漕ぎ着けることが出来ました……
それではどうぞ!
「トランペット!ピッチ低い!」
「「「はい!」」」
いつもと同じ、部活の風景。
いや、正確にはいつもと同じでは無い。
「どうしたの高槻、最近調子悪いじゃない」
「……すみません」
先日の一件以来、どうにも調子が出ない。
改めて考えた。自分で自分がわからないんだ。
もはや、自分が何を言ってるのかさえ。
「すみません先生……今日はもう失礼します」
「お、おい由羅……!」
「良いわ、止めないであげて。
……ただし」
「……?」
「明日……遅くて今週中までに、吹っ切って
来なさい。
モヤモヤが晴れるまで、部活は貴方は休みよ」
「……はい、すみませんでした……」
はは……何やってんだ俺……
いろんなことがごちゃ混ぜになってら……
あいつらμ’sのこと、生徒会長のこと、
そして、今のこの部活のこと。
だからこそ、先生もそういう条件を
下したんだろう。
……なんとか、しなきゃな。
ーーーーーーーーーー
ふと気がつくと、俺は音ノ木坂学院の
近くまで来ていた。
自然に足をここに運んでいた。
何故かはわからない、けど……ここにきた
ということは、なにかヒントでも
あるのかもしれない。
「あれ……ゆうくん!?」
「穂乃果……?」
「どうしたのこんなところで?」
「あ、あぁ……ちょっとな」
俺の姿を視認した穂乃果が駆け寄ってくる。
その様子に海未とことりも気付いたようで
同じく駆け寄ってくる。
「由羅さん……どうしました?ひどく
落ち込んでいるようですが……」
「いや……何でもないよ
それより、皆ビラなんて配って何してんの?」
「ほら、前話したでしょ?
私達、この後ファーストライブやるんだ!」
あぁ…そういえば今日だったな。
穂乃果達の晴れ舞台……か。
「そうか……見に行きたいところだけど…」
「由羅君、来れないの?」
「いや……だって女子校だし。
その中に男子とかアウェーすぎて……」
そう、音ノ木坂学院は生粋の女子校。
その中に俺のような男子が入るのは
明らかにおかしい。場違いにも程がある。
「あ、でもなんとかなるかも!」
「こ、ことり……?」
「私ね、お母さんがここの理事長してるの。
だから、事情を説明すればいけるかなって」
「なるほど……その手がありましたね」
「お、おい……海未まで乗り気なのか……?」
正直、意外である。
こういうのは海未がストッパーになると
思っていたのだが……
「じゃあ、私お母さんに話つけてくるね!」
「行ってらっしゃーい!」
「はぁ……ホントにいいのかよ……?」
「むしろ、貴方は今まで私を支援してくれた
ではありませんか。
見る権利ぐらい、当然でしょう?」
「……そういうもんなのか?」
「そういうものです」
それから数分後、何かを持ってことりが
戻ってきたようだ。
「はい、由羅君
これをかけてれば問題ないよ♪」
「これは……?」
「これはね、外来の人や来賓の人が
かけるもの……っていえばわかるかな?」
「あー……なるほど」
確かに、理事長に話しゃどうにかなるわな。
今度お礼言わなければな。
「あ、もうすぐ時間!
ごめんゆうくん、先に講堂向かってるから!
海未ちゃん、ことりちゃん、いこ!」
「あっ……おい穂乃果!
俺は場所わかんね……って行っちまった」
どうしようか……ここに知り合いがいるわけ
でもないし……かと言って見ず知らずの
生徒さんに話しかけるのも気が引けるし……
「本格的に詰みだな……」
「何が詰みなのよ?」
「ヴぇぇあっ!?」
「な、なによ急に!脅かさないでよ!」
突然声をかけられ思わず変な声を
上げてしまった。
振り向くと、そこには……
「ま、真姫……?」
「そうよ、私よ。
にしても、なんでこんなとこにいるのよ?
