私とメアりん   作:銀の鈴

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誰もいないよね? |・ω・`)ソォーッ…

ここに置いておこう ( ๑´•ω•)੭_ ソット

[壁])≡サッ!!


第10話「時計塔の奇才」

──ウェイバー・ベルベット。

 

魔術師としては三代目となるが、ベルベット家で魔術師として本格的に学び始めたのは彼が初めてであった。

 

それ故に、ウェイバー・ベルベットが持つ魔術回路と魔術刻印は貧弱なものだった。

 

本来であれば、魔術の総本山ともいえる時計塔において、彼の評価は限りなく低いものになったであろう。

 

だが、現在の時計塔にウェイバー・ベルベットを侮る者などは一人として存在しなかった。

 

『家系の古さと才能の絶対性』を否定する理論。

 

彼が提唱したのは、それまでの魔術師の常識を完全に否定するものだった。

 

その突拍子もない考えをまとめた論文が、ケイネス・エルメロイ・アーチボルトの目に止まることになる。

 

それまで天才の名を欲しいままにしていたケイネスこそが、この魔術師の常識を体現した存在だった。

 

魔術師の名門・アーチボルト家の九代目頭首にして、「降霊学科」の一級講師であり、鉱石科の君主(ロード)

 

多種多様な魔術において稀代の才能を誇る現代魔術師界における真の天才。

 

そんな魔術の天才であったケイネスが、当時は平凡で無名な生徒に過ぎなかったウェイバー・ベルベットが書き上げた論文を絶賛した。

 

「私は魔術師の才能が家系の古さのみに依るなどといった最近の風潮は如何なものかと常々思っていた。

 

実際に周りを見渡してみろ、血筋しか誇れるものがない無能共が掃いて捨てるほどおろう。

 

いや、別に私は積み重ねた血の歴史を否定する気はない。世代を重ねれば魔術回路の本数が多くなり、魔術刻印で継承される魔術の質も高くなる傾向があることは歴然とした事実だからね。

 

だがね、魔術師本人の才能まで同じだとは私は思わぬ。

 

考えてもみたまえ、どれ程の名門の家系でも初代はただの人だったのだ。我が栄光あるアーチボルト家もそれは同じだ。

 

ただの人だった初代が、己の才能に気づき魔術師の道を歩み出した。

 

ならば、数百年前の初代は歴史なき家系の無能者として蔑まれたのだろうか?

 

いいや、決してそんな事はない。

 

初代はその一代で時計塔にて確固たる地位を築いた偉大なる魔術師であった。

 

そこには血筋に頼るものなど一片たりともなかったことはご理解いただけるだろう。

 

私がウェイバー・ベルベット君の論文に注目したのは以上のことが理由であり、彼の理論を否定することは、我が偉大なるアーチボルト家の初代を否定することと同義であると思っていただきたい」

 

ケイネスが、ウェイバーの論文を絶賛した理由は誰でも納得するものだった。

 

家系が積み重ねることによって力を増す魔術回路と魔術刻印は当然ながら認める。

 

だが、魔術師本人の才能は本人のものであり、そこに家系は関係ない。

 

考えてみれば当たり前のことだ。しかし、誰もその事に気付けなかった。

 

魔術師の常識に凝り固まった思考からは導き出せなかったのだ。それは魔術の天才であったケイネスですら疑問に思うだけでウェイバーのように明確な理論に出来なかった。

 

「私が思うにウェイバー君は魔術の天才ではないのだろう。だが彼は魔術師界に新たな旋風を巻き起こす “奇才” であることに間違いはないだろうね」

 

客観的な事実として “ウェイバー・ベルベット” は魔術の才能に乏しかった。

 

だが、魔術の天才であるケイネスが、ウェイバーに期待したのはそんな個人的な才能如きが関わる次元の話ではなかった。

 

魔術師の常識に囚われない破天荒とも思えるほどの自由な発想。そんな思考の巨人ともいえる彼が徐々に衰退していく魔術師界の現状を打破する切っ掛けとなることを期待したのだ。

 

“魔術の天才” が “魔術の奇才” に託したのは魔術師界の未来であったのだ。

 

(――うむ、あのリース家次期当主と戦うリスクとの等価交換には遠く及ばないが、ウェイバー君の名誉は可能な限り上げさせてもらったよ。あとは安心して蛮勇を振るい逝くと良い。アデュー、ウェイバー君)

 

ウェイバーに聖杯戦争を押し付けた見返りとして、ケイネスは彼の評価を上げる為に頑張った。

 

その頑張りは報われ、時計塔におけるウェイバーの評価は天元突破していた。

 

きっとこれでウェイバーも心安らかに逝けるだろうとケイネスはご満悦だ。

 

そして何故か最後はフランス語で別れを告げるケイネスであった。

 

 

 

 

「ウムム、王様と騎士のどちらを召喚すべきだろう?」

 

倉庫街の騒乱から遡ること数日、ウェイバーは悩んでいた。

 

尊敬する恩師から譲られた英霊を喚ぶための触媒が二つあったからだ。

 

「知名度を考えれば王様一択だけど、戦力的に考えれば普通は騎士だよな」

 

知名度によるステータス補正があるとはいえ、ウェイバーには王様が武力を持っているとは思えなかった。

 

たとえば、騎士王と名高いアーサー王ならば個人の武勇も優れているだろう。けれど、ウェイバーが持つ触媒で喚べる王様の逸話には武勇に優れていたというものはなかったはずだ。

 

ステータス頼りの素人サーヴァントを相棒として聖杯戦争に勝つ抜くことは如何にウェイバーをもってしても困難極まるだろう。

 

