Blood-G   作:Рей Самар

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コウタとか諸々が出始める頃です。


第1部隊

「暇だ..」

 

エントランスで呟く影が一人。

その隣にも、彼の二歳ほど下であろう少年が座っている。

 

「なぁ、ガム食べる?」

「ん...?

あぁ、せっかくだし貰おうかな」

「あ...さっき食べたのが最後だったみたい、ごめんごめん」

「そう...

えっと、名前は?」

「俺?

俺の名前は『藤木 コウタ』

コウタでいいぜ、お前は?」

「『霞 レンタ』

好きなように呼んでくれ」

「じゃあレンタでいっか。

なぁ、レンタも神機適合試験を受けたんだろ?

何受けたんだ?」

「俺は新型神機とかいうの受けたんだ。

あれすっごく痛いな」

「し、新型!?

お前新型使いなのか!

くぅ〜...羨ましいなぁ!

滅茶苦茶カッコイイじゃんか!」

「そ、そうか?」

「そうだよ!

だって前線に立って敵を倒したり、逆に後ろに立ってみんなを援護したりとなんでもできるじゃんか!

それって滅茶苦茶カッコイイよ!」

「お、おう...

ありがとな、ちょっと気が楽になったよ。

神機使いになったばかりだから、緊張しててさ」

「俺も緊張したよー。

急にスピーカー越しに命令されてさ。

『今日から君もゴッドイーターだー』とか言って」

「そんな言い方はしてなかったと思うけどなぁ...」

 

レンタが苦笑いしながらコウタに笑いかけると、コウタはさらに大袈裟に身振り手振りを加えながら神機適合試験の再現を続ける。

中には思わず吹き出してしまうようなモノマネもあり、出会ってまだ数分といった関係だが、中々に関係は良好になれたようだ。

...そんな楽しい談笑の中に向かう影が一つ。

その影は、レンタとコウタの座っているソファーも前で立ち止まり、こう話しかけた。

 

「立て」

 

高圧的な態度から察するに、恐らく...否、間違いなく自分たちの上官に当たる人物であることを、二人は直感で理解した。

スラリと伸びた黒髪、大胆にも開けた胸元、手に持っているバインダー...世が世なら、ソッチの仕事でも十分活躍できそうだなと、レンタは呑気に考えていた。

 

「立て、っと言っている」

「は、はい!」

 

コウタが勢いよく立ち上がり、ピシリと音が鳴りそうなほど背筋を正す。

レンタはあくまでも普通に立ち上がり、同じく姿勢を正す。

その様子を見て、目の前の女性は満足そうな顔をし、こう続けた。

 

「今日からお前達の担当教官となる『雨宮 ツバキ』だ。

手加減するつもりはない、覚悟しておけ」

 

予想通り、担当の上官だったらしい。

コウタは既に冷や汗を流し、レンタは少し苦手なタイプのせいもあってか、小さくため息を吐いた。

 

「なんだ、霞。

何かあるなら言ったらどうだ?」

「いえ...これから神機使いなんだなと感慨深くなってただけですよ、上官殿」

「...まぁいい。

神機使い、と言ったがまだまだお前達は新米だ。

実戦に出すにも早すぎる。

それにまずは適合試験を受けたことによる身体の異常が無いかを確かめるメディカルチェックが待っている。

その後は命令があるまで待機だな。

まずは霞 レンタ、十二○○までにサカキ博士の研究室へ向かうように。

もう時間が無いぞ、早めに向かえ」

「了解です。

じゃあな、コウタ」

「おう!

また後で話そうぜー!」

 

そう言って無邪気に手を振るコウタを見て、良い友人になれそうだなと、少しだけ頬を緩めたレンタが居たとか居なかったとか。

 

.........

......

...

 

「失礼します」

「お、よく来たね新型くん!」

「どうも。

えっと、サカキ博士ですよね?」

「ああ。

そのままサカキ博士と呼んでくれて構わないよ。

ヨハン、君も挨拶したらどうだい?」

「ああ。

私はこの極東支部の支部長である『ヨハネス・フォン・シックザール』だ。

神機適合試験で話したばっかだったな、霞くん?」

「は、はい...

先ほどはどうも...」

「ふふ、先程の事を考えているのか?

その点ならもういいことだ、緊張のせいで先走った行為、とも取れなくもないからね。

さて、私は戻るが、サカキ博士はしっかりやってくれよ」

「了解。

それじゃあ新型くん、そこもベッドに横になって。

そのまま眠っちゃってもいいからね、目が覚めた時にはもう自室にいるよ」

 

促されるまま、レンタは横になる。

最初は眠気に逆らってはいたものの、あまりに長すぎるメディカルチェックにとうとう耐えきれず、すっかり重くなった目蓋を閉じた。

 

.........

......

...

 

「ん...」

 

レンタが目を覚ますと、そこは既に自室と思われる場所だった。

必要最低限の家具に、ターミナルと呼ばれる大きな媒体が設置されている。

メディカルチェックの影響か、暫くは横になってボーッとしていたが、暫く経った頃に部屋のドアがノックされた。

 

「誰ですか?」

「よっ!

コウタだけど、入っていいか?」

「なんだ、コウタか。

入れよ」

「おっじゃましまーす...

うぉ、やっぱなんもないなー...」

 

コウタがキョロキョロとレンタの部屋を見回し、近くに置いてあったソファーに腰掛ける。

レンタもそれに習い腰掛けようとするが、何か飲み物があった方がいいかと考え、冷蔵庫を漁る。

...が、中には簡単な軽食と天然水が置いてあるのみで、おおよそ談笑するには物足りないものだった。

 

「うーん、やっぱレンタの部屋も何もないかー...」

「どういうことだ?」

「いや、俺の部屋も同じような感じだったんだけどさ、レンタって新型じゃん?

だからちょっとは良いもの置いてあるかなー、って思ったんだけど...

やっぱ新人なんてこんなもんか」

「そりゃそうだろ。

何か自販機で買ってこようか?」

「うーん、いいよ。

起きたばっかだろ?」

「なんでわかるんだ?」

「寝癖ついてるし」

 

コウタに指摘され、慌てて髪を整え始めるレンタ。

その急ぎっぷりに思わず乙女かとツッコむコウタ。

 

何もないというのはやはり寂しいということで、結局自販機で飲み物を買い、それを飲みながら談笑をする二人。

今までのこと、これからのこと、バガラリーという謎のアニメ(?)と呼ばれる物の話など、コウタの情報は粗方聞いた。

 

「んでさ、レンタって家族はいるの?」

「うーん、この辺にはいないかなー。

みんな激戦区は嫌だとか言って比較的戦況が緩いドイツに行っちゃったんだよ、どこに行っても変わんないとは思うけどな」

「極東に比べたらどこも緩いだろうな、そりゃ。

じゃあ今まで一人暮らしだったのか?」

「まだ二年くらいだと思うけどね、一人暮らしを始めてから。

結構危ういこともあったけど、それなりにやってきたよ」

「へー...お前も大変なんだなー。

俺は早く母さんと妹を安心させてあげなきゃな。

だからちゃっちゃと活躍して、もっと強くなるんだ!」

「その心意気があればすぐなれんだろ、多分」

「た、多分かよ...

お前って意外と辛辣なんだな」

「んー、思ったことを正直に言っただけだし?」

 

レンタが首をコテンと傾けながら不思議そうに言うと、コウタは少しだけ呆れ気味に溜め息を吐き、ついでにやれやれといったジェスチャーまでしてみせた。

レンタは少しムッときたのか、自分の飲み物の中身を思いっきりコウタの飲み物の中にブチまけ、勢いよく振りまくった。

 

「ああ!何すんだよ!」

「どうぞお召し上がりください?

俺の分も入ってるからさらに飲めるぜ」

「うぅ...なんか変な色してんだけど、これ...」

 

あからさまに気持ち悪そうに目を逸らすコウタを、嘲笑するようにレンタが笑いかけると、コウタも諦めたように一気に飲み干した。

 

「あれ?案外イケる」

「嘘だろお前...」

 

コウタの味覚を疑った瞬間である。

 

「そうだ、家族って何人くらいいるんだ?」

「えっと、親父に母さんに...妹が一人かな?」

「妹かー...可愛いよなー」

「いや、年齢上がると可愛くなくなってくるぞ。

二年前だったら...ちょうど14くらいか?

そんくらいになるとうるさいんだよ、妹って」

「ゲッ、うちにも来ちゃうかな?」

「んー、大丈夫じゃないか?

割と仲良さそうだし。

そのままであることを願っておくんだな」

「そうしとくよ。

ああ、なんか心配になってきた...」

「同じ妹持ちとしては尊敬するけど、行き過ぎると気持ち悪がられるんじゃないか?

俺にはよくわからんが」

「えぇぇ...

ますます不安になってきたんだけど!」

「おいおい...」

 

などと言っているうちに、部屋に設置されているスピーカーから招集命令が出された。

第1部隊...すなわち、レンタとコウタが所属する部隊の招集命令だ。

 

「なんだろうな?」

「さぁ...

お前、教官になんかしたか?」

「それはねぇだろ...」

 

.........

......

...

 

「お、来たなー」

「こんにちは」

「そんな気を張らなくていいぞ。

リラックスしていこうや」

「はい」

「俺の名前は『雨宮 リンドウ』

お前達が所属する第1部隊の隊長だ。

まぁ、よろしく頼むぞ」

「えっと、第1部隊に配属されました『霞 レンタ』です。

まだまだ至らない点はありますが、よろしくお願いいたします」

「お、同じく第1部隊に配属になりました『藤木 コウタ』です!」

「そんな気を張らなくていいって言ったろ。

まぁ真面目なのは良いことだ、感心感心」

 

リンドウがうんうんと何度も頷く。

隊長だというのに随分と軽い人物だ。

...が、レンタが気になったのはそこなんかではない。

 

「あの、質問よろしいですか?」

「ん、いいぞ」

「まさかとは思いますが...ご兄妹がいたりいなかったり?」

「あぁ...姉上にあったのか...

あの人性格キツイからな、怖かったか?」

「隊長よりは真面目そうでしたがね」

「そりゃそうだろうな...

それと、隊長じゃなくていいぞ、普通にリンドウでいい」

「わかりました、リンドウ」

「...そういう意味じゃなくてだな...」

 

「ふふ、随分と賑やかそうじゃない」

 

自己紹介が終わったのを見計らったように、一人の女性が姿をあらわす。

ツバキとはまた違ったタイプの美人だ。

物静かで優しそうな人だなと考えるレンタ、すっかり見惚れるコウタ。

 

「こんにちは。

第1部隊副隊長の『橘 サクヤ』よ。

サクヤさんでいいからね」

「わかりました、サクヤさん」

「...この差はなんなんだ」

 

リンドウが頭をぽりぽりと掻きながら悔しそうな顔になる。

声は全く悔しそうではないが。

その様子にサクヤがふふっと優しげな表情で笑い、レンタはなんとなく二人の関係を察した。

 

「さて、と。

早速で悪いが、お前達には任務を言い渡す。

レンタは俺と共に、コウタはサクヤと共にそれぞれ実戦での演習を開始する。

それぞれ、しっかりと技を盗むつもりで挑むように、以上。

詳しい説明は現地で話す」

「え、えっと、まだ実戦は早いとか言われたんですけど...」

「なんだコウタくん、ビビってるのか?

実戦が早いとは言ったが、実戦を行わないとは言ってないだろう?

ま、そういうことだ、しっかりやってくれよ」

「わ、わかりました...」

 

コウタがナーバスな気持ちで返事をすると、第1部隊の面々は困ったように笑い、コウタも観念したのか疲れたように笑った。

 

 

 

...実戦は、近い。




コウタ、リンドウ、サクヤと合流しました。
なんか導入部が若干おかしいような気もしますが、気にしないで下さいませ。

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