私とメアりん   作:銀の鈴

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メアりんの出番がない…。


第11話「呆気ない最後」

「──まさかこの場面で僕と代わるだなんて、情けなくて泣けてきそうだよ」

 

大人から子供へと形態変化を遂げたサーヴァントを、桜は物陰から見つめていた。

 

「クーちゃん。あのサーヴァント、子供になっちゃったね」

 

「ああ、だが油断はするなよ。あいつから感じる王気は衰えるどころか逆に…」

 

「うん、これはチャンスだよね。クーちゃん、全力全開で宝具をぶっ放して!」

 

「……まあ、いいか。即断即決は嫌いじゃねえからな」

 

自分の助言を完全に無視したマスターにバーサーカーは一瞬だけ微妙な顔を見せたが、すぐに不敵な笑みを見せる。

 

「見せてやるよ、英雄の全力ってやつをな!」

 

クー・フーリン――ケルト神話における半神半人の大英雄。

 

サーヴァントとして現界するのなら魔槍ゲイ・ボルクの担い手ゆえにランサーのクラスが妥当なのかもしれない。

 

だが、彼の伝説にはあった。

 

──普段は美しい容貌だが、その戦意が高まり興奮が頂点に達すると、英雄の光を頭から発し、全身の筋肉は膨れ上がり怪物のように変貌したと。

 

「うん! やっちゃえ、バーサーカー(クーちゃん)!」

 

桜はその影に溜め込んだ膨大な魔力を惜しげもなくバーサーカーに注ぎ込む。

 

「グォオオオオオッ!!」

 

際限なく送り込まれる魔力にバーサーカーの筋肉は膨れ上がり、その全身からは凶悪な棘が生える。

 

隠しようもないその咆哮に、倉庫街に集まっていたサーヴァント達の注目を浴びるが、バーサーカーはそんなものは歯牙にも掛けずに駆け出した――凶悪なまでの気配を放つ魔槍をショタなギルガメッシュに向けながら。

 

 

 

 

「ふうん。意外と良い部屋ですね。思ったよりも甲斐性があるのですね、マスターの事を見直しました」

 

「いや、ジャンヌに気に入ってもらえたのなら嬉しいよ」

 

再起動したウェイバーは、予め予約しておいた高級ホテルへとジャンヌを連れて来ていた。

 

聖女の偽物と聞いた当初こそ混乱したウェイバーだったが、彼の目の前にいるジャンヌの能力は間違いなく優れている。

 

その事に気付いたウェイバーは、すぐさま冷静さを取り戻した。

 

救国の聖女、ジャンヌ・ダルク。

 

彼女は間違いなく実在した人物ではあるが、その偉大なる功績と、その悲劇的な最後によって様々な伝説が残っている。

 

自分が呼び出したジャンヌは実在した彼女ではなく、様々な伝説に伝えられる架空のジャンヌの内の一人なのだろうとウェイバーは結論づけた。

 

考えてもみればジャンヌは、その命をかけて救った母国に裏切られた悲劇の人だ。

 

自分を裏切った母国へのアヴェンジャー(復讐者)としての伝説があっても不思議じゃないだろうと、ウェイバーは納得した。

 

寧ろウェイバーとしては、母国に裏切られアヴェンジャーとなったジャンヌに肩入れしたと言っても過言ではない。

 

ただの村娘であったジャンヌが、神の声を聞いたが故にその命を燃やし尽くして救国の為に戦い抜いた。

 

その結末が……。

 

良くも悪くも小市民なウェイバーには到底受け入れがたい結末だった。

 

アヴェンジャーとなったジャンヌの事情を察したウェイバーは義憤に燃えた。

 

基本的に外道な魔術師としては余りにも未熟で純粋過ぎるウェイバーのその反応に――ジャンヌ・ダルク・オルタは、心底面白そうに笑ってしまった。

 

自分の怒りを笑われて憮然としていたウェイバーに彼女は告げる。

 

「──そうね、所詮は偽物に過ぎないこの身なれど……マスター、貴方の敵を燃やす黒き炎となりましょう。精々、上手くこの黒い炎を使いこなしてみせなさい」

 

その苦笑とも違う、何とも表現できない笑みを浮かべながら告げる彼女の表情に見惚れながらも、ウェイバーは彼女の言葉に応える。

 

「いいだろう。君が座に帰るときに胸を張って、この僕のサーヴァントになれて良かったと思わせてみせるよ」

 

その生意気すぎる返答に、ジャンヌ・ダルク・オルタは苦笑ではなく、そして何とも表現出来ない笑みとも違う、もっと別な笑顔を見せた。

 

 

 

 

「――え?」

 

自分の胸に突き刺さった魔槍に、ショタなギルガメッシュは不思議そうな顔をみせた。

 

「悪いな坊主。お前に恨みはないが、これも戦場の習いゆえに加減は無しだ。絶望に挑むがいい」

 

バーサーカーは、その手に持つ魔槍に魔力を送り込む。

 

「――噛み砕く死牙の獣(クリード・コインヘン)

 

その理不尽な最後に、最古の英雄王は末期の言葉を残せずに光となり消えていった。

 

 

突然現れたバーサーカーの手により光となって消えたショタなサーヴァント。

 

「引くわよ、セイバー!」

 

「分かりました!」

 

最初に動き出したのはセイバー組だった。

 

セイバーのマスターと思しき女性の素早い決断により、セイバーは女性を抱き上げると脱兎の如くその場を後にした。

 

凄まじい速さで小さくなっていくその後姿を眺めながらダイアナは肩をすくめた。

 

「ふむ、興が削がれたな。今夜はここまでとしよう」

 

虚空に向かって語りかけるダイアナ。

 

その言葉を合図にしてダイアナと雁夜、そしてライダーの足元に転移の魔法陣が現れる。

 

転移する一瞬前にダイアナは小さく言葉を発した。

 

「……桜、隠れているつもりだろうけどバレバレだぞ。私は別に気にしていないが、メアりんのお説教は覚悟しておいた方がいいぞ」

 

その言葉に頭を抱える桜。

 

そんなマスターの姿を目にしたバーサーカーは呟く。

 

「このとんでもないお嬢ちゃんが頭を抱えるほどの相手か……クク、これから面白くなりそうだな」

 

ニヤけるバーサーカーと頭を抱えるそのマスター。

 

そんな二人を、遅れて倉庫街にやって来た二人組が物陰から見つめていた。

 

「なにあれ、バーサーカーのくせして理性があるなんて反則じゃない!?」

 

「うん、ステータス的にはジャンヌを上回っているよ。これは戦略を練り直す必要があるみたいだね」

 

圧倒的な威圧感を放つバーサーカーを前にして気後れしかけたジャンヌだったが、あくまでも冷静な己のマスターの姿に冷静さを取り戻した。

 

「へえ、言葉の割には余裕がありそうね。何か策があるのかしら?」

 

「フフ、そうだね。サーヴァントの性能の違いが戦力の決定的な違いじゃないと教えてあげるよ」

 

あくまでも不敵な笑みを浮かべるウェイバーにジャンヌは頼もしさを感じた。

 

「ふうん、それなら貴方のお手並み拝見といこうじゃない」

 

「ああ、期待してくれて構わないよ」

 

全く根拠のない自信に満ち溢れたウェイバーの姿は──少なくともジャンヌにとってはとても頼り甲斐が感じられた。

 




やっと序盤が終わった……そんな感じです。
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