生前が戦に明け暮れた王ならば、確かに戦略・戦術には秀でているだろう。だが、ケイネスに見出されてからその才能を急激に開花させたウェイバーの柔軟な価値観と思考力は歴戦の王にも引けを取らない。と、ウェイバー自身は確信していた。

 

「日本の諺にも “船頭多くして船山登る” ってのがあるもんな」

 

この諺の意味するのは『優秀な指導者が多くいればその力を結集することによって、通常ならば不可能な事でも可能とするたとえ』では勿論なく『指図する人間が多いために統一がとれず、 見当違いの方向に物事が進んでしまうたとえ』であった。

 

想像すれば簡単に分かることだった。王という地位にあったサーヴァントが、マスターとはいえ年若い魔術師の指示を素直に聞くだろうか? うむ、聞くわけがない。

 

つまり、そういうことだ。

 

「決めた、マスターに忠実な騎士にしよう」

 

いざ決断すればウェイバーの動きは速かった。

 

旅行カバンをゴソゴソと漁り取り出した触媒を予め地面に描いていた魔法陣の中心に置くと召喚の呪文を唱える。

 

魔法陣が光り輝くと莫大な魔力が溢れ出す。

 

「さあ、僕のサーヴァントよ! その姿を見せろ!」

 

大量の魔力を消費する際の虚脱感に耐えながらもウェイバーは裂帛の気合を発する。

 

そのウェイバーの呼び声に応える声が光り輝く魔法陣の中心から聞こえてきた。

 

「サーヴァント、アヴェンジャー。召喚に応じ参上しました。……どうしました、その顔は? さ、契約書です」

 

「え、女性…?」

 

姿を現したサーヴァントはウェイバーの想定とは違い女性だった。

 

尊敬する恩師から譲られた騎士の触媒は、フィオナ騎士団のディルムッド・オディナのものだ。

 

つまり、その触媒によって召喚された目の前のサーヴァントは間違いなくディルムッド・オディナだということになる。

 

(ディルムッド・オディナ、輝く貌の異名を持つ騎士がまさか女性だったなんて……いや、伝説の彼が男装の麗人だったと考えれば女性を魅了したという逸話も納得できるな)

 

たしかこの国でも男装の麗人(例:タカラジェンヌ)は女性に人気だもんな、とウェイバーの柔軟な思考は、この様な咄嗟の状況にも関わらず見事な対応力をみせた。

 

「これからよろしく、君には期待しているよ。ディルムッド・オディナ」

 

召喚したサーヴァントに慌てふためく姿など見せられない。ウェイバーはマスターとしての矜持をもって冷静な対応をしてみせる。渾身の爽やかな笑みを浮かべ、握手まで求める余裕付きだ。

 

「はぁっ!? 何を言っているのかしら、このポンコツは。私はそんな名前ではないわよ。私はジャンヌ、ジャンヌ・ダルク(オルタ)よ」

 

まさかの否定にウェイバーの笑顔が固まった。

 

(ま、まだだ! まだ終わらないぞ!)

 

想定外すぎる事態ではあったが、ウェイバーの柔軟な思考にはまだ余力があった。

 

(ジャンヌ・ダルクといえば救国の聖女じゃないか! むしろディルムッド・オディナなんてマイナーな英霊より当たりじゃないか!)

 

聖女だと王様より武力が劣りそうだな、という考えはこの際忘れる事にした。ウェイバーは柔軟な思考で聖女推しを決めた。

 

「それはすまなかった。召喚の触媒がディルムッドのものだったから勘違いをしてしまったよ。でも、ジャンヌ・ダルクが味方なら百万の軍勢よりも心強いよ」

 

固まった笑顔を強い意志の力で溶かしたウェイバーは、朗らかな態度でジャンヌに歓迎の意を表した。

 

「あぁ、そういう事ね。それなら仕方ありませんね。確かに触媒は私のものではありませんでしたから、名前を間違えた非礼は許しましょう」

 

名前を間違えられて不機嫌な気配を発していたジャンヌだったが、ウェイバーの言葉に納得して態度を軟化させた。

 

聖女とは思えないほど悪くなっていた目つきもマシになり、普通に美人な女性といえるまでに回復していた。

 

「謝罪を受け入れてくれてありがとう。それにしても、どうして君は僕の召喚に応えてくれたんだい?」

 

ジャンヌの様子に安心したウェイバーは疑問に思っていたことを質問した。

 

「それなら話は簡単よ、貴方が用意した触媒は偽物だったのよ。だから聖女の偽物である私に召喚の声が届いたわけ。私が召喚に応じたのは――ただの気まぐれね」

 

恩師に譲られた触媒が偽物だった。それはそれでショックではあったが、魔力を帯びた魔術礼装などと違い、過去の英雄の遺物など本物と偽物の区別など簡単にはつかないだろう。恩師もまた偽物を掴ませられた被害者だと思えばショックも和らぐというものだ。

 

いや、今はそんな些事はどうでもいい。ウェイバーの類稀な才能である柔軟な思考は現状を正確に把握した。

 

そう、彼女はこう言ったのだ。

 

──私は聖女の偽物よ。

 

柔軟な思考の天才であるウェイバーの思考が止まる。

 

「あら、固まったりしてどうしたのかしら? ほら、動きなさいよ。このヘッポコマスター」

 

ウェイバーの苦難の道はこうして始まった。

 

 




前回の更新から気がつくと三年近くが経っていました。自分でもビックリです。今回でやっとサーヴァントが揃ったわけですが、最後の一名は三年前ならディルムッドの予定でしたが、この三年間で思うところがあり変更しました……だって、邪ンヌは可愛いよね!
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