貴方、吹奏楽は?」
「……色々事情があってな、
今日は休ませてもらってる」
「……そう」
……会話が切れちまった……
気まずい……!
「そ、そういや……そのチラシ
真姫もライブ見に行くのか?」
「え……?あっ……!これはその……!
別に気になるとかそういうんじゃなくて!」
それだけ必死に否定してると
むしろバレバレである。
「真姫、講堂の場所わかるか?」
「え、えぇ……まぁ」
「悪いけど案内してくれるか?
ここのことは良くわからないから……
それに、見に行くなら丁度いいだろ?」
「べ、別に私が見に行くわけじゃ……」
「真姫……頼む、案内だけでもいい
俺にあいつらを見守らせてくれ」
「……わかったわよ、ついてきなさい」
「……ありがとう、真姫」
ーーーーーーーーーー
「いよいよ……だね」
「はい……何だか、あっという間でした」
「うん……」
高坂穂乃果、園田海未、南ことりの三人は
控え室で準備をしていた。
これから、μ’sとしての初ライブ。
「穂乃果……?」
「あ……ううん、何でもないよ海未ちゃん
ただ……」
「不安なのか?穂乃果」
「ゆ、ゆうくん!?なんでココに!?」
「案内してもらってな、言っておきたい
事もあったしな」
本来ここにはいない、客席にいるはずの
由羅が、そこにはいた。
「言いたい……こと?」
「あぁ……俺が言ったこと、覚えてるか?
……まず一つ、海未!」
「えっ……あ……恥は捨てる!」
「よろしい、二つ!ことり!」
「臆せず、焦らず!」
「そうだ……さいごに穂乃果、三つ!」
「皆で、楽しむ!」
「……それでいい、わかってるならな。
もう一つ、俺から……初めてのライブだ、
まず頭に入れて欲しいのは、最初から
客が沢山なんて思うな。
俺の知り合いがバンドを結成してからの
初ライブ、客数はゼロに近かったんだ」
「ゼロ……」
「それこそ、ほんの2、3人でな。
それにショックをうけたそいつは、挫折した」
「……」
「だけどお前たちならやれる!
どんな苦境でも、立ち上がれると信じてる!」
息をつき、もう一度口を開く。
これは、俺の願いを込めて。
「俺は、何があろうとμ’sのファン一号だ!
たとえ誰も見向きもしなくても……
ほんの誰かが見ていてくれたなら、それは
そいつにとっての立派なアイドルだ。
そして俺は、いつまでも…お前達のファン
であり続ける!あり続けたい!」
「ゆうくん……」
「だから、何があっても……
客に、笑顔を分けてあげてくれ」
「うん……ありがとう由羅君!」
「なんだか……肩の力が抜けた気がします」
「頑張るよ……私たち。
見てくれる人に、精一杯の私達を!」
「……それでいい、頑張れよ」
ーーーーーーーーーー
side穂乃果
「もうすぐだね……」
「はい……」
準備は整った……あとは、成し遂げるだけ。
だけど……ちょっぴり不安。
「海未ちゃん、ことりちゃん……
ありがとう。ここまで付き合ってくれて」
「……何を言ってるのですか?」
「え……?」
「その言葉は、❮全て❯が終わってからだよ
穂乃果ちゃん♪」
「……うん!」
運命の、幕が上がる。
だけど、やっぱり現実というのは残酷で。
私達の目の前に広がるそれが、その事実を
色濃く表している。
「っ……」
「い……ない……?」
正確には、客席の後ろにいる…ゆうくんだけ。
「そう……だよね…………
現実は、そんなに甘くない!」
「穂乃果(ちゃん)……」
そんな時。
「じゃあ、諦めるか?」
見知った顔と、良く聞いた声。
「ゆうくん……?」
「俺、言ったよな?もう忘れたか?
確かに初めから成功するのはほんの一握りだ!
それがどうした!?初めからがダメなら
後から追い上げて行くんじゃダメなのか?
