ。

 

 

「それじゃあ、行くぞ」

 

「まあ、がんばれよ」

 

「ああ」

 

 

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

 

 

「たのもー!!」

 

 

 勢いよく中に入る愛。

 

 

「ヤベェ!辻堂だ!!」

 

「三大天の辻堂愛!?」

 

「地上げか!?」

 

「マジ、ヤベェ!!」

 

 

 中にはいると、モヒカンやらスキンやら、なんか角をつけている厳ついヤンキー共がファンシーなアイスを食っていた……てか、ここは世紀末かっ!!

 

 

「そんなナリでアイス食ってるお前らのほうがヤベェよ!!」

 

 

 もっともなツッコミである。

 

 

「ってそんなことより……おい!店長を出せ!バイトに来たぞ!!」

 

 

 どうやら、愛も緊張でテンパっているようだ。こんな言い方じゃあ地上げしにきたようにしか見えない。

 

 

「私が店長です……」

 

 

 店の奥から店長登場、若干震えているような…。

 

 

「この店から、ショバ代をせびる気かね……」

 

「だから、ちげーって!!」

 

 

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

 

 

「はぁー………どうしてあんなことに…」

 

 

 3○アイスクリームでの一件の後、愛は壁に手をつきもの凄く落ち込んでいる。当然の事ながら飛び入りの面接は失敗に終わった。まあ、上手く行くわけ無いと思ったが……こんな姿見てたらなんか不憫に思えてきた……しゃーない、助け船を出してやるか。

 

 

「愛、さっきこんなの見付けたんだけどどうだ?」

 

 

 そう言って、一枚のチラシを愛に見せる。

 

 

「……ヤンキー喫茶?」

 

「ああ。ここなら、ヤンキーの愛でも雇ってくれるだろ。だからがんばってこい」

 

「ユウ………ああ、頑張ってくるっ!!」

 

 

 

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

 

 

「ウチは書類より適正重視やから……使用期間つーことで軽く接客して貰おうか」

 

「押忍!」

 

 

 厳つい店長の後についてフロアに出てきた。頑張れよ、愛。

あ、ちなみに俺は客としてコーヒーを飲んでいる。しかし、あんまり美味くないな…。

 

 

「まあ、接客ゆうても簡単なもんや。ウチに来る客はスリルを求めとる、せやから飴と鞭の要領で非日常を演出してやればええんや。手本を見せるさかいよう見とれや」

 

「オ……押忍!」

 

 

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

 

 

「よォあんちゃん……」

 

 

 カップルのテーブルにつく、店長。

 

 

「はよ注文せんかいこのボケェ!!」(脅す)

 

「うおー!すげー迫力…!」

 

 

若干ビビル彼氏くん。

 

 

「いつまでカワイイ彼女を見せびらかしとんねんコラァ!!」(さりげなく褒める)

 

「やだーかわいいだってー♪」

 

 

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

 

 

「……と、こんな感じでびっくりさせりゃええっちゅーこっちゃ、簡単やろ?」

 

「押忍!」

 

「お客さんに手ぇ出したらアカンけどテーブル小突くのも効果的やで。ほな、やってみぃ」

 

「押忍!!」

 

 

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

 

 

①小突く

 

 

「あ、注文いいで――――」

 

 

 バキッッ!!!

 

 

 テーブルが見事なまでに粉々になった。

 

 

 ②脅す

 

 

「あぁん?何しに来たんだ?」

 

 

 ドスをきかせた脅し口調。この時点でサラリーマンのお客は失神寸前だ。

 

 

 ③褒める

 

 

「お?オマエいい時計してんじゃねえか」

 

 

 あんな顔してたら、本物の不良にしか見えないよな。実際、本物だけど、それも極上の……。

まあ、どんな顔かは現在発売中のアンソロジーコミック第一巻を読んでくれ。

 

 

「おい!?なに気絶してんだよ!起きろ!!」

 

 

 あ~あ、お客さん口から魂を出しながら気絶してるよ。

 

 

「………あの」

 

 

 店長が愛に声を掛ける。手には結構な厚さの封筒を持って……あれってもしかして…。

 

 

「ちゃんとショバ代納めますんで今日の所は勘弁してください……」

 

 

 泣きながら、封筒を差し出す。

 

 

「だからなんでなんだよっ!!」

 

 

 愛の悲しみの叫びが店内に響き渡った。

 

 

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

 

 

「……もういい。バイトもういい。やってないけどやめる」

 

 

 ヤンキー喫茶での一件の後、俺の家に帰ってきたんだけど、よほどショックだったのかソファーに座る俺の膝に頭を置き(いわゆる膝枕)拗ねている。

 

 

「それじゃあ、俺に永久就職でもするか?……なーんてな」

 

 

 頭を撫でながら俺は冗談半分でそんなことを提案してみた。

 

 

「………」

 

 

 一拍置いた後。

 

 

「それでも、良いかも」

 

「……えっ」

 

 

 結構本気にしていた愛だった。

 

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