それではお楽しみください!
ーー神田明神
「…………」
俺は今、神田明神に来ている。
理由としては、大会の必勝祈願……といったところだろうか。
と言っても、俺は毎年何かの演奏会前にはここでのお参りは
欠かさない。
姉ちゃんや父さん達とは最早常連とも言える間隔で来ていた。
だけど、父さんの海外出張が多くなってからは。
みんな揃ってのお参りは無くなった。せいぜい俺一人だ。
だから今日も俺は、相棒の……
いや、母さんの形見であるこのトランペットを片手にここに来ている。
パン……パン……
(……全国大会出場……!
いや、全国金賞を……!)
俺の願いはたった一つ。
全国大会に出て、金賞を取ること。
これだけが、今俺と他の誰かを繋げる唯一のもの。
これなくしては、俺に生きる意味は無いといっても
過言ではない。
「今日は部活午後からだし……ちょっと練習してこうかな?」
使わせてもらいますと一言、独り言みたいに呟いて
相棒を構える。
さぁ、今日も練習をはじめよう。
ーーーーーーーーーー
side??
「あれ?楽器の音……?」
いつもはしない音。
だけど凄くキレイな、惹き込まれるような音に
ウチは聞き惚れていた。
「境内で吹いてる……」
境内でトランペットを吹く一人の少年を見つける。
見たところウチよりは年下みたいやけど……
「あの子達の他にも、ここを使う人もいるんやね……」
何を思ったのか、ウチはその少年に気がついたら
声を掛けていた。
「ねぇ君」
「っ!?」
突然後ろから声を掛けたからか、ビクッとして
慌てて振り向く男の子。
「見ないかおやね?どこの子?」
「その……丘野月高等学校の者で……
すみません、勝手にこんな……」
「ええんよ、ウチもキミの音に聞き惚れてたから♪」
バツが悪そうにうつむく少年。
この子……結構童顔なんやね。
「……キミ、名前は?」
「俺ですか?……えと、高槻由羅
丘野月高等学校の二年です」
「由羅君……ね、うん、覚えた
ウチは東條希、音乃木坂学院の三年生や
よろしくね、由羅君♪」
「はい、よろしくおねがいします……!」
「それでだけど……使いたかったら…なんだけど」
「……何でしょう?」
「キミさえよければ、たまにでいいから
またここに来て…そのトランペット、聞かせてぇな?」
「……は、はい……!ぜひとも……!
ここ、自然と落ち着きますし、吹いててスカッとするんです」
ダメもとやったけど…OK貰えちゃった♪
もしかしたら、あの子達とも時間が被るかも知れないけど
まぁ、いっか♪
ーーーーーーーーーー
「よし、皆楽譜は行き渡ったかな?」
「「「はい」」」
「えーと、今年のコンクールですが
課題曲はⅡ番、❮勇気のトビラ❯です!」
ふむ……今年はマーチで攻めるのか……
確かに去年は難しい曲で結果自分らの首を締める
結果で、ギリギリで枠を勝ち取れたんだったっけ。
これくらいなら、自分らも無理なく曲に集中
できそうだし、課題曲に対する時間は割と去年よりか
少なく済むかもしれない。その分を自由曲に
当てることだってできるわけだからな。
「では、今から2、3回参考音源を流すので
パートの相談もしつつ、曲のイメージを
作っておいてください」
マーチともなれば、中低音は結構重要な
ポジションになってくるかな……?
マーチ……行進曲には高い確率で中低音の
メロディーが入ってくる。ここのクオリティが
曲全体のクオリティを左右すると言っても過言ではない。
そういっている間に、一回目が再生し終えたようだ。
「…………ふむ……」
「由羅、何かかんがえてんの?」
「先輩……
まぁ……このマーチなんですが……
そこまでトランペットは難しく感じない
ので、今回許可さえ出れば人数の割合の少ない
トロンボーンもしくはユーフォニアムのパート
に回ろうかなと考えています」
「なるほどねぇ……ま、確かにウチは
50人満たないし、どうしてもそういう問題
がでてくるわよね……」
「まぁ、先生と相談しつつ考えてみますよ」
「えぇ、わかったわ。
他の同パートの子にも一応話しておくわ
でも、忘れないでね
このトランペットパートのリーダーは
あなたなのだから」
「はい、ありがとうございます……」
ーーーーーーーーーー
部活が終わり、気が付くと
俺は神田明神に足を運んでいた。
しかし、人の声が聞こえる。
もうすでに先客がいるのだろうか?
「1.2.3.4.5.6.7.8……」
誰かのカウントする声の後。
一通り終わったのか聞きなれた声がする。
「うぅ……疲れたぁ……」
「では、今日はここまでにしましょうか」
「そうだね…」
間違いない、穂乃果の声だ。
他にも2人分の声が聞こえる……
いつも一緒にいるあの2人だろうか?
となると、穂乃果達のスクールアイドル
としての練習だったのか。
邪魔をしては悪いと思い、今日は
帰ろうと引き返そうとした刹那……
「あっ、ゆうくん!」
バレた。
気配は完璧に消したはずなのに。
観念して、俺は穂乃果達のまえに
姿を現す。
「……なんで分かったんだよ」
「だって、そのケース目立つもん♪
引き返そうとしたときにみえたし」
改めて見ると、結構派手な見た目
してるなこれ……
こんど地味めなケース買おうかな……
「あの、穂乃果……この人は……?」
隣に来ていた黒(青?)の長髪の
大和撫子という言葉の似合いそうな子
が穂乃果に問う。
「覚えてないの?
高槻由羅君だよ?」
「実際会ったといっても
一度や二度だけだから……普通は
覚えてないぞ…」
「すみません……」
「ごめんなさい……」
「謝るこたないさ。
改めて初対面ってことで、自己紹介
でもしとこうか。
俺は高槻由羅、丘野月高等学校の
吹奏楽部所属だ。楽器はトランペット。
君らと同じ高校二年生だよ、よろしく」
「よ、よろしくおねがいします……」
「よろしくね、由羅君♪」
割愛するが、
大和撫子な方は園田海未、
ほんわかでおっとり系の子は南ことり
というようだ。
「そうだ、折角だ。
穂乃果達も聴いてってくれよ、
俺のトランペット」
「おぉ〜!ゆうくんの生演奏!」
「ことりも聴きたいな♪」
「私も……」
「となれば、そうだな……何を吹こうか…」
「ゆうくんの好きなものでいいよ?」
「それが一番困るのでは……?」
「だって、ゆうくんのトランペット
いつ聞いても飽きないし!♪」
「……そうだな……ちとコアで
マイナーだが、FF9って言うゲームの
曲で……❮いつか帰るところ❯ってんだ
まぁ、とにかく曲だけ聴いてってくれ」
そのご、吹き終えて気がつけば
三人とも何故か感無量と言った感じ
で泣いていた。
そんな演奏酷かったのだろうか……?
作者はff9が大好きです