今すぐここで結果を出せとでも言われたか?
そうじゃないんだろ?まだ猶予は少なからず
残ってんだろ?だったら……!
至らないなら……その分努力すりゃいい!
くよくよする暇があるなら……1人でも多く
のひとに笑顔を、楽しさを届けろ!
それに…………」
騒々しい足音とともに、二人の少女が
講堂に入ってくる
「あ、あれ……ライブ……終わっちゃった?」
「観客なら、来たみたいだぜ?」
「……ゆうくん……
…………歌おう、二人とも」
「穂乃果(ちゃん)……!」
そうして、μ’sの初ステージが幕を開ける。
旅立ち、始まりを予想させるピアノの
メロディ。今まで培ってきた努力を
パワーとして爆発させるかのような
力強いギターとベースの音。
その曲は……駆け出しの三人、これからの
躍進を思わせる曲。タイトルは……
❮START:DASH!!❯
ーーーーーーーーーー
side由羅
俺は、今目の前に起こっている光景に
心を奪われそうになっていた。
いや、一瞬でも奪われていた。
「これが……あいつらの…」
世辞にも、ダンスも歌も一級品とは
言えないかもしれない。
だけど、穂乃果たちの見せるこの景色に
何故か俺は心が踊った。
あぁ、なんていい顔してやがる。
多分ここまで漕ぎつけるのに、何度も
壁にぶち当たった事だろう。
納得出来ない事、理不尽な事だって
あったかもしれない。
だけど、それを全てエネルギーに変えて
今穂乃果たちは全力で歌い、全力で踊る。
「……頑張れ……!」
ふと気がつくと、そんなことを呟いてた。
他のものにはない、不思議な魅力を
感じさせていた。
俺は確信した。
μ’sは、どこまでも大きくなる。
根拠なんてない、だけど俺はそう確信していた
ーーーーーーーーーー
「はぁ……はぁ……」
いつの間にか、曲も終わっていたようだ。
そんな中、見覚えのある姿が客席から
ステージへと近づいていく。
絢瀬絵里会長だ。
「…………どうするつもり?」
「……続けます!」
「……何故か、聞いてもいいかしら」
怪訝そうに穂乃果に聞く絵里さん。
「……やりたいからです。
このまま誰も見向きもしないかもしれない。
応援なんて全然もらえないかもしれない。
だけど、私の今の…楽しい思いや、
お客さんに届けたい笑顔……色んな物が
詰まった、この思いを!
……私達、いつかここを満員にして見せます!!」
ああ、十分だ。
この思いを聞けただけで、俺は十分だ。
それに、自然と俺の憑き物も取れたみたいだ。
穂乃果のおかげかな?
そう思いながら、俺は講堂をでた。
「完敗からのスタート、か」
「大丈夫っすよ、アイツらなら」
「もういいの?由羅君。
あの子達に挨拶せんでも」
「えぇ、あの顔見れば分かります。
アイツらなら、どんな事も乗り越えられる」
「……信頼してるんね」
「それもありますけど……感謝もしてます。
アイツらの姿見てたら、こんなとこで
腐ってなんかられないって、そう思った」
ようやく見つけた。
俺のやりたいこと。
俺の、俺達の演奏で聞く人みんなを……
最高の気分にしたい。
最高の気分、人によっては色々違うだろう。
楽しいとか、ワクワクしたとか、
人によってはそれは様々だ。
だけど、その気持ちを目覚めさせるためには
まず俺達がそういう気持ちにならなきゃ
いけない。
「由羅君も、大丈夫そうやね」
「えぇ、おかげさまで」
「ねえ、由羅君」
「……なんすか?」
「…………ウチにも、聴かせてね。最高の演奏」
「……任せて下さい!」
大丈夫、俺達なら……やれるはずさ。
ちょっと今回は長めでしたね……
という訳で次回、まきりんぱなと同時に
由羅君にも急展開が!?
(作者が書けないフラグ)