辻堂雄介の純愛ロード   作:雪月夏

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第伍話『喧嘩狼と喧嘩姫』

 さて、話しは現代に戻る。愛と澪の気のぶつかり合いで学校が揺れて窓ガラス数枚に亀裂が入ったり泡を吹いた失神者がでて救急車が来たりした日から数日が経過したいつもの朝。

 

 

「ふぁ~あ………朝かぁ……寝むぅ…」

 

 

 未だ半分寝ている頭でベッドから出てキッチンに下りてミルに豆を入れて回す。

 

 

 ――――ガリガリガリガリ

 

 

 俺は毎朝こうやってミルで豆をひきながら頭を徐々に起こすのが日課だ。なんかこの音が好きなんだよね。

 

 

 ―――コポコポコポコポ

 

 

 ひいた豆をドリッパーとフィルターを使って沸かしたお湯でゆっくりこしていく。

そして、出来たコーヒーを一口啜る

 

 

「あ~、美味い」

 

 

インスタントも嫌いじゃないけどこうやって豆からやった方が香りも良いし色々ブレンドが出来たりして楽しい。

 

 

「朝ぱっらからめんどくせーことしてるなぁお前」

 

「ん、マキか…おはよう。お前も飲む?」

 

 

彼女は腰越マキ。まあ、ひょんな事から知り合って時々(てかほぼ毎日)朝飯と晩飯を家に食べに来ている。

 

あれ?こいつ今窓から入ってこなかったか?玄関から入ってこいって言ってんのに…。

 

 

「いや、いい。コーヒーって苦いから嫌いなんだよ。ジュースない?」

 

「冷えてないが倉庫にジン○ャエールならあるけど?」

 

「なんで、冷やしてないんだよっ」

 

「忘れてたんだよ、文句言うな。とりあえず大人しく座ってろ。今、朝飯の準備すっから」

 

「は~い」

 

 

 さてと何を作るか……。今日は起きるのも少し遅かったからそんな、手の込んだ物は作れないな。ま、昨日孝行で買った余り物でいっか。

 

 

「おい、マキ。皿並べたりするくらいしてくれ。働かざる者食うべからずだぞ」

 

「はいはい、わかりましたよ」

 

 

 しぶしぶ、ソファから立ち上がり皿をテーブルに並べ出すマキ。それと同時に惣菜ののった大皿をテーブルに置く。

 

 

「そんじゃま、いただきます」

 

「いた~きます♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~数十分後~

 

 

 

「はぁ~しあわせ~♪」

 

「相変わらずよく食うよなぁ、マキは…食ってすぐに横になると牛になるぞ」

 

 

 食後のコーヒー(インスタント)を飲みながらソファに寝転がっているマキに言う。

 

 

「そうなんだよなぁ、最近栄養取っているせいかまた大きくなったんだよなぁ、胸が…」

 

 

 むにゅむにゅと自分の胸を軽く揉み出すマキ。

 

 

「………ゴクリッ」

 

 

 思わず喉を鳴らしてしまった。だって、しょうがないだろ!健全な男子の目の前にあんな凶悪なメロンがふたつ、むにゅむにゅ動かされたら誰だってこうなるわ!

 

 

「ん~?なんだ、ユウ?私のおっぱいが気になるのか?」

 

「い、いや別に…」

 

 

 とっさに目をそらせる。

 

 

「まあ、ユウになら揉ませてやってもいいけどな。毎日飯食わせて貰ってるわけだし。代金代わりってことで」

 

 

ニヤリと怪しい笑みを浮かべながら俺を見る。

 

 

「………………結構です」

 

「今、結構悩んだだろう」

 

 

 そりゃ悩むよ!!いきなり女の方から「揉ませてやろうか?」なんて言われた男子としては思いっきり揉みししだきたいに決まってんだろう!!

だが!俺はそんな欲望より理性を取る。なにより愛は裏切れない。

 

 

「そ、そんなことよりマキ。そろそろ、でないと学校に遅れるんじゃないのか?」

 

「あ、話し反らしやがった。ま、いいや。確かにそろそろ出ないとヤバイな。そんじゃ、ユウ。晩飯もよろしく~」

 

 

 バタンッ

 

 

「はぁー……助かったぁ」

 

 

 さすがに思春期まっただ中の男にはアレは毒すぎる。てか、マキは俺に対してかなり無防備なんだよなぁ。

 

 

「まあ、気に入られているって事だから悪い気はしないけど…って、俺もそろそろ出ないと遅刻する」

 

 

 急いで部屋に戻り制服に着替えて朝食を作った時に作っておいた弁当を鞄に入れて家を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 辻堂雄介の純愛ロード

 第伍話『喧嘩狼と喧嘩姫』

 

 

 

 

 

 

 

 

「お~い、おはよ。みんな」

 

「おはよう、雄介。今日はいつもより遅かったね」

 

「ああ、少し起きるのが遅くなってな(まあ、それ以外にも色々あったけど…)」

 

 

 みんなと合流した。ちなみに、澪は今日日直なのでもうすでに教室に行っている。

 

そして、校門を潜ってしばらくすると――――

 

 

「愛さん、おはようございます!!」

 

「「「おはようございます!!」」」

 

 

 今日も今日とていつものをやっている、辻堂軍団。その真ん中を面倒臭そうに歩く愛。そして、そのすぐ後ろを着いて歩く自称この学園のナンバー2名前は確か『葛西久美子』。彼女に関しては確かにそこらの不良の中ではそこそこ、強い方だと思うが根が単純過ぎるのと喧嘩っ早いのが欠点だ。愛曰く自分の言った事でも三歩歩くと忘れるらしい。

まあ、典型的なアレな子だ。

 

 

「飽きずに今日もやっているな。まったく、迷惑なことこの上ない」

 

「まあ、いいんじゃない。あれのお陰で校門でのキャッチや宗教の勧誘なんかがなくなったんだから」

 

 

 嫌そうな顔をしながら軍団を眺めている板東に対して大が言う。

 

 

「まあ、このことは良いとして。大変なのは雄介の方だな」

 

「ん?何が?」

 

「3会の準備の事だよ。」

 

「ああ~」

 

 

 3会とは正しくは『開海会』。この町が毎年行う、海開きのための催し物だ。大した行事はしないが準備係には伝統的に地元の学園から何人かかり出される事になっている。地域との交流ってヤツだ。

それが、今年はうちの学園にまわってきたと言うわけ。係はクジで選出され、うちのクラスからは俺。

 

まあ、当たった以上は転校生とはいえしっかりやるけど。話しでは難しい仕事もあまりないみたいだし気楽にやればいいか。

 

そして、もう一人選ばれた女子は―――愛こと俺の従妹の辻堂愛。

 

 

「彼女、土曜の会議もサボったんだろ」

 

「辻堂さん。興味ないんでしょうか…」

 

 

 いやいや、委員長。実はその真逆、愛は3会の準備委員に選ばれた事をかなり喜んでいた。

なんせ、真琴さん達が出会ったのがこの開海会らしい、その準備に自分が関われるというのは娘としては嬉しくないわけがない。

 

まぁ、あいつにも番長って立場があるから自分から進んで手伝うなんて出来ないだよな

 

 

「何かあったら言ってくれ。手伝うから」

 

「私もお手伝いしますね」

 

「おう、ありがとう。大、委員長。でも、多分大丈夫だよ。準備はたいしたこと無いって言ってたし」

 

 

 こういう時、頼れる友達が居るっていうのは嬉しいもんだ。

 

 

「そうだ、女子の当番を換えてもらえばいいんじゃないか?」

 

「いや、そこまでしなくてもいいよ。愛のヤツだって気が向いたら手伝ってくれるさ」

 

 

 そのきっかけをどうやって作るかが問題なんだけどな。と考えていると―――

 

 

「辻堂オォォォオオオオオオオオ!!」

 

 

 何か、変なのが3人ほどバイクで乗り込んできた。

 

 

「ようやく来たな、辻堂愛!」

 

「我ら千葉連合よりつかわされた、千葉のジャックナイフ三連星!」

 

「テメェの首をいただきにきたぜぇ」

 

 

 朝っぱらからよくやるな、あの連中…。

 

 

「俺の名前はエッジ!ナイフ捌きでは右に出る者はいない、人呼んで千葉の流星――――デットナイフ・エッジ!!」

 

 

 なんか、先頭にいたヤツがポーズをとる。

 

 

「そして俺は、バタフライナイフ二刀流で10人を捌いた、人呼んで千葉の忍者――――バター次春!!」

 

 

 何こいつ、AV男優でもやってんの?

 

 

「そして俺は、千葉最速のナイフ使いにして千葉最強の刺客――――デットナイフ・エッジ!!」

 

 かぶってる、かぶってる。

 

そんなことを心の中でツッコミながらふと愛の方を見ると「……はぁ」と面倒くさそうに溜息をついていた。

 

 

「クミ、ケンカは放課後からって看板さげとけ。朝からこのテンションはキツい」

 

「す、すんません」

 

「まあ、いいや。たった3人だしお前らに任せた」

 

「「「はい!」」」

 

 

 元気よく返事をする辻堂軍団。それぞれ、バットやら角材やらを手にしていた。

 

 

「(こりゃ、確実に始まるな。まあ、あの千葉連のバカ共がどうなろうと知ったこっちゃないが、問題は……こっちだな)」

 

 

 チラッと一年生の教室を見ると澪がいまにも窓から飛び出してきそうな雰囲気でこちらをクラスメイトと共に見ていた。

 

 

「おっと、雑魚にゃ興味ないぜ」

 

「欲しいのは辻堂―――あくまでテメェの首だけだ!」

 

「「ヒャッハー!」」

 

「きゃ……っ!」

 

「え?」

 

 

 そのかけ声と共にダブルデットナイフ・エッジは襲いかかってきた。もちろん、辻堂軍団30人ではなく委員長と俺………あれ~?なんで一番ナヨっとしてるぽい大じゃなくて俺?………まあ、捕まってる俺も俺なんだけど。

 

 

「ヒヒヒ、稲学の生徒が傷つくのは見たくねぇよなぁ」

 

 

「(ああ、どうしたもんかなぁ。さっきから澪からなんらかしらのオーラが見えるし、こりゃあ、もう駄目だなよなぁ……はぁ。穏便に済ませたかったのに…)」

 

「この、地味メガネがヤラれたくなければ大人しく―――」

 

 

 ――――ボキュ

 

 

「はぇ?」

 

「………」

 

 

 ―――ボキボキボキ。

 

 

「いぁ……ぎゃああああああああ!!!」

 

 

 デッドナイフ・エッジA(仮)の腕を愛が掴むと明らかに鳴ってはいけない音が響いた。

間違いなく、折れたな。

 

 

「お、おい!大丈夫か!?」

 

 

 俺を捕まえているエッジB(仮)がエッジAに対して尋ねるが本人はあまりに痛さに声が届いていない。

 

 

「……あのさ」

 

「な、なんだよ!」

 

「仲間の心配をするのはいいけど。自分の心配もした方がいいと思うぞ」

 

「はぁ!?何言って―――」

 

 

―――ブンッ、ゴキッ

 

 

「ぶふぁああああ!!」

 

 

 警告むなしく横顔に空中回し蹴りが直撃その衝撃で地面に顔を打ち付けた…南無。

 

 

「大丈夫ですか、ユウさん」

 

「あ、ああ」

 

 

 まあ、言うまでも無く蹴りを入れたのは澪だ。しかし、相変わらず凄い脚力してるな澪は…。

 

 

「さて、朝からテンションが上がる方じゃないが―――ゴミの始末はしなくちゃな。なぁ、澪?」

 

「そうですね、辻堂愛。バカはきっちりお掃除しておいた方が今後のためです」

 

 

 不良達を睨み付ける二人。ヤベェ、本気(マジ)で怖ぇ。

 

 

「てっ、てめぇら、全く躊躇なくやりやがって」

 

 

 そう言う不良に対して二人は溜息をついて言った。

 

 

「人質取って大人しくしろって………バカかお前ら?」

 

「正義の味方でも相手をしているつもりなのでしょうか」

 

「ひ………っ!!」

 

 

 二人の迫力に怯える不良達。

 

 

「一応礼儀だし、名乗っておこうか。稲村学園番長、そして湘南三大天のひとり、辻堂愛。不倒不敗の喧嘩狼―――だそうだ」

 

「私は海堂澪。広島…いえ、中国地方で敵なし、無敵無敗の喧嘩姫―――と言われていました」

 

「あれ、お前そんなに強かったの?」

 

「そうですよ、何なら今ここで喧嘩(ヤ)りますか?」

 

「いや、今はパス。その前にこいつら片づけないと」

 

「ああ、そうでしたね。それではっ―――」

 

「―――やるかっ!!」

 

「「ひぃぃぃぃぃ!?!?」」

 

 

ドゴォオオオーーーーーーーーンッッッ!!

 

 

 キラーン!キラーン!

 

 

 不良2名、星へと帰った。

 

 

「……合掌(-人-)」

 

 

 俺一人、空へと消えた不良達に手を合わせた。死んではいないと思うけど、まぁ一応…あ、救急車呼んどこ。

 

 

「出たー!愛さん77の殺し技のひとつ!ギャラクティカ昇竜拳!!」

 

「漫画なら見開き確定の大技だぜ!!」

 

 

 なんか、軍団員も盛り上がってるし。

 

 

「委員長、怪我は?」

 

「あ、はい。大丈夫です」

 

「ン……」

 

 

 顔が少し綻ぶ、愛。いつもこんな顔してればいいのに……と助けてくれた澪の頭をお礼がわりに撫でながら見ている。

 

 

「ひぃ……ひぃ……クソ、舐めやがって」

 

 

 ん?なんか、愛に腕を折られたエッジAが不穏な動きをしてやがる。要警戒だな、澪も気が付いたのか鋭い眼で見てるし。

 

 

「最速エッジを舐めるなあぁぁ!!」

 

 

 折れていない方の手にナイフを持ち替えて愛に襲いかかる。

 

その瞬間―――

 

 

 ドゴォォォオオーーーン!!

 

 

 キラーン!

 

 

 エッジAも昼間の星へと変わった。

 

 

「…ふむ、案外簡単に出来るもんだな」

 

 

 コキコキとギャラクティカ昇竜拳を放った手首を動かす。しかし、慣れない事すると反動がきて地味に腕が痛い…。

 

 

「あ…あれは、さっき愛さんが使った77の殺し技のひとつギャラクティカ昇竜拳!?」

 

「威力は低いがほとんど完璧にコピーしてやがる!?」

 

「何者だ、あいつは!?」

 

 

 エッジAを吹っ飛ばした俺に視線が集まったのは言うまでもない。そして、あまりに唐突な出来事に静まりかえる生徒達。愛すらも驚いていた。

 

当の俺は、どうやって誤魔化そうかと考えていた